気の向くままに、短編集。 作:天道詩音
「藍、最近幻想郷の外ではソロキャンプが流行っているのよ」
「お陰で餌の回収が楽ですね」
「うふふ、人間を餌なんて言ってはだめよ」
キャンプ場に泊っていた他の人たちのテントが、突如として消えていく。
僕の隣に建てていたテントは、目が沢山あるよく解らない空間に飲まれて無くなった。
人間が餌ってなんだ? 目の前の二人は人間じゃないのか?
二人とも見たこともない美人で、傾国の美女と言う言葉が相応しい。人ならざる美と言うべきか。先ほどの会話も含めると人間ではないのではと考えてしまう。妖や怪異が科学的に否定される現代で、非科学的な現象が目の前で起きている。
僕自身、科学で説明ができないような能力がある。
昔から影が薄かった。
薄い、どころの話ではなく……僕がいることを誰も認識しなかった。僕が見つかりたくないと思った時、誰にも認識されなくなる。大声で叫んでも、目の前で手を振っても、触れたとしても誰も認識しなくなる。
日常だと授業中に指名されないようにするくらいの使い道しかない無駄な能力だと思っていたけど、今はこれがあって良かったと思う。目の前で人が謎の空間に飛ばされている状況で、僕だけが助かっているのはこの能力のお陰だ。
とりあえずここから離れて逃げるとしよう。命の方が大事だしキャンプ道具は捨て置くしかないか。
「ちまちまスキマに送るのが面倒になってきましたわ。残りは纏めて送りましょう」
逃げようとした時に女性の声が聞こえた。そして頭上には沢山の目が蠢く空間がすぐそこにある。ダメだ、逃げられない。謎の空間への恐怖もあって立ち竦んでしまう。
そして、目を開けると先程のキャンプ場ではなく、深い森の中に居た。先に飲み込まれたテントもそこにあった。おそらくテントに居る人もそこに居るはずだ。
僕は他の人達を置いて木々の切れ間に走り出す。皆さんすみません。あの妖怪の様な女性が怖いからすぐにその場から離れた。後ろでは女性の笑い声が響いた。
結構遠くまで来たから一旦は大丈夫かな。まだまだ油断はできないけど、とりあえずあの妖怪……あの謎の空間の事をスキマと呼んでいたからスキマ妖怪と呼称しよう。もう一人はキツネの尻尾が沢山あったから九尾でいいか。あれらは人間を餌と呼んでいた。あそこに居た人達の向かう先は一つしかない。でもどうしようもない。僕の能力は他の生物を認識から消すことはできないから。
振り返らずに先に進んでいく。これからどこへ向かえばいいのか。辺りを見渡しても木々が高く、明かりは月しかない。それにしても夜空がキレイだ。普段見えないような小さな星々まではっきりと見える。かなりの田舎に飛ばされたみたいだ。街のような明かりも全く無い。
先を進んでも他の妖怪に出会うかもしれないけど進んでいくしかない。水も食料も無い状況だから脱却しないと餓死してしまう。
二時間ほど真っ直ぐ歩いていくと、遠くの方に家の明かりのようなものが見えた。人間でありますようにと願いつつ明かりに向かって進んでいく。
西洋風の一軒家の目の前まで来た。標識は無く誰の声もしないため無人かもしれない。でも明かりはついている。
とりあえずノックしてみよう。もし妖怪が出てきたら能力を使って逃げよう。
ドキドキしながら待っていると足音がした後に扉が開いた。
気づかれない程度の能力を持つ主人公が幻想郷でコソコソ生きていくお話。
あと妖怪って本当は怖いよねって感じのお話。
書いてる途中だったのでキリのいいところまで書いて供養しました。
ここからアリスの家に転がり込んでいく予定でした。