ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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1話 ごめんね

 それは、曇天の海の上。とある船のこと。

血溜りに倒れる人たち、その中心に座り込む少女と、一人の老人。

白い髪、蓄えられた髭、ニカっと笑う羽織った男をただ見上げる少女は思った。

 

 

 ――あぁこの人はきっとおバカさん(人好し)なんだろうなぁ。

 

 

「嬢ちゃんがこれを一人でやったのかい?」

「………」

 

 身体を動かす余裕のない私は、頷くついでにパリッと体の表皮を稲妻が伝った。

逃げ出すために武器を探していた私は、腹を空かせていたのもあってある果物を食べたのだ。半分はそれを食べたおかげで助かったともいえる。

 

「悪魔の実かね?見たところ超人系(パラミシア)か」

「……貴方、だれ?」

「私?私は、そうだな。レイさんと呼んでくれ。しがないコーティング屋さ」

「そう」

 

 渾名の様な名前と自分をコーティング屋だと語った彼に対し、少女は小さく頷くのみ。

少女は人攫いに捕まってからというもの、反抗しっぱなしでボロボロだった。

 

「ところでお嬢ちゃん、他に人はいないのかい?この船にキミだけかい?」

「……うみににげて、しんじゃってる、かも」

「海に、か。そういえばお嬢ちゃん、家の場所は分かるかな?ついでといっちゃぁなんだが、送ってくぞ?」

「……もう、ない」

「あー……」

 

 少女の家族を殺し、彼女の住んでいた村を焼いて少女自身を浚った連中はガラが悪いだけでなく、運も悪かった。

なんでも何かに襲われたらしい。確か、『カイグン』とか言っていたような気がする。

彼らは船をくっつけ合って争っていた。

 その騒ぎに乗じて少女はこっそり逃げ出し、武器を探すついでに謎の果物を見つけ噛り付いた。

ナイフを一本持って船を探すついでに捕まってた人達の縄を切って回った。……それを人攫いたちに見つかり、後は乱闘騒ぎ。

 

「アレもキミが?」

「……えぇ」

 

 だが最悪だったのは、少女の放った一撃によってナニカが起きたことだろう。

海中から出てきたデカい化け物は『カイグン』の船を破壊し、少女の乗っていた人攫いの船にも噛り付いてきたのだ。

人攫いだけでなく、色んな人が海に逃げ延びる中、少女は一人立ち向かった。

勝てたが、結局残った人攫い達にまた襲われて……必死に暴れて、今はこの通り一人だった。

 船を動かす知識が無く、仮に動かせたとしてもどこに向かえばいいのかもわからない。

波に揺られて流されて、時間が過ぎた……生きられたのは皮肉にも、文字通り船体に噛り付いている化け物のおかげだ。食料には困らなかった。

 

「そういえば、お嬢ちゃん。名前は?」

「……」

 

 名前を聞かれたのは、何時以来だろうか。

少なくとも捕まってからは誰も知らないはずだし、半年以上は経つと思う。

少女はゆっくりと息を吸って、名乗った。

 

「エレクトロ・D・ミサカ」

「ではミサカくん。行く当てがないなら、うちにこないかい?」

「うち……?」

「あぁ私は一人暮らしで少し寂しいかもしれないが、安全は保障する」

「……」

「よし、決まりだ」

 

 少女は頷いた。

行く当てがない。反抗的だったのは、奴らの言いなりになりたくなかったから、ただの意地に過ぎなかった。

そう、殺した時点で少女の復讐(目的)は終わっていたのだから。

 

 

―――

 

 

 そして、数年の時が流れ……少女、ミサカはとある島にいた。

無人島らしいそこにはミサカしか暮らしておらず、危険で獰猛な野獣も大勢暮らしている。

海に出れば海王類が群れで泳いでいる、そんな危険な場所に少女は一人で暮らしていた。

 

「……!」

 

 ピンっと何かを察した(・・・)彼女は軽やかに森を、丘を、砂浜を駆け抜けていく。

小舟で危険な無人島迄やってきたのは、一人の老人……「レイ」だった。

 

「レイ、こんにちは」

「やぁミサカくん。元気そうで何よりだ」

 

 無表情のまま「そっちも」と返すミサカ。

 

「ふむ……覇気の制御は完璧のようだな」

「レイのおかげ、ありがとう」

「なんのなんの」

 

 覇気……人間の持つ潜在能力、ある種の才能。それを幼いながらも引き出せるようになったミサカは、まさしく天才だろう。

しかし、覇気というのは中々厄介だった。特に『見聞色の覇気』と呼ばれるものは人の思念に反応し、ミサカはその制御の為に無人島で生活することとなったのだ。

 

「「いただきます」」

 

 二人そろって仲良く少し遅めの昼食をとる。

レイがここにやってくるのは一週間に一度のみ、こうして世間話をしながら一緒に食卓を囲む。

そして、少しして帰る前になると……。

 

「さて……では最後の仕上げといこうか」

「はい」

 

 こうしてミサカの成長具合を確かめる。彼女自身かなり力をつけたが、彼女の悪魔の実の能力と見聞色の覇気の相性がとても良かったせいで中々彼から島を出ていいという了承を得られなかった。

 取り合えず構えを取ったミサカ。彼女は別に体術を学んでいるわけではなく、彼や無人島に棲む猛獣との戦闘で培った、彼女なりの戦いやすい格好だ。

 

「――」

 

 暫く向き合っていると、レイの姿が掻き消えた。次に現れたのは、ミサカの斜め後ろ。それを事前に(・・・)察知し、伏せて避けるついでに足払いをする。勿論、レイもわかっていたように跳んで避けて見せた。

消えたと錯覚してしまうほどの高速移動を、能力者でもない老人が行うというのも驚きだが、それを察知したミサカも十分驚愕に値するだろう。

 

「ふむ、よく研ぎ澄ませているね」

「レイのおかげ」

「ふふっさっきも聞いた言葉だ」

「ホントのこと」

 

 始めて見聞色の覇気を発動したのは、レイに連れられて街へ赴いた時。

医者に治療してもらっていたのだが、他人を見て警戒心を強めてしまったミサカは無意識に見聞色を発揮。入院患者の苦痛は勿論のこと、街中で起こっているあらゆることを察知してしまい、彼女は意識を途絶えさせてしまった。

流石にこれは問題だ、とレイはミサカに覇気の特訓を施すことになったのだ。

 

「では、これはどうかな?」

「!」

 

 黒くなった(・・・・・)レイの腕が振るわれる。

武装色の覇気と呼ばれるそれは、自然系(ロギア)と呼ばれる流動する身体を掴み取るだけでなく、破壊力が抜群に増す。

バチッと体から紫電を発し、身体と思考を加速(・・)させたミサカもまた黒く染まった腕を振るい、両者の拳がぶつかり合った。

 

「ふむ」

「っ」

 

 次は脚による蹴り。これも加速して返す。

威力は相殺(・・)され、振動となって空気を伝い、島に棲む獣たちを震え上がらせた。

数度同じように相殺し合い、時に避け、時にこちらから攻撃を繰り出す。

暫くそうしていると、レイが背後に跳んで距離を取った。

 

「よろしい合格だ」

「ッハァァ……レイ、ありが―――」

 

 気を抜いてお礼を言おうとしたその瞬間、レイからとんでもない威圧が放たれた。

白髪の老人とは思えない濃密なそれに圧しつぶされそうになるが、負けるかと堪え、睨み返した。

どうやらまだ終わっていなかったらしい。それならこちらも、と能力を発動させようとしたその時、レイの威圧が消えた。

 

「――ふむ、本当に合格だ。耐えるどころか攻撃態勢に入るとは、成長した」

「……レイ、意地悪」

「ハッハッハ、まぁ許してくれ。私が住んでいるところは荒くれ者が多いからね。このくらい強くなってくれたら、大丈夫だろう」

「じゃぁ」

「あぁ……行こうか」

「はい……レイ、改めてありがとう」

 

 その日、レイから認められたミサカはシャボンディ諸島という場所へ連れていかれた。

そこは確かに荒くれ者が多かった。海軍(カイグン)もいたし、海賊もいた。

 

 そして……奴隷と、それを酷く扱う天竜人という存在がいて。

 

 

「レイ、ごめんね。言いつけ――破る!」

 

 

 ミサカはレイにくれぐれも暴れないように、と言われていたが我慢できなかった。

その後配られた新聞を見て、レイは大笑いしたという。

 

 

 ――――――

 

 

 シャボンディ諸島を訪れたその日、新たに指名手配書が作られた。

初頭でありながら、その首にかけられた懸賞金はなんと1億5千万ベリー。その者は天竜人をボコボコにし、奴隷を解放した上に海軍兵を軒並み気絶させた上、呼び出された大将一人と渡り合い、逃げおおせたのだという。

 

 名前をエレクトロ・D・ミサカ、二つ名『電撃姫』

未だ14歳だという少女は、その名を見事世界中に轟かせた。




『電撃姫』―エレクトロ・D・ミサカ
 ハイライトの無い瞳が特徴的な茶髪の少女。
ビリビリの実を食べた超人系能力者であり、見聞色と武装色の覇気が扱える。
人攫いに反抗していたせいで拷問まがいの扱いを受けるも、最後まで抵抗の意思を示して見せた程に強情。
人攫いからの扱いと、復讐心、人を殺したという行為は少女の人格を歪めるのに十分で、感情を表に出しにくく、あまり表情筋が動かなくなってしまった。だが昔は活発で明るい少女だったという。
 初頭懸賞額、1億5千万ベリー。


《経緯》
 ミサカシリーズって2万人いるじゃないですか、一人欲しいよねという会話を友達としたんですよ。でも現実じゃないので残念だよね、あ、そういえば今週のジャンプ読んだ?
――ということがあり、気付いたら書いてました。反省しています、後悔はしていません!ドン!!

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