ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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11話 デービーバックファイト

 ゲームを受けることになったが、直ぐにゲーム開始というわけではなかった。

フォクシー海賊団はいくつもテントを張り、露店を開きだしたのだ。まるで祭りの様に騒ぎ出す彼らに、ルフィたちも一緒に騒ぎ出す。

 

「うはー、なんか楽しいことになってきたなー」

「多いなー」

「焼きそば二つ」

「おっさん何買ってんだ!?」

 

 ルフィたちが島で出会ったという、おじいさんと首も足も長い馬。

彼らはフォクシー海賊団に馬を撃たれたらしく、馬は台車に乗っているようだ。

 

「また、変なのに出会ってきたわねアイツら」

「まぁ、ルフィだから」

 

 そんなこんな過ごしながら、オーソドックスルールで行われるゲームに参加するものを決める。

最初はレース、次にチーム戦である球技、締めに一対一の決闘。

最後以外は三人で参加する形となるらしく、参加メンバーを決めることになった。

 

「お、おれはレースに出てはいけない病で……」

「まさか、か弱い私に出ろなんて言うんじゃないわよね!?」

 

 と、ウソップとナミが断固拒否したので仕方なく残りメンバーを采配することに。

 

「戦闘はおれが行くぞ」

「俺に任せろ、足がウズウズしてんだ!」

「ヤハハ、青海の海賊の実力、見せてもらおうか」

「おれもやりてぇぞ!?」

「船長なんだから、最後の決闘でいいだろ」

「おぉ!なるほどな!」

 

 そんなわけでやる気満々のゾロ、サンジ、エネルがチーム戦になり、ルフィが締め。

残りであるロビン、チョッパー、ミサカの三人がレースに出場することになった。

 『ドーナツレース』と呼ばれるボートレースであり、三つの樽とオール二本を使ってボートを造らなければいけない、のだが。

 

「……ウソップ、これ」

「すまん、しかしこれが限界だ。俺は船大工じゃねぇんだ」

 

 ボートを造るのは誰でもいいということらしく、参加しないウソップとナミに作ってもらった。といっても、ナミはそこら辺の知識は皆無の為ウソップの手伝いをしただけだが。

結果造ってもらえたのは樽を割って連接し、どうにか三人乗れるだけの超簡易ボート。

 

「沈みそうだ……」

「きっと沈むわ」

「全員能力者だから、沈んだら大変」

 

 気合入れてレースに臨むことになった三人の相手は、魚が引っ張るちゃんとしたボートだった。しかも魚人まで乗っている。

部品ではなく生物な魚は使っていいとかいう、おかしな理論を使われそのままレースを開始することになった。

島を一周するが、一応島から離れすぎないように永久指針(エターナルポース)を渡される。

決められた方角を示すこれを持っておけば、もし波にあって逸れても問題なく元の場所に戻れるだろう。

 

「……ん、二人とも樽に掴まった方がいい」

「え?」

「あぁ、そういうことね」

 

 チョッパーが進むためにオールを持っていたが、それを止める。

ミサカはフォクシー海賊団がこちらを狙っている気配を感じとっていた。

一人や二人ではなく、岸側にいる者たち全員だ。

 

『レディ~~~――ドーナツ!!』

 

 開始の合図と同時に、狙っていた人たちから砲撃が放たれる。

しかし分かっていた攻撃を受ける程優しくはない。

強い電流を操り、磁界を生み出し弾道を曲げ――相手のボートへと向かわせた。

 

磁界誘導(マグネティックロード)

「「「え――ぎゃぁあああああ!!!!」」」

『おぉっと、我等の砲弾が先を走っていた、キューティーワゴンに向かっていったぁ!!』

 

 キューティワゴンというのは、相手が乗っているボートのことだ。

サメが必死に避けていたが、繋いでいた縄が切れてしまったらしく彼らはこれからオールで漕ぐこととなってしまった。

鉄では邪魔できないと判断したのだろう、今度は大岩を投げてきた。

 

「邪魔」

 

 殴り返してもいいのだが、足場が不安定過ぎるため自粛し……覇気を乗せた雷撃で粉砕する。

 

『こ、これはすさまじい!流石1億5千万は伊達じゃなかったぁ!!』

「お、おのれ!魚人空手――海面割り!!」

 

 鋭い衝撃波が海面を奔り、ミサカたちを襲ってきた。

確かに海面が割れているように見えるが、それは表面上だけ。 

 

超電磁砲(レールガン)

「「「ぎゃあああああああ!!!」」」

 

 相手の空手より威力のあるコインは、凄まじい衝撃波を生んでそのまま相手のボートを欠けさせた。

 

「ねぇ、妨害有りならもう沈めた方がいいんじゃないかしら?」

「それもそうだね」

八輪咲き(オーチョフルール)

磁力球(マグネボール)……落下」

 

 ロビンが三人の動きを封じ、岸の近くにいた者たちから銃や弾丸、砲弾等を集め、彼らの上に一塊にする。

それを……三人に向けて勢いよく落とした。

 

『えー……キューティワゴン沈没!』

「………二人とも、容赦ねぇな」

「チョッパー、仲間掛かってるんだから当たり前」

 

 敵が沈没したので、そのまま自動勝利となりボートを降りる。

相手が何が欲しいかと聞いてきた。

人ではなくてもいい、思いつかないなら何でもいいというので、暫し考えて思いついたことが一つあった。

 

「あ、私着るものが幾らか欲しい」

「「あぁ……そういえば」」

 

 今日までずっとナミやロビンの衣服を借りていたのを思い出し、女性服を所望した。

ナミもロビンも貸すのが当たり前になっていたせいで、一瞬思い出すのに時間がかかっていた。

服をありったけ貰い、あとで丈を直さなければと思いながらメリー号に積んでおく。

 

「そうだ、エネル」

「ん?」

「お疲れ様、ありがとね」

「ヤハハ、なんのことだ?私は何もしていないぞ?」

「次、頑張って」

「フン……まぁ見て居ろ」

 

 何かしようとしていたフォクシー海賊団の船長を威圧して止めていたエネルに感謝する。

実際何かされる前にレースが終わったため、彼は何もしていないと恩を着ることもなく、エールを受け取ってくれた。

目隠しをしたままのエネルはミサカへ手を振り、しっかりとした足取りで次の試合が開かれる場所へと歩いて行った。

 

 次の試合はグロッキーリング。

サッカーの様に球をゴールに入れた方が勝ち。しかし、()はボールではなく人間。

両チームから一名、球の役割の人間を選ぶこととなった。

 

「ヤハハ、ボール役は私がやろう」

「いいのか?」

「なに、一番狙われるのだろう?奴らの実力を測るのには、丁度いい役だ」

 

 そう言って球役の帽子を被るエネル。

神を名乗っていた時代なら絶対あり得ないことだが、これはこれで新鮮だと本人は楽し気である。

 対する敵役は、三人よりも数mは大きな人間二人と、10m以上はありそうな魚人と巨人のハーフ。

ボールの目印は魚巨人が被っており、一見すればこちらに勝ち目は無いように見える。

 

『あ、武器の持ち込みは禁止よ!これは球技なんだから!』

「ん?そうなのか……ま、別にどっちでも構わねぇが」

「ふむ、まぁいいだろう」

 

 そう言って刀と黄金の棒をミサカに預ける二人。

 

「えっと、何で二人とも私に……?」

「「ある意味一番安心できるからな」」

「??」

 

 ロビンはしっかりしているように見えて自分のモノ以外は管理が甘いし、ナミに黄金の棒なんて渡したら無くす(・・・)かもしれない。

黄金そのものは船にあるから今は構わないが、一々造るのも面倒だった。

ルフィに管理なんて論外だし、ウソップに持たせるには少々心もとない。チョッパーは船医であり、何かあったら役割を果たしてもらう必要があった。

 そして、試合開始される直前になってエネルが一言。

 

「あぁそうだ、私は攻撃せんぞ。役目からして、そうした方がよかろう?」

 

 そう言って、後方へ下がるエネル。

 

「オイ待て、お前がこっちのゴールに叩き込まれりゃ終わりなんだぞ!?避けんのはいいが、下がるな!」

「たくっしょうがねぇ!クソコック、とっととケリつけるぞ!!」

「言われなくてもそのつもりだクソマリモ!!」

 

 駆け出した二人に対し、タックルをかましてくる相手チーム。

巨漢なため、一人で二人を叩き飛ばすのに十分な身体の大きさがあった。

 

「やるどー!!」

 

 まるで壁の様なタックル。

しかし、それをみて冷静になる二人。理由など単純明快である。

 

「何だかなぁ……すっごい不本意なんだがっ」

「あぁ……ミサカちゃんには悪いんだがっ」

 

 グッと足を踏みしめ、身体を固定した。

思い出すのは少女の小さな拳。しかし、彼女は頑丈だからという理由でルフィ、ゾロ、サンジの三人には余り手加減をしてくれなかった。

危機感が無いと覇気の力を発揮しにくい、という理由だったから文句を言うのは止めたのだが……あの威力を知っている身として、勢いだけのタックルは二人に脅威とは感じられなかった。

 

「「ふんっ!!!」」

「ど!?」

 

 ゾロが両手で、サンジが片足でタックルを受け止めた。

それだけに留まらず、サンジは踏み台に使い、巨魚人の元へ走った。

サンジが行った直後、ゾロは大男を掴み、もう一人の方へ投げ飛ばすことで邪魔をする。

 

首肉(コリエ)―」

「ん?ああ」

 

 一気に終わらせるつもりのサンジは、そのまま魚巨人の首を狙いに行く。

しかし魚巨人が緩く拳を放ち、避けたついでに彼の腕へ乗ってしまう。

 

「って、なんだコイツの皮膚!?ぬるぬるする!!」

 

 彼はドジョウの魚人を親に持つため、その皮膚はぬるぬるしている。

そのため、サンジは懸命に走るも前に進まない。

 

「バカ、何してんだお前!?」

「あぁ!?誰がバカだマリモ野郎!!」

「イイから降りろ!!」

「うぉー!」

「ッ」

 

 魚巨人のパンチは、見かけ以上に力を持っている。

ギリギリ反応し直撃は避けたサンジだったが、そのまま真横を吹っ飛んでしまう。

 

「隙ありだぁー!」

「ぷぷぷ!」

 

 軽傷の二人の大男は立ち直り、エネルの元へと向かう。

目隠しをしたままの彼は腕を組んだまま立っているだけだ。

 

心網(マントラ)

「ぷ!?」

「い!?」

 

 しかし、当たり前のように彼らの攻撃がエネルにあたることはない。

軽く足を引っかけ、タックルしてきた二人を転ばせ、遊びだした。

 

「ヤハハ、ボールである私に蹴られてどうする?」

「このっ」

「ぷぷっ」

 

 起き上がった二人は、何やらこそこそと弄りだした。

肩パットの仕掛けを発動させ、トゲ付きにした上に、もう一人はメリケンサックを着けている。

 

「オイ、武器はルール違反だろ!?」

 

 サンジがそうツッコむも、向こうの審判は後ろを向いてストレッチをしていた。

 

「まぁ落ち着けコックよ。お前らはボールをさっさとゴールさせろ」

「おい、いいのか?」

「クソコック、その二人の相手はそいつに任せろ……見たところ、あの二人じゃ触れることすら不可能だ」

 

 エネルの実力が骨身に染みているゾロが事実を口にすると、挑発だと思い頭にきた相手チームの猛攻が始まった。

しかし、全てエネルに避けられてしまう。

 

「な?」

「あれが見聞色ってやつか……」

 

 ミサカが修業前に何度か見せてくれたが、あぁやって殺意ある攻撃を避けているのを間近に見ると、その力がよく分かる。

特にサンジはそもそもエネルと戦ったことが無いため、彼の力は自然系であり見聞色が使える、程度のことしか分かっていなかった。

 

「ふむ、青海の海賊、思ったよりつまらんな。これならワイパー達の方がよっぽど手強かったぞ?」

 

 言っては何だが、400年もの間戦い続けてきた部族と一般的な海賊を一緒にしない方がいい。

特に空島の彼らは対エネル用に考え、研鑽していたのだから、比べる相手を間違えている。

 

「何だアイツ!?くそ、手助けする気はなかったが……こうなっては仕方がない!!」

 

 外野にいたフォクシー海賊団の船長が、エネルへ手を向けた。

目隠しをしているエネルは、何かしてくるという敵意は感じても何をしようとしているのかは分かっていない。

特に、能力者の考えを読んでも意味が分からなければ何にもならない。

 

(ノロくしてやる……?)

 

 ふと疑問に思い、立ち止まったエネル。

そんな彼に、光線が放たれた。

 

「ノロノロビーム!」

「エネル!?」

 

 ビームがエネルにあたるが……一見何も変わらない。

しかし、彼の動きが鈍ったのは確かだ。

 

「なぁ~るぅ~ほぉーどぉ~」

 

 喰らって体を動かそうとして、想ったように動かせないことを確認したエネル。

もしこれを喰らったのが他のメンバーだったら、危なかっただろう……しかし、エネルは普通ではない。

 

「ぷぷぷ!!」

「おらぁ!」

 

 両サイドからタックルしてくる二人の気配を察知。

その攻撃を……雷となって回避して見せた。

 

「んなっ!?」

 

 タックルした二人はお互いにぶつかり合い、はじけ飛んだ。

エネルは上空で暫しそれを眺め、動きが戻ったところで落雷となって落ちてきた。

 

「ヤハハ、動きを遅くするのか。体感では時間は分からんが、変わった力を持っているな、貴様」

「お、お前、今どうやって」

「貴様がどの程度動きを遅くするのか知らんが、例え100分の1にしたところで、雷光を人が捉えられるわけなかろう?」

 

 ヤハハと笑う彼に、フォクシー海賊団の船長は呆然とする。

完全に相性が悪かった。雷の速度は秒速150km、条件次第では秒速10万kmを超える。移動手段である雷光だけで言えば、文字通り光の速さだ。これはジグザグに起こる通常の落雷で言えることであり、雷人間であるエネルは更に常識外だといえる。

 どのみちそうとう遅くしない限り、人が追える速度ではない。少なくとも多少喋れる余裕がある程度ならば、エネルにとってさほど変わりなどなかった。

 

 そうこうしているうちに、ゾロとサンジ二人に襲われていたボール役の魚巨人は……それはもう可哀そうなほどフルボッコだった。

身体がぬめるのなら、滑らない場所を攻撃すればいい。単純なことであり、それは相手も警戒していた。

しかし相手が悪いとはこのことだろう。特にここ最近は修練か拷問か分かったものじゃない攻撃を受け続けていたのだ、色々鬱憤が溜まっていたのも事実。

 

「さて、こいつ運べばいいんだな」

「すっげぇ滑るな……滑りとりには塩を……めんどくせぇ蹴るか」

 

 蹴られ殴られ、ボコボコにされた魚巨人は、オーバーキルとなる両者の蹴りを受けゴールへ運ばれた。

 

『あ、圧倒的だァ!っていうかえ、ボール役の人何したの?!』

 

 もはや実況者も状況を分かっていない中、堂々と戻る三人。

さぁ何が欲しい、と言われ、一時タイムを取る麦わらの一味。

 

「で、どうする?」

「船大工取るか?」

「いや、あんな奴らの仲間とか欲しくねぇよ」

「……ねぇ、次ルフィ対あっちのオヤビンよね?オヤビン取っちゃえば不戦勝じゃない?」

「その場合、確かに決着は着くけれど、同時にオヤビンが仲間になっちゃうわよ?」

「「「「あれはいらねぇ」」」」

 

 盗み聞きしていたオヤビンがショックを受けているが、放置して会話を続ける。

すると、そこで一味の視線が甘味であるわたあめを食べているミサカに集まった。

 

「? え、なに?」

「……そういや、空島から航海続きで食料が少ねぇな」

「なに!?そりゃ大変だ!」

 

 一大事だ、とルフィが騒ぎ出す。

どう考えても、小動物みたいに綿あめを食べているミサカが可愛いなぁと思ったサンジの暴走発言なのだが、止める者はいなかった。

 

「食料くれ!ありったけ!!」

「あ、ありったけか……何気に生命線えぐってくるな」

 

 船に積めるだけ食料を積み込み、最後の試合へと進んだ。

最後のゲームは「コンバット」。鉄球が落ちた場所から半径50m以内の場所が戦場となる。

円の中にあるものは何を使ってもよく、決闘者の二人以外は立ち入り禁止。相手を円から出せば勝利。

空中・海中では出たことにはならないらしいが、両者ともに能力者なため海中に沈めばそのまま沈むだけなので、自動勝利だろう。

 

「にしても、小狡いね」

「ヤハハ、まぁ祭りのようなものだ。多少は許してやろうじゃないか」

 

 打ち出された鉄球は奇麗に相手の船の真ん中に落ち、どう考えてもやらせだと分かるほど順調に円のラインが設置された。

最後の選手とセコンドは控室に連れていかれ、何やら着替えをするとのこと。

セコンド役はルフィの近くにいたウソップが連れていかれた。

 

「ま、後はルフィに任せりゃいいだろ。飲むか?」

「んー、私お酒はちょっと……気持ちだけ受け取っておくね、ありがとゾロ」

「みんなぁ~飲み物とポップコーン持ってきたよぉ~♪」

 

 上機嫌なサンジが女性陣に配り、男性陣は各々適当に場を見守る。

覇気の差で言えばルフィの方が上だろうが、ルフィは別に覇気使いではない。覇気として運用できなければ、それはただの気合である。

オヤビンこと敵の船長は今回のルールを熟知しており、戦場も相手の船。何かしらのギミックも用意しているだろう。

 

「ルフィが勝つよな?」

「どうだろうね。応援してあげればいいと思うよ?」

「おう!おれ、頑張って応援するぞ!」

 

 チョッパーが張り切り、他のメンバーは完全に観客に混ざっている。

あとはルフィが勝つだけ……どうなるかは分からないが、見守ろう。

 

「うがーーっ!アーイエーっ!」

 

 控室から出てきたルフィは、なぜかアフロを被っていた。

相手もそうだが、両者ともにボクシングのグローブを装着している。

 

『運命の第三回戦!コンバット、開始~~!!』

 

 開催されるが、ルフィの姿に少し不安を覚えてしまう。

 

「……ウソップがセコンドに着いたのが間違いだろ」

「………かっけぇ!!」

「やるなぁ!!魂が燃え滾ってる!」

 

 ゾロは呆れているが、チョッパーとサンジには好評のようだ。

ナミは真面目にやってほしいと呆れ、ロビンは余裕の笑みで見守っている。

ミサカは……どういうわけか何時もよりルフィの拳が鋭いような気がしていた。ウソップが何か言ったのだろうか?ルフィの強い思念から、思い込みの力が働いているように思える。

 

「なんだろうね?」

「まぁなんでもいいだろう。あとは奴しだいだ」

 

 始まった戦闘は、やはりルフィが苦戦した。

ノロノロビームという不思議光線に翻弄され、想うように攻撃できないようだった。

特に、伸ばした腕を狙われたり、調子を崩されるばかりで攻撃方法が限られてしまっている。

 

「ノロノロフォクシー顔爆弾(フェイスボム)!!」

 

 さらに相手は自分にも拘らず……もしくは自分の船だからなのか、武器の場所を完全把握しており、ルフィを一方的に遠くから狙い撃ち出来ていた。

しかしルフィも負けてはいない。身軽で丈夫な彼は生半可な攻撃では落ちず、しぶとく追い続けた。

 

「………たまに自爆してるのは、わざとかな?」

「いや、アレは素だろう」

 

 時折相手の船長が自業自得のダメージを受けることがあり、演出なのか油断を誘うためなのか疑問に思いながらも、試合は続いていく。

途中船内で戦いはじめ、ミサカ達からは様子が分からなかったが、大爆発が起きて甲板に二人の様子が見えた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 どう考えてもトゲパンチだけでは説明が付かない攻撃を受けたのだろう。

爆発は燃焼、ゴム人間のルフィにも効果がある。

ボロボロのルフィだったが、立ち上がって構えた。

フラフラなルフィにも容赦はなく、ノロノロの力を穴の空いた棒を通すことでノロノロビームソードを作り出した彼は、腕と足を止めた上で攻撃しだした。

 

『立ったぁ!!麦わらのルフィ~~!!』

 

 血だらけでフラフラだというのに、それでも立ち上がるルフィ。

なぜか観客たちもサンジもチョッパーもアフロがパワーアップポイントだと信じており、アフロパワーだと騒いでいる。

ノロノロビームを使い、一方的に殴り続けるオヤビンの方が疲れても尚、ルフィは立ち上がった。

 

「おれの、仲間は……誰一人、死んでもやらん!!!!」

 

 ――………ワァアアアアアアア!!!!!

 

 ルフィの仲間を想う一言に、観客の声援が起こった。

なんならルフィコールが巻き起こり、ペースが逆転したのを感じる。

フラフラなルフィにこれ以上戦えるとは思えなかったが、それでも彼は懸命に拳を振るった。

ノロノロビームを避けるだけの力も無くなっていたのだが、船内で拾っていたのであろう鏡の欠片を使い、ノロノロビームを反射……オヤビンの動きをノロくして見せた。

 

「アレは、超人系だから効く方法だな」

「そうだね」

 

 もしエネルの様な自然系なら、自分の雷でどうとなることもなかっただろう。

しかし、基本原形を保つ超人系は、影響を受ける。

例えばミサカなら、雷が落ちても無事だろうが、電熱で多少の火傷を負うだろう。その身が溶けても大丈夫な能力者ではないからだ。

 

「ゴムゴムのぉ――連接鎚斧(フレイル)!!!」

 

 腕を伸ばし、遠心力を使ってぶん回して威力を挙げたルフィ渾身の一撃が放たれた。

ノロくなったオヤビンの顔がゆっくり歪みだし……ビームを受け30秒後、彼は吹き飛んで行った。

 

『勝者、麦わらのルフィ~~~~~!!!!!』

 

 こうして、三本勝負に決着がついた。

ダメージが深かったのか、勝利コールを聞いて気絶したルフィをチョッパーが急いで治療した。

最後の決着で頂いたモノは……海賊旗。

これは最初から決めていたらしく、勝利の証として海賊旗を奪い、報復の証としておじいさんと馬に渡していた。

 

「お前ら………ありがとうよ」

 

 ルフィたちに礼をしたおじいさんは、一緒に自分の家へ一味を招待してくれた。

食料なら奪い取ったものがあるため、宴でも開くかとワイワイしながら彼の家へ向かうと………おじいさんの自宅の前に人が、立って眠っていた。

 

「なんだ、コイツ?」

「ずっとここにいたの!?」

「………んん?なんだ、お前ら?」

「「「「「いや、おめぇが何だ!?」」」」」

「強い、海兵さん?」

「木かと思った……」

 

 海軍の服を着た男を見て――ロビンの気配が急変した。

 

「……っ!!?」

「ろ、ロビン?」

「どうしたロビンちゃん!?」

 

 クールな何時もの様子は消え失せ、息を乱し、腰を抜かして怯え始めるロビン。

そんなロビンを見て、一味から敵意を受けながら男は笑って言った。

 

「………あららら、コリャイイ女になったな……ニコ・ロビン」

 

 これがロビンとこの男の二度目の邂逅……そして、麦わらの一味が初めて会う立場の人間。

 

「ロビン、知ってんのかコイツのこと!?」

「ハァ……ハァ……海兵、海軍本部〝大将〟よ」

 

 ――そして、ミサカが出会う二人目の、大将だった。




すっごく、ねむ――zzz

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