気の向くままに、短編集。 作:天道詩音
「クリス探したぞ! いつも何処に泊まってるんだ? 私の泊まっている宿に泊まればずっと、話せるじゃないか!」
「夜は忙しいから、ダクネスと一緒に居られないかな? ごめんね」
「ちょっとでいいんだクリス! 取りあえず一夜だけでもいいから頼む!」
「なんでそんなに必死なの……?」
ジト目で見ていたらダクネスの頬が紅潮して、なんだか息が荒くなっている……最近どうしたの?ドMなのは前からだけどさ、なんか今まで以上に変だよ?
それになんだか最近、ダクネスがすごい密着してくるようになった気がする……気のせいだよね?
「考え事があるからまたね!」
「く、クリス!? 待ってくれええええ!」
追いかけてくるダクネスを振り切って、落ち着いたところで、最近のダクネスが変だった出来事がいくつか思い浮かんできた。
まずはこの前、コボルトの討伐クエストにダクネスと二人で向かった時だけど、森を二人で一緒に歩いていた時に突然、
『クリス危ない!』なんて言って、私に抱きついて来たんだけど……敵感知スキルに何も反応してなかったのに、いきなり後ろから抱きついてくるんだからびっくりしたよ。
その後も抱きついたまま動かないし、どうしたのかなって振り向こうとしても、ダクネスの抱きつく力が強すぎて全然身体を動かせないし……首筋にダクネスの吐息が当たってくすぐったいから、離れてっていったら、『す、すまないっ!』って勢いよくバックステップして、退いてくれた。
「ダクネス? 敵感知スキルで確認してるから心配しなくても大丈夫だよ?」
いきなり抱きしめられて拘束されたことに不満もあるし、ジト目でダクネスを見ていたら、言い訳をし始めたんだけど……
「あ、あの木陰にコボルトが居た気がしたんだ!」
「クリスのやわらかくてスベスベな肌を傷つけたくなかったんだ!」
「わ、私が護るから安心してくれ!」
その時はヘンな事言ってるなーくらいにしか思ってなかったけど、よく考えたら変だよね?
いきなり抱きついてきたし、後ろで何か息荒くなってたし、言い訳してるときも何故か顔が真っ赤になってたし……ダクネスはどうしたんだろう?
その後も何度か抱きつかれたし、毎回ヘンな言い訳をして誤魔化そうとしてたよね……その後クエストは、ダクネスがデコイでコボルトを引きつけている間に、私が一体ずつ仕留めていったから、お互いに怪我することなく達成できたけど……絶対おかしいよね!?
そう言えば昨日も……天界でのお仕事が終わって、アクセルでゆっくりお風呂にでも入ろうとしたんだけど、途中ですばったりダクネスに会ったんだよね。
「く、クリス! 奇遇だな! 一日中探した甲斐が……じゃなくて、偶然だな!」
「ダクネスは今日も元気そうだね。偶然でも会えてうれしいよ?」
「そ、そうか! それでクリスは今日は何処に居たんだ?」
この時、ダクネスはニヤニヤしながら近づいてきて、私の両肩に手を置いて、見下ろして来たんだけど今考えたら変だったよね!?
「ちょっとね。そ、それより私はお風呂に入ってくるからさ。ダクネスはまた明日でも一緒にクエ……」
「お風呂だって!? わ、私も一緒に行くぞ!」
「いやいや、ゆっくり入るつもりだからさーー」
「私も一日中走り回って汗をかいてしまった。さあ行こう!」
「ちょっ、ダクネス!? ま、また今度ね!」
肩に置かれた手を振りほどいて、逃げ出してから路地で潜伏スキルを使って逃げ切ったけどさ……いつもの変なダクネスだったなーなんて思いながら、その後はそのままお風呂に向かったけど、最近のダクネスって暴走してるから、一緒にダクネスとお風呂になんて行ったら危なかったかもね……
今までのダクネスの行動を冷静に考えると、男の人が好きな子にするような行動……いやいや、私もダクネスも女の子だよね!?
でも、そう考えるともうそれ以外考えられないくらい正しい答えのような気がする……つまり、ダクネスは私の事が好き……?
いやいやでも、えー……確かに私はダクネスの事は好きだよ。友達してだけど。女の子同士の恋愛って言うのもあるみたいだけど、ダクネスもそうなのかな……?
あんな敬虔な信徒だったダクネスがどうしてこうなったの!?
あの頃のダクネスがアクセルの教会に毎日祈りに来て、願っていたことは今でも覚えている。
「この私にも、毎日話して、一緒に笑い合って、一緒に居てくれる友達をーーどうかエリス様、私と引き合わせて下さい」
何日も教会に脚を伸ばして、友達が欲しいと言っていたダクネスの願いを叶えたくて、会いに行って、友達になって……
それから一緒に冒険者のパーティーを組んで、冒険したり、街で二人で出かけたりして、私も楽しかったなー。楽しかったけど、どうしてこうなったの!?
よし、色々気づいちゃったけど忘れよう!今日はこのまま宿に行って寝ちゃおうかな。
その後、いつもの宿に帰るとダクネスが入り口で待ってたから……待ってたから一緒に入って夜ご飯を食べる流れになったけど、すっごい酔わそうとしてきて……度数の高いシュワシュワを沢山飲ませようとしてるし……何をやっているのかなダクネスは!?
「く、クリス! 今日は私が奢るからこのシュワシュワを飲んでくれないか!」
「奢ってくれるのに、何でお願いしてるの?」
「酔わせ……ではなく、日頃の感謝を込めてだな!」
ダクネスは私を酔わせてどうするの……って思いながら、カエルの唐揚げとか頼んでたけど、ダクネスはちゃっかり高級なシュワシュワを二杯頼んでたから、少しは飲んであげようか。酔わない程度に。
シュワシュワが届いたから、ダクネスにジョッキを渡す。でも受け取るときに、私の手を触らないでいいんだよ?
「折角だから乾杯しようか。私の親友のダクネスが幸せそうな事にね。乾杯」
「か、乾杯! うまいな! クリスももっと飲んでくれ!」
「ふふっ、私は一口でいいよ。残りはダクネスが飲んでくれる?」
明日も朝から天界でのお仕事があるし、酔ったら大変だと思ってシュワシュワは沢山飲めないからってダクネスに残りをあげたけどさ……よく考えたらこれって間接……ッ!
「い、いいのか!? 飲む飲む絶対飲むぞ!」
「べ、別にいいよー! 私は唐揚げとか摘まんでるから。んーおいしねー」
隣で、少し気持ち悪いくらいニヤけてるダクネスを横目に、色々忘れるように唐揚げを食べてたけど、私のシュワシュワを凄い味わいながら飲んで、ダクネスの分を飲み終えたあたりで、顔が真っ赤になって目の焦点が合わなくなって、そして……寝た。パタリと。
そう言えば、度数がかなり高いシュワシュワだったなー……なんて思いながら、隣の席で飲んでいた女の子同士の冒険者に協力して貰ってダクネスを部屋まで連れて行った。すごい重かったけど、きっと鎧を着込んでたからだよね?
ベッドで幸せそうに寝てるダクネスの横に座って、寝顔を眺める。
「寝てたらこんなに綺麗なのに、どうしてあんな感じになっちゃったんだろうねー。ふふっまあ嫌いじゃないけどね」
私にとっても大切な親友だからね。嫌いになんてならないよ。ダクネスのほっぺたを指で突っついて遊ぶ。戦いでは傷一つ付かないくらいのダクネスだけど、ほっぺたは柔らかいよねー。癖になるかも。
まあ、ダクネスと居て楽しかったよね。たまに地上に降りて誰かと話すことはあったけど、私も一人だったからダクネスと一緒に居れてすごいうれしいよ。
「ねえ、ダクネス。貴女の事はずっと見てました。私を笑顔にしてくれる明るい貴方を、仲間を傷つけさせない騎士としての在り方もーーそんな私の大好きな貴女に祝福を……」
気の迷い……後で後悔する事になったけど、柔らかな頬にキスをしちゃったんだよね。結果は、そうーー
「く、クリス!? キ、キスをしたよな!? うひひ……私も大好きだ! もっとしよう! もっと良いことをしようじゃないか!!」
「うひゃ!? ダクネス起きてたの!?」
「ふひひ、クリスも私の事を好きだったんだな! 私も好きだからキスをしよう!! クリスーー!」
「じゃ、じゃあね!!」
後ろから聞こえる、ダクネスの呼び声を無視して全力でアクセルを走り抜けて、広場の真ん中で立ち止まる。あれが聞こえてたら、私がダクネスの事を好きって言ってたような物だよね!?
親友としては好きだけどね!でも告白みたいな感じに!?!?
「はぁ……まあ酔ってたし、夢だと思ってくれるよね。これ以上暴走しないよね……」
今日は天界に戻って寝よう……明日になればきっと忘れてるよね?
次の日、ダクネスにばったり会って、気持ちの整理が出来ていないから踵を返して、逃げちゃった。
「私のクリスーー! 待ってくれ-!」
「誰が、私のクリスなのかな!?」
「き、キスしてくれたじゃないか!!」
「あれは、気の迷いなの! てか、街中でそんなこと叫ばないでくれるかな!?」
周りの人たちがこっちを見てヒソヒソ話してるからね!?私は普通に男の子が好きだよ!出会いは無いけど……いっそ女の子同士でもとはならないからね!
こんな騒がしくて楽しい毎日がずっと続けばいいけどね。この楽しかった日々を私は永遠に忘れないよ。
「追いついたぞクリス! またキスしてくれ! 頼む! 何でもするから!」
「あはは! 楽しい毎日だけどそう言うのはちょっといいかな! またね!」
だからダクネスーーこれからもよろしくね!
完
【次回予告】クリスはぼっちな紅魔族に……
「はあ……なんでまた変な人しか募集に来ないの……」
今日も一日中ギルドで、パーティーに入ってくれる冒険者を待っていたけど、動けなそうなくらい太ってるおじさんとか、胸ばっかり見てくるおじさんとか、まともな人は居ないの……はぁ
せっかく紅魔の里から出てきて、私にも友達が出来るかなって思ってきたのに……冒険者として格好いいところを見せてら仲良くなってくれるかなって思ってたのに、なんでヘンなおじさんしか来ないのよ……
「もうやだ……ぐすっ」
涙が出てくる……ここでも私には友達もできないの……?めぐみんは友達だと思うけど、ライバルだから弱いところは見せたくないし……
誰か、私が友達になれる人は居ないの……?
「ねえ、大丈夫? どこか痛いの?」
「えっ……?」
俯いていた顔を上げると、風でさらさらと揺れている銀色の髪のお姉さんが目の前に居た。光が反射しててきれいな髪……
「だいじょうぶ? ポーションならあるよ?」
「あっ、わっ、だいじょうぶです!!」
「そう? ふふっ、ならよかったよ。でも下を向いてどうしたの? お姉ちゃんが聞いてあげるよ」
見つけた……私の探してた人。でもいきなりこんな事言ったら嫌われちゃうかな?変だって思われるかな……?
「ん? ゆっくりでいいからね、ちゃんと聞いてあげるよ」
「あっ……えっと……!」
柔らかく頭を撫でてくれて、気持ちが落ち着いてきた。よし、言うよ!お願いーー
「わ、私とお友達になってください!!」
頭を勢いよく下げてお願いした。断らないで……お友達になってください!
「ふふっ、君もそのお願い? ねえ顔を上げてくれる?」
「は、はい!」
「お友達になるなら必要な物があるよね。君の名前を教えてくれるかな?」
あっ……忘れてた。紅魔族の名乗りをしないといけないんだ……でもやらないとね。私は紅魔族の次期族長になるんだから!
「わ、我が名はゆんゆん! 紅魔族の次期族長になる者です!」
やっちゃった!引かれてない……嫌われてない?お姉さんはちょっと驚いた顔をした後、優しく微笑んだ。
「ふふっ、紅魔族らしい格好いい挨拶だね」
あっ、頬がすごい熱を持ってる……
「私はクリスだよ! よろしくね、ゆんゆん!」
私の名前を笑わないで、お友達になってくれたクリスさん。大好きです。友達じゃなくて、女の子同士だけど、好きになっちゃいました。これからもずっと一緒に居ますからね!
続く?
※次回予告はエイプリルフールネタだったので続きません。
これで完結です!
こんばんは。
初めましての方は初めまして、生きていたのかって思ってくれる方はお久しぶりです。
生きてました。
社会人になると時間が足らなくなるのは本当でした。すみません!
少しだけ余裕が出てきたので、途中で止まっている小説は完結させていきます。先に短編を幾つか書いてからになるかもですが。
連載してる物は完結させます。
今後ともよろしくお願いします。