いよいよ学校へ出発した青空。
船のなかで会ったのは同級生となる正反対の性格を持つ女能力者、スズカ アンリだった。
そして突然放送される試験内容。
二人は今、高校初めての試験を受けるのだった。
船内は広い。王冠を探し始めた青空とスズカは開始早々、スズカは青空の持ち物について疑問を持ち始めた。
「アンタ、それ持っていくのか?」
「これ?」
スズカは私の足元で水を足にして移動する、ウォーターサーバーのタンクを指差す。
「あなたの氷はどうやってできてるのかわからないけど、私の水は有限なの。タンクに入れとけば漏れて無くなることはないし、これ10キロくらいあるから」
「なんかタコみたいで気持ち悪いんだよなぁ・・・」
船内を探索し始めてから一時間が経ち、私達はまた広いエントランスに戻ってきた。
私の歩幅に合わせず、どんどん先へ行くスズカのせいで、私はすでに息を切らしていた。
「ちょっと待って・・・休憩させて・・・」
「だらしないなぁ。これから試験官と戦うんだぜ、シャキッとしろよ!」
スズカは私の後ろに回って背中を押す。
「つーか、その水に乗って移動すればいいじゃん」
「・・・そうね。その手があった」
「それするなら、もちろんアタシもそれに乗せてくれるんだよね?」
「見て、あれ。」
「話変えんな!・・・お?」
劇場のようなホール。私たちの目に入ってきたのはスポットライトに当てられた一個の王冠と一人の試験官らしき大男。その人は最初に荷物を運んでくれた人だった。
「やっと着いたか・・・さて、あの試験官をどうやって倒すかな?」
「重たい荷物を運んでくれたからあまり暴力沙汰にはなりたくないけど、仕方ないよね」
私たちは部屋へ足音をたてながら入っていく。試験官はすぐにこっちに気づいた。
「真正面カラ来ルトハ・・・」
「ちゃんとアンタを倒して王冠を盗もうっての、まぁ強奪ってやつ?」
「安心シロ。オマエ達ニ負ケルホド、オレハヨワクナイ」
男は王冠の飾られた台座の裏に置かれている大きな斧持ち、目の前でブンブンと振り始める。
「倒シテミロ、試験開始ダ!」
「言われなくてもッ!」
スズカは氷で剣を作ると、試験官向かって走っていく。
「ヌンッ!」
振り下ろされた斧を華麗に避けると、剣で試験官の頭を攻撃しようとする。しかし、もう片腕につけられたバックラーに跳ね返される。
「斧にバックラー。能力より武器で戦うスタイルか」
スズカは体勢を立て直すと、次は氷でロケットランチャーのような武器を作り、試験官に向けて放つ。
「コノ程度カッ!」
バックラーで氷の弾を弾く。弾は壁に当たって凍る。
「ッ!・・・何をボサッと見てるんだ!戦うんだろ!」
「わかってるっての!」
私は水を試験官の足下へ流す。さっきの氷の弾の威力からして、少しでも水が着弾点に流れていれば一気に凍るだろう。
「オマエ達ノ考エハオ見通シダ!」
試験官は斧を床に叩きつける。床には穴が開き、水がそこから下の階へ漏れ始める。
「足ヲ凍ラセル・・・随分ト幼稚ナ考エダナ。」
「さすがに通用しないか。だけど、その程度じゃ私の策は崩れない」
「何?」
「私の触れた水は、私の意のままに操れる。その穴から噴水のようにして吹き出すこともね!」
水は勢いよく穴から吹き出し、試験官の体に掛かる。もちろん顔にもかかったため、試験官は思わず目を閉じてしまう。
「今だ!」
「了解ッ!」
スズカは試験官の体に触れ、氷像のようにしてしまう。
「凍れ!そして砕けろ!」
「グァァァッ!」
試験官の表面を覆った氷は砕けて、氷の破片が試験官に刺さる。
「見事ダ・・・」
スズカは王冠を台座から取って頭にかぶる。
そして私に向かってピースする。
「どうだ!アタシ、かっこいいだろォ!」
「はいはい、かっこいいかっこいい。でも・・・」
一月分の成績を決めるテストがこんな簡単でいいのかと私は思う。私たちに力が無ければこの人に殺されてしまい、成績どころか入学すら無いものとなってしまうと考えればこれくらいは普通・・・いや、
「まだ終わりじゃない」
「柊さん、ご明察。試験はこれだけではありません。」
このホール、よく見ると空中ブランコや火の輪くぐりに使うような輪が浮いている。
「これは・・・サーカスホール!?」
「いかにも、ここはサーカスホールです」
声は上から。そこには空中ブランコに座って揺れるアイスの姿があった。
「ここでは第2試験をやっていただきます。アンリ様、あなたの被っている王冠は本物ではありません・・・」
話を聞いたスズカは頭の王冠を持つ。
「うぅぅ・・・離れない!」
王冠はびくともしない。
「それは私を倒すまで離れない王冠型時限爆弾!船か着くまで残り30分!さぁ、どうする?」
「ちょっと待って!まだ3時間も経ってないでしょ!」
「試験が結構早く終わってしまったので、最短ルートにして貰いました。さぁ、30分の間に私を倒さないと、試験は不合格どころかスズカさんの頭は、王冠と共に爆発しますよ?」
アイスは説明しながらも軽やかに空中ブランコを使って移動する。
どうすればいいんだ。このままではスズカは
「ソラ、どうする?」
「どうするって・・・」
水はまだ残ってるけど、あの動きのアイスに攻撃するのは厳しい。スズカも平静さを失っている。
どこかに勝機はあるはず・・・この船のなかに・・・
「船・・・!」
「ソラ、船がどうしたんだ?」
「何か思い付いたようですね・・・さぁ、私を倒せますか?」
「ふふっ・・・やっぱりダメみたいね、降参だわ」
「な!?」
「ソラ!何言ってるんだよ!アタシ、このままじゃ爆発しちゃうよ!」
「降参ですか・・・では、私はスズカさんが爆発するのをお茶でも飲んで待ってますかねぇ。」
アイスはブランコの上で紅茶を飲み始めた。
そのときだった。
船は大きく揺れ、アイスは焦ってブランコを掴む。
「なんですか!この揺れは!」
「なんですかね・・・もしかしたら、この船・・・」
沈没するかも。
私の作戦はバニラと戦ってるときに開いた穴に、水を流し込み、船底に穴を開けるというものだった。
船底の穴から入ってくる水は相当な量で、数秒で底に近いこのサーカスホールに到達した。壁や床、扉を破って現れた水の量に、アイスは驚いてブランコから落ちてしまう。
私はスズカの腕を掴むと、流れてきた水に触れ、水圧に強い水の壁を作り、流水から身を守る。
「お、溺れ、溺れる!し、死ぬ!」
アイスは必死に抵抗するが、流水の勢いに負けてしまう。
「どう?降参した?降参したと言えば助けてあげます。船も沈没はしません。言わなければ、このまま船は沈没して、あなたは海の藻屑ですかね」
「わ、わかりました!降参します!スズカさんの頭の爆弾を取ります!だから、助けてーーー!」
私も鬼じゃない。私はアイスを助けると、船底に開いた穴を防いだ。
「これで試験合格・・・かな?」
「試験合格です、おめでとうございます・・・。もう二度とこの役はしたくない・・・」
「ソラ、鬼だな!」
およそ30分後、船は港に着いた。
とても長いように感じているが、実際出発してから1日も経過していない。
「ようこそ!シードアイランドへ!ここはシード異能力専門学校を中心に町が広がる島となっております!」
アイスが着ていた服と同じ服を着た人がやってきた。この人も学校の先生なんだろうな。
「ソラ!着いたんだな!」
「疲れた・・・。で、寮はどこ?」
「はい、あちらです。荷物をお持ちしますね。」
「いえ、荷物は自分達で持ちます」
なんやかんやで夕方。夕食もあってからお腹も空いて、疲労で倒れそうだった。
「船のなかで少しは休めると思ったけど、あの案内人のせいで本当に30分で到着するし・・・全く休めなかった」
「寮に行けば休めるよ、きっと・・・」
スズカも疲れてるのか、船内よりテンションが低い。
10分も歩くと学校らしき建物が現れた。
「ご苦労様です。おや、そちらは入学生方ですか?」
警備員がこちらを見るとすぐにやってくる。
「明日からこの学校に入学する柊 青空さんとスズカ アンリさんです。」
「門を開けますので、少々お待ち下さい」
校門が開き、学校がくっきりと見え始める。パッと見た感じはただの学校なのだが、専門学校という限り、どこか違うのだろう。
「どうぞ、こちらへ」
ようやく始まった高校生活。
私達に待っていたのは、地獄のような日々とたくさんの能力者だった。