ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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 エニエス・ロビー編本格始動です。
それと、CP9を少し強化しております。


15話 探索開始

 朝、ミサカは起きて違和感を覚えた。

何時もの女子部屋、いつもの寝床……しかし、そこから減っているものがある。

 

「……ロビン?」

 

 ニコ・ロビンの黒を基調とした衣服や鞄が消えていた。

ミサカが起きた時間は、まだ早朝。日が昇り始めたばかりの時間であり、この時間に鞄を持って外に出かける必要などない。

 

「っ」

 

 甲板、ラウンジ、倉庫、ユニットバス……思いつく場所は一通り探した。

男子部屋も少し扉を開けて確かめたが、やはり彼女の姿は無い。

 

「何をしている?」

「エネル……」

 

 欠伸をしながらゆっくりエネルが起きてきた。

彼は見聞色の覇気で周囲を把握している……ミサカが何を探しているのかも、もちろん分かっていた。

 

「分かっているのだろう。あの女は出ていった」

「……どう、して」

「ニコ・ロビンの選択だ。連れ去られようとしたならともかく、自分から出ていったぞ」

「なんで、止めなかったの」

「私の言葉で止まるなら、止めた。悪いが私にはあの女を止める言葉を持ち合わせてはいない。まぁどうするかはこの一味に任せる。私は新入りだからな、ヤハハ」

 

 それだけ言って、エネルは食料を求めてラウンジへと向かった。

ミサカは甲板の適当な所に座り込み、分かっている事実を纏め上げる。

 恐らく、ロビンは昨日の仮面の人物についていったのだろう。CP9と名乗っていたのを覚えている。海賊という雰囲気ではなかった。もっと、何かに忠実な職人の様な気配。

 

 ――恐らく、海軍。

 

 理由は、きっと大将青雉が言っていた過去絡み。8歳にして賞金首になったという経歴が関わっているに違いない。

 

(………ロビン、どうなるんだろ)

 

 賞金首が政府に捕まればどうなるかなんて、考えるまでもない。

単純に死刑か、学者であるロビンの知識を求めて拷問か……どのみち碌な目に合わないだろう。

そんな子供でも分かるようなことを、彼女が理解できていない筈がない。

 となると、自らそんな状況に陥ったのには理由がある。

きっと、ミサカ達が関係しているような、理由があるはずだ。

 

 その数十分後、起きてきた一味にロビンが消えたことを説明した。

全員が神妙な顔つきになったが、それでも万場一致でやることは決まった。

 

「何も言わねぇなんて、納得できねぇ。探すぞ!」

 

 ルフィの言葉に全員が賛同する。

一味を抜けるというのに、何も言わず勝手に居なくなるなんて誰も飲み込めない。

ロビンの意思をハッキリ聞く為に、麦わらの一味は数人ずつチームに分かれ、ロビンを探すことにした。サンジはフットワークの軽さから自分は一人で探した方が効率がいいと言って、駆け出して行った。きっとロビンが心配でならないというのもあるのだろう。

 しかし、流石20年世界政府から逃げ続けた女性。彼女の行方を追うのはかなり困難だった。

 

「エネル、どう?」

「むぅ……ウォーターセブンにはいる、のだが……どこかハッキリしない。違和感が強い」

「違和感?」

「そうだな……気配が薄い……いや、何かに隔たっている?」 

 

 島を覆うほどのエネルの見聞色でもハッキリロビンの居場所が掴めなかった。恐らく何らかの悪魔の実の能力者が関わっているだろう。

となると、情報が必要だ。昨晩消えた彼女と大柄な仮面の人物。美女と野獣というわけではないが、このコンビは目立つはず。

 そう考え、聞き込みを開始したのだが、此処でさらに想定外が重なった。

 

 

 ――市長アイスバーグ、撃たれる。

 

 

 昨晩(・・)、何者かに撃たれ部屋で倒れている彼を社員が発見したらしい。

英雄と言われる程慕われている彼が暗殺されかけるなんて、町中あり得ないと大騒ぎしていた。

生きてはいるが、昏睡状態である……この情報は町中にあっという間に広まり、ロビンの情報をかき消していた。

 

「どうしよう……どうしようっ」

 

 町で聞き込みを続けていたミサカは、焦ったように呟いていた。

同じ時期に消えたロビンは絶対無関係ではない。だが、街の人間はロビンのことなど碌に知らない。

寧ろ、彼女の消息なんてアイスバーグに比べれば、この街の人間にしたら二の次な情報なのだ。

 

 さらに運の悪いことは続いた。

 

 アクア・ラグナという特大の高潮が訪れた。

とんでもない大津波を引き起こすというアクア・ラグナ、高い場所に避難しなければ無事では済まない。

メリー号を安全な場所に移動させなければいけなくなったため、ウソップ、ナミ、チョッパーの三人は場所を借りに行くことになり、人手が一時的にではあるが減ってしまう。

 

「――落ち着け」

 

 ポンっと大きな掌が焦るミサカの頭を撫でた。

ゴツゴツした硬い手、ゾロだ。

彼は強いし頼りになるのだが、道に迷うためミサカと一緒に聞き込みしていたのだ。

今は迷子を捜す時間も惜しいというナミの英断である。

 

「色々あって混乱すんのは分かるが、テメェがしっかりしねぇでどうすんだ?」

「ゾロ……でも、多分市長さんの件にロビンは関わってる……タイミングが合いすぎてる」

「だとしても、だ。お前、んな(ツラ)であの女に会うつもりか?」

「?」

 

 彼女は自身の顔を触ってみるが、何時もの無表情。

一体何が言いたいのだろうと、ゾロを見上げるミサカ。

そんなミサカに、彼は呆れたように言葉をかけた。

 

「これでもお前と寝食を共にしてんだ……泣きそうな雰囲気位は分かる」

「……わたし、泣きそう?」

「あぁ。迷子になったガキみてぇだ」

 

 わしゃわしゃと乱暴に撫でた後、ゾロはしっかりと見上げるミサカに視線をぶつけた。

 

「いいか、元々ロビンは敵だった奴だ。それを仲間に入れたのはルフィの野郎だ……アイツの気まぐれだろうが何だろうが、船長(キャプテン)の決めたことに従うのが船員(クルー)だ」

「うん……分かってる」

「いいや分かってねぇよ。いいか、船長命令で散らばって探してんだ。もし俺らが見つけたら、場合によっちゃぁ俺らが船長代理(・・・・)も兼ねて、あの女の意思を聞かなきゃならねぇ。そんな立場の奴が、んな顔してんじゃねぇよ」

 

 それはきっと当たり前のことであり、同時に仁義とかプライドとか、海賊をやっていくには重要なことだった。

それをブレずに強い意志を――覚悟を持って行動しているゾロは、立派な船員(クルー)だった。

 

「………ゴメンなさい」

「分かったらシャキッとしやがれ」

「うんっ」

 

 気合を入れなおし、冷静を意識して頭を切り替える。

ロビンと関わりがあるであろう事件……本人が昏睡状態だというが、待っていられる状況ではない。

もし彼女がこの事件に協力していた場合、一味はウォーターセブンに居られなくなるだろう。

 

「――よし、ゾロ。今すぐ市長さんに会いに行こ」

「あ?……なるほど、確かに手っ取り早そうだ」

 

 ゾロは剣士だが、察しが悪いわけではない。

もし関係があるのだとしたら、うまくいけば市長からロビンの消息が掴めるかもしれないのだ。

市長が眠っているという本社には山ほど人が居る。多くの守りをすり抜ける必要がある。

 

「だから、ゾロ。私の手を放しちゃダメ」

「俺は子供じゃねぇぞ……」

「迷子になられたら困る。それに――」

「……おい、何して」

 

 バチッと紫電が跳ねたミサカを見て、嫌な予感がゾロを襲った。

この感覚は……ルフィが無茶やる時によく感じているソレに近く、ほぼほぼ確信でもある。

 

落とすわけには(・・・・・・・)いかないから(・・・・・・)

「このっバカやろぉおおお!!??」

 

 磁場を操り、身を覆うほどの砲身(・・・・・・・・・)を作り出し、撃ちだす(・・・・)

一人(ゾロ)分負担があるが、彼の腰の刀も使って多少軽減しながら―――ミサカはガレーラカンパニー本社、その屋上へぶっ飛んで行った。

 

 

 ―――

 

 ルフィとエネルは高い場所から辺りを見渡していた。

船から気配を探って見つからないなら、その周辺に赴いて精度を上げればいいと考えたのだ。

ルフィはゴムであり、エネルが雷化しても覇気を使わず触ることが出来る。移動時間は文字通り瞬時だった。

 

「……やはり、分からんな」

「見つかんねぇなー……ん?」

 

 ふと、ルフィがおかしなものを見つけた。

事件が起きたり津波が来たりする中、裏町で暴れる影が二つ。

それは偶然にも、彼らの方へと向かっていた。

 

「何か来るぞ」

「一人は海兵みてぇだ……もう一人は、海パン?」

 

 首を傾げてしまうが、確かにもう一人の男はサングラス、アロハシャツに海パンという恰好。

堅気の人間には見えないし、裏町を壊しているのは十割彼の様だ。

 

「待ちやがれぇ!!」

「不幸だぁぁ~~~!!!」

 

 ツンツン頭の海兵を見て、ルフィはふとウソップを思い出した。

そういえば、彼が救われた相手というのがツンツン頭の海兵ではなかっただろうか?

 

「エネル、わりぃちょっと行ってくる」

「なに?」

 

 返事は聞かず、既に跳んでいた。

海兵ならば、海賊や街の人間が把握していないロビンの居場所を知っているかもしれない。かなり親切なようだし、教えてくれるかも、と。

 

「なぁお前」

「今度は何だよ!?」

 

 急に隣に現れたルフィに驚く海兵。

しかし、ルフィは気にせず言葉をつづけた。

 

「俺、ルフィ。ロビン探してんだけど、知らねぇか?」

「あ、あぁ俺はカミジョウ・トウマ。ロビンって、ニコ・ロビン?」

「おう、今朝から姿が見えなくてなぁ。あ、そうだウソップが世話んなったな、ありがとよ!」

 

 しししっと笑うルフィを見て、海兵――トウマはキョトンとした。

まずトウマは長鼻の青年と自己紹介をしていないので、ウソップという人物を認識できず、ニコ・ロビンを探しているという言葉の答えは勿論知らないとしか言えない。

 

「悪ぃんだけど、俺も朝からアイツに追われててな……」

「何かあったのか?」

「いや、昨日鼻の長い奴の金を盗もうとしてたやつらの親玉みたいで……俺、あいつの子分追い返したからなぁ」

 

 正確には子分の半数を一人一発ずつKOして、という言葉が着くのだが、まぁそれは置いておいて、今ある状況を簡潔にだけ説明した。

 

「困ってんのか?」

「まぁ、流石に街を破壊されるのは「ストロング(ライト)!!!」ちょっと、な!」

 

 迫ってくる鎖で繋がった(・・・・・・)拳を、右手で払いのけたトウマ。

上空へハネ上がった拳は、壁に当たると罅を作り、鎖によって海パン男の元へと巻き戻っていった。

 

「何だアイツ、能力者か?」

「いや、改造人間(サイボーグ)って言ってたな」

「へぇ……何でもいいや、助けてやるよ」

「え?」

「ウソップ助けてくれた恩もあるからな。あ、そうだ。ロビン見つけたら連れてきてくんねぇか?」

「……お前、それだと新しい恩が生まれないか?」

「にしし、ってことは断んねぇんだな。お前変わったやつだなぁ、おれ海兵嫌いだけど、お前気に入った!」

 

 そういうと、一緒に走っていたルフィは立ち止まり海パン男の方へと振り向いた。

 

「おい、海パン野郎!」

「アァン!?なんだおめぇ!」

「俺ルフィ、悪ぃけど、コイツには貸しがあるんだ。こっからは俺が相手だ!!」

 

 啖呵を切ったルフィを想わずカッコいいなコイツと思ってしまうトウマ。

しかし、断っていないとはいえ、自分はニコ・ロビンを連れていくとは言っていないのに、まるで味方に話しかけるようなこの陽気さ。

 

(………モンキー・D・ルフィ、か)

 

 脳裏に浮かんだとあるおじいさんを思い出すほどそっくりな彼。

しかし、あの爺さん程滅茶苦茶理不尽というわけでもないようだ、と何となく協力する気になってしまったトウマ。

 

(流石に、海賊に全面協力ってわけにはいかないけど、悪い奴じゃなさそうだしなぁ)

 

 背後で改造人間を止めてくれる麦わら帽子の海賊。

ニコ・ロビンに関しては、『悪魔の子』だとか色々言われているのは知っているが、そんな噂くらいしか知らない。

もしかしたら、彼の様に悪い奴(・・・)じゃないかも(・・・・・・)しれない。

 

「ま、会ってから考えるか」

 

 海軍の正義(世の為)を考えるのならば、絶対あり得ない行動。

しかし、カミジョウ・トウマにその正義は適用しない。

もしそんな聞き分けの良い人物ならば、彼はこんな苦労人ではなかっただろう。

海兵にはそれぞれが掲げる正義(・・)がある。トウマも、それに従って行動していた。

 

「まずは情報収集だな。なんか騒がしいし、皆色々喋ってくれそうだ……結局忙しいな、俺。今日は書類仕事を片付けるつもりだったのに」

 

 こうして、ニコ・ロビンを追うメンバーに、一人の海兵が加わった。




ロビン……CP9協力。消息不明。
ミサカ&ゾロ……聞き込み後、アイスバーグに話を聞くために本社へ直撃訪問。
ウソップ&ナミ&チョッパー……メリー号を安全な場所へ。
サンジ……聞き込み、脚の速さを生かして単独爆走行動中。
エネル……勝手に暴れだしたルフィを無視し、見聞色の覇気をメインに探索。
ルフィ……トウマを探索に誘い、自分はフランキーと戦闘開始。
トウマ……持ってきていた書類仕事を後に回し、ウォーターセブンの現状を把握するため情報収集へ。
青雉……トウマに仕事を押し付け、ロビンの選択を観察中。

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