とある指揮官と戦術人形達   作:Siranui

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 ドルフロなのに戦闘描写ないやんけ! と言う事がありましたが描写が難しいのです。
銃撃戦上手に書ける人凄いですよね・・・・・・精進しましょう。


Vector 駒と兵

「なんの意味も無い……全く、雑魚ばかり多いわね」

「哨戒部隊です、これに苦戦していたら訓練を1からやり直さないといけないですよ」

 

 崩壊した市街地、グリフィンと鉄血の緩衝地帯にて始まった遭遇戦はとりあえずグリフィン側に軍配が上がった様だ。

弾倉を交換しながら吐き捨てる様に呟くVectorに、この分隊長であるFAMASは生真面目に答えた。

瓦礫の山、コンクリートジャングルを形成するこの地域はその特性上、不意遭遇による近接戦闘が良く発生していた。

故に銃身の短く、取り回しの良いSMGを扱える人形が先頭を切り、それにAR・HG等の人形が続き、

最後にMG・SRの支援人形というのがこの部隊での体形となっていた。

 

『ダネルNTW-20、現時点で敵は見当たらないわ……移動する?』

「了解、もう少し待機してて下さい。 まだ先の索敵が終わってません」

『MG5、こちらは装填完了した。 移動許可があれば移動したい。 こっちからでは通りの射線が確保出来ない』

「許可します、射撃地点は任せるけど離れすぎないようにして下さい」

『了解している』

 

 狙撃地点という物は余り多いものではない。

高所から無防備な相手を一撃で葬れる優位は、一度放棄したら取り戻すのには相当時間がかかる。

また室内を移動する為、長物である対物狙撃銃は人形が扱っているとは言え移動速度は落ちる。

急いで移動し、構造物にぶつけて銃身に少しでも歪みが生じたら悲惨な事になる。

MGも種類によるが、大きな火力を生かす為に基本的には地面に固定しなければいけない。

そうしなければ大きすぎる反動を抑えきれず、弾幕を張るでなく弾を空中に無駄撃ちする になってしまう。

また、固定した銃座は簡単に移動する事は難しい上狙撃兵の格好の的である。

それでも今回、MG5を連れてきたのは制圧射撃を仕掛け、敵の身動きを封じ込めた所をNTW-20が狙撃し数を減らす。

頭上からの対物狙撃ライフルは、盾を装備した装甲鉄血人形の装甲を容易く打ち貫く。

防御を崩した所に、VectorとFAMAS、C96が突撃し制圧する。

一人一人の役割が分散し、何事に対してもとりあえず対処可能な編成を指揮官は好んで採用していた。

 

「さて、次の区画が最後よね」

「そうですね、しかし道は一本道で更に正面は百貨店らしき4階建てのビル。

 両脇は商店街だったのか二階建ての建物がずっと並んでいます。 突撃は難しいですね」

「NTW-20からの支援は?」

「MG5が到着したら移動して貰います、あの場所では射角的に一部しか支援できません」

「しかし、時間的余裕はあまりありませんよ? とりあえず索敵だけでも行っておいた方が良くないですか?」

 

 現在時刻は既に15時を過ぎている。

夜間用のヘリもあるが、昼間に撤収するより危険度は確実に上回る。

FAMASもそれは分かっているのだが、安全に移動する為にはこうして相互支援しながら進むしかない。

その苦悩を汲み取ったか、Vectorは提言する。

 

「私に任せてくれれば良い、索敵くらいなら可能だよ」

「許可出来ません、瓦礫と平原じゃ走り方に差がありすぎますし、ルートも限られます」

 

 いくらSMG型の人形は足が速く設計されているとはいえ、それでも限界はある。

人型であると言う事もある、確かに不整地適正はあるだろうがそれは歩いている場合であって決して走れるという事では無い。

 

「やるしか無いじゃないか、どちらにしろこのままじゃ進まないだろう?」

「しかし危険です」

「……じれったいな、どちらにしろ行くぞ」

 

 静止する間もなく、瓦礫の散乱する道路に突入していくVector。

丁度ビルと私達の中間、廃棄された車両の傍を通り過ぎようとした時……大きい銃声が鳴り響いた。

 

 

 

「狙撃兵! 状況報告!」

 

 FAMASも身近な遮蔽に背を預け、道路を覗こうとするが自身の遮蔽物が着弾により削られる。

良い腕です、相手の狙撃手はこの路地に大体の射撃ポイントを設定しているのかもしれない。

 

「C96、Vectorさんは道中央部に倒れ込んでいます! 撃たれていますが、直撃は右足関節部のみかと……」

『MG5、移動は完了したが頭を出せない! 狙撃手の排除を要請する!!』

『ダネルNTW-20、敵狙撃手は視界内に非ず。 あの正面デパートだろうがこちらからは見えない。

 移動許可を求める……なるべく急ぐけど、かなり辛いと思うわ』

「NTW-20、即時移動許可。 Vectorを援護できる位置へ行って」

『了解、最善は尽くす』

 

 さて……どうした物だろうか。

MG5を射線がVectorを支援できる位置に移動させた事により、狙撃兵からも射線が通ると考えられる。

支援射撃をしたら最後、場所を特定され額に穴が開くことになるかもしれない。

また狙撃兵から射程距離外だとしても、敵が突撃してきた場合押し留められない可能性もある。

 

「FAMASさん、敵の機械達が集まり始めました。 突撃してくるかもしれません」

「ちっ!」

 

 C96からの報告は更に負担をかける。

最悪を予測すればするほど深みにはまる……NTW-20はまだ移動中、敵は押し寄せてくる、MG5の支援は期待出来ない。

エラー表記が増える中、通信機からの呼び出しに意識を引き戻される……指揮官だ。

 

『FAMAS、状況は確認しました。 転倒した際に通信機が損傷したのか、Vectorと通信が繋がりません。

 ですから部隊長である貴女に繋ぎました』

「申し訳ありません、彼女の行動を諫められませんでした」

『気にしないで下さい、実験とは言え戦術人形に指揮官からのサポート無しに全てを任せるのは無茶です』

「ありがとうございます、それでVectorは……」

 

 私が心配しているのはVectorの事だ、止められなかったとは言え見捨てる事はしたく無い。

彼の指揮下、ずっと戦い続けてきたがこういった場面に陥る事は始めての事だった。

グリフィンの規約から言えば、破損し戦闘力を無くした人形は見捨てる事を推奨している。

その戦術人形を助ける為に、部隊員全てを危険に晒しては本末転倒である と言う事だ。

人間ではない、使い捨てても資源さえあればいくらでも量産できる駒 それが戦術人形。

それは理解できる……だが、理解している筈なのに、微かに表示されるエラーは何なのだろうか?

 

『その事で相談です、支援部隊を出撃させますから現状の戦線を維持して下さい。 側面より奇襲させます』

「……はい、感謝致します。 指揮官」

『それは全員無事帰って来てから聞ける言葉です、幸運を』

 

 幸運か……大丈夫、この指揮官は私達を見捨てる事はない。

それが知れただけでも十分幸運だ。

 

「C96、支援して下さい。 私はVectorの位置まで前進します」

「で、でも支援と言っても私の射程では届きませんが……」

「いえ、拳銃ではなくても支援は出来ます。 特殊装備とは使い方次第 です」

 

 

 

「くそっ……ドジを踏んだ」

 

 痛覚を遮断し、何とか近くの瓦礫に這いずり盾としたは良いが右足は現状使い物にならないだろう。

簡易的にチェックしただけでも、要修理とエラー表記が即座に帰ってくる。

転倒した際に銃だけは手放さなかったのは幸いだったが、どちらにしろもうここから動けない。

狙撃からは身を隠せるだろうが、突撃してくる鉄血の車両型や人形等には回避する術がない。

 

「通信機も……壊れてるか、FAMASの奴等下がれると良いんだけど」

 

 瓦礫の陰から相手側を見てみると、ビルの正面に人形や車両型が集まっているのが見える……

1体でも多く敵を道連れにするしかないな そう覚悟を決めた時だ。

FAMAS達の方向より、しゅぽん という軽い音と、しばらくすると真上が明るくなる。

 

「いけいけいけいけいけいけ~~!!!」

 

 C96が叫ぶのと同時に石ころを蹴り、何かが走ってくる音……まさか

 

「よしっ! 合流に成功!! 生きてますねVector」

「FAMAS……あんた何やってんだよ、部隊長が見捨てるべき人形助けに来て」

 

 車両の陰に背中を押し付け、息を整えるFAMAS。

嬉しい という以前に何で来たのか という疑問しか出てこない。

使えなくなった道具は捨てられるのは運命だというのに。

 

「指揮官からお願いされましたので、ここを維持して欲しいと! そうすれば増援を送ってくれるそうです。

 まあもう少し地獄に付き合って頂きますよ」

「……はあ、見捨てるって手は無かったの?」

「ありません、指揮官はそれを望んで居なかった」

 

 ニッ と笑うFAMASに最早何を言った所で無駄だと悟る。

仕方ない、こうなったらもうこいつは梃子でも動かない……なら、生き残るしかない。

 

「すまないが、引っ張ってそこの壁に座らせてくれ……ここじゃ狙撃される」

「了解、やっとやる気になりましたか」

「部隊長を戦死させる趣味は無い、それが自分の失態でなんて屈辱だ」

 

 初弾を装填し、腕の動きを確認する。

 

『C96より部隊長、敵突撃隊形を取りました! 射程に入り次第支援します!!』

「さて、パーティーの始まりよ」

「途中で離脱しないように」

 

 FAMASも私に合わせてくれる。

 

「上等」

 

 手の甲をぶつけ、お互いの健闘を祈る。

……さて、早めに来てよ援護部隊。

 

 

 

 

『まあ、要点は大体理解した……詳細な報告書は後程提出してくれ』

 

 了解しました、と答えるとヘリアンさんは通信を終え画面が暗転する。

詳細な報告書か……M4A1の様な特別性の人形でなくても、部隊指揮を取りつつ戦闘が出来るか?

という実験は残念ながら失敗した。

簡易的な報告書は先ほど提出したが、部隊長であったFAMASの演算機能に大量の負荷をかけてしまった。

あの状態が続けば、ほどなくエラーが多発して自閉モードに陥るだろう。

要するに機能を守る為に負荷から強制シャットダウンされる と言う事だ。

 

「さて、お待たせVector」

「……」

 

 執務室に据え付けられた応接用の椅子に座ったVectorに声をかけるが、難しい顔をして反応をしない。

足の方は既に修理が済んでおり、整備班からの報告では歩行には問題が無いという見解だ。

作戦が完了し撤収してきた彼女達は即座に整備班による修理を受け、FAMASには報告書の提出をお願いしたが

他の部隊員には休息を指示していたのだ。

が、Vectorはここに来た。 難しそうな顔をして……

何か言いたげであったが、とりあえずヘリアンさんへ通信しなければならなかった為、応接室で待たせていたのだが……

まあ良い、話がしたいのは私もそうだったのだから。

適当に湯気の立つカップを机に置くと、ようやく気付いたのか彼女が反応を返した。

 

「……これは?」

「とりあえず飲みなさい」

 

 黒い液体にほのかに香る甘い匂い……ココアだ。

甘く温かい物は人をリラックスさせる……彼女は人形だけど同じ効果は期待できるだろう。

 

「甘い物は貴重品だろうに、勿体ないんじゃないか?」

「必要経費であれば構わないので…‥それに、私も飲んでいますしね」

 

 ズズッ と一口自分のを飲み様子を伺うが、カップをじっと見たまま動かない。

 

「毒とかは入っていないよ、何なら交換するかい?」

「……そんな事考えて無いよ」

「それは良かった、部下にそんな事を考えられたら私は立場が無いしね」

 

 そっとカップを包むように持ち、ふうふうと息を吹きかけている。

……猫舌だったかな? まあ一息付くまでは待っていよう。

 

 

「で、何で助けたの?」

 

 甘く温かいココアを飲んだ時の少女の様な柔らかい表情は直ぐに潜め、何時もの冷静な彼女が私に問う。

何で助けたのか という問いは逆に私を困惑させる。

 

「助けられたから」

「ふざけないで!!」

「ふざけてなど居ない」

 

 ガタンッ! と机を叩き立ち上がるVectorに私は真っ直ぐに瞳を見つめ返す。

何故怒っているのか、私にはそれが分からない。

だからこそ話さなければならない、この齟齬は今是正しなければ後々重要な間違いを引き起こす。

 

「見捨てるべきでは無いと判断した、援軍を出せば助けられると確信した。 だからFAMASに前線の維持を相談し、耐えてくれとお願いした」

「費用対効果が割に合わないでしょう!? 私たった一人助ける為にいくら資源を使ったんだ!」

「たかがそんな物、また集めれば良い物だろう。 それで兵が救えるなら私はそうする」

「私は道具だ! あんた達人間が使う武器だ!! 話す事も感情も疑似的に作られたプログラムに過ぎない、兵士という個では無い!!」

 

 うん、ここが決定的な違いだ。

Vectorは自身を武器として定義しており、私は彼女達を兵士として見ている。

 

「必死に否定しないで貰いたいな、何時もの冷静さはどこに行ったのか」

「っ……!! 貴方が変な事を言うからでしょう……っ!」

「変な事は言って無いよVector……はっきりと言わせて貰うと君は兵士だ、物言わぬ駒ではない」

 

 机の下からチェス盤を取りだし、駒を1個存在を示す様に軽く横に振る。

 

「君達はこれではない」

 

 

 

「じゃあ、どうしろってのよ……」

 

 暫くの沈黙の後、絞り出すような声でVectorは呟いた。

 

「ん~……それは君に探して欲しいんだけどなあ……折角意識を持って、人の体を持ったんだから。

 好きな事すれば良いと思うけど」

「戦う以外、何にも考えて来なかったのよ……今更どうしろってのよ」

 

 Vectorの顔を見る。

武器として、物として人に使われ評価される事しか存在意義を見出せなかった彼女は大きく揺らいでいる。

ただ私からしてみれば、そんな彼女はやはり武器と言う物ではなく一つの個体、人間とほぼほぼ変わらないんじゃないかと思っていた。

 

「……まあ、安心してVector」

 

 こういう時は冗談か何かで重い空気を払ってあげた方が良いだろう。

 

「この戦争が終わって、君が何処にも行く場所が無かったり、何かを見つけられなくても私の隣なら空いてるだろうから来ると良いさ。

 それまでに料理とかその辺りを学んでおいてくれるとありがたいけどね」

 

 アッハハハハハ! と笑い飛ばしてみるも、Vectorは笑ってはくれなかった。

むしろ思案顔で手を顎に当て、何かを考えている様な……

失敗したかなあ……と言うかこれセクハラかな? と、どう冗談だと打ち明けようか悩んでいると服の袖を引かれる。

足音も気配もしなかった筈だが、Vectorは私の隣に膝立ちの状態で服の袖を引いていた。

 

「指揮官……それは、本当か?」

 

 ……あれ? これは冗談だと言える状況じゃないぞ?

 




 ゲームのNPC部隊ですら、助けられないと分かっていても全滅するのは辛いです。
能力的にこっちの部隊が強いから下がって欲しいなあ・・・・・・とすら思うほどに。

 火力で圧倒して、敵に攻撃をさせない様な部隊を組みたがるのは犠牲を出したくないから という意識が強い。 故にMGは強い(小並感)
敵の被害は最大限に、味方の被害は最小限に これ、基本だと思いますけど?(某蒼い秋桜盟主話)

 Vectorにはクーデレを感じる・・・
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