はじまりの街を出て原始の草原へと移動するとすぐに青いイノシシと、人の頭ほどの大きさの黄色い蜂が目に入った。リンリによると街の出入口付近に出没するのはこの二種類の
「そういえば、みんなはどの武器をメインにするの?」
先頭の方を歩いていたリンリが振り返りながら足を止める。
「オレは斧だな!」
レオが背中に背負っていた簡素な斧を掴み前へと構える。
「言うと思った~…レオ、体格も良いし似合ってると思うよ~」
おぉ…普段大人しいモモがすぐ話に……いや、惚気かな?これ。
「だろっ!?斧自体が重い分威力もありそうだしな!そういうお前はどうするんだ?モモ」
やっぱ惚気だな、誰も割って入れないやこの二人の会話。
「私は~………槍にしようかなぁ~歩き疲れた時に杖にも出来そうだし~」
「「「はっ?杖!?」」」
「うんっ!杖!」
前言撤回。全員で話に割って入りツッコみを入れてしまいました……
「な、なるほどー!確かに槍って斧と同じくらいの長さはあるけど細いから軽いしね!色々便利かもね!…ね!」
リンリの苦しいフォローが入ったが当の本人はいつの間にか実体化させた槍を手に、こちらに背を向けて人のいないスペースを求めフラフラと移動していた。そのまま槍をバトンのようにくるくると回転させたりと楽しそうにしているのでそっとしておこう。…というか、回すの上手いな。実は槍の適性高いのでは…?
「んで、ハースは?」
「え?うーん……」
この手のゲームではいつも直剣を使っていたので、今回も立ち回りをなんとなく把握している直剣を選ぼうと思ったのだが…自分の体を動かして戦うこのゲームで果たしてそれに意味があるのか疑問だ。それに純粋に興味本意で他の武器を試してみたい気持ちもある。
「直…いや、細……うーーーん……」
「なんだよもうーー!!まぁ、そんな風になるんじゃないかと思ってたけどさぁ!」
俺のハッキリしない返事をリンリが勢いよく笑い飛ばす。
「コハルさんは?何にするかもう決めてたりする?」
未だメイン武器を決めかねている俺を尻目に、リンリはコハルさんへ駆け寄る。
「えーっと……私は…」
コハルさんは真剣そうな顔で自分のウィンドウを見つめている。そうだよね、やっぱ悩むよね…決めるのに時間かかるのは俺だけではなk
「細剣にします!この中では一番軽くて扱いやすそうなので!」
………うん、決めるのに時間かかるのは俺だけだね、うん。知ってた。シッテタヨ…
「なるほどね!じゃ一番簡単なリニアーから練習しよっか!」
そう言うとリンリは腰の細剣を抜き、コハルに何やら姿勢のレクチャーを始めた。ウィンドウを眺めていても何もはじまらないと思い、とりあえず俺は直剣を実体化させて持ってみることにした。現れた直剣の見た目は“ただの金属の板に柄がついたもの”に見えた。一応両刃の剣ぽく板の淵は細くなるように削られているようだったが。
「あんまりカッコよくないなぁ…までも、初期装備だからかな…」
そう呟きながら目の高さまで剣を持ち上げ、なんとなく辺りを見回す。するとモモがこちらへ走ってくるのが目に入った。
「わぁぁぁぁぁ~ぁぁぁ!?蜂が追いかけてくるよぉぉぉ~!?」
その後ろを蜂が結構なスピードで追って来ている。
「えぇぇ何したんだよ!?というかなんでこっちに来んだよ!?」
思わず叫んでしまったが、思いの外的確にツッコみをいれている気がする。
「槍を回してたら蜂に当たっちゃってぇぇぇ~そしたら怒ったみたい助けてぇえぇぇ刺されたくない~~!!」
刺され……?蜂自体が大きいので針というには太すぎるそれに対して刺すという表現は適しているのだろうか……えっと……いいや、スルーしよう今はそこじゃない。というかこんなときレオは何してんだよあいつ!!
「とりあえず!この世界では刺されても痛くないから大丈夫!槍で攻撃してみなよ!」
リンリが叫ぶ。案外スパルタな指示がとんだ気がするのだが気のせいだろうか
「ムリぃぃぃぃぃぃ~~~!!!!」
モモはそう叫びながらも着実に槍先の刃で蜂のHPを減らしはじめた。しかしその場で立ち止まってめちゃくちゃに槍を振っているだけなので蜂の攻撃もモモに全ヒットし、HPがじわりじわりと奪われてゆく。
「ちょっと加勢してくるね」
リンリとコハルさんに声をかけ、俺は直剣を握りモモの方へと一歩踏み出した…そのときだった。
「モモォォハースぅぅどいてくれぇえぇぇーーーーーー!!!」
叫び声と共に大きな刃が降ってきた。
「うわぁぁぁっ!?」
危ない……。大きな刃に見えたものは斧だった。どうやらレオは少し離れたところでイノシシ相手に斧を振り回していたのだが、手から斧がすっぽ抜けたらしい。そしてそれがモモと交戦中だった蜂に命中するというミラクルが起きたのだった。
「ナイスショット~!でも、危なかったね~…」
モモがホッとした表情で笑っている。良いのか…?これで…いや……えぇ………?少々呆れながらレオとモモを交互に眺めていると、後ろから更に呆れの色を濃くした声で話しかけられた。
「おいおい、オレよりひでぇんじゃねぇか?」
俺は少し驚いて振り返る。
「あなたは……」
声の主はリンリ達と合流する前、はじまりの街で迷子になっていた俺を助けてくれたクラインだった。
「よぉ! ダチには無事に会えたみてぇだな!ぶつかったよしみだ、おめぇらもキリト先生のバトル講習に参加しとけ! な!」
そう言うとクラインは明朗な笑顔を浮かべる。すると横から初めて見る青年が現れた。
「勝手なこと言うなよ……」
“キリト先生”と呼ばれた青年は、全体的に青みがかった黒色の髪をしていて前も後ろも男にしては長めだった。そのせいか、明るく活発そうなクラインと比べると少々大人しそうな印象を受ける。
「いいじゃねぇか みんなで盛り上がった方が楽しいだろう?」
きっかけは多少強引に思えたがキリトさんの指摘はとても的確で、コハルさんやクラインも含めて俺たち全員がスムーズにソードスキルを扱えるようになるまでにそう時間はかからなかった。
「みんな良い調子じゃないか、コツを掴んだらあとは反復のみだ」
心なしか、最初はあまり乗り気ではなさそうだったキリトさんも今は楽しんでくれているように見えた。
「うっし!オレも負けてらんねぇな、鍛えに鍛えまくってやるぜ!と言いてぇところだけど……そろそろメシ食わねぇとなんだよな、ピザの宅配指定してっからよ」
今日の昼飯がサンドイッチだけだったのを思い出し、ピザがすごく羨ましく思えた。というか、腹減った…
「ほんじゃ、おりゃここで落ちるわ マジサンキューなキリト!おめぇらも、これからよろしく頼むぜ」
「こっちこそ、よろしくな」
「はい!またよろしくお願いします」
「クライン、またね!」
「ありがとう!お疲れさま」
「またよろしく頼む!」
「またね~クライン氏~」
各々が返事を返す。するとメニューウィンドウを操作していたクラインが首をかしげた。
「………………あれっ?なんだこりゃ、ログアウトボタンがねぇよ」
「えっ?」
自分もメニュー画面を呼び出して確認するが、確かにログアウトボタンは見当たらない。
「うーんと……私のメニューにも出ないです」
そう言うと、コハルは俺に視線を向ける。
「俺も………みんなは?」
皆一様に首を振る。ログアウトボタンが表示された者は一人もいなかったようだ。
「今日はゲームサービス初日だかんな、こんなバグも出るだろ 今頃運営は半泣きかもなぁ」
クラインがいたずらっぽい笑顔で言った。
「そんな余裕かましてていいのかお前?ピザの宅配頼んであるとかいわなかったか」
キリトさん、俺も同じこと思った。
「ピザかぁ~良いなぁ~!」
「だよなぁ!オレも腹減った…」
「私もだけど今そこじゃないでしょモモ…レオ…」
………うん。リンリ、そこの夫婦のこと、任せたよ…
「冷めちゃいますね?」
「えっそこ?受け取りは?」
「あっ」
えぇまさかの…?コハルさんしっかりしてそうだと思ってたのにまさかの…?というか、俺まで釣られてピザ談義に加わってしまったじゃないか…。
「冷めたピッツァなんてネバらない納豆以下だぜ……」
ネバらない納豆って何だよ…例えはよく分からないがクラインが落ち込んでいるということは分かる。
「ボタン以外にログアウトする方法ってないんでしょうか」
華麗にスルーして話を本題に戻すコハルさん、君はなるほど…そういう立ち位置か。今まで沈黙していたキリトさんが答えた。
「マニュアルにもその手の緊急切断方法は一切載ってなかった」
「っつーことは、このバグが直るのを待つか誰かが頭からナーヴギアを外してくれるのを待つか、どっちかしかねぇのか」
「いや…ただのバグじゃない《ログアウト不能》なんて今後の運営にも関わる大問題だよ」
キリトさんは何やら深刻そうな顔で考え込んでいる。
「それなのに運営からのアナウンスも緊急対応の動きもない……妙だな」
リンリも眉間にシワを寄せて考え込んでいる。少々ピリつきはじめた雰囲気を察知したのか、モモとレオも黙り込んでいる。
「問い合わせが殺到して対応が遅れてる……とか?」
コハルが不安げに質問を投げる。
「それなら原因がわかるまで全ユーザーを強制ログアウトさせるのが筋だ。一体何が……」
そのときだった。はじまりの街の中心にある鐘が揺れた。荘厳な音色が響く。それに呼応するように風が強くなり草がザワザワと揺れる。
「んなっ!?」
クラインの足元から青白い光が現れ、それに包まれたクラインはその場から消えてしまった。
「なんだ!?」
「きゃあっ!」
続けてキリトさんとコハルさんも消えた。何が起こっているんだ!?驚いてリンリの方を見る。するとリンリは目を丸くしながらこっちへ手を伸ばしていた。
「待ってハー…………」
「うわっ!?」
視界が青白い光に覆われてゆき、完全に覆われると同時にリンリの声が遠退いた。
再び視界が戻ると俺は物凄い人だかりの中に立っていた。これがもう少し整理された列になっていたら、施設名と所在地の県名が合ってない某有名テーマパークの開園を待つ人々の列を彷彿とさせただろうと思う。
「ここは……転移門広場?すごい数の人がいるよ」
「こりゃぁ全プレイヤーが集められてんじゃねぇか?」
コハルにクライン、キリトさんと俺は近くに転送されたようだった。
「よかった…この広場大きいし、この雑踏の中離れたところに転送されてたら合流するの大変だったね……ってあれ、みんなは?」
リンリとレオはともかく、ある意味自由人のモモが少々心配だ。などと思っていると俺のすぐ後ろの地面からあの青白い光が三つ噴出した。
「あっハース、皆さんも!」
「おぉはぐれなくてよかっ…ってなんだこの人の数…?」
「びっくりしたね~」
少し遅れて、リンリたちも俺たちの近くに転送されて来た。広場に集められた人々は突然の強制転移に加え、その先で何が起こる訳でもなく、徐々に苛立ちをつのらせていった。
「どうなってるんだ」
「早くしろよ」
などと不平不満を漏らす人々も徐々に増えてゆき全体が不穏な空気に包まれていく。
「あっ…上を見ろ!」
誰かが叫んだ。それを聞いた俺たちは空を見上げる。丁度広場の中心、時計塔の真上にポツンと一つ、赤い半透明の六角形が点滅している。そこに映し出された文字は…
【Warning】【System announce】
少しホッとした。やっと運営からのアナウンスがあるのか…が、警告…?どういうことだ…?
「…なっ!?」
点滅していた六角形が不穏な機械音と共に空いっぱいに広がり、赤く染め上げた。そこから粘性が高そうな赤黒い液体が溢れ出て数秒で顔の無い、巨大なローブ姿のアバターへと変化した。
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ……私の名前は茅場晶彦 今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ…」
茅場…?誰だよ、本名をわざわざ名乗るってことは運営のお偉いさんか…?
「茅場さんってSAOの開発者だよね、これって正式オープンのあいさつ……?」
「えっそうなの?」
コハルさん、よく知ってるなぁ…
「いや……茅場晶彦は今までメディアへの露出を避けてきた。ゲームマスターの役割だって一度もしたことがないんだ、何故こんな真似を……!?」
静かだが、キリトさんの言葉からは切迫したものを感じる。そのせいか、リンリたちも誰一人口を開く者はいない。
「諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う……しかしこれはゲームの不具合ではない《ソードアート・オンライン》本来の仕様である」
……は?本来の仕様…?どういうことだ?
「諸君は今後、この城の頂を極めるまでゲームから自発的にログアウトすることはできない」
茅場は淡々と説明を続けていった。外部からナーヴギアを停止・解除する方法は無いこと。それらが試しみられた場合、ナーヴギアによって使用者の脳が焼ききられ死に至ること。それにより既に213名が亡くなったこと。俺たちナーヴギア使用者の現実の体は病院などに集められるということ…
「信じねぇ、信じねぇぞオレは…!」
意味が、分からない。あの明るいクラインでさえ、今は頭を抱えている。あのクールなキリトさんでさえとても感情を昂らせている。周囲の人々もみな一様に何かしら反応を見せている。しかし、意に返さず茅場晶彦は説明を続ける。
「ヒットポイントがゼロになった瞬間 諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される」
これがトリガーだった。
「HPが0になったら死ぬだ!?ふざけるな!!」
「そんな状況で百層を目指せるわけねーだろ!!」
言葉に出来ているだけまだマシだ。この人たちは“自分が死ぬ”という事象を総合して想像し、恐怖し、それを言葉として外へ出すことが出来ているのだから。放心状態で何も出来ない訳でもなく、現実を拒んで耳を背けている訳でもない。何でもぶちまければ良いというものではないが、少なくともストレスの捌け口があるということになる。
「それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう」
茅場の言う通りにメニューを操作すると、手元にただの手鏡が出現した。
「……うぉっ!?オレの顔になってんじゃん……」
クラインが驚くのも無理はない。手鏡の奥からこちらを見つめているのは“ハース”ではなく“蓮池 俊”だった。
「あれ~?私だね、この顔」
この状態でものんびりとしたペースを崩さないモモの声に少しホッとしながら後ろを振り返ると、リンリ、レオ、モモもいつもの見慣れた顔へと変わっていた。それどころか、体格まで現実の自分たちとほぼ同じように見える。
「コハルさんはあんまり変わってないね」
相変わらずザワザワとした広場の片隅で、俺たちはキリトさんが推測した“現実の顔をアインクラッドで再現する方法”の解説をきいていた。コハルのVRショップモールのアバターの話も相まって、この話はすんなりと頭に入ってきた。
「数値化されていても本物であり、命なんだと強制的に理解させるために茅場は俺達の現実の体を再現したんだ……」
キリトさんが自分の手の平を見ながら呟いた。
「以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」
茅場が言い終わると同時に、ローブ姿のアバターも、空の赤みも跡形もなく消えた。誰もが呆然とそれを数秒見守った。しかしその後が地獄だった。阿鼻叫喚とはまさにこのことだろう。様々な種類の叫びが広場の混沌を色濃くしている。
全てが終わり、全てがはじまった日だった。
それから俺たちは、クラインの助けを借りながら地面に座り込んで青い顔をしているコハルを助け起こし、泣き出してしまったリンリの背をさすりながら広場を出てはじまりの街の商業区を目指した。キリトさんとはいつの間にかはぐれてしまったようだった。あとでクラインから聞いたのだが、キリトさんはもうこのときはじまりの街を出発していたらしい。
「もう…大丈夫。こんな時だからしっかりしなきゃいけないのに迷惑かけて、ごめんなさい」
コハルさんの顔色が少しよくなったと思う。リンリも泣き止んで多少冷静さを取り戻したようだ。
「無理もないヨ、こんなことになるなんて誰も想像してなかっただろうサ」
隣にいた金髪で小柄な女性が声をかけてきた。
「うぉっ!?どっからでてきた!?」
その女性の名前は《アルゴ》といい、クラインとは初対面だったらしいが、それにしてはコミカルな会話が繰り広げられていたと思う。俺たちを元気づけようとわざと自然に振る舞ってくれていたのかもしれない。
「周りがパニックになると逆に冷静になるんダ。そっちこそ人助けとは余裕だナ」
俺でなく、クラインに向けた言葉だというのはわかっていた。わかっていたがドキッとした。俺のこれは“冷静”というのだろうか…?特に何か不平不満を口に出すことはなく、やるべきだと判断したことをこなす。少なくとも合理的ではあると思う。何事も、色々とムダなものを削り落としていって残ったものが核・要点だ。今回の場合たくさんあるムダのうちの大半は“感情由来のもの”が多い。それだけ精神的にダメージを与える事柄が多く、また多くの人がその影響を受けたということだ。よって今重要なことは仲間の精神面のケア、それから次に“死なない為にみんなで強くなること”何故なら、現実世界で俺たちは死を身近に感じて暮らしていたわけではないからだ。敵の強さにもよるのだろうが、ある程度“自分はそう簡単には死なない”という自信がつけばきっと、精神的には今までの日常に近づくことが出来るのだろう。ただ……
きっとこの現状では、精神的に多少なりともダメージをくらっていることが“普通”なのだろう。“合理的に日常を。普通を求めて動く”ことが、捉え方によっては“異常”となるとは、なんて皮肉なことだろう。
「オレもそろそろダチのところへ行くぜ、広場で待ってるだろうからな」
「えっ…言っちゃうんですか…」
コハルが心細そうな声をあげる。
「前のゲームからの仲間なんだ。それにここじゃまだまだ初心者だからな、放っておくわけにゃあいかねえよ」
「そう……ですよね……」
コハルだけじゃない、リンリやレオ、モモの顔からも微妙な感情が伺える。
「ンな心細そうな顔すんなって、お前にゃここに仲間がいるじゃねぇか。おめぇらも、なんかあったらオレを呼べよ!すぐ駆けつけてやるからよ。こう見えてもおりゃあ他のゲームじゃギルドのアタマ張ってたんだ。いつでも頼りにしていいぜ!」
……あぁ。きっと、そうなんだ。リーダーにはそういう、人情が必要なんだ。他にも必要な要素はたくさんあるし、全て完璧に備わっている人なんていないはずだ。けれど……
「んじゃぁ、またな!」
各々お礼と労いを伝えると、クラインは仲間たちのところへと走って行った。
「…………。」
「おい、どうした?ハース」
レオが俺の顔を覗き込む。
「いや、なんでもないよ」
俺は今自分の意思で、最善且つ最優先だと思うことをしているからここへいる。だが、それでも“「ゲームじゃギルドのアタマ張ってたんだ。いつでも頼りにしていいぜ!」”という言葉がひっかかる。胸がザワつく。そりゃ、会ったことが無いネットだけの付き合いと現実の友達とを比較すれば現実の友達を優先させても避難はされないのではないかと思う。それどころかこの浮遊城に来ているのか、なんという名前を使っているのかすら知らない現状では、連絡をとることすらままならない。それでも…
「報告だけじゃなく、せめてキャラ名くらい聞いておくんだったな…」
誰にも気付かれないように、一人でそっと呟いた。
自分で書いてて頭こんがらがってくるよ…