ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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幕間 彼女の内心

 ニコ・ロビンにとって、麦わらの一味は単なる隠れ蓑のつもりだった。

七武海の一人、クロコダイルを倒した船長とその一味。ルーキーにしては実力は中々。

しかし、圧倒的に強いとは思えなかった。……彼女、エレクトロ・D・ミサカが現れるまでは。

 

 14歳にして1億5千万の賞金首になったばかりだという彼女は、悪魔の実以外にも不思議な力を秘めていた。

〝覇気〟と呼ばれるその力は、ロビンを驚かせた。

相手の動きを察知し、小さな少女が放てるはずのない、重い一撃を放つ。

磁場を操るバリエーション豊富な電気系の能力も合わさった彼女は、悪魔の実でも最強だと言われる自然系(ロギア)の能力者を、協力してだが無傷で倒して見せた。

 

 何時も無表情で、遺跡を探索してても戦ってても、彼女は動じない。

強いと思った、凄いとも、呆気にとられるとはきっとこういうことを言うのだろうと。

 

 

 ―――でも、違った。

 

 

 海軍大将青雉、彼と彼女は戦った。

彼女たちの戦いを、ロビンは見ていた(・・・・)。彼女の能力はこういう時便利だ。

まぁ、何をどうしているのかは、超人的な戦いすぎて彼女に把握できなかったが。

 ともかく、一緒に戦っていたエネルは倒され、ミサカも遂に凍り付いてしまった。

善戦していたが、やはり大将という壁は厚かったのだろう。

 もう、ここまでなのだろうかと、ロビンは正直諦めていた。それ以前に、疲れていたのだ。

8歳で賞金首になり、多くの人間に取り入り、裏切られ、追われ続けてきた。

気付けばすっかり大人になったのに、長い時間が経ったのに、仲間なんて出来なかった。

 

 そして、これまでの歩みから、彼女は麦わらの一味を信じていなかった。

船長であるルフィが認めてくれても、それでも、彼女の今までがソレを許容しなかった。

ミサカが、己を焼いてでも青雉にぶつかっていくその瞬間まで、仲間だなんて自覚はなかった。

 

(……ミサカ)

 

 同じ女子部屋で眠る彼女の頭を、起こさないように撫でる。

ボロボロになって、強大な敵にぶつかって、限界を超えて戦った小さな女の子。

ミサカは強い。でも、彼女だって負けることがある。少なくとも、大将相手に無事で済む子ではない。

 

(ごめんなさいね)

 

 彼女が自分を大事にしてくれても、護ってくれようとする彼女が無事でいられるはずがない。

裏切らないのだとしても、傷つき死んでしまうのかもしれないと思うと、怖くなる。

 

 そう、ニコ・ロビンは20年振りに、誰かを失うことに心底恐怖していた。

 

 そこまでにミサカが彼女に食い込んできたのは、ロビン自身予想外だった。

話すだけで心地よくて、着せ替えすると楽しくて、繋いだ手は温かかった。

 

 

 こんなに小さいのに、必死に守ってくれるミサカが―――怖い。

 

 

 深夜、寝静まったメリー号をロビンが降りていく。流石に意識が無ければ、見聞色は効果を発揮しない。

船のことで必死な一味を放っておくのは、非常に心苦しい。

しかしこの場所に甘えきって、誰かが、皆が死ぬと思うとどうしようもなかった。

 

「……もういいのか」

「えぇ……行きましょ」

 

 悪魔の実だろうか、空間を開けて(・・・)現れた大男に、ロビンはついていく。

 

「………さよなら」

 

 その呟きを、誰も聞くことはなかった。

 

 


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