もし、女神官ちゃんが○○の神を信仰していたら 作:ネイムレス
とにかく今は、限界まで投下を続けるのみ!
これは、女神官が信仰する神がマッスルの神だった場合の世界のお話。その続き。
何時だったかに助け出す事が出来た新人冒険者一党達。その頭目らしき青年剣士が小鬼殺しと女神官の前に現れ、沈痛な面持ちで相談を持ち掛けて来ていた。
何でも、筋肉的に助け出された後に、何やら深刻な悩みが出来たのだそうだ。
「女武闘家だけ元に戻らないんです……」
非常に珍しい事だが、小鬼殺しが飲んでいたお茶を噴き出した。
「ゴブリンスレイヤーさん!? だ、大丈夫ですか?」
「……問題ない。続けてくれ」
心配して覗き込んで来る女神官を手で遮り、小鬼殺しは青年剣士に話の続きを促す。とにもかくにも、情報収集は大事なのだから。
「俺や魔法使いの奴は暫くしたら元に戻れたんだけど、アイツだけなぜか時間が経っても体が元に戻らなくて……。それどころか、本人も『格闘技にはこの体は便利かもしれない』とか言い始めちまって……。俺……、俺っ! 一体どうすればいいのか全然わからないんです!!」
青年剣士の心は憔悴しきっていた。こんなんじゃ故郷の親御さんに顔向けできないと、涙すら浮かべている。確かに田舎者小鬼と見紛う程の体躯になった娘の姿など、親には見せられないだろう。
というか、そもそもこの青年が悩んでいるのは隣の女神官が原因だと言うのに、何故か相談先は完全に小鬼殺しになっていた。若干の理不尽さを感じなくもないが、助けを求めるならば女神官は確かに不適格なのだろう。
何せ、筋肉モリモリになる事を無上の喜びとしているのだから。
「何が問題なのかは全く分かりませんが、それはおそらくマッスルの神様のお戯れでしょう。恐らくは彼女の事を気に入ってしまって、奇跡の加護を与え続けているのだと思われます。大丈夫、元に戻す方法はありますよ」
それを聞いた青年剣士は顔を綻ばせる。それに対して女神官は柔らかく微笑んで、ただしと付け加える。
「ただし、蜥蜴僧侶さんの協力が得られればの話ですが。他にも方法はありますが、一番手っ取り早いのはあの人に頼む事だと思います」
それについては問題ないだろうと小鬼殺しは思い浮かべた。なにせ、彼の僧侶には目がくらんでしまう大好物があるのだから。
実際、蜥蜴僧侶は牧場のチーズを報酬としてちらつかせたら、ホイホイと協力を申し出てくれた。そして適当な空き地に、天にそびえる筋肉を誇示する女武闘家を呼び出し、早速その力を貸してもらう事となる。
「禽竜(イワナ)の祖たる角にして爪よ、四足、二足、地に立ち駆けよ」
触媒をばら撒き祝詞を唱えれば、現れ出でるは蜥蜴僧侶お得意の竜牙兵。その姿たるや、正に骨だけになった蜥蜴人そのものである。
その姿を見た女武闘家は、その逞しい筋肉をぶるりと震わせ身悶えた。
「ほ、ホネホネ人間だああああああああああっ!?」
大げさに驚愕して見せる女武闘家のその背後に、うっすらと眼鏡に七三分けにしたムキムキの何かが現れ、そして驚愕のままに霧散して消える。マッチョはホネホネに弱い。その法則のままに、憑りついていたマッスルの神は天に帰ってしまった様だ。
「も、戻った! ほんとに戻った! やったああああっ!!」
その言葉と共に、すっかり元のサイズに戻った女武闘家に青年剣士が飛び付いた。女魔法使いも二人に寄り添い、眼鏡の裏に大粒の涙を浮かべている。当の武闘家本人は何が何やらと困惑するばかり。どうやら、憑りつかれていた間の記憶が飛んでいる様だ。
「すみません、私の信仰する神様がご迷惑をおかけしてしまいました。お詫びにこちらを進呈いたします」
このまま大団円で終るかと思われた雰囲気の中、女神官が新人一党に近寄って何やら飲み物の入ったグラスを手渡していた。祝杯替わりなのだろうか。中々に気が利いていると、新人達はそのグラスを受け取り乾杯して飲み干してしまう。
「……今のは何だ?」
「はいっ、今の飲み物は私がいろいろそれっぽいのを混ぜて調合した、強い体を作るスペシャルなお薬が配合された健康ドリンクです!!」
小鬼殺しが恐る恐る尋ねてみれば、女神官は輝かしい笑顔でそう宣う。程なくして、新人冒険者一党は全員、白目を剥いて全身を痙攣させながら声を揃えて絶叫した。
「「「おおおおおおオオオオ、オクレ兄さんっっっ!!!」」」
あ、これやばい奴だ。そう確信した瞬間、小鬼殺しと蜥蜴僧侶はダッシュで逃げ出した。
【真実】「最近迷走していたんで、原点に立ち返ってみました。ところでふと思ったんだけど、俺らってなんでこんな実験繰り返してるんだっけ?」
【幻想】「君がそれを言っちゃうの!? 全部君が発端じゃない!? 返してよ! あの可愛かった純粋無垢な女神官ちゃんを返してよ!!」
【地母神】「(ノ∀`)ハハハハ/ヽ/ヽ/ヽ/ヽ・・・・・・,、,、,、」
【真実】「さ、気持ちも新たに。次、いってみよう」
フッ……、とうとう限界みてぇだ……(ガクッ