瞼に朝日が差し込む……そうか、もう朝になったか。
微睡の中、自分の意識が覚醒していくのを感じる。
うっすらと目を開け、枕元の時計を確認すると起床時間少し前くらいでありもう慣れたものだな と苦笑する。
既に猛暑だった夏は過ぎ、山頂が白い雪を頂く時期になりつつある。
室温もそれに伴い低くなり、昨今は肌寒いと感じる時期になってきたのだが……何だろうか、何故か布団の中が妙に温かい。
自分の体温が残っているのか? とも思ったが妙にこんもりと……いや、はっきり言おう『布団の中に何かが居る』
ゆっくりと布団をまくり上げてゆくと金色の髪に……猫耳? の少女が丸まっていた。
「すうっ……すうっ……」
穏やかな寝息に、規則正しい寝息が聞こえてくる。
……試しに頭を軽く撫でてみようか。
サラサラとした、肌触りの良い髪に触れ軽く撫でてみると、寝ている少女……G41の表情が嬉しそうに和らぐ。
ふむ……うん、確信した 夢じゃないなこれ。
「指揮官、起きてる?」
コンコンッ と私室のドアがノックされる。
やましい事をした訳では無いが、その音に心臓が飛び跳ねる。
何か声をかけなければ! と思うのだが、口から出てくるのは浅い呼吸音だけで自身の口とは思えないほど重い。
「ん? 開いているのか……よし、失礼するよ」
結局、声をかける事が出来ないまま開かれる扉。
太陽の光を受け輝く銀色の髪、金色の瞳……Vectorだ。
部屋を少し見まわし、まだ私が布団の上に居ると気づくと少し口元が緩む。
「起きて居たのか、なら返事くらい……」
と、言いかけて目が見開かれる。
恐らく私の布団がもう一人入っていると確信できる程こんもりとしているからだろう。
「お、落ち着いてくれVector……その、話せば分k」
「問答無用!!」
まあ、最初からちゃんと説明していなければそうなるな。
両手を上げ、降伏の意思を示すも問答無用の様だ。
ああ、そういえば昔もそんな事言って撃たれた要人が居たかな……そう考えながら私の意識は闇に墜ちた。
「鍵が開いていて、寝ぼけて布団の中に入ってしまった か」
ヒリヒリと痛む頬に氷を当てながら目の前に立つ少女、G41から報告を受ける。
既に制服に着替え執務室に場所を移し、正面に立つ3人……G41、Vector、FAMASがそれぞれ別々の表情で見ている。
勘違いしやすい状況とは言え、Vectorは殴ってしまった事に後ろめたいのか私を直接見る事はなく、チラチラとこちらを伺っている。
G41も自分が原因で指揮官が殴られたと言う事を自覚しているらしく、頭部に生えている? 猫耳もしょんぼりと垂れてしまっている。
FAMASは今日の副官であり、事態を聞きつけ私室へと駆けつけてくれたらしい。
生真面目な彼女の事から、気絶している私の介抱から事態の把握・収拾を図ってくれたようだ。
「ごめんなさい……」
「ああ、もう謝らなくて良いよG41、私の不注意がいけないのだから」
私室の鍵を閉め忘れるなんて自分も間抜けである。
確か締めたと思っていたのだが……Vectorも朝開いていると言っていたのだから間違いないだろう。
「ふん、そうならそうと言いなさいよね……全く、紛らわしいんだから」
「Vector、貴女が言わなければならない事は他にあると思うのですが?」
「うっ……いや、だってあれは……」
「…………」
自分でも悪いとは思っているのだろうが、Vectorは素直には慣れない娘だ。
FAMASもそれは分かっているのだろうが、それはそれこれはこれ である。
戦場で相棒として戦い抜いた戦友であろうと、現在のFAMASは副官モードである。
しどろもどろに言い訳を探すVectorに、彼女は無言で薄っすら笑みを浮かべるだけだ。
うん、あれ怒ってるね。 笑みは浮かべているが目は笑っていない。
「……ごめん、指揮官」
「気にしないで良いよVector、行動的には間違えていないのだから。
FAMASもこれは油断した私が悪いんだ、これ以上咎める必要は無いよ」
「はっ、指揮官がそう仰るのでしたら……しかし、鍵の閉め忘れと言う些細な事ですがこれは重大な問題です」
「そうだね、指揮官は私達と違って眠ってしまったら無防備だ。 寝室前に護衛を付ける事も必要かもしれない」
「あの……味方の基地でそこまでする必要ある?」
「「あります!!」」
「あ、はい」
バン! と机を叩かれて二人から迫られれば私は頷く他無い。
何時の間にか取り出したボードタイプの端末を手に、会議を始める二人……
気遣ってくれるのは嬉しいが、何もそこまで過激にならなくても良いだろう。
銃だって一般兵並には撃てるし筈だし、護身術だって教わったのだから問題ないとは言える……と思う。
「そうじゃないのよ、ご主人様」
「そうじゃない とは?」
ひょこ といつの間にか隣に居たG41が膝立ちの状態で私の左手を取る。
「vectorもFAMASも、ご主人様の事が本当に大切なのよ。
……勿論、私もそうよ? だから少しでも危険な目にあって欲しくないの。
護身術を学んでいたって、兵士みたいに戦えたってご主人様は人間なの。
怪我もするし、万が一当たり所が悪かったら死んでしまうの……それは、嫌なのよ」
壊れ物を扱うように私の手を撫でるG41。
その手から感じる温かみは、人間のそれとほとんど変わらないと思う。
見た目も、触り心地も変わらないけど……彼女達は人形だ。
「……ありがとう」
ワシャワシャとG41の頭を撫でる。
嬉しそうに目を細める彼女を見ていると、自分も微笑を浮かべているのが分かる。
子供を持つとこういう気持ちになれるのだろうか? 最も私には妻は愚かお付き合いのある女性すら居ないが。
「そうだ、今日みたいに私が指揮官に添い寝しながら護衛してあげれば良いんじゃないかしら?」
「うん……うん?」
G41は名案だ! と言わんばかりに頭を左手にグリグリを押し付けてくる。
もっと撫でて! と言いたいのだろう……とりあえずそのまま頭を撫でまわしておく。
添い寝で護衛なんて出来るのだろうか、それ以前に今日みたいな事が起きないとは限らないんじゃないか?
等と問題点が多すぎると思うのだが……ガチャン という金属が落ちる音で思考の渦から現実に引き戻される。
音がした方を振り向くと、vectorとFAMASがこちらを驚いた表情で見ていた。
音は端末が床に落ちた音だったのだろう、FAMAS達の足元に落ちたボードタイプの端末が存在を主張する様にチカチカと光っている。
「し、指揮官……まさかその提案を受ける訳ではありませんよね?」
「え? いやまあ……」
「ご主人様は嫌……ですか?」
「え、いや、そう言う訳では」
FAMASの声に否定を告げようとするが、G41から弱弱しく上目遣いに見つめられる。
その瞳が僅かに水気を帯びていれば、否定する事は難しいだろう。
「指揮官?」
「ご主人様?」
「えっと……あっち!!」
指さした方向にはもちろん何もない。
三人が指さした方向を見ている内に執務室から飛び出し全力で逃げる。
答えが出ない? ならば逆に考えるんだ、答えなくても良いやって考えるんだ。
後ろから追いかけてくる声に、どうしてこうなったんだ と自問自答しながら逃げだしていた。
後日、結局の所添い寝は指揮官の許可を得れば不承不承だが良いという事になり、
彼の予定表に昼寝(人形達の付き添い)という業務が増えた事はまた別の話である。
子犬には癒されたい……癒されたくない?
寝ていると大体布団に潜り込んできたり、膝の上に座りたがったりするんですよね。
日記形式の指揮官の独白や、各人形の整備記録・評価記録なども書きたいな…とは思うのですが、仕事が忙しくて時間が……
マイペース更新ですが、のんびりとお待ちください。