とある指揮官と戦術人形達   作:Siranui

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 あまり甘く出来なかった……が、これで40を本格参入させる土台は出来たかな と。


UMP40 焦らなくて良い

 タタタタタンッ と銃声が響き、肩を蹴られる様な振動が銃口を上へと向けようとする。 それを制御し、跳ね上がらない様に押さえつけつつ動き回る的へと射撃を続けていく。 マガジン内部の弾を全て撃ち切り、リロードの動作に入ろうとした所で手がもたつく。 胸部辺りに取り付けたポーチのボタンが上手く外せず、現実と理想の乖離が始まっている……それを修正しようとしてエラーが続出し、あっという間に自分の演算領域を侵食していく。

 

 どうして、どうしよう 迷う暇も無く目線を下に向け、何とかボタンを外しマガジンを自身の分身へと突き刺しリロードする が、遅い。 他の戦術人形なら数秒で出来る動作に何十秒かけているのだろうか。

 

 射撃を再開しようとした所でスピーカーより自身が大破した事を告げるブザー音が無慈悲にも鳴り響く。 訓練終了……これが実戦だったらと思うと嫌気がしてくる。

 

「はあ……こんなので本当に大丈夫なのかな……」

 

 計器が出力する命中率・弾薬投射率に対しての敵撃破率が表示される……ほぼ全てにおいてランクD、落ちこぼれ 訓練やり直しの落第点だ。 こうして毎日練習しているが成果は芳しくない……

 

「……こんなのじゃ、戦術人形失格だよ」

 

「ほぉー……ふむふむ、確かにろくに抵抗出来ずにスクラップ行きかもね」

 

 予期せぬ他人の声に、うひゃぁ!? と素っ頓狂な声を上げ振り返ろうとして失敗し尻もちをついてしまう。 肩に顎を乗せ、手元を覗き込み声を掛けた者すら驚いた様に手を挙げ、きょとん とした表情であたいを見ている。

 

「UMP45……? 一体なんなのさ……」

 

「あははっ、ごめんごめん……深刻な表情をしてたから大丈夫かな……と思ってね。 まあ理由は……分かったけどさ」

 

 UMP45が手を差し出してくるので、その手を取り腰を上げる。 パンパンッ と軽く服を叩いて埃を取り払う……室内の射撃演習場に据え付けられた椅子に座り込むと、UMP45も隣に座ってくる。

 

「……訓練も練習もずっとしてるんだけどさ……どうにも上手く出来なくて」

 

「指揮官には相談したの?」

 

「ん~ん、だって……こんなにも成績が低いなんて知られたら見捨てられちゃうよ……」

 

 ギュッ と手に力を入れ握りしめる。 指揮官があたいを指揮下に入れる為に手を回してくれた事も、鉄血に乗っ取られかかった時に自身の生命・名声を賭けてくれた事も後々少し調べればすぐに分かった。

 

 彼は私がしたかった事だから気にしないで構わない なんて笑っていたが、そうしてくれたのもあたいに何らかの価値を見出したからだろう……価値を証明できなければどうなるかは想像したくない。

 

「そんな事は無いと思うけどなあ……あの人、かなりのお人好しだから、相談したらちゃんと聞いてくれると思うよ?」

 

「人間なのに?」

 

「ん~……まあ、人間って言っても千差万別だしね。 あの人は特殊な部類に入るかな~……」

 

 人間はあたい達の創造主で、あたい達は彼等の代わりに戦う事を目的に製造されている……それが出来ないとなると、行きつく先は……

 

「そんな暗い顔しないの……ほら、そんな貴女にプレゼントよ」

 

「プレゼント?」

 

 そう45が差し出してくるものを見ると……大量のフロッピーディスク? 軽く数えるだけで100枚くらいありそうだ。 それをニコニコと差し出してくるのだが……

 

「……え? これ全部読み込むの……?」

 

「そうだよ? これも用意するの結構大変だったんだからね」

 

「うっ……ただ、あたいの容量だとこれ全部読み込むのは無理じゃ……」

 

「ん~……あ、やっぱりそうなんだ……じゃあこっちならどうだろ?」

 

 大変だった という割にあっさりと彼女は大量のフロッピーディスクを取り下げ、ネットワーク上であたいにを呼び出してくる。 CALLに応えると、許容出来るギリギリの容量のデータが送信待機状態で待っている様であった。

 

「これは?」

 

「基本的射撃姿勢の姿勢データ、及び照準補正プログラム、それから反動制御プログラムに装填動作補正プログラム……まあ、戦うのに必要な補正プログラムを纏めたものよ。 これなら圧縮されているから必要な時に引き出して起動させれば問題ない筈よ」

 

「……最初からこっちを送ってくれれば良かったのにさ」

 

 ぶすっ と不貞腐れた表情を見せると、彼女は確認したかったのよ と、笑いながらごめんごめんと謝った。 圧縮データをダウンロードし、読み込んで整理してみるとあたいに最適化する様にデータ整理されている事に気付いた。 姉妹機である45が整理してくれたのだろうか……彼女はあたいと違って、この基地で第三部隊長として任務に就く事もある。 日常の業務を熟しながらこの様にデータを整理する事は……容易ではないだろう。

 

「確認できた?」

 

「うん……ごめん、手間かかっただろうにさ、悪態ついちゃって……」

 

「気にしないで良いのよ、私もそうして貰った事があったから……経験則で作ったものだから、そこまで手間はかかってないのよ」

 

 そう話す彼女は少しだけ遠い目をしていた……何だろうか、あたいを見ている筈なのに、あたいを見ていない様な……そんな感じ。

 

「そうだ、少しだけ気分転換しようか?」

 

「気分転換?」

 

「指揮官がまだ信じられないのでしょ? だからちょっとだけ指揮官の内情を見せてあげる」

 

 いたずらをする子供の様に45は笑っていた。 人差し指を唇に当て、しーっ と息をひそめる様に……どうするつもりなのだろうか? と、興味本意であたいは頷いていた。

 

「じゃあ、このコードを接続して……そう、それで良いわ。 ネットワークを起動して、権限を一時的に私に付与して……よし、じゃあ行ってみようか? 電子戦機の本領発揮という奴よ」

 

 スッ と視界が黒に染まっていき、意識が遠のく……次に目を開いた時、そこは見た事が無いような電子の世界であった。 無機物なコンクリート製の建物でなく、蒼に近い空と、所々光るラインにチップの様な模様が描かれた世界であった。

 

「おお~……ここが電子の世界か……」

 

「そうよ、ただ見やすい様に私が補正をかけているけどね……後、あまり離れないでね? 統括出来ないと異分子と見なされて攻撃されちゃうかもしれないからさ」

 

「うええ!? それって不法侵入って奴じゃ……?」

 

「良い事を教えてあげるね40、バレなければ犯罪じゃないし、バレても証拠を掴ませなければ問題ないのよ?」

 

 それ、絶対不味い事してるって宣言だよね? 本当に大丈夫なのかな……??

 

「その話は置いておいて……ほら、見えてきたわ。 あれが指揮官の端末情報よ」

 

 すっ と指をさした方向を見ると、執務机に座り指揮官がパソコンの端末に向かい何かの作業をしている姿が見える……ここは電子の世界の筈なのに、どうして……?

 

「補正をかけているって言ったでしょ? あれは指揮官の端末が何らかの作業をしている事を示しているだけよ」

 

「あ、そっか……ん? 今って23:00くらいだよね……指揮官、まだ仕事してるの?」

 

「ふふっ、してるわ……それも貴女の為のね」

 

 あたいの為……? それってどういう事なんだろ?

 

「指揮官、お疲れ様」

 

「お疲れ様、UMP45」

 

 そんな事を考えている内に45は指揮官に話しかけていた。 指揮官も45に声をかけられ、何時もの様な優しい笑みを浮かべている。

 

「何の仕事をしているの?」

 

「ん、UMP40の射撃プログラムの見直しをしています。 また、電脳の容量アップの申請が如何にかならないかの検討も同時作業中だね」

 

「ふーん‥…それ、40には言ってあるの?」

 

「いいえ、内緒に……あの娘も私に隠れて訓練しているのは、知られたくないからだろうから……今の所、私は何も伝えるつもりは無いよ。 プログラムが完成したら、45から渡して欲しいかな」

 

「それで良いの? 40に指揮官の気持ちは伝わらないかも知れないけど」

 

「ん~……まあ、ほら 彼女は私の事を信じるって言ってくれたじゃないか。 なら私も彼女を信じるしかないんだけどさ……今は戦えなくても、練習や訓練を続ければ何時かは……とね。 今のあの娘は焦っている、私がいくら声を掛けても気遣われているとしか感じないだろう……だから、すまないけど45。 あの娘を気にかけて欲しい」

 

「……言われなくても、そうするわ」

 

 良かった と、安心したように笑みを浮かべる彼に、あたいはどういう表情を浮かべれば良いか分からなかった。 ただ自分が思っている以上にあたいは心配され、想われているのだと言う事だけは良く分かった。

 

「……この指揮官は、本物なのかい?」

 

「いいえ、指揮官が使っているパソコンの情報体よ。 だから彼が行っている仕事の内容を彼の姿を借りた装置が話しているだけ……でもね、だからこそ打算や嘘が無い。 彼の本心が見える所よ」

 

「どうして、指揮官はこうまで優しいのかな?」

 

「ん~……どうなんだろ、それは私にも分からないわ。 裏があると思ったんだけど……彼、素でああ見たいなのよね~……だからさ、焦らなくて良いのよ。 40は40のペースで歩けば良いの、彼はそれを応援してくれる」

 

 あたいのペースで……本当に大丈夫だろうか? あたいは甘えていないだろうか? 不安に思い、情報体である指揮官を見る……彼はただ微笑みながらあたいの頭を少し撫でてくれた。

 

「頑張っている事は知っているよ、UMP40。 だから無理だけはしない様に……困った事があったら頼って、何度もいう様で悪いけど、君は今独りではないのだから」

 

 ね? と、彼はやはり少し困った様に笑っていた。 あたいは視界が揺らぎ、溢れそうになるモノを食い止めるので精一杯だった。

 

「どうかな、気分転換になった?」

 

「……うん、ありがとう45」

 

 ニッ と笑う。 そういえばこの頃は落ち込んでばかりだったような気もする……それに45も気付いていたのだろうか? 姉妹機だからか、最初にあった時以来気付かない様に指揮官と謀って色々と手を回してくれている様だ。

 

 ……余裕が出来たら、一度ちゃんと話してみようかな……雑談や、任務の話はした事はあるがそういえば身の上話などはした事が無い。

 

「それじゃあ、帰ろうか……また来たくなったら言ってくれれば良いよ」

 

 45が手を差し出してくるのでその手を取る……情報体の彼はまた執務机に座り、書類の整理へと戻ろうとしていた。 あたいが見ている事に気付くと、手をヒラヒラと振ってくれる……そして言葉に出さず唇を動かす。

 

 また、不安になったらおいで……もう来ない事を祈るけれども。

 

 ……ありがとう、でももう大丈夫だよ。 指揮官の事、もっと理解出来る様になるからさ。

 

 その日から、UMP45を誘って執務室へと頻繁に出入りするUMP40の姿が見受けられる様になったと言われているが……それはまた別の話。

 




次はFNCの予定です……が、仕事が修羅場確定なので更新速度が落ちると思われます……気長にお待ちください。
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