とある指揮官と戦術人形達   作:Siranui

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 暑い……沈む……海に還りたい……雷鳴に魂は還るのか……


SPAS-12 ふわふわ護衛

「ん~……やっぱり指揮官の管轄区! 商業も治安も一定の数値以上を維持しているお陰で流通が安定しているから食料の質が高いね!」

 

「あ、あはは……お褒めにあずかり光栄……って所かな?」

 

「ああ……基地内部の食事も美味しいけど、やっぱり民間のご飯は味がジャンク風で濃い……」

 

 両手にその辺りで購入した揚げ物や串物を手に、恍惚とした表情で美味しそうに料理を頬張っていく彼女……SG型戦術人形 SPAS-12 は本日、グリフィン管轄区を視察に向かう私の護衛として随伴したはずなのだが……武器や盾と言った武装は手放して居ないものの、食品を次から次へと購入しては頬張っていく様は食べ歩きに着ている様である。

 

「あっ、指揮官指揮官! 次はあのお店で良いですか!?」

 

「……良いよ、街頭警備の状況も確認できるし商店の状況も見れるから問題は無いからね……」

 

 許可を出すと、えへへ……と微笑みを浮かべながら駆け足で露天へと駆け寄り、売り子をしている男性へと商品を注文する。 どうやらその店はかき氷を取り扱っている様で何を注文したのだか山盛りのかき氷に練乳と小豆、そこに缶詰の果物を乗せた物が差し出される。

 

 貧民街ではこれ一杯で1週間は暮らせる代金がしそうだが……まあ、彼女も戦術人形。 ちゃんと金銭管理や体調管理はしっかりしている……筈だ。 毎度あり~ と売り子の男性はニコニコとした表情を浮かべている……SPASは良い稼ぎ相手だったのだろう。

 

 スプーンを手に ん~!! と感嘆の声を上げる彼女に、私はもう何も言うまい……と心に決めたのだ。 まあ、視察の仕事はこなせるのだから問題は無い とそう思うしかない。 それに民間へお金を落としている事は事実なのだ……それが何処から出ていようが金は金だ。 それで糧を得る民間人が居るのならば文句は出てこないであろう。

 

 

 

 管轄区の視察 と言っても千差万別であり、普段であればこの様に歩いて視察する事は少なく、実際に見て回るとしても自動車で該当区域を一周する等が主流である。 また、市街地も大型化すれば細かい所までに目が届かない為、市街地にて指揮官の代理担当官が配備されており、担当官に任せ報告書が定期的にあげられてくるのだが、彼は書類だけで確認するだけでなく、自分の目で見てみたいとするタイプの指揮官であった。

 

 さて、管轄区と言えども治安状況は決して良いとは言えない。 一度崩壊した物が再建されるには膨大な時間がかかるのだ……旧世界でいう日本の様に、護身用の武器も持たずにフラフラ歩き回る事は中央区域……上流階級の限られた人に許される特権であり、それ以下の区域は中央から離れる程治安も悪化していく。

 

 この事から、中流階級の民間人をいかに安心出来る様に囲い込むか、安心して働ける環境を作り出せるかが管理区を担当する指揮官達が頭を悩ませる事であった。 安全な土地には人が集まり、人が集まれば必要な物資を運ぶ流通・それを売り出す商業・銀行、そして資金が集まる。

 

 それを管理・守護すると言う事は莫大な税収を生む事に直結するので、グリフィンの上層部も推奨している事である。 現実としては鉄血の侵攻や人間同士のイデオロギーの違いによる内部抗争によって上手くいかないのだが……蛇の道は蛇と言う様に、ヘリアンさんよりそれらの対処は404小隊に任せれば良い という指示が出ていた。

 

 ただし対処方法や内容は決して聞いてはならない という条件があるのだが……彼はそれを忠実に守っていたのだ。 それ故に未だに彼女達はここに居るのかも知れないし、治安は一定の値を維持できているのかもしれない。 全てを知る必要は今の彼に必要な事では無いのだ。

 

「はあっ……満足です」

 

「……一体その体の何処にあれだけの食料が入るんだろうね」

 

 ポンポン と軽くお腹を叩き満足そうに笑顔を浮かべている彼女に対し、苦笑を浮かべながら自動車が待機している駐車場へと向かい歩いていく……露店が立ち並ぶ中央通りを抜けてゆくのだが、SPAS-12はその中でも私との距離を一定に保ちながら歩いてゆく。

 

 SPAS-12が行きたがった露天等がルート上だった事もあったから視察事態は順調に終わり、後は基地に戻るだけとなったが買い物の時間と重なってしまったらしく人通りが多くなってしまった。

 

「指揮官、この町は良い所ですね」

 

「……そうだね、人は笑顔だし治安も良いみたいだ。 商店も色々な種類が出ている……少しだけ余裕がある所だ」

 

「それを育て、守る一翼を貴方は担っているんですよ? 誇っても良い事です」

 

「私の力だけでは無いよ、君達の力を借りて、他の職員の力を借りて……ようやくさ。 だから誇るなら君達こそ誇って欲しいかな」

 

 突然良い所ですね と話しかけてきたSPASは相変わらず笑顔であった。 ニコニコと笑いながら私に近づき……突如としてネクタイを引き顔を下げさせる。

 

「ふふふっ、ありがとうございます……でも、貴方が居てこそ私達が居られるのです。 ですから、貴方はもう少し自分が重要人物であると言う事を自覚してくださいね?」

 

 顔を近づけ、耳元で囁く様に呟いた彼女から更に力を入れられ抱き寄せられる。 と同時に背後で金属が擦れる甲高い音に続き、金属と金属が衝突するような音が響く……っ、撃たれた? こんな市街地で??

 

「大丈夫ですよ? 私は貴方の堅牢な盾ですから……だから安心してその身を委ねて」

 

 カンッカンッカンッ! と連続して甲高い音が背後から聞こえる。 銃撃されている……恐らくハンドガン、至近距離……悲鳴と怒声に人が慌てて走り去る音に紛れて銃声が響く。 SPASは自分の分身でもあるSGを相手に向け接近される事を牽制しているだけで射撃をする事が出来ない。

 

 相手が人間であるからという事は、銃撃されている事により対人攻撃禁止プログラムの思考ロックは外されているが、周囲に民間人が多すぎて散弾を撃つ事が出来ない。 万が一でも民間人への誤射が想定されてしまう為に攻撃許可が出せないのだ。

 

「人形遣いが!」

 

「人である誇りを捨て、人モドキに媚びを売る裏切り者め!!」

 

「ん~‥…それ、私達に言われても困るよね。 鉄血か、はてまた暴走した人形によって何かを失ったとかは知らないけど……関係のない私達に八つ当たりされてもね」

 

 彼女が動かないのは、最初に撃たれた狙撃を警戒しているのか、はてまた動くことにより相手の銃撃が周辺に散る事によって民間人へ被害が出る事を想定して動けないのか……ただSPASは相手に軽口を叩ける程度には落ち着いている事が私を妙に安心させた.

 

「人形にいくら撃ち込んだ所で不意打ちでもなければハンドガンで致命傷を与える事は難しいのに……そんな事も分からないのかな? ううん、それすら分からなくなるくらい恨み、辛みがあるのかな?」

 

 可哀そう……そう呟いた声が妙に頭に残った。 それは……どういう意味で呟かれた言葉だったのだろうか? パラタタタッ!! と先ほどから撃たれていたハンドガンと違う射撃音に続き、男性の悲鳴が上がる。

 

 ブーツがアスファルトを叩く軽快な音が近づいて来るが、その足音は非常に速い……人間では無いだろう。

 

「指揮官!」

 

「SPAS-12、指揮官は無事!?」

 

「無事よ、ただあそこの尖塔を潰してくれない? 狙撃兵がさっきから狙っていて動けないの」

 

「スモーク! 榴弾投射!!」

 

 ポンッ と軽い音とひゅるひゅると風をきる音に続いて爆発音。 更に投げられたグレネードから白い煙が噴き出し周囲を囲っていく……これで遠くからの狙撃はほぼ不可能になるだろう。

 

「……謝罪は後回しにするわ。 裏をかかれるなんて私らしく無い……今回は助かったよ」

 

「大丈夫よ、売店で襲撃しようとか人込みに乗じようとか色々と奴等も考える様になってきたよね……大丈夫?」

 

「少し光を浴び過ぎたかも知れないわ……これじゃ誰かさんを笑えない。 もう一度洗い出してくるから、指揮官をお願いできる?」

 

「了解、そっちも気を付けてね」

 

 足音が離れて行くのを確認し、更に少し歩いてからSPASは私を放してくれた……恐らく話していた彼女達を見せない様に配慮したのかもしれない。

 

「指揮官、もう大丈夫ですよ」

 

「ん……すまない、ありがとうSPAS-12」

 

「お礼は別に構わないよ、私は私の仕事を果たしただけだし」

 

 あははっ、と笑う彼女。 肩の部分に装備された装甲に傷がついたりしているが怪我はなさそうである……何を言うべきなのだろうか? 油断していた事を謝れば良いのか? それとも傷つけてしまった事? または……

 

 ぐううっ……

 

「……あはは、動いたらお腹すいちゃった」

 

「ぷっ、あはは! そうだね、とりあえず帰ってご飯にしようか」

 

 奢りで良いんですよね? と期待した瞳でこちらを見上げるSPASに苦笑しながら頷く。

夕暮れが世界を包み込む中、私とSPASの影が長く路上に伸びていた……

 

 

 




救援イベントが開催されております。 とりあえず最低限必要だと思う2-4緊急の戦術人形は確保出来ましたので、後はのんびり頑張っていきます……

 次の予定? 今度こそUMP9で……
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