ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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10話 次の島へ

 青海へと降り立った麦わらの一味は、新たな島へ向けて船を走らせる。

黄金は大量も大量、(ダイアル)という空島特有のモノも手に入れ、一味は充実していた。

そんな中、ゾロがミサカに――頭を下げていた。

 

「ぞ、ゾロ、なに?どうしたの?」

「頼みがある。俺に、覇気の使い方を教えてくれ」

「え?覇気?」

 

 戸惑うミサカに、ゾロは頼み込む。

メリー号に戻ってから、エネルを斬る時に感じた気配も、手応えも、一人では再現しきれなかった。

極限の状況で集中して発揮できた底力、しかし自分の意思で振るえないのであれば意味が無い。

 

「俺が目指してんのは、世界一の大剣豪だ。この位のこと出来て当たり前にならねぇと、んなもん夢物語で終わっちまう」

「いい、けど……」

 

 ミサカは暫し言うのを戸惑い、教えるのなら語った方がいいだろうと、少しゾロを待たせた。

他の皆も集め、メリー号の食堂で全員が揃う。

外の監視などは、一時的にロビンの能力で補ってもらった。ミサカとエネルの二人の覇気もあるのだから、これで十分と判断した。

 

「それで、話ってなんだ?」

「ん、その……覇気のことなんだけど。ゾロが身につけたいって言ってて」

 

 船長であるルフィの許しを得てから、発言を開始する。

しかし、途端にサンジが怒りの形相でゾロを睨んだ。

 

「なに!?マリモてめぇ……ミサカちゃんと個人レッスンなんざ、この俺が許すと思うか!!」

「うるせぇクソコック」

「サンジ君、ゾロもストップ!話が進まないでしょ?」

 

 睨みあう二人をナミが止める。

サンジは瞳をハートにしながらとまり、ゾロはミサカの方を向いた。

 

「えっと……教えるのは別に良いし、他にも教わりたい人が居るなら、それも構わないんだけど」

 

 ルフィが自分も自分も、と手を挙げるのをナミが落ち着けと宥める。

この一味は大人しく話を聞くということが出来ないのだ。

 

「その……私自身完璧じゃないってことを、覚えてて欲しい」

「完璧じゃない?この私の心網を完全に読み切っていただろう?」

 

 エネルと戦っていた時、ミサカは確かにエネルの動きを分かった動きをしていた。

それどころか、エネルですら見えていない何かを感じ取っていたのも事実だ。

その言葉にミサカは少し考え、説明するために自分の中で少し整理して話す。

 

「私は、過去に人攫いにあって、酷い目にあって……それのせいか、覇気を出し切ってないってレイに言われたことがある」

 

 覇気は消耗する。しかし、ミサカは戦闘で消耗して倒れたことが無い。

正確には、倒れるほど消耗したことが無いのだ。

フラフラになるほどにはなっても、戦闘は出来なくとも走る程度は出来ていた。

 

「見聞色は得意だったみたいで、そっちはあまり問題は無いんだけどね。武装色の方は、完璧じゃない」

「あれで不完全というのか?」

「うん。レイは、それでも十分なレベルだって言うけど、もったいなさそうにしてた」

 

 そんな半端者な私でもいいのか、とミサカは問うた。

海は広い。探せば自分以上の覇気使いはいるだろう。そんな人物を見つけた後でもいいんじゃないか、と。

 

「ハハ、そりゃ頼もしいな」

 

 不安そうなミサカに対し、返ってきたのは船長の明るい声だった。

 

「つまりそれって、ミサカはまだまだ強くなれるんだろ?」

「それは、そうかも……だけど」

「……私は、教えたいのなら教えればいいと思うわ。半端でも何でも、この船で二つの覇気を扱えるのは、貴女だけなんだから」

「そうね。寧ろ覇気使いが敵として出てこられると、今の私たちじゃ潰されかねないわ」

 

 ロビンとナミの言葉に、確かにそうだとミサカ以外の全員が頷いた。

 

「で、でも変な教え方になるかも、しれないよ?」

「ニシシ、いいじゃねぇか。レイってやつから教わったんだろ?じゃぁ大丈夫だって」

 

 能力と覇気、その両方が使えるミサカは海賊で言えば億、海軍で言えば中将と呼ばれる人を相手に出来るだろうと老人から太鼓判を押されていた。

事実、戦闘を避けたとはいえ、大将から逃げ切ったことすらある。

未熟だろうと不完全だろうと、ミサカという少女の持つ力は一味の中でも随一だと全員が認めていた。

 

「ミサカ、お前はどうしたいんだ?」

「私は……皆に(・・)覇気を、覚えて欲しい」

 

 全員に覚醒するわけではない。しかし、出来ることなら早く覚えて欲しい。

海賊は力がモノをいう世界だ。力ない者は淘汰され、殺されてしまう。

ミサカは麦わらの一味が好きだ。過酷な世界だが、生きて欲しい。

 

「皆に、力をつけて欲しい。ルフィたちは強いから、きっと私より強くなれるから。そうしたら――」

 

 ――きっと、誰も死なないから。

 

 力が無くて殺されてしまった家族や、先生、友達の様には、きっとならない。

ミサカの意志ある言葉を聞いて、一瞬の間が出来た。

そして、やっぱり明るい声が響いた。

 

「ハハハ!!こいつは言われちまったなルフィ?」

「にしし、あぁ」

「……全くもって、我ながら情けなくなっちまうな」

「へ?」

 

 ルフィ、ゾロ、サンジの言葉に戸惑うミサカ。

自分が何を言ったのか、自覚は無いのだろうかとエネルは呆れた視線を向けていた。

 

「お前はこの一味の中で自分が一番強いんだ、そう告げたんだぞ?」

「……あ」

「ヤハハ、まぁ事実だ。相性で言えば、私と麦わら……ルフィが同じ程度になってしまうが、大体は全員貴様より弱いだろう」

「そういうつもりじゃ……」

「どういうつもりでも、そういう意味だ。さて、じゃあどうする船長?」

「にしし!!」

 

 決まってんだろ、とルフィは挑戦的な笑顔を向けた。

 

「憶えるぞ、覇気!全員でな!!」

「いや、皆が使えるわけじゃ……」

「じゃぁ出来る奴だけでいいさ!覇気だけが強さじゃねぇし、大丈夫!」

 

 この船長の明るさがあるから、こんな調子なのだろうが、普通の海賊なら今頃ミサカは船長を含めた全員を侮辱したということで、何かしら私刑にあったとしてもおかしくはない。

しかし、この船長あってこの一味。

こうして覇気の修業を始めることとなった……レイ直伝(・・)、しかし船の上の為全てが同じ状況ではないため、ミサカアレンジで。

 

「えっと……じゃぁ取り合えずはい」

「ん?なんだこの布?」

「目隠し」

「めかくし?え、なんで?」

 

 ウソップが嫌な予感がしたのか、嘘だろう?とミサカを不安げに見つめる。

しかしミサカは当たり前のことを言うように、何時もの無表情で淡々と告げた。

 

「気配を探らないといけないから、目隠しするのは当然でしょ?」

「「「「「「「「……………」」」」」」」」

「全員一度には無理だけど、教わる人は教わる時に目隠ししてね。それで私が武装色で殴るから、避けて。素手で防いでもいいよ?」

((((((((す、スパルタだぁ……))))))))

 

 一味全員、最年少であるはずの少女がどんな修業を始める気なのか察しがついた。

ちなみに彼女曰く、この方法だと避けれなくても殴られることで、武装色の覇気を感じ取れるため、見聞色に素質が無く、武装色に素質がある者は自然と武装色で防ぐようになるという。

 

「おい、私もするのか?」

「エネルは後で。私が殴るから、避けずに頑張って防いで」

「貴様正気か?」

「?」

 

 そう言って硬化した腕を見せるミサカに対し、エネルが思わずツッコミを入れるが、彼女の修業方法はこんな感じだった。

特に見聞色が強かった彼女は、常時目隠しされていたくらいだ。と、いうことで。

 

「あ、じゃぁずっと目隠しする?」

「いや何故?」

「私生活でもずっとじゃなくていいけど、基本は見聞色で察知して。エネルの時以外の時間でも偶に殴るから、受け止める。ね?」

「方法を聞いたんじゃない。おい、こら止めろ、無理やり目隠しを巻き付けるなっ!」

 

 ちなみにこの日、覇気覚醒者はゼロだった。

 

 

―――

 

 

 そうして数日間、一味は目隠しをしてミサカに殴られるグループが出来上がった。

サンジは料理する時間があるし、ナミは航海士。それにミサカもずっと覇気を使うのは疲れてくるため、交代しつつ休憩をはさみつつといった感じだ。

覇気は一向に覚醒せず、皮肉にも打たれ強くなってきた一味はある島を発見し、そこに上陸することとなった。

 

「何もねぇ!!なんじゃここは!見渡す限り草原だ、すげぇー!!」

「なんつぅ色気のねぇ場所だよ」

「人は住んでいるのかしら……」

 

 大草原にひょろ長い木があるだけな場所。

しかし、久しぶりの大地にルフィたちのテンションが上がり、意気揚々と上陸していった。

まぁ地平線が見える程、一見すると何もないため、危険は無いだろう。

 

「というか、修業はいいの?」

「うん、大冒険も大事だから。海賊になったのに、修業三昧なんて私嫌だよ?」

「……それもそうね」

 

 ナミはつい最近ではあるが、天候を不思議と予測しやすくなっていることに気付いていた。

彼女は航海士、随時天候には気を配っているため、集中力の持続という点では一番である。つまり、日頃から辺りを認識する力を鍛えているようなもの。

そのため、いち早く覇気が覚醒しかかっているのかもしれないと、ミサカは考えていた。

 

「修業もメリハリが大事、ってレイが言ってた」

「その人のメリハリの極端さ、凄いわね……いつもこんな感じだったの?」

「いつもは、肉食獣と戦って、レイと修業して、ご飯食べて、修業して、レイがいったん帰って、私は暫く一人で戦ったり休んだりだったから。大冒険はなかったよ?」

「そう……あんた凄いわね」

「???」

 

 鬼の様な修練と、のんびり穏やかな休憩。天と地の差であるが、これをミサカは受けていたのか、とナミは思っていた。

しかし、ミサカの言葉を聞いてさらに酷かったのかとショックを受け、愕然としながらミサカを撫で始める。

ミサカはそれが日常となっていたため、なんでこんなにナミが驚いているのか全く分かっていなかった。

 

「……にしても、広いねぇ」

「そうね。アイツら、どこまで行ったのかしら?」

 

 ルフィ、ウソップ、チョッパーは一味の中でも冒険心が強い方だ。

その為、新しい場所に着くやいなや、駆け出して行ってしまった。

 心配していると、何やら背後から気配が近づいていた。

エネルが目隠しをしたまま、それを告げる。

 

「おい、何か来たぞ」

「ん?」

 

 気配だけでは何かは分からない。

しかし、複数の人の気配がある場合は十中八九船だろう。

それが海賊か海兵か、はたまた運送船なのか、そこまでは分からない。

取り合えず望遠鏡で確認すると、〝FOXY〟という文字と狐に変な鼻の髑髏マークが描かれていた。

 

「海賊だ」

「こっちに来るわっ」

「「落とすか?」」

「でも大砲を向けていないわね。なにか用なのかしら?」

 

 取り合えず攻撃しそうなゾロとエネルを止めて待っていると、メリー号よりずっと大きな船が現れた。

狐の船首のその船は、メリー号の行く手を遮るように錨をおろし、明らかにこちらの船を阻む形をとった。

 

「我々はフォクシー海賊団。我々の望みは、決闘だ」

「つまり敵だな」

「よし、斬るか」

「待て待て待て!!デービーバックファイトを申し込むといっている!!」

「「「「???」」」」

 

 ゾロ、ナミ、エネル、ミサカが揃って首を傾げる。

こいつらは何を言っているんだろうか?

 

「喧嘩、しにきたんじゃないの?」

「黄金を奪いに来たんじゃないのか?」

「デービーバックファイトは、海賊のゲームだ。まぁ、うちの一味は知らない奴おおいわな」

 

 サンジがそういうのも仕方ない。

ゾロは海賊狩りだったし、ナミは海賊専門の泥棒だった。ミサカはそもそも海賊という存在を教わっただけで、実際麦わら以外の海賊で知っているのはベラミー一味くらいだ。

エネルは最近まで神をやっていたため、そもそも海賊のことなどミサカ以上に知るはずもない。

 

「海賊島っていう場所で生まれたっていうゲームね。より優れた船乗りを手に入れるために、海賊が海賊を奪い合ったというわ」

「へぇ。ロビンって何でも知ってるね」

「さっすがロビンちゃん!あ、皆さん、ジュースをどうぞ」

 

 サンジがさっと飲み物を用意し、女性にだけ配った。

 

「おい、私の分は無いのか?」

「野郎は自分で取りに行け。俺は男に優しくする趣味はねぇ」

「ふむ……自分で飲み物を注ぐなど、考えれば初めてだな。」

「……おかしいだろお前」

「ヤハハ、最近は分からないと、ミサカがやってくれていたからな。おい注ぎ方を教えろ」

「ハァ。しょうがねぇ、機材を壊されちゃ敵わねぇからな。っていうか、もうミサカちゃんに迷惑かけんじゃねぇぞ!!自分でやり方覚えろ!!」

 

 ぶつくさ言いながら、サンジとエネルが船の中へ消えていく。

取り敢えず、今は向こうの船長がルフィに決闘を挑みに行っているらしい。

3コインゲームと言って、3本勝負のゲームらしい。

 

「あールフィなら受けそう……」

「まぁアイツなら挑発されりゃ受けるだろうな」

「それじゃあ準備しておいた方がいいわね」

 

 腹ごしらえと昼寝を今のうちにしておこうと、麦わらの一味は船へ戻る。

と、部屋に戻る前にゾロが一言、フォクシー海賊団へ告げた。

 

「あぁそうだお前ら」

「「「「「?」」」」」

「今から船に戻るが、監視がねぇ訳じゃねぇ……勝手なことしてみろ、ゲームの前に潰すぞ」

「「「「「りょ、了解しましたァ!!!」」」」」

 

 ゾロの鬼のような威圧と形相にビビったフォクシー海賊団は一斉に敬礼をした。

……これからゲームという名の戦いをするのに、こんな調子で大丈夫なのだろうか?

多少不安に思いつつ、戻ってきたルフィたちはやっぱり決闘を受け入れていた。

 

 こうして、フォクシー海賊団との三本勝負が開催されることとなった。




 エネルは暫く目隠ししてます。
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