チームO女子部の古株、白銀と戦った青空とスズカ。
自分よりも強い相手と戦った二人はこの経験によって、この学校での目標を掲げあった。
起立!礼!
「お願いしまーす!」
初日は戦うだけだったから、これが入学して初めての授業。今日ももう一人のチームO女子部のメンバー、不動さんは来ていない。
「今日は俺の授業・・・と言いたいところだが、新人もいるし、どうやら俺の授業を苦行だと思っているヤツがいるみたいだし・・・なぁ?立葉」
「い、いやー、そんなこと・・・あるかも」
「そこで今日は紹介も兼ねて、優しい先生に来てもらったぞ。入って」
教室のドアが開いて、そこから一人の女性が入ってきた。黒く長い私とは真逆のサラサラした髪に眼鏡の白衣の似合う、まるで保健室の先生を具体化したような姿の女性。
「どうも、新人さん!私はリリー・クロノ!チームOの専属医師をやってます!よろしくお願いします!」
「ケガをしたら、すぐにリリー先生のところに行って診てもらえ。昔から俺はお世話になっている。」
「どんなケガでも私が治しますので、死なない程度に頑張って下さい!応援してます!」
リリー先生の紹介にクラスの先輩は拍手喝采。私達もつられて拍手をする。
「今日は能力者みんなが使っている、能力エネルギーと能力の種類について勉強します!もう授業受けてるって方は復習感覚で聞いてくださいね。」
「はーい!」
破壊のことでしか表情を変えない立葉さんが妙に笑顔で目を光らせている。それほどにオルガ監督の授業はつまらないのだろう。
「まず、皆さんは能力エネルギーをどこで作っているかわかってますよね?」
「心臓!」
「はい、立葉さん正解!能力者は能力を使うとき、心で能力エネルギーを作って外にエネルギーとして排出しています。能力エネルギーは蓄えるのも心が全てやっていますね。だから心に重い病気を抱えていると、能力者でも能力を使えなくなってしまいます。じゃあ、ここでスズカさんに質問。この中で、能力エネルギーの排出に支障が出るのは?」
①先輩や監督に怒られた。
②一目惚れ、好きな人ができた。
③風邪
スズカはいきなりの指命で焦って周りを見た後、下を見ながら指を三本立てる。
「新人さんには悪かったかな?これは全部正解。そもそも能力エネルギーの排出は心にストレスを抱えてるだけでも影響が出るの。緊張したとき、いつもの力が出ないときあるでしょ?あれと同じ。好きな人の前で空回りしちゃったりってのも、心には不可がかかってるから」
スズカは納得した反応を見せる。
「昔あった話だけどね、チームのなかで強かった男の子が同じチームの好きな女の子に告白してフラレちゃったの。そしてその後の戦闘で力を出しきれず、負けちゃった。この戦闘後に能力エネルギーを測定する機械で測ってみたら、その子はいつものおよそ三割しか出てなかったんだ」
「先生、質問!逆に成功してたらどうなってました?」
「うーん、絶好調で挑めたかも知れないし・・・逆に足が地に着かなくて力出なかったかも知れないし。要するに、能力者にとって心のケアは大事ってこと。私のところに来れば相談に乗るよ。医師はメンバーの心のケアも仕事だからね。」
この調子で時間が進み、一時間目終了のチャイムが鳴った。
能力エネルギーについてだけでこれだけの量。次の時間は移動教室で、エネルギーの発現についての授業だという。
「二階堂、時間いいか?」
教室の前のドアから二階堂さんを呼び出す声がする。私は教室の後ろのドアから顔を出した。
そこに立っていたのは少し目付きは悪いが、真面目そうな男子生徒だった。
「私に何か用ですか?」
「柊 青空という新入生を呼んで欲しい。」
え?
「私への用ではないんですね。わかりました、柊さん?」
二階堂さんは後ろで二人を覗き見る私を呼ぶ。
「は、はい?」
私がいることに気づいていたのか、すぐに私の方を見た。
「柊さん、彼は」
「待て。俺が言う。俺はナルカミ・ブルーロード。チームO男子部で副リーダーをやっている。」
「は、はぁ・・・」
そんな人が私に何の用なんだろう。まさか柊って名字なだけで敵視されてるとか。
「前回の戦闘訓練を観客席から見させて貰った。一年であれだけの手練れ。なかなかであった」
「は、はい、ありがとうございます。」
この前の授業見てたみたい。やはり白銀さんはただ者じゃないんだな・・・。
「そこでだ。」
「はい。」
「俺と・・・付き合ってくれ」
「・・・はい?」
その場が凍る。スズカが能力使ってるわけじゃない。
「付き合ってくれって・・・訓練にですか?」
「ち、違う。俺は・・・俺はお前のことが好きだ!」
私はその言葉にさらに困惑する。横で話を聞いていた二階堂さんは微笑んだまま、後ろに倒れ込む。
「リーダー!しっかりしてー!」
「リリーさん!リリーさんを呼んで!」
二階堂さんが倒れたことに他の先輩は慌てて、リリーさんを呼ぶ。
「えっと、どうしてそういうことに?」
「俺はこの学校に三年間在籍し、色々な場面で告白されたことがあった。だが、誰にもときめくことなく断っていた。しかし昨日、お前の戦闘姿を見て、心が震えた。」
「ようするに・・・一目惚れってことですか?」
「そういうことだ!わかってくれたか?」
全くわからない。15年間生きてきたけど、こんなこと経験してない・・・。確かに告白されたことはあるし、彼氏がいたこともある。だけど、 こんな会って早々、一目惚れで告白するようなバカ真面目な先輩を見たことがない。
「すみませんが、考えさせてくれま」
「おい!ソラに告白したのはお前か!?」
横槍を入れてきたのはスズカだった。お願い、ややこしいことにはしないで。
「誰だ?お前は」
「アタシはスズカ・アンリ!ソラのベストパートナーだ」
あなたとまだ会って数日しか経ってないでしょう・・・。なのに易々とベストパートナーって。
「ほう?ベストパートナーか、つまり恋人とでもいうか」
この人、バカ真面目じゃない。バカだ。
「そうとも言うな!なぁ?ソラ」
このバカ、何言い出してんの。もうやめて、それ以上面倒なことにしないで。
「よし!なら、勝負だ。お前と俺、勝った方が柊 青空のベストパートナーということになる。これでどうだ?」
「いいじゃないか、それで決まりだ。良いよな、ソラ?」
もうどうでもいいや・・・
突如、授業枠として入れられたナルカミさんとスズカによる特別戦闘訓練。この時間は能力エネルギーについての授業だったはずなのに・・・。
しかも、この二人の次にやる気あるのがこの授業枠の担当のはずだったリリー先生って・・・
「授業?この勝負の方が大事でしょう!」
リリー先生、本当に恋バナ好きだな・・・
戦場は昨日使ったジャングル、上に観客席もある。
何かチームO男子部の人で観客席たくさんだし・・・。
「まさか俺と勝負するとは良い度胸だ。褒めてやる」
「年下に負けても、泣きっ面で帰るんじゃねぇぞ」
きっとイベントで使うのであろうゴングが用意される。もちろん、鳴らすのはリリー先生だ。
「先に倒れた方の負け。ルールはそれだけの戦闘訓練!制限時間はこの授業が終わるまで(45分後)。それじゃあ、戦闘開始!」
戦闘開始のゴングが鳴り、リリー先生はすぐに戦場から退散する。
見た感じはチームO男子部の副リーダーということもあり、ナルカミさんの勝ちだろう。それに白銀さんを追い詰めたときも私がいてこそだった。スズカの勝ち目が薄いのは見てわかる。
「かかってこい!一年!」
「なら遠慮なく、喰らえッ!」
スズカは船で見せた氷のミサイルをナルカミさんに連続で撃ち込む。パッと見、数えるだけでも10発はあるだろう。
「来ますよ、ナルカミさんの能力、柊さんは見ててください」
二階堂さんの言葉に、私はナルカミさんを見る。
ナルカミさんは私の視線を感じたのか、チラッとこちらを見て頬を赤くする。
「はい?」
それが命取りだったのか、反応の遅れたナルカミさんは氷のミサイルに直撃する。
「・・・あれが、ナルカミさんの能力?」
「何してるんですか、あの人・・・」
二階堂さんは頭を抱える。観客席は目の前で起こったことに動揺を隠せていない。
煙のなかから、凍ったナルカミさんが見えたが、氷を割って何事も無かったかのように振る舞う。
「そ、その程度か?」
「直撃してたはず・・・」
スズカ、直撃してたから。普通に凍ってたから。
「次は俺からいくぞ・・・ハッ!」
ナルカミさんは気合いを入れた後、フィールドから姿を消す。
「消えた・・・?」
次の瞬間、スズカの後ろに現れ、スズカの背中に蹴り飛ばす。
「いったいどこから・・・」
「一年が、俺を超えることはできない。」