気の向くままに、短編集。 作:天道詩音
IS世界の魔王様
1.
「お前が人の革新を望むなら俺は魔王になろう」
「人は真なる滅びにでも直面しなければ、立ち上がらないだろう」
「お前が人を信じるのであれば、人を導く勇者にでもなるがいい」
夢は情報処理の断片で、記憶がアトランダムに映像として流れていくのはその為だ。この記憶は……この行いの始まりの記憶。あの時から俺は、誓いの為に生きている。今までもこれから先も……そう定めた。
仮眠から目を覚まし、椅子から立ち上がり、部屋の中央にある、青く発光する立法体の結晶。ゆったりと回転してるそれを手のひらにのせ、握り潰す。
微かな光と共に、前方には部屋の壁を覆うようなモニターが全方位に現れ、建物の周囲を映し出す。ビル街の中心に建つ、塔の最上階から、辺りを見渡す景色が広がった。もう一度椅子に座り、脚を組む。
「なればこそ、全力で滅ぼしてやるとするか。精々止めてくれよ。立ち上がる人間が居なければ詰まらん。さあ人類の旅路の始まりだ」
手に持っている、選定の剣を模した鍵を前方に向けーー捻った。
壁を覆っているモニターに映る景色が変わる。
黒い空間、辺り一面に白い輝きが無数に散らばっている。
床には青色の惑星、頭上には月が、太陽光の反射によって白く映し出されている。
青色の惑星から、白い柱が数十本と立ち上ってくる。その柱は頭上にの月へ向けて、赤い光を放ちながら真っ直ぐに突き進んでいく。
「では人類を救って見せろよ。救えばそこから革新は始まるだろう」
白い柱はが月に届いた時、白い閃光とともに、大きな爆発を引き起こした。
ーーそして、月の欠片が、落下した。
2.
「ふふ、私のISが机上の空論なんて言う奴らには無理やりにでも分からせてあげないとね!」
「さーてと、ささっとアメリカンの国防省をハッキングして、ICBMの制御を奪っちゃおう」
不思議の国のアリス、その主人公の服装に似た格好の少女が、空間に投影された複数のモニターを眺めながら笑っている。
世界最高の防衛網を常人には不可能なスピードで容易く突破していく。
「まあこんなもんだよねー! はい完了!」
「束、何をやっている……?」
部屋に入ってきた高校の制服に身を包んだ少女は、モニターに映っている、ミサイルが大量に飛んでいる光景に驚き、思わず質問をした。
「ちーちゃん待ってたよ-! あのね、アメリカがミサイルを日本に撃ってきたみたいだよー。このままじゃ東京は壊滅かもねー」
「は……?」
「ふふっ、これはISで守らないとねー! 机上の空論なんて言われたISでね!」
ミサイルは海上、更に高いところを突き進み、日本の形をした島へ向かっている。
「あと、6分22秒で国会議事堂に衝突するよ。ちーちゃん守れる……って、えっ!?」
日本へと向かっていたミサイルは突然軌道を変え、上へ、大気圏の外へと向けて登って行った。
そして、米軍の基地からは追加でミサイルが発射された。
「は? なんで……それだけは私はやってないよ!?」
「なに、どう言うことだ!」
米軍基地から発射されたそれは、かつての大戦で、一度だけ使われたそれは、死者14万人の悲劇を起こしたそれが、何十と発射された。
「私のハッキングを乗っ取って、権限を奪ったの……? それよりどうしようちーちゃん!? このままじゃみんな……」
「落ち着け束、なんであろうと斬ればいいんだろ。ISと私でならあれは斬れるか?」
慌てふためく束の両肩に手を置き、顔を覗き込むようにして、優しく確認をする。
「う、うん! 宇宙空間に行くために、放射能含めて搭乗者に対して有害になる物は全てシャットアウトできるようにしてるよ! でも出来たばかりで性能も試して無いから……」
「大丈夫だ。束があの時から何年も掛けて作った物だ。あとは任せろ」
「ちーちゃん……! でもちょっと待って、今飛んでいるミサイルは衛星軌道上を超えて、もっと先へ向かってるから、地球とは何処か別の何処かへと、着弾するはず……あっ、月だ! あれは月に向かっているんだよ!」
キーボードを常人に視認出来ないような速度で叩き、弾道計算を行っていく。
「仮に着弾して、計算通りに爆発した場合、月が欠けて地球へ……日本へ落ちてくる……」
「……は?」