青空に一目惚れをしてしまったナルカミは、青空のところへ告白しにいく。もちろん、スズカが黙っておらず、勝負に勝った方が青空のベストパートナーだというルールで戦闘が始まった。
「この人・・・強い。」
スズカは全身で呼吸をしながら、目の前に立つナルカミさんを睨む。
早い動きに翻弄されたスズカは、ナルカミさんの前に手も足も出なかった。最初の攻撃以来、一度も攻撃を当てていない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「もう終わりか。最初の威勢はどうした?」
スズカは能力エネルギーの消費を抑え、これまでのミサイルや機関銃のような大きな武器は作らず、剣と盾といういかにもシンプルな武器を氷で作る。
「ソラは・・・渡さない!」
剣は空を割き、次の瞬間にはナルカミさんの拳がスズカの剣と盾を破壊していた。
「柊さんは気づいていると思うけど、彼の能力は光を操り、光のような速度で移動するという能力。スズカさんのような能力では到底倒さない、私の阿修羅ですら無理」
「そんな・・・」
「二階堂さん、なんで諦めるんですか・・・?」
倒れたスズカは立ち上がり、観客席で私のとなりにいる二階堂さんを見る。
「創造系能力の可能性は無限大!父が教えてくれた言葉!このスズカ、この体が動く限り、諦めることはない!」
「まだ立ち上がるか。あまり後輩をいたぶるのは嫌いだが、力の差を見せなければならないな」
緊張の瞬間。場内の空気が凍りつく。
ポタッ・・・
何かが私の鼻に落ちてくる。・・・水?
「雨が降ってきた?」
急に雨が降り始めた。いつの間にかスタジアムの天井部分に雨雲ができていた。
「このスタジアムの植物に水をあげるための機能でも作動したのか?」
「カレンの仕業ね」
「カレン?」
「言ってなかったか?不動 カレン、天気を操る力を持つスナイパー」
「この戦場に来てるなんて、意外」
雨降るなか、スズカは苦しそうな顔を解いて、ナルカミさんに笑みを見せた。
「なんだ?諦めたか?」
「いや、むしろアンタに勝てるチャンスを見出だしたのさ」
スズカは冷気を放つ。雨は凍りついて霰になる。
「これがお前の言うチャンスか?こんな霰ごときで」
「霰なんておまけだ!これをくらえ!」
スズカは貯めた冷気を地面に叩きつける。地面は凍結しながら、ナルカミさんの足下にまで侵食する。
「ナルカミさんの足が凍った!」
「う、動けない・・・。動け!」
「光速で動くやつも、足を止めてしまえば攻撃が当たる!」
氷はナルカミさんの足から体を這い、全身を覆っていた。
「アイス・ブレイカー!」
スズカは片手に氷の塊を纏うと、凍りついたナルカミさんを貫くように拳を振り抜いた。
氷が砕けると同時に壁に叩きつけられたナルカミさんは意識を失い、壁を背に倒れる。
「・・・なんてね。」
スズカは能力エネルギーの使いすぎか膝から崩れ落ちた。
「これは・・・引き分け?」
オルガ監督は二人の間に現れると、
「今回の戦闘は引き分けだ!」
そう言い、二人の前に紙を置いた。
「今回の件、お前らには反省文を書いてもらうぞ。授業の時間を無駄にしたことと、仲間同士で争ったことについてな。」
リリーさんは観客席から下りると、すぐにオルガ監督の
ところへ走っていく。
「待ってください、これは私が承認したことです。この二人には何も悪意はありません。」
「時間を無駄にしたことに関してはそれでいいとしよう。しかし、チーム男女に別れていても仲間同士で争ったことに代わりはない。二人はそのことについて反省するべきだ。」
数時間後、スズカは夕陽差し込む保健室のベッドの上で目が覚めた。寝相の悪いスズカも本当に疲れていたのか一切動かなかった。
「あれ?ここは?」
「やっと目が覚めた」
「ソラ。・・・勝負は!?」
スズカは起き上がり、私に勝負の行方を聞く。
「勝負は引き分け。ナルカミさんも違う場所で寝ているけど」
「引き分けだと・・・どうなる?」
「知らない・・・。今回はお預けってことかなー。」
「そうか」
スズカはまたベッドに横になり、窓から見える夕陽に向かって手のひらをかざした。
「あの雨がなかったら負けてた。」
「不動さんに感謝しないと・・・ね?」
「そうだ、俺に感謝しな」
保健室の出入り口の方から声が聞こえる。
スナイパーライフルを肩に担いだ男のような格好の女の人がいた。黒髪のショートヘアーに、黒に赤い線のジャージと黒いジーンズ。顔も男っぽかったが胸だけは女だった。
「どちら様?」
「俺は不動 カレン!チームO女子部のスナイパー。天気のことなら俺にお任せよォ!」
「本当に女子部ですか?」
「俺はこんな見た目だな女だ。胸触るか?」
「・・・いいです。」
スズカはすぐに起き上がると、不動さんのところへヨロヨロしながら歩いていく。
「まだ起き上がっちゃ・・・」
「今日はありがとうございました!もしも不動さんの助けがなかったらアタシは」
「いいんだ。俺はお前達の先輩としてやることをやっただけだ。あの戦場なら雨が降るなんてよくあることだしな」
不動さんは目の前でスナイパーライフルを崩して、左手に持っていたアタッシュケースの中にしまった。しかし銃弾一つだけは手に握っていた。
「これが俺の武器、ウェザーバレット。これに俺の能力エネルギーを入れることで能力が発現する。俺自身、雲を作るくらいの能力はあるが、銃弾を媒体とすることで能力は威力を増す。まぁ、この銃弾の数は有限だがな」
「それって不動さん作ですか?」
「これは依頼して作ってもらってる。チームO男子部監督にして、能力武器開発部の顧問であるアリサさんにな。」
「アリサ?」
「まぁ新入生ならまだ会ってないかもな。明日新しい銃弾を依頼する用があるんだ。・・・一緒にいくか?」
私はあまり行く気はなかったが、スズカは目を輝かせていた。
「行きます!行きたいです!」
「よし、いい返事だ!・・・そっちの彼女は?」
「・・・行きます」
「よし、決定だ。明日はみんなでアリサ監督のところに行くぞ。明日、寮の前で集合な」
こうして今日は終わった。スズカは今日の戦闘で一回り成長しただろう。
私も頑張らなきゃ。
★
俺は暗い部屋のベッドの上で目が覚めた。
「俺は・・・負けたのか」
「ナルカミさん?」
暗闇から車イスの音と監督の声がこちらに向かってくる。チームO男子部の副隊長が新入生に負けたとなれば、監督もほおっておけないだろう。
「監督、期待を裏切ってしまい、すみませんでした。」
「新入生が強いというのは、チームOの戦力増強と考えれば素晴らしいことです。しかし、あなたのプライドに傷ができてなければいいのですが」
「プライドですか・・・。」
監督は俺の横でパソコンで何かを打ち込む。そして俺に画面を見せた。
「これは・・・」
「彼女の父親、ケン アンリ。今は日本能力者研究会の能力者訓練支部担当監督の柊 海都の監督補佐をしている。しかし、彼女の本当の父親は違う」
「どういうことですか?」
「これは彼女や、あなたの想い人に話さないで欲しいけど、スズカ アンリは・・・
昔、蛍ノ島という異常気象が続いた島に捨てられ、ケンによって拾われた子供だ。
★
次の日、私とスズカは寮の前で不動さんが来るのを待つ。さっきから何回もスズカはあくびをするため、私も釣られてあくびが出てしまった。
「いやー、お待たせ。待った?」
不動さんは大きな紙を丸めて入れる黒い筒を肩にかけてやってきた。あのなかに設計図が入っているんだろうな。
「いえ、そんなに待ってませんよ。」
「お、そうか、ならいいんだ。・・・スズカはまだお疲れ気味かな?」
うつらうつらとしているスズカに不動さんは声をかける。
「そうですね、まだ眠いです」
「能力エネルギーをあそこまで出したんだ。それは疲れるだろうな。・・・じゃあ行こうか、チームO男子部の監督のところに!」
まだこのときの私は何も知らなかった。
両親から話されてなかったチームOの過去の話を、これから会う男子部の監督の正体を・・・。