▽なぁ、聞いたか?。
▽雨のときだけ現れる魔女の話。
▼聞いたよ。今度は町外れの工場で不良グループ一つ潰したって。
▼不良グループ潰してる魔女、中学生くらいの女の子らしいぜ。
▽制服姿の写真撮ったバカがいるらしい↓
▽ー画像を受信しましたー
☆
大きなため息が口から漏れる。
「どうした、
「なんでもないです。続けてください」
私はなんでここにいるんだろう、と感じていた。
女の子らしくないボサボサの黒髪を後ろで纏め、教科書を見るが何が書いてあるかよくわからない。
中学生三年。教室の雰囲気が変わり、受験モードの人が増える。
私もその一人になるはずだった人。もう生きることに疲れていた。
放課後、雨が降りだした。
「なぁなぁ、聞いたかあの話。雨の魔女の話よ」
「あぁ、今度は○○中学の不良グループ全員やられたらきいぜ」
またこの話だ。
雨の魔女。雨の日の夜にだけ現れ、歳関係なく悪事を働くものを死なない程度に絞める女。
私はため息を付きながら、傘を指す。
(またあの話か・・・。)
雨は少しずつ強くなり、靴は水浸しになっていた。
「うへぇ、気持ち悪・・・」
「君、雨の魔女を知ってるか?」
突然後ろから声をかけてくる誰か。
私は声の方向へ振り向く。
黒いスーツに黒い髪の男。不気味なのは雨の降るなか、傘を指さず、脇に黒い革の鞄を挟んでいるところだ。
「何?私に何か用?傘も指さずに・・・」
「私はオルガだ。教師としてとある専門学校に勤務している。」
「学校の先生が何?」
「質問しただろう?知らないなら私は退く。もう一度聞く。雨の魔女を知っているか?」
「・・・知らない。帰って」
男は首を横に振ると、黒い鞄から小さな瓶を取り出した。中には銀色の液体が見える。
「そうか・・・。嘘はいけないな、柊 海都の一人娘、柊 青空さん」
「!」
こいつ、私を知ってる!?
私はすぐに男から距離を取る。
「雨の魔女。ここら周辺中学生の噂話の鉄板みたいじゃないか。雨の日に正体不明の力で悪いものをこらしめる正義のヒーロー。まるで魔法使いのような姿から、巷では雨の魔女と言われている。全て情報は聞いている。」
「じゃあ、私が柊 海都の娘というのは?」
「能力者研究委員会の能力者訓練担当長の柊 海都君とは、昔通っていた学校の仲間でね。私は指揮をしていた。」
話ながら、男は小さな瓶の中の銀の液体を手の上に出す。
「君も両親と同じく、他人が使えない能力が使えるだろう?」
そして銀の液体は固体となり槍のような形になった。
「彼の娘の力、試してみたくてね」
男は銀の槍を、私目掛けて投げた。
私は男の攻撃を避けたが、足が滑って近くの茂みに突撃する。
(これはヤバい・・・。逃げないと)
私は人混みを探す。この男に常識があれば、人混みで騒ぎを起こすようなことはしないだろう。
「君は進学先を決めてないと聞いた。この時期なら大半が決めて、合格のために勉強をしているだろう。そこで、私は進学の話を持ってきた。」
こいつ、この状況で何の話をしてるの?
私は路地裏に入り、その先の人混みを探す。
「君のその能力を生かせる学校だ。シード異能力専門学校、能力者や能力エネルギーによる技術を研究するものが集まる学校だ。」
ここらへんの道は知ってるが、いつものとどこか違う。
「行き止まり!?すぐそこに大通りがあるのに!」
「それは私の能力で生み出した壁だ。私はあくまでも君を勧誘しに来ただけで、捕まえに来たわけではない。父親には言ってある。」
「パパに!?」
男は槍を液体に戻すと鞄から学校のパンフレットらしきものを渡す。
「一週間後もう一度来る。そのときに答えは聞く。さらばだ」
男は壁も液体に変え、私の横を通って大通りに消えていった。
「パパ・・・私はこの能力が嫌いなんだ」
「どうしたの!びちょびちょじゃない!」
ママは奥からタオルを持ってきて私に渡す。
「・・・シャワー、浴びてくる」
「青空・・・」
私のこの能力は小学生の頃に知った。
プールの授業で、クラスメイトが私を水のなかでからかってきた。息継ぎのできない金づちな私の水着を引っ張り、プールの底へ沈めようとしてきた。
そのとき、私の能力は発現した。
水はその子を掴み、プールの底へ叩きつけた。
ケガはなかったが、あのときから私は水を操ることができるようになった。
触った水を操る能力。それが私の
「着替えおいたよー。」
「ママ、今日、オルガって人にあった。」
「オルガ・・・青空も会ったんだ」
「私は・・・どうすればいい?」
「青空。パパもママもあなたと同じ能力者。この能力で何人も人を傷つけた。この能力のせいで人が目の前で死んだのを見た。この能力で仲間を助けたときもあった。能力をどう使うかは青空しだい。オルガさんの学校に行くのも行かないのも青空しだい。」
「・・・」
「・・・夕御飯できてるから出たら食べちゃって」
洗面所を出ていく足音が聞こえ、ママの人影は薄くなっていった。
「どうすればいいんだろう・・・。」
私は悩んだとき、家の近くの神社に行く。この神社はいつも悩みを解決してくれる。
神様頼り、運頼りなところはあるけど、悩みは解決する。
「神様、私は今、とある学校に勧誘されています。その学校は私のこの異能力を生かすことができるところと言っています。でも、私はもうこの能力を使いたくありません。どうすればいいですか?」
手のひらを合わせ、目を閉じて頭を下げる。
神様が私の悩みを聞いたのか、風が巻き上がり、周りの草木が音を出す。
「答えは聞こえないよね・・・」
目を開けると、風にのって飛んで来たのか、一枚の紙が私の足元に置かれていた。
「これって・・・」
手のひらくらいの大きさ。表面を見るとやはり写真だった。
それは十年前に家族で撮った写真だった。ランドセルを背負ってはしゃぐ小学生なりたての私の姿があった。
しかし、
「この人は・・・」
そこにはあの頃の私には見えていなかった一人の女性の姿があった。
『少女よ。運命はそこへ行けと言っている。その先に君の生きる価値が必ず生まれるだろう』
「今の声って・・・まさか」
私は高く生えた雑草を神社の裏へとまわる。
そこにいたのは、10年前に見た一匹の狐だった。
「いた・・・」
『あなたはまだ、その能力の大切さを知らない。それを知ることこそがあなたの道なのです。』
狐はそういい、木の影に隠れてしまう。
あとを追ったが木の後ろには何もいなかった。
「生きる価値か・・・」
「青空!・・・ここにいた!」
ママが神社前の長い階段を上がってきた。私の前で立ち止まると深呼吸をした。
「学校から来てないって連絡来たから、ここかなって思って来たの・・・なんで」
「私、決めた」
「・・・え?」
「私、入学する!この能力の大切さを知るために!」
ここから彼女の成長が始まる。
一人の
★
「柊さん、今週末娘さんがシード能専に入学するみたいですね。うちの娘も入学するみたいですが、旅立ちの日に来るなって言われましてね。柊さんは行かないんですか?」
「俺はその日、大事な会議があってな。・・・ケンよ、隠れてでも娘の門出くらいは見に行ってやれ。」
「やっぱりですかね・・・。では午後もお願いします」
「おう!」
ケンは食堂から出ていく。俺はスマホの待ち受けに映る中学生の青空の顔を見る。
「あれから三年か・・・」
俺は窓の外を見る。外は気持ちよすぎるくらいの快晴だった。
「この青空のような広い心を持って明るく育って欲しい。だから