もし、女神官ちゃんが○○の神を信仰していたら 作:ネイムレス
今回の文章の頭の悪さは過去最強かもしれません。
覚悟を決めてお楽しみください。
百の小鬼を引き連れて牧場を襲わんとした小鬼王。今、その企みは数多の冒険者達によって打ち砕かれ、王は軍勢を囮に一人敗走していた。
そして、その王の前に立ちはだかるは小鬼殺し。既に返り血に塗れた彼は言う、お前の故郷は既に無いと。
そして始まった戦いは、実に一方的な物だった。
何の事は無い、小鬼殺しが弱かったのだ。小鬼王が振るう豪奢な斧を危なげに躱し、中途半端な長さの剣で脇腹を突くも致命傷には至らない。闘う内に力の差がはっきりと表れて行く。
盾は砕かれ剣は折れて、地に這いつくばる小鬼殺しの頭を王は何度も踏みつける。
そんな時だった。『それ』が空から降りて来たのは。
「手こずっているようだな、手を貸そう」
ゴー、ズシャッって感じで舞い降りたのは、小鬼殺しが良く知る女神官であった。姿形は確かにそうだ。いや、一つだけ記憶と違う部分がある。何故か今の彼女は、その首に犬に付ける様な革製の首輪を付けていた。首輪付きだ。
愛らしい容姿の彼女の出現に、小鬼王は獲物が向こうからやって来たと喜んでいる。
だが、小鬼殺しはその姿はともかく、言動を見聞きして激しく後悔していた。なぜ自分は、彼女の奇跡に頼る様な作戦を立案してしまったのだろうかと。
「メインシステム、戦闘モードを起動します」
短く告げた女神官の周囲に、陽炎が立ち上り緑の粒子がばら撒かれる。その粒子はやがて彼女の周囲で集まり、透明度の有る球体へと凝縮した。プライマ――もとい、聖壁の奇跡である。
奇跡を発動させたその姿を見る小鬼殺しは、思わず呻くように呟いてしまう。
「コジマは……、まずい……」
流石に目の前で不可思議な現象を起こされた小鬼王は、獲物では無く邪魔者として彼女を排そうと戦斧を振り上げた。小鬼殺しの盾を容易く切り裂いたこの得物、華奢な少女が当たれば形が残るかすら怪しい物だ。
それに対峙する女神官はただ無言。その様子を恐れと見た小鬼王は、戸惑う事無く脳天へ向けて戦斧を振り下ろす。
そして次に小鬼王が見た物は、己の戦斧が地面に食い込む姿と、先程と寸分たがわぬ姿で少し離れて位置に移動した女神官の姿。
目前の嗜虐に酔っていた小鬼王には回避の動作すら見えなかったが、離れた位置に居た小鬼殺しには見えていた。女神官の体が慣性を無視して、右、後ろ、左と連続で移動したのを。
緑の粒子を炎の様に吹かして、瞬時に身体を押し上げ移動したのだ。音にすると、『ドッ、ドッ、ドヒャア!』って感じに。
「匪賊には、誇りも無いのか。生き易いものだな、羨ましいよ」
囁きと共に後方に滑る様に女神官は移動し、手にした錫杖の先を小鬼王へと向ける。そして、杖の先から『カァオ!カァオ!』と二条の光弾が放たれる。もちろん奇跡の聖光である。
「殺しているんだ、殺されもするさ。恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ」
放たれた光弾は視認すらも困難な速度で飛翔し、小鬼王の戦斧と足を撃ち抜く。二つの月が浮かぶ夜空に、薄汚い悲鳴が高々と響き渡った。
「あいむしんかー、とぅーとぅーとぅーとぅとぅー……」
足を撃たれ這いつくばって逃げる小鬼王を、女神官は鼻歌混じりに追いかけて行く。可愛らしい声なのに、なぜか大量殺人者を想起させられる歌声である。
だが、その歩みを遮るモノが在った。森の中の茂みを掻き分けて、わらわらと武装した小鬼どもが現れる。完全に想定外の事態だ。イレギュラーである。
「GOBURURU(あなた方にはここで果てて頂きます。理由はおわかりですね?)」
「GOBUGOBU(どうせ確信犯なんだろう? 話しても仕方ない)」
「GOBURU!(所詮は人、小鬼の言葉も解さんだろう)」
「GROOOO!(殺しすぎる……お前らは……)」
生憎と小鬼語は解らないが、なんとなくピンチなんだろうと言う事は女神官にも理解は出来た。その表情に初めて戦慄が走り、わなわなと体を震わせる。
「馬鹿な……、こんなことは……。……とでも、言うと思ったかい? この程度、想定の範囲内だよぉ!!」
完全に小鬼達をおちょくっている。狂気的な笑みを浮かべ、女神官は急激に加速して小鬼達の只中へと飛び込んで行く。『キュゥゥン、ドヒャアアアアン!!』と実にオーバーに。
「ハラショー!」
まばらに放たれる小鬼の粗雑な矢などは、全てプラ――聖壁で防がれる。そしてそのまま敵の中心部で着地し、次いで球体の中に緑の粒子が凝縮され、直後には閃光を伴い半球状の衝撃波となって解き放たれた。これぞ正に強襲防壁。
暴虐な嵐の様な緑の爆散に飲み込まれ、小鬼王もその部下達も全て纏めて消滅してしまった。
後に残るのは、ぽかーんと見守る小鬼殺しと緑の粒子の残滓ばかりだ。そんな小鬼殺しに振り向いて、女神官はにっこりと微笑みを見せる。
「昔話をしてあげる。世界が破滅に向かっていた頃の話よ」
「……いや、いらん。しなくていい」
「神様は人間を救いたいと思っていた。だから、手を差し伸べた」
小鬼殺しの断りの言葉は無視されました。言葉は不要か……。言葉など既に意味をなさない。
「でも、その度に人間の中から邪魔者が現れた。神様の作ろうとする秩序を、壊してしまう者。神様は困惑した。人間は救われる事を望んでいないのか、って……」
「……知らん。そんな事より牧場の方の様子を――」
「神様は間違えてる。世界を破滅させるのは、人間自身だ!!――あいたぁ!?」
ここに来て、話を全く聞いていない女神官に、小鬼殺しは無言で近づき脳天にチョップを一撃。可愛らしい悲鳴と共に頭の上の帽子が落ちて、その下からひょっこりと猫耳が現れた。首輪付きの獣だ。
「しっかりしろ。もう終わった……」
「あっ私……、またトランス状態になっていたのですね……」
この卓では、彼女の豹変は日常茶飯事である。それの戻し方もすでに手慣れたものだ。
意識を取り戻して素に戻った女神官を引き連れて、小鬼殺しは一党の仲間達と冒険者達、そして幼馴染の牛飼娘の様子を見に牧場へと戻って行った。
【真実】「はい、今回はみんな大好きアーマードコアからです。世に平穏のあらん事を」
【幻想】「世界の管理者って……。え、これって神様なの? 神様って扱いで良いの? なにこれ……、ふざけてるの……?」
【地母神】「(´・ω・`)イカレテルヨ、オマエ」
【真実】「それの何が悪い。次、行ってみよう」
続きはもちろん有りません。