気の向くままに、短編集。   作:天道詩音

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三人称視点の練習です。


メイドとヘスティアの日常

「おはようございます。ヘスティアさま朝ですよ」

「うー…まだ寝るー……」

「ふふっ、わかりました。もう少ししたらまた起こしますね」

 

 メイドの女の子、メイはまだ寝たいと掛け布団に包まるご主人様こと、ヘスティアに微笑んで家事に戻る。

 

 メイドの仕事……特にメイの仕事は多岐に渡る。

 朝ヘスティアが目覚める数時間前には起き、身だしなみを整えメイド服を着て、住んでいる住居である教会の清掃を行う。

 この教会、ヘスティアが住んだ当初は廃墟の様なボロい建物だったのに、今はキラキラしているお城の様に豪華な佇まいでは無いけれど、教会の周りはキレイに清掃されていて、石造りの壁は磨かれていて鏡面の様になっている。今では、そこにあるだけで神聖さや静謐を感じられる美しさを持つ教会へと生まれ変わっている。

 日が出始めたばかりのまだ暗い時間からその教会の周囲の清掃を始める。雑草をむしり、花壇の花に水を与え、ゴミが落ちていれば拾い、教会のガラス窓や扉をキレイに磨いていく。

 太陽が昇り、だんだんと明るくなってくると近くに住む住民も外に出始め、冒険者は冒険に、商売人はお店に向かう、その人達へ笑顔で「おはようございます」と挨拶し、周りを元気にさせる事もメイドの仕事だ。

 

 メイが教会の周りの清掃を終わらせ、仕事に出る人々は出払った時間、ヘスティアはまだ熟睡中だった。

 

 メイは教会の中に戻って窓を開けていく。室内に外の爽やかな風を取り込んで室内の清掃を始める。前日に出た洗濯物を洗濯、箒やはたきを使い天井から床までホコリ一つ無い部屋へと生まれ変わらせる。

 

 キレイになった部屋で食事の準備を行う。朝食と昼食、あとおやつの準備を同時に行っていく。仕事をしていないヘスティアの代わりにお金を稼ぐ必要のあるメイは、昼から夕方まで、『豊饒の女主人』と言う酒場でウェイトレスとして働いる。

 

 ヘスティアも教会に住み始めたばかりの頃は働き、家事も行っていたけれど、メイを拾ってから世話をされていると、それまでやっていた仕事や家事はメイに「私がやりますからお任せください」と言われるがまま任せていたら、いまではヘスティアの毎日は食べる事と寝る事、あとはメイと話す事だけになっていた。

 

 メイは食事の用意が出来たところでヘスティアを起こしに行く。直ぐに起きないことは毎日見ている朝のヘスティアから予想できるため、起きてくださいとひと声掛けて、また寝始めたヘスティアを横目に着替えを用意する。

 タンスからホルターネックの白のワンピースと青のリボンを取り出してベッドサイドの机に置くと、朝から働きっぱなしのメイに一時の休息が訪れる。

 

 一通りの家事を終わらせ、ベッドサイドの椅子に座って、ヘスティアが気持ちよさそうに寝ている姿を見る事で疲れは直ぐに無くなった。メイドとしてご主人様の幸せそうな姿を見れるのは嬉しいものだった。

 メイはぐーすか寝ているヘスティアを幸せそうに眺めていたけれど、仕事に行く時間が近づいてきたため、ヘスティアを起こす事にした。

 

「ヘスティア様、そろそろおはようのお時間ですよ」

「はーい……おはよー……」

「はい、おはようございます」

 

 もぞもぞと布団から這い出てベッドに腰を掛けたヘスティアはまだ眠いのか、目をこすりながらうつらうつらしている。

 

「ではヘスティアさま、お着替えしますね」

「はーい……」

「ではバンザイしてくださいね、バンザーイ」

「バンザイー……」

 

 目を閉じてバンザイをしているヘスティアから寝間着のキャミソールを脱がせると、パンツ一枚になったヘスティアは寒かったため「さむっ!」と言い、メイに「さむいぞー」と言いながら抱きつき、胸の辺りに顔を埋めた。そんなヘスティアの背中に片手を回し、残った手で寝癖のある髪を優しく撫でる。

 13歳のエルフでまだまだ小さな子供のメイに、◼️◼️◼️◼️編集済み年以上生きるヘスティアが抱きついて甘えている姿がそこにはあった。

 

「寒くてごめんなさいヘスティアさま。すぐお洋服を着せてあげますからね」

「ボクはこのままなら着なくてもいいんだけどね!」

「私もヘスティアさまをずっと撫でていたいですけどお仕事がありますので……もう少ししたら着ましょうね」

「はーい」

 

 少しして離れたヘスティアにワンピースを着せ、二の腕から胸の下にリボンを通して結んだ後に、皺になっているところを整えてキレイにした。

次にクシを使い、髪をキレイに整えていく。ヘスティアの腰まで伸びた黒く艶やかな髪にクシを通す。

 最後に左右に髪をまとめ、白いリボンで留めてツインテールにする。ヘスティアの女の子らしい容姿に似合う髪型になった。

 

「次はボクがメイちゃんの髪を整えてあげるよ!」

「えっ、すみません……どこかおかしなところがあったでしょうか」

 

 メイは朝に身だしなみをしっかりと整えた記憶があるため、変なところがあったのかと不安になる。

 

「ふふっ違うよ! ボクがやりたいだけさ!」

「わかりました。お願いします」

 

 ヘスティアはメイを椅子に座らせ背を向けさせた。ヘスティアはメイの雪みたいな銀色の髪を手ぐしで優しく撫でる。指の隙間を通る髪の毛の柔らかくて冷たい感触が気持ちよくて何度も撫でていく。

 

「メイちゃんの髪ってサラサラしててふわふわだね!」

「普通の髪だと思いますよ?」

「そんなことないよ! 女神の髪よりキレイだと思う!」

「ヘスティアさまはお世辞も上手いですね。さすがヘスティアさまです」

「お世辞じゃないんだけどなー」

 

 女神の髪よりキレイと言う、そのヘスティアは正真正銘の『女神』だった。メイとヘスティアの住む街の名前は『迷宮都市オラリオ』と言い、神と様々な人種が共存する街である。迷宮都市と言う様に迷宮がある街で、迷宮にはモンスターがいて、そのモンスターを倒すと魔石が手に入りそれが、照明や火を起こす等の資源となるため、迷宮内を探索しモンスターを狩る『冒険者』と言う職業が街を支える大事な仕事になっている。

 その冒険者に力を与え、支援するのが神であって、神の眷属ファミリアになることで、強大なモンスターと戦うための恩恵ファルナを得ることができる。

 メイはヘスティアの眷属ファミリアなので恩恵を持っていても、冒険者では無いため、今のところ恩恵は少し重たい物が持てるようになったくらいでほとんど役に立っていない。

 

 ヘスティアが髪を撫でることに満足したところで朝食を食べに向かう。メイは野菜のスープを温め直しつつ、ベーコンと目玉焼きと焼いていく。こんがりと焼けたベーコンと、しっかりと焼いた目玉焼きをパンの上に乗せ、皿に乗せて完成。温まったスープと一緒にテーブルへ運ぶとヘスティアは目の前の朝ご飯に目を輝かせている。

 

「今日もおいしそうだ! いただきます!」

「はい、いただきます」

 

 口いっぱいにパンを詰め込んで食べているヘスティアを見て、微笑みながら小さく口を開けて小動物のように食べるメイ。

 

 こんなメイドとヘスティアの日常。

 

 

 

 

 

 

 ただしこの翌日、ヘスティアの神友『女神ヘファイストス』がこの現状を知ることになる。

 教会に住む前、ヘスティアはヘファイストスの世話になって生活していた。現在と同じように食べて寝ての生活をしているヘスティアの神として見ていられない姿に、このままだとダメだと思い、新しい住居を用意して、更生しなさいと送り出した過去があった。

 

 そんな今、年端のいかない少女を働かせて、ヘスティア自身は食べて寝てるだけな姿を見て、メイへ「この駄女神が本当にごめんなさい」と謝罪し、ヘスティアを見える所で働かせなければと決意することになった。

 

 ブーブー言いながらもヘファイストスの元で働き始めたヘスティアが仕事から帰る途中で白い髪に赤い目をした男の子と出会い、家族が増えるのもそう遠い未来でも無いかも知れません。




読んでいただきありがとうございます。

キャラ紹介
メイ
メイドです。
名前の由来は言えないですが、0.2秒くらいで決まりました。
13歳、銀髪ショート、エルフ。
母性のブラックホール。
母性のあるロリって最高だなって。(二次元に限る)
描写は無いけどひんぬーです。(13歳なのでネ!)
メイドの副業にウェイトレスしてます。冒険者にはならないそうです。
メイド修行を卒業後にご主人様を探していたら、お世話しがいのある女神様に出会いました。

ヘスティア
原作以上に駄女神。
黒髪ツインテールロリ巨乳ボクっ子女神。
メイに全てをお世話されて堕落しまくった。
母性あります。(一部分だけ)
空腹でオンボロ教会の前に倒れているところをメイドに助けられ、今に至ります。

ヘファイストス
赤髪鍛治神お姉さん。
信じて送り出した神友が……

白髪赤目の男の子
ベ○くん





下記は、後書きなので読まなくても大丈夫です。
三人称の練習として書いてみましたが、これで三人称になっているのかよく分かりませんでした!
変なところがあれば教えていただけたら嬉しいです。

『ブーブー言いながらもヘファイストスの元で働き始めたヘスティアが仕事から帰る途中で白い髪に赤い目をした男の子と出会い、家族が増えるのもそう遠い未来でも無いかも知れません。』
こちらの最後の文の『知れません』と言うのを三人称視点で使っていいのかなと悩みました。
三人称視点で知らないことがあっていいのかと悩んでいたんですが、どうなんでしょう。
それまでの視点ではメイとヘスティアの姿を映すビデオカメラ映像を映すだけの役割だったのに、『知れません』と言うとビデオカメラだったものが喋っていると思ってしまったんですよね。
正解があるかは分かりませんが悩んでもやもやとしてました!

もし続きを書くとしたら、ヘスティアとの出会い編、『豊饒の女主人』リューの章、見習いメイドリリ編などがあったり無かったりします。

後書きは以上です!
ありがとうございました。

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