ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
というわけで、一名追加、若干?のキャラ崩壊在りです。
14話 修理、不可能
朝起きて、ミサカは身体の調子を確かめた。
怪我はすっかり治り、覇気も充実している。
ささっと着替え、誰もいない女子部屋から出て甲板へと向かった。
「あら、おはようミサカ。身体の調子は大丈夫かしら?」
「おはよ、ロビン。うん、もうすっかり……って昨日も言った」
「そうだったかしら、フフフ」
座って読んでいた本を閉じ、ミサカへ微笑むロビン。
今は余裕があるが、彼女には一番心労をかけてしまったらしい。
傷だらけで気絶したミサカが運ばれてきたとき、サンジ以上に狼狽えて右往左往していたらしい。
気絶していて残念に思っていると、ウソップが声をかけてきた。
「おー、おはよーっすミサカ」
「おはよう、ウソップ……それ、
「あー色々アイデアを形にしてみてるんだが、中々うまくいかないんだよなこれが……あ、修業はちょっと待っててくれ、直ぐ片付けっから」
「うん」
ウソップは空島の
最近ウソップは修業にも開発にも力を注いでいる。
彼だけではない、全員やけに考え、試行錯誤している。ルフィが身体中から煙を吹きながら海王類をぶっ飛ばしていたのは、記憶に新しい。
「……ねぇ、エネル、何してるの?」
「ん?ヤハハ、修業だ。心網を使わず、釣りをな」
目隠しした彼は、海王類を釣りあげては極力雷撃を使わず気絶させ、リリースを繰り返している。
彼なりに青雉に指摘された実戦経験の不足を補おうとしているのだろう。他にもゾロと
「――ん?おい、アレなんだ!?」
ルフィの声に全員が「アレ?」と首を傾げ、船の行く先を見つめる。
そこにあったのは、煙を噴き上げる鉄の塊と……カエルである。
「船か!?」
「あんな形で海を走れるわけないわよ!!」
ナミの言う通り、どう見てもアレでは浮かないだろう。
というか、船というかあれは……汽車に見えた。
汽車は突き進み、カエルはその前で仁王立ちしている。あの鉄の塊に挑むつもりらしいが、想像通り轢かれてしまった。
「………何だったんだ、今の?」
訳の分からない光景に戸惑いながら、メリー号が進んだ先に
島ではない、家である。そしてどうみても、そこは駅舎にみえた。
近づくと、こちらが海賊だと分かったのか通報を……。
「あーもひもひ……えっと……何らっけ!?忘れまひた!!ウィ~~!!」
通報を、しようとしたのが超酔っ払いのばあさんで、全く通報になっていなかった。
取り合えず今の物体に関して情報が欲しかったため、話を聞くために一旦船を止めた。
駅舎にいたのは、おばあさんと少女、それとペットのウサギだ。
「あたしチムニー!猫のゴンべと、ココロばーちゃんよ!」
「おめぇら列車強盗じゃね~だろうな?んががが!!」
変わった笑い方をしている老女とペットを紹介してくれるチムニー。
しかし、猫と言われた小動物は耳の形からしてしっかり兎なのだが……まぁ、余計なことは言わないでおこう。
女性に優しいサンジがパイユを振舞い、ナミが情報を聞きに行った。
さっきの汽車は『海列車パッフィング・トム』といい、造船島であるウォーターセブンを中心に海を走っているらしい。
「あのカエルは?」
「あいつはヨコヅナ。このシフト駅の悩みの種なのよ。力比べが大好きで、いつも海列車に勝とうとすんの。アレくらいじゃ死なないし、また現れるわよ」
ルフィが根性あると驚いているが、実際ぶち当たった列車は多少の頻度はあるが壊れ、お客にも迷惑が掛かっているという。
そしてそれはともかく、次の
「よーし、次の目標は決まりだな。メリー号を修理して、必ず船大工を仲間にするぞ!!」
パイユのお礼だと、ココロおばさんから島の地図と紹介状を貰った一行は、水の都ウォーターセブンへと向かった。
――
一味が次の島へ向かっているその時、男も一人、そこへ向かっていた。
「あぁ
海軍大将、青雉……彼はミサカにぶっ飛ばされた後、やはり無事だった。
しかしダメージは大きく、動くのがかったるかった彼は少し休憩してから自転車を漕いでいた。
「ログから察するに、次はウォーターセブンか……あらら、随分本部に近づいてるじゃないの」
「えぇ、そーですよ近づいてますよ」
「お」
自転車を漕ぐ彼の元へ、海軍の小型船が近づいてきた。
ソレに乗っているのは、若い海兵だ。
「おー、ト、と……トーマじゃねぇの。どうした?」
「どうした……じゃねぇよ!アンタが勝手に消えたから、探しに来たんだよ!!それと、ト・ウ・マ!いい加減覚えろ!」
「仮にも大将にえらい口のききようだなぁ」
「アンタが報告、連絡、相談、ほうれんそうをしっかりしてくれたら、もっとちゃんと敬うんですけどねぇ……!」
彼の名前はカミジョウ・トウマ。若くして海軍准将の位にいる、まだ齢16の少年だ。
「っていうかなんでお前さんなんだ?ほかに適任いたでしょ?」
「このだだっ広い海で、ちょっと行ってくるっていう書置きだけ残したあんたの車輪の後を、溶ける前に追わないといけなかったんだよ。直ぐ追えるのが俺しかいなかったんだよ。折角休日だったのに……不幸だ」
「あらら、まぁ悪かったな。詫びにこの先の街で奢ってやるよ」
「……え?」
休日を潰されたトウマが落ち込んでいると、流石に罪悪感が沸いたのか青雉……クザンがウォーターセブンで奢ると言い出した。
急に降ってわいた幸運に、トウマの目が点になる。
「マジか、それはマジなのですか閣下!久しぶりに固形物を食っていいというのですね!?」
「マジだ、マジだからその顔止めろ。……てかお前、日頃どんな生活してんだよ」
「日頃さばいてもさばいても終わらない書類仕事と実務を、サプリと栄養ドリンクを飲み回しながらこなし続け、何ヵ月ぶりかに訪れた休日すら潰された俺にも、まだ休息は訪れてくれるんだな……!!」
「悪かったって……お前、興奮するとそうやって変な口調になるのやめろ」
「サーイエッサー!!」
「だぁから……あぁもういいや、だるい」
クザンはトウマの船に乗り込むと、そのまま横になった。
奢ってもらえると聞いて上機嫌のトウマは、船を進ませる。
―――
水の都、ウォータセブンへ着いた麦わらの一味は、黄金の一部を換金し、その金でメリー号を修繕するために動いていた。
ただし、換金の為に動いていたのはナミ、ルフィ、ウソップの三人だ。
サンジとチョッパーはそれぞれ食料や薬品の買い出しにでかけ、ゾロは黙々と修業し始めた。
最後にロビン、エネル、ミサカは……服の買い出しだ。
「まさか、エネルの服が下半身しかないなんて……」
「おかしいとは思ってたのよ、いつも同じ服装なんだもの」
「ヤハハ、空島にはあまり気候に差が無くてな。それに私は雷、その気になれば熱など自在に生み出せた」
「でも目立ちすぎでしょ……その太鼓はどうにかできないの?」
「ん?私の能力で制御しているから、服を着るのには困らんぞ」
そういえば太鼓が雷になっていたのを思い出した。
というか、別に太鼓じゃなくてもいいのでは……。
「ヤハハ、まぁ丁度いいではないか。ミサカも下着が無いのだろう?」
「……周りの人が発育いいだけ、私も大きくなったら多分あぁなる」
ジーっと隣のロビンの一部を凝視するミサカ。
そう、デービーバックファイトで手に入れたミサカの衣服だが、大体がミサカよりサイズが大きい物ばかり。
服の丈を直すだけならともかく、下着の仕立て方など流石に知らない彼女が四苦八苦してきたのは言うまでもない。
「あら、これいいわね」
「ん?……ロビン、それスケスケ」
「えぇ、可愛いと思うわよ?」
「……からかってる?」
「ふふ」
「エネル、執事服とか似合わないね……」
「ヤハハ、私程誰かに仕えるということが似合わない存在もおるまい」
「だったらこれなんてどうかしら?」
「……それは、キグルミではないか。カエルか?」
「……………かわいい」
「「!?」」
久しぶりに、楽しい時間が過ぎていった。
青雉との戦闘以来、どこか緊張していたような様子があったことを心配していたが、ロビンがこの調子なら大丈夫だろう。
「――」
「!?」
三人が買い物袋を持って暫く歩いていると、ロビンが急に振り向いた。
今日は折角楽しいというのに、邪魔者はいるものだ。
「ロビン」
「……ミサカ?」
ギュッと手を繋ぐ。さっき通り過ぎた誰かは、もうどこかへ走り去っていった。
エネルならきっと追えるだろうけど、視線で止める。
今はメリー号の修理もある。あまり騒いで街を壊したりしたら、船を直してもらえなくなるかもしれない。
「そろそろ帰ろ?」
「………そう、ね」
「こっちからの方が近いぞ」
「ありがと」
エネルが先導し、ミサカはロビンと手を繋いで、三人で歩いて船へと戻った。
―――
ルフィたちはアイスバーグという、この造船島の総責任者のような存在と会っていた。
メリー号を直してもらえないだろうか、と聞きに来たのだ。
だが、船は直らない。
「んなはずねぇ!まだ修理すれば絶対走れる!!今日だって快適に走ってたんだ!!なのに、急にもう航海できねぇなんて……信じられるか!!」
「沈むまで乗りゃ満足か? ――呆れたもんだ。てめぇそれでも一船の船長か?」
ルフィは駄々をこねるが、しかしそれを一流の職人を束ねる立場であるアイスバーグが放った言葉に何も言えなくなってしまう。
何はともあれ、一時考える時間が必要だろうと船へ戻ることに。
「……あれ、こっち軽い」
「え、2億入ってるのよ、そんなわけ――これ、私たちのケースじゃないわ!?」
しかし、話し合いに集中している間に鞄がすり替えられ、4億あったうちの2億が消えた。
同時にウソップも消えてしまう。
誰か見てないかと聞けば、フランキー一家という解体屋に連れ去られたらしい。
探しに走るも、見つかる可能性は低い。
事実、ウソップは裏町にてボコボコにされていた。
「ハァ、ハァ……返せよ!!メリー号を直すのに、必要なんだよ!!!」
必死なウソップ、しかしフランキー一家は荒くれ者の集まり。
2億を奪い取り、去ろうとしたその時だった。
「はいはい、こんなとこで何してんのおたくら?」
ツンツン髪の海兵が、仲介に入った。
「なぁんだてめぇ!!」
「なんだって、まぁ一応政府の犬ってことになるのかな?悪いことしてるやつ見つけたら、捕まえるのが仕事なんだよ」
まぁ、本当は今日非番なんだけど、とぼやく海兵。
相手は海兵、ウソップは海賊……しかし、そんな立場を気にしている場合ではなかった。
ウソップは必死に海兵の元へ寄ると、その手を掴んで頼み込む。
「アレ、俺のなんだっ!!俺たちの、船を直すためにいるんだよ!!!」
「ギャハハ!!おいおい、海賊が海兵に頼み事かよ!?」
「頼む!!俺が弱いせいで、こんなことになっちまって……海兵のアンタに助けてなんて、筋が通らねぇよなっ! でも、でもッ!!」
頼み込むウソップの姿を嘲笑うフランキー一家。
暫し考えこむ海兵。今日は厄日だと確信しつつ、右の拳を握った。
「まぁ、非番だからな――海賊だのなんだのってのは、聞かなかったことにしてやるよ」
フランキー一家に対し、本日クザンを見失った上に迷子になっていたカミジョウ・トウマが、宣戦布告をした。
そこから先は、あっという間だったとウソップは駆け付けてくれたナミに語った。
ボロボロだったウソップには全てを把握できなかったが、フランキー一家を一人で追い返した上に、金を置いていってくれた。
海兵だというのに、休日で仕事に縛られていない親切な誰かさんとして、助けてくれたのだ。
「非番なのに軍服着てたっていうの……?」
「あぁ……そうだ、船、これで修理を……」
「……その話は戻ってからよ。立てる?」
ナミはウソップに肩を貸し、メリー号へと戻る。
そこで告げられるのは、もう船は修理できないという残酷な現実。
金があっても無理なのだ、一流の職人が揃ってそう言ったのだと、説明されるもウソップは納得しなかった。
「この船だぞ……俺たちが今!乗っている、この船だぞ!?」
「あぁ……沈む。そういわれたんだよ」
「一流と言われる船大工たちが、もう駄目だと言っただけで!!今までずっと一緒に海を旅してきた、どんな波も戦いも!!一緒に切り抜けてきた大事な仲間を、見殺しにするってんのか!!?」
叫ぶウソップに、ルフィも怒鳴り返しそうになるが、歯を食いしばって堪える。
「一味に船大工が居ねぇから……一流の腕を持った奴らに見てもらったんだろうがっ」
「ッそうかい、今日あったばかりの他人に説得されて帰ってきたのかよ!?メリー号の強さは知ってんだろ!!?」
「あぁ知ってるよ……俺たちは今まで、その強さに助けられてきたんだ」
ルフィとウソップは一味でも初期の方で仲間になった関係だ。
メリー号も、ウソップの島で手に入れたのだという。この二人にとって、メリー号は酷く思い出深いものなのだ。
だからこそ、そう。だからこそ。
「ウソップ、もう船は直らねぇんだよっ。それは、ハリボテ修理してきたお前が一番わかってんだろうが!!」
「っっっ!!!!!」
「船は、乗り換える……」
「ふざけんな!!」
「ふざけてんのはどっちだ!お前、メリー号はもう次の島に辿り着けねぇって言われたんだぞ?!この島に辿り着いたことすら、奇跡だって、一流の船大工たちが
「俺は傷ついた
「お前はもう治らねぇ程傷ついた仲間に乗って、沈むってのか!?お前は、メリーに俺たちを
「ッだから、それは直せば……なお、せば」
段々熱くなっていく二人。
しかし、ルフィの告げた言葉に、静けさが訪れた。
「……………」
「………ウソップ」
「………くそ、ちくしょうッ!ちくしょぉおおおおおおおおお!!!!!」
分かっていた。ウソップは誰より真摯に船に接してきた自覚がある。
ルフィたちだってこの船を大事にしてきたのだと、ちゃんとわかっていた。
「船は乗り換える……記録指針が溜まるまで7日ある。それまでに、皆で船を決めよう」
ルフィはそう言ってカタログを置いたが、彼含め誰もそれに目を通そうとはしなかった。
各々思うところがあるのだ、この居場所に。
その日は誰も喋らず、静かな夜が過ぎていった。
『ツンツン髪の海兵』カミジョウ・トウマ 准将
年齢16歳、特徴ツンツン髪。
大将クザンの部下として働いている。
彼は基本クザンや他の上司の仕事を押し付けられたり、無茶ぶりに応えたりしながら過ごしている。
部下にも気を使っており、人気者ではある。
しかし、何かあればまるで吸い込まれるかのように巻き込まれていく彼に、同情する声は多い。
日頃から忙しい彼だが別に今の職場に不満はないらしい。苦手な上司は赤犬ことサカズキとモンキー・D・ガープだという。クザンは何だかんだ自分のやることを許してくれることがある為、恩を感じている。
なお、彼は無能力者である。