とある指揮官と戦術人形達   作:Siranui

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 ダミーリンクシステムのお話です。 この頃ライフルの話ばかり書いている気がします……?



Kar98k 言葉で伝えなくても

 メインシステム、通常モードで起動致します……おはようございます、Kar98kダミー二号機が起動致しました。 オリジナル一号機、応答をお願い致します。

 

 ……? オリジナル一号機、応答を……応答なし、システムを非常モードに切り替え自立行動へ移行します。 事前行動は……メンテナンスを受ける為、基地修復施設においてスリープモードに移行。 予定終了時間は20:00予定……現在時刻は19:00?

 

 はあ……成程、どうやら係員の方がメンテナンス時間を設定し間違えたみたいですね。 瞳を開け周囲を確認すると、メンテナンス台に繋がれた自分達が瞳を閉じて眠っている姿が見える……どうやら、設定をミスされたのは私だけの様ですね。

 

 さて困りました、オリジナル機はメンテナンス中で命令を発信出来ません。 非常モードはオリジナル機が命令を発信出来ない状態……つまり破壊されたかそれに近い状態の場合、命令を受信するだけのダミー人形にデータをコピし、それを持ち帰る事を目的に設計されています。

 

 その為会話をする機能はありませんし、意思や行動もオリジナル程考えられません。 ダミー人形の存在理由がオリジナルを守護し、その命令に従い敵を撃ちオリジナルの代わりに敵に撃たれ……まあ、そう言う事ですから。

 

 鉄血の部隊も、敵が人間かそれとも私達人形かによって戦法を変えてきます。 人形はダミーを多用しますが、ダミーは痛みを喚きませんし、負傷したからと言って撃たれた個体の性能は低下するでしょうが命令が無い限り後退しません。

 

 しかし人間は違います、どこか撃たれたら痛みによって集中力は削がれますし、血液を失う事によって死を恐れます。 どんなに訓練された兵でも恐怖という心を蝕むモノには勝てません。 そして恐怖は伝染し、あっという間に部隊を壊滅させます。

 

 鉄血はそれを理解しています、人形を撃つときは急所である頭部か関節部、又は腕を狙い戦力を削る事に集中しますが、人間を撃つときはわざと急所をわずかに逸らします。 なるべく痛みを感じ、喚かせ、周りの人間に恐怖を感じさせる為に。 勇気ある兵は負傷兵を助けようとするでしょう、即死でなければもしかしたらと、急所から外れているのだから助かるかも と。

 

 ジリ貧です、救助するには一人の兵に最低二人は取られます。 戦力は倍算でドンドン減っていきます。 かと言って見捨ててしまったら兵は命令に従えなくなります。 次見捨てられるのは自分かもしれない という疑心暗鬼から……

 

 そういう意味でも、人形と言う戦力は便利なのかもしれませんね。

 

 閑話休題、気を取り直して今状況を指揮官に報告しなければいけないでしょう。 執務室に向かわなければ……会話が出来れば、室内の内線電話が使えるのですが無い物ねだりはしない方が良いでしょう。

 

 時刻的には夕方、夕食を終えた人形達が自由時間を過ごしているか自己鍛錬をしている所でしょうか? すれ違う人形が昼間より多い事が観測されます。 基地の廊下を執務室に向け歩いていきますが、何人かの戦術人形が不思議そうな目でこちらを見ているのが分かります。

 

 最も、話しかけられたとしても私に応答する事は出来ないのですが……ネットワーク通信機能もオミットされていますからね。 オリジナル機との短距離通信が出来れば戦闘に問題はありませんから。

 

 さて、執務室前に到着しました。 コンコンッ と二回ドアをノックし指揮官の返事を待ちます。 彼は他の上官みたいにぞんざいにおう、やら入れ でなく、どうぞ と返事をします。

 

「あれ? Kar……メンテナンス中じゃなかった? どうかしたのかい?」

 

 書類仕事をしていたのでしょう、ペンを片手に手元の書類へサインをしている所でした。 見た所副官の戦術人形は居ない模様です……さて、どうしましょうか? 勢い余って報告しなければと思い、こちらにまで来ましたが報告する術を考えてきていませんでした。

 

 副官が居れば、何らかの意思疎通ができるかと思いましたが……致し方ありませんね。 言葉で伝えられないのならば体で表現するまでです。

 

 

 

 思えば、執務室に来た時から少し不思議な感覚はしていたのかもしれない。 Karは礼儀と規則を守る方であったから、入室を許可した時に返事をしなかった事に多少の違和感は感じていた。

 

 どうかしたのかい? 私がそう聞いても、彼女は何時もより少し柔らかい笑みでニコニコ微笑んでいるだけであった。 その内、何かを考えているのか僅かに首を傾げながら人差し指を口元に当て、ユラユラと少し揺れている……いったいどうしたのだろうか? まあ……見ている分には可愛いから何も問題は無いのだけれども。

 

 さて、問題は彼女が何故来たのか と言う事だろう。 メンテナンスに何か問題があったのだろうか? いや、問題があったのなら内線か通信機器を使えば良い筈だ。 なら……何だろうか?

 

 コツコツとブーツが床材を叩く音がする……考える事を一旦止め、彼女の方を向いてみると私の隣にまで来ており、やはり無言で私をニコニコと見ているだけである。

 

「Kar?」

 

 彼女が私の手を取り、手のひらに人差し指で何かを書き始める……くすぐったいが何を書いているのかは何となく分かる……私 ダミー オリジナル メンテナンス プログラムミス……どうやらこの娘はKarのダミー人形の様で、何らかの手違いによってメンテナンスが早期に終了してしまい、こうして私に報告しに来てくれたらしい……

 

 成程、ダミーには最低限の機能しか搭載されていないから、彼女はこうして手のひらに文字を書くことで意思疎通をしようとしているのだろう。 こうして伝えようとしてるんだね? と聞いてみると彼女は嬉しそうに笑みを強め、手をそっと握り締めてくる。

 

 至近距離から見上げる様に私を見つめてくるkarが、そっと膝を付いて頭を低くし私の手を頭に乗せゆっくりと撫でる様に手を動かす……撫でて欲しいのかな? 梳く様に彼女の銀髪を撫でる……ダミーでも品質は変わらない様で、オリジナルと変わらず柔らかい髪に撫でていて心地よい。

 

 撫でられているKar自身も心地よさそうに目を細め、頭を撫でやすい様に位置を調整する……そういえば、ダミーの行動はオリジナルの意思が強く出ると言われている。 前にも頭を撫でる事を我慢させてしまった場合メンタルモデルから感情が溢れてしまった事があったが……うん? と言う事はKarは私に撫でられたいのか??

 

 と、廊下が少し騒がしくなる。 具体的に言えば何人かがこちらへ小走りに走ってきている音だ。 ダミーも気付いたらしく、少しだけ眉を顰め残念そうな表情をする。 が、直ぐにまた微笑み立ち上がる……かと思いきや、私の胸にその身を預け、苦しくない程度に背後へと手を回し抱き締める。

 

「指揮官さん! こちらに私のダミーが来て……何をしてますの!!?」

 

 突然の事で対応できず、ただ頬を朱色に染めていた私は何もできない。 何をしているのか と聞かれても君のダミーがしたい事をしています。 と返すべきなのか否か……

 

「私だってやった事がn……んんっ!! ともかくダミー2号機、指揮下に戻りなさいな!」

 

 その命令を受信したのか、彼女は先ほどの笑みを浮かべていた表情は消え立ち上がり、オリジナルの後ろに立つ他の3人の元へ向かう……前に、私の手を取り二文字の言葉を書いた。

 

「女 子……キ?」

 

 ピッ と敬礼し彼女はオリジナルのKarの元へと戻っていった……咳払いをしているオリジナルに、ダミー二号機は優しく微笑みながら声の出ない唇を動かす。 読唇術が出来れば何を伝えたのか分かったのかもしれないが……

 

「……全く、メンテナンスの担当官に文句を言わなければなりませんわ。 ダミー二号機からどのような事になっていたかは報告として受け取りました。 ダミー二号機を通常モードへ移行します」

 

「うん、了解しました……体に異常はないですか?」

 

「特に問題ありませんわ、ダミー二号機自身にも問題はございません」

 

「了解しました。 では今日の予定はこれ以上ありませんので自由にして下さい……その前にKar」

 

「何ですの?」

 

「お疲れ様でした」

 

 彼女が被っていた制帽を手に取り、ダミーにした様に頭を撫でる。 あの娘が私の手を取り撫でて欲しいと訴えていた様に。

 

「な、なななっ、何を……」

 

「い~や、言葉にしないと分からない事もあるけど、少し相手の事を見て考えれば色々と分かる事もあるんじゃないかな と言う事を覚えただけさ」

 

 そうだよね と彼女の後ろに立つダミーへと微笑みかける。 もう通常モードへと移行し、感情を表す事が無い彼女だが……少し微笑み、頷いたのは目の錯覚ではないと思いたい。

 

 Kar98kがそれからという物の、二人きりの時に限り指揮官の手を取り、手のひらに文字を書いて自分の意思を伝える様になったというのは……また別の話である。

 




 ディープダイブ(DD)終了まであと5日……皆様方はUMP40を救出出来ましたでしょうか?
ランキング戦で無きを見ている私です……くっ、金装備が足りない……っ!!

 誤字脱字報告、ありがとうございます。 気づかないものでして申し訳ありません……
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