ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
ガレーラ本社は燃えていた。
避難できるものは避難していたし、消火作業もしていたがそれもままならない状況だった。
「おい、気を付けろ!
消火作業が一向に進まない理由、それは上から降ってくる瓦礫のせいだった。
どういうわけか知らないが、上階が斬られたり吹き飛んだりして落ちてくるのだ。
危ないが、かといって火事を放っておくわけにもいかない。
「何が起きてんだ!?」
職人たちがそうぼやくのも仕方ないだろう。
現実的ではない光景。しかし、それを起こしているのは二人の人間である。
「ハァ……くそ」
「………」
両手足を黒く染め、瓦礫や鉄くずを磁力で操り
今までの人生で、彼はこの瞬間程苦戦した時は無いだろう。
そもそも月歩で浮かんでいないと勝負すらできないなんて、ふざけている。
「だが、もういいようだ」
「?」
「生命帰還」
一瞬下を確認したルッチ。
グググっと彼の身体が巨漢に戻り、さらに片腕がどんどん太くなっていく。
「むんっ!!!」
放たれたのは、単純な拳撃。
しかし、強化された腕で振るった全力の拳は、瓦礫を崩し、粉々にし――その姿を砂煙で隠して見せた。
砂煙だけでなく、黒煙も相まって全く姿が分からなくなる。
「……え?」
見聞色で追おうとしたその瞬間、急に
いや、恐らくこれがエネルが言っていた隔たっているような感覚なのだろう。
「………………向こう?」
慎重に気配を探り、少女は後を追おうとして……火事を起こし、瓦礫の山となった本社を申し訳なさそうに見つめた。
「………ごめんなさい」
意味は全くないのだが、ペコリと一度頭を下げて彼女は去っていった。
***
ルッチを助けたのは、ドアドアの実の能力者であるブルーノ。
彼のエアドア―――空気の壁をこじ開け、隣接している亜空間へとつなげる技で難を逃れたのだ。
「……お前がそこまで苦戦するとはな」
「仕方ない、アレは化け物だ」
CP9でも屈指の実力者であるルッチが認める程、ミサカは強かった。
しかし、やはり詰めが甘い。ニコ・ロビンの行方を聞きたいがために、彼女はルッチを一撃で倒せる威力の攻撃をしてこなかった。
もしルッチならば、一度意識を刈り取った後で拘束し、聞き出すだろう。
「まぁいい。海列車がもうでるのだろう?急ぐぞ」
「あぁ」
彼らは、海列車がもう出発している可能性まで考え、大急ぎで向かった。
しかし、そこには予想外の光景があった。
「どけどけー!!!」
「邪魔だ海兵どもーー!!」
「「「「「アニキを返せぇえええ!!」」」」」
大暴れするフランキー一家と、それを止めようとして吹っ飛ばされる者。
そして、
海兵たちが必死になっているが、少しずつフランキー一家が押し込んでいる。
「なんだ、この状況は!?」
エアドアから出たルッチの第一声から、彼の内心の荒れ具合が察せられた。
海列車にはもしもの為に海兵を待機させていた。少なくない数だったはずだ。
それらが勢ぞろいで迎え撃って、この様なのだ。
「……あの雷が邪魔だ、ブルーノ」
「言っておくが、長くは保たんぞ」
「問題ない」
「エアドア」
上空に巨大な門――扉が現れ、降ってくる雷を亜空間へと送り込むことで無効化した。
規模が大きいと消耗が激しいため長い時間は持たないが、その隙にルッチが駆け出し、フランキー一家を手当たり次第に制圧していく。
「遅かったのぅ」
「カク、貴様何だこの様は!」
「知らんわい。全く、予想外想定外規格外でな。海列車の発車時刻だというのに、お陰でどうしようもできんかった」
「御託は良い、蹴散らすぞ」
そうしてフランキー一家がやられていく中、厄介な人影を認識した。
此方へ走ってくる、二つの影。一人は麦わら帽子を被っており、もう一人は黒服の金髪で眉毛が特徴的だった。
「「邪魔だぁあああ!!!」」
海兵たちをなぎ倒しながら、海列車へと駆け出す二人。
フランキー一家の相手をしている彼らに止めることは出来ない。
「おのれっ」
「アニキはどこだ!!」
フランキー一家がボロボロになりながらも立ち塞がる。
「貴様ら、死にたいようだな」
「ぅ」
「――どけ、交代だ!ゴムゴムの、スタンプ!!」
圧に思わず怯んでいる彼らの頭の上を跳び越え、麦わら―――ルフィがルッチへ蹴りこんだ。
それだけではなく、海列車へと集合する人影が複数……棒を持った女、鼻の長い男、小動物。
全員、恐らく麦わらの一味だと彼は気づいた。
「チッ、次から次と!」
「そう易々と」
「入らせはせんわい」
ルフィとルッチの横をカクとカリファが駆け抜け、止めようとする。
しかし、それはエネルが放った雷によって止められる。
直撃はしていないが、それでも余波だけで十分動きを抑制できる。
ナミ、ウソップ、チョッパーの三人は戦闘せずそのまま海列車へ乗り込んでいった。
「ヤハハ、遅かったなぁ!ロロノア!ミサカ!」
「ごめん、ゾロが迷子になってた」
「チッ、迷子じゃねぇ」
更にエネルは背後へ声をかける。
ゾロは極度の方向音痴、それを見かねたミサカが、腕を引っ張るようにして連れてきたのだ。
「大体てめぇこそ、行き成り現れて海列車へ来いとか、急過ぎんだよ!!」
「仕方なかろう、雑魚を放っておけばあっという間に鎮圧されてしまうからな」
フランキー一家を焚きつけたのはいいものの、やはり彼らでは戦力不足。
従って、戦っている間にエネルは一味を雷速で呼び出し、ついでに強そうな気配に落雷で攻撃していたのだ。
「ほれ乗り込め」
「言われなくともっ」
ゾロとミサカが乗り込み、ルフィも続こうとして、高速で動くルッチの動きに翻弄された。
蹴りが外れ、ルッチの拳によってぶっ飛びそうになるところを、たたらを踏み耐える。
「強いな、コイツ」
「どけ、交代だ。私にはあの女を止める言葉が無いが、貴様らは違うだろう?」
「っ頼む!」
ルフィが駆け出し、ルッチの真横を素通りしていった。
ルッチはエネルを警戒しており、ルフィのことを完全に無視している。
「……先ほどから降っている雷、お前の仕業だな」
「ヤハハ、まぁな。雷だけ降らせても、海列車とやらの運航を邪魔できるか微妙だったが、うまくいってよかった」
「フランキー一家を焚きつけたのもそうか」
「あぁ、弱者の願いを叶えるのもまた一興だろう?私のついでだ」
「見たところ、
ルッチは懐を漁り、少しゴツイ手袋を取り出した。
他のCP9も棒やハンマーなど、海楼石で作られた武器を取り出した。
「未だ武装色は修練中で使えないのでな……貴様相手にはコイツがいる」
「ヤハハ……海楼石か」
手袋には能力者であるルッチに影響を及ぼさないように、外側に海楼石が仕込まれていた。手の甲の部分など、分かりやすく大粒の石がはめ込まれている。
確かにそれならばエネルも捉えることが可能だ。
「……ん?」
蒸気機関の音が鳴りだし、海列車が発車の準備を完了していた。
「お前たちを置いていく気か?」
「なに、貴様を排除したら乗り込むだけだ」
「ヤハハ……不愉快な」
***
走る、走る、走る。
海列車に突入した一味は止まらない。
列車の中には海兵が待ち構えているが、知ったことではない。
「麦わらの一味だ!」「止めろぉ!!」「「「「「おおぉおおおーーー!!!!」」」」」
「「「「「「「邪魔するなぁああ!!!!!」」」」」」」
ゴムの拳、飛ぶ斬撃、鉄を砕く脚、破裂するパチンコ玉、棒術、獣の拳、雷撃。
数で言えば7人、しかしその威力は並の海兵がどれだけ束になっても防ぎきれるものではない。
大佐も、特殊な体術を体得している者も、CP9になり立ての者も――全員、蹴散らされていく。
そして、最後の車両へとあっという間に辿り着いた。
「ハァ………ロビン!!」
「………」
「な、なんだぁ!?」
「麦わら……」
トウマがロビンの対面に座り、隣にはアロハシャツの大男がグルグル巻きにされて同じ車両に放り込まれていた。
しかし、用があるのはロビンだ。
「探したぞ、ロビン!」
「ロビンちゃぁぁん!無事だったかい!?」
「ロビン、一緒に……――」
伸ばしたミサカの手は、パシンッと乾いた音を立ててロビンに払われた。
思わず呆然とする彼らにロビンは……。
「………なにをしているの」
「なにって、私たち、迎えに」
「誰もそんなこと頼んでない!!私は、自分から進んでこうなってるのよ!!」
「ロビン、お前なぁ――ッあぶねぇ!?」
ルフィは見覚えのある
直前までミサカが居た場所の直上が凍り付き、砕け散った。
降りてきた人物は、つい最近麦わらの一味が出くわした人物――大将、青雉。
「それでいいんだな」
「ッ」
歯を食いしばり、こちらを見ずに頷いたロビン。
それを合図に冷気が一味を吹き飛ばそうと牙を剥いた。
「ロビンッ!!!」
冷気を阻むのは、ミサカが突き出した両腕から吹き荒れる電熱。
しかし前方にはロビン、後方には仲間がいるこの狭い場所では、ミサカの本領を発揮することはできない。
武装色で防いでいるとはいえ、段々とミサカの腕が凍っていく。
「ミサカちゃん、腕がッ!?」
「ミサカ、無理しちゃダメだ!!」
サンジやチョッパーの心配する声を背に、大将すらその眼に入れずミサカは叫んだ。
彼女だからこそ
「……寂しいんでしょ、一人は嫌なんでしょっ」
「……」
「ずっと、ずっと、
ミサカの見聞色は、
特にマイナス、人の負の感情に敏感だ。
一味はそれぞれ
その中でも、ロビンの感情は大半が悲しいものばかりだ。
悲しくて、辛くて、寂しくて…………夢に幼いロビンが出てくるほどに、彼女の傷は深かった。
もしミサカに真っ当な感情があったとしたら、彼女はロビンに
「でも……みんなが一緒だと、心地いいんでしょ?」
麦わらの一味は過去を気にしない。
彼らはいつだって
「邪魔する奴は倒すからっ。私たちが、護るから!行こう!!」
「ッ――私は、それが嫌なのよ!!!」
ミサカの言葉が琴線を触れたのか、遂にロビンが叫んだ。
それが本心だと見聞色を使わなくても誰もが分かった。
「貴女達は強いわ!だけど、最強でも無敵でもない!!傷ついて、ボロボロになって、いつか死んでしまう!!」
「……」
「死ななくても、死ぬようなことが続けばいつか私を捨てるに決まってるっ。そんなのゴメンよ!!!」
「だそうだ、諦めろ」
ロビンの叫びが終わると、一層冷気の勢いが強まった。
青雉が本格的に一味を排除しようとしているのだ。
「う、邪魔をっ」
「……お前らもいい加減にしとけ。この女は、お前らの為に取引してんだぞ?」
「え」
「島一つ滅ぼすバスターコール。その引き金を大将命令でCP9に預けてある」
「……ッ! 私達を、人質にしてるってこと?」
「まぁな」
「このっあぐゥ?!」
ミサカが何か言う前に、青雉に蹴り飛ばされルフィたちに受け止められる。
見ればCP9が窓を破り、青雉の背後に揃っていた。
青雉は、彼らが揃うのを待っていたのだろう。
「待――」
「
同時に外から雷撃がやって来た、エネルだ。
片脚が凍っており、頬には殴られた跡がある。青雉はミサカ達に冷気を飛ばしながら、ルッチ達が逃げる隙を作っていたらしい。
「……ダメだったか」
「ルフィ、私」
「大丈夫だ……俺も納得してねぇ」
ルフィはポンっとミサカの頭に手を乗せた。
わしわしと乱暴に撫でる彼の力強い手は、少しだけミサカをほっとさせる。
「俺らが死ぬとか、裏切るとか、ありえねぇこと言いやがって」
「……そうだね、海賊王と神、それに世界一の大剣豪になる男が居るんだもんね」
「にしし、まーな! だからミサカ、おめぇ
「?」
見上げると、ルフィが真剣な表情で彼女の両腕を見つめていた。
武装色の上からとはいえ、しっかり氷が張り付き、凍傷になりかけている両腕を。
彼らを、庇ってできた傷を見ていた。
「俺たちは負けねぇ。だから、お前も負けんな」
「……うん」
「ミサカ、治療しないと!」
「うん、お願い」
アクア・ラグナが接近する中、彼らは傷を癒した。
「え、エネルの旦那!アニキは?!」
「ん?ヤハハ、すまんな!忘れていた」
「「「「「えぇぇ!?」」」」」
「まぁ安心しろ、どうせニコ・ロビンの元へ行くつもりだ。ついでに取り戻してやろうではないか」
「「「「「さっすが旦那だぜ!!」」」」」
……一団、おかしいのが混じってはいたが。
エニエス・ロビー編、大将青雉参戦です。
明けました、おめでとうございました。
年末は帰省してPCに触れず、年始は仕事が始まりました……皆さんも大変でしょう、頑張ってください。