もし、女神官ちゃんが○○の神を信仰していたら   作:ネイムレス

11 / 16
今回はシリアス風味。
面白いかどうかはちょっと自信がありません。


転生神

 牧場に小鬼の大群が攻めて来る。

 その言葉を小鬼殺しが素直に告げて、依頼として大量の冒険者達が防衛線の為に集まっていた。ギルドからも小鬼一匹につき金貨が一枚もたらされると言う事もあって、冒険者達は異様な熱気に包まれている。

 

「諸君、我々の任務は何だ!? 殲滅だ、一騎残らずの殲滅だ! 成すべきことはただ一つ、地獄を作れ!!」

 

 防衛の為の準備も済み、気の早い連中が集まって逸っている所で、その先頭に立って大演説をぶちあげている存在がいた。そう、小鬼殺しの良く知る女神官だ。

 

「もう二度とゴブリンによって、家族を失う悲しみを作らないために! そして、神の正義を成す為に! 主を信じる、善良なる心に誓って! 神の、ご加護が在らん事を!!」

 

 いや、彼女はあんなにも激情家であっただろうか。そもそも、人前に出て大声があげられる様な人柄であっただろうか。気のせいかもしれないが、青かったはずの彼女の瞳が今は金色に輝いて見えていた。

 

 そんな風に熱狂する冒険者達の一団を遠巻きに見ていた小鬼殺しの下へ、すっかりと戦支度を整えた妖精弓手がやって来る。彼女もまた仲間達の盛り上がりを見て顔を綻ばせ、そのまま小鬼殺しに声を掛けて来た。

 

「大盛況みたいじゃないの、あの娘の演説。相変わらず、奇跡を使うと凄い変わりっぷりね」

「…………そうか?」

 

 どうやら女神官の豹変は何時もの事らしい。そう言われると何だかそんなような気もしてきた。小鬼殺しが感じている違和感は、きっと別卓の出来事なのだろう。

 

「オルクボルグの方は、もう準備は良いの?」

「ああ……。…………?」

 

 気が付けば周りの騒音が止んでいた。それだけではない。あれだけ熱狂していた冒険者達も、そして隣で語り掛けてきていた妖精弓手もその動きを止めている。それどころか、小鬼殺しの体すら思う通りに動きはしない。

 まるで、時が止まったかの様に。

 

「『戯れと言えども、わざわざ出向いて奇跡を与えるなど、つまらぬ些事だと思ってはいたが……。なかなかどうして、面白味の有る人間が居るではないか』」

 

 静寂の中で声がした。それは、すぐ隣の妖精弓手の声で、そして遠くに居る冒険者達の誰かの声で。あるいは、近くの家畜の口までもを借りて、小鬼殺しに語り掛けて来る物が居た。

 

「『賽の目を貴ぶ世界で、それに抗う者。貴様もやはり、信仰心の欠片も無い不心得者であろう。神の意志に抗う事こそがすでに不信の表れ。だが、神の存在自体を信じていないわけでも無い。むしろ、存在を認識した上で挑戦しているかのようにも見える。その一点だけは、面白くある』」

 

 その存在は、数多の口でたった一つの意志を語る。それはまるで、珍しいおもちゃを見付けたかのように楽しげであった。

 

「…………何者だ?」

「『存在X、等と呼ぶ輩も居る。今はただの来訪者に過ぎない。だからこそ、貴様の存在を面白く思える。小娘に奇跡を与えるよりも、貴様に恩寵を与えて見せた方が余程有意義であろう』」

 

 たとえ相手がどんな存在だとしても、小鬼殺しが興味を持つのはただ一つ。故に、訊ねる事があるとすれば一つしかない。

 

「ゴブリンではないのか……?」

「『…………。成る程、この世界の神が手を焼くだけはある。愚かな子羊には道を示してやらねばならんのだろうが、ここは管轄外の世界。せいぜいその矜持がどこまで続くのか、見守って居てやろうではないか』」

 

 そして、世界に再び時が戻った。

 

「――って聞いてるの、オルクボルグ!? どうしたのよ、ボーっとしちゃって……」

 

 喧噪の中で隣の妖精弓手ががなり立て、それから心配げに覗き込んで来る。兜越しに視線を向ければ、怪訝そうな顔が、一秒二秒と経つ内に徐々に赤らんで行く。その変化が気になって更に視線は注がれる。

 

「な、何かあったの? 何時もよりだいぶ様子がおかしいわよ? それとも私の顔に、気になる所でもある?」

 

 気恥ずかしさを頭を振って吹き飛ばし、妖精弓手は無理矢理に言葉を繋ぐ。長い耳をピコピコ揺らす彼女の顔を真っ直ぐに見つめながら、小鬼殺しはこれに簡潔に応えた。

 

「ゴブリンでは無かった……」

「…………は?」

 

 何かあったのかをいつも通りの調子で報告した小鬼殺しは、壮絶な笑みを浮かべた妖精弓手に後頭部を蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。

 

「さあ、戦友諸君! 戦争の時間だ!!」

 

 こちらも壮絶な笑みを浮かべた女神官が、遠くの方で演説を締めくくる。

 さて、今回の一番被害者は誰であろうか。それこそは、神のみぞ知ると言う物であろう。

 

 

 【真実】「彼女は、女神官の皮を被った化け物です」

 【幻想】「っていうか、あの神様勝手に納得して勝手に帰っちゃったんですけど。つかみどころ無さ過ぎて、何考えてるかさっぱりわからないよ。地母神ちゃんも、女神官ちゃんがあんな風になっちゃってショック受けてない?」

【地母神】「( ´ー`)イガイト……、アリカモ……」

 【真実】「!? つ、次、いってみよう」




本当にシリアスだと思った?
残念、大体何時も通りですよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。