ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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20話 いざ、エニエス・ロビーへ!

 チョッパーに傷を診てもらったミサカは、直ぐに海列車を追おうと立ち上がった。

あの速度に追いつくのは無理かもしれないが、追わない選択肢は無い。

 

「ルフィ、行こ」

「おう!」

「待て待て待て、どうやって行くつもりだ?お前らの船はもう動けねぇだろうが」

 

 パウリーの言う通り、メリーにこの荒波を超えるだけの力は残ってないだろう。

去っていく海列車を追うための手段がない……否。

 

「だったら船貸してくれよ!いや、海列車もう出ねぇのか!?」

「海列車はこの世に一台きりだ。ありゃ奇跡の船なんだぞ」

「じゃぁ船貸してくれ。一番強くて速ぇやつ!」

「無茶言うな?!アクア・ラグナが来てんだ、海になんて出せるか!!ガレオンですら一発で粉々だぞ!」

 

 特に今年のアクア・ラグナは潮の引きが強く、返ってくるであろう波はもしかしなくとも過去最高になるだろうと彼は予測していた。

海に出れば死ぬと分かっていて、船を貸す船大工はいない。

 

「朝を待て。嵐が過ぎたら船くらい貸してやる」

「――いいや、それじゃおせぇよ」

「なっ!?アイスバーグさん!」

 

 諭そうとしていたパウリーに割り込んできたのは、アイスバーグだった。

この島一番の出来る男は、厳しい現実を告げる。

 

「海列車が向かった先はエニエス・ロビー。犯罪者はそこに連行されることそのものが罪人の証とされ、そのまま碌な裁判もなく素通りし……向かう先は海軍本部か、深海の大監獄の二択のみ」

「……それって、じゃぁ」

「あぁ。朝までなんて待ってたら手遅れだ――だから、出してやるよ海列車」

「ホントか、おっさん!」

 

 大喜びの一味だったが、パウリーは焦った様子で止めに入った。

 

「海列車がもう一台……!?い、いや、馬鹿言っちゃいけねぇ!!あそこは要するに『世界政府』の中枢に繋がる玄関(・・)だぞ!?海賊だけならまだしも、アンタまで世界政府に喧嘩売る気ですか!?」

「………悪いなパウリー。俺もあの人の弟子だ。バカは放っておけねぇのさ」

「ッ」

 

 意志は固い。そう捉えるだけの返事を向けられ、口を噤んだ。

代わりにアイスバーグは麦わらの一味を見渡し、一つだけ注意点を告げた。

 

「ただ今から連れてく海列車は欠陥品でな。スピードが抑えられない暴走列車だ。命の保証はねぇが、いいか?」

「おう!」

「大丈夫」

「「暴走、列車……」」 

 

 少しドン引きしているウソップやチョッパーも引き連れ、麦わらの一味は暴走列車……『ロケットマン』へと向かった。

先頭車両にサメの頭が付けられた海列車は格好良かったし、これならとんでもない速度が出る。文句はない一味は乗り込もうとして、ふとミサカが一つ疑問を呈した。

 

「ねぇ……人多いけど、いいの?」

「あ?誰のことだ嬢ちゃん?」

「おれ達のことじゃねぇよな?」

「うん、貴方たち」

「「えぇ!?」」

 

 職長の二人、ピープリー・ルルとタイルストンが驚くが、他にも人が居た。

 

「ヤハハ、ちなみにそこの雑兵は私の手下として連れてゆくぞ」

「兄貴を助けるんだ!よろしくお願いしやす、旦那がた!」

「いや、お前らがいいんなら良いけどよ……?」

 

 フランキー一家の連中を引き連れ笑うエネル……騒がしいにもほどがある。

サンジが兄貴と旦那を連呼する一行を呆れた目で見るが、正直戦力は幾らあってもいい。

なにせ相手は世界の正義を名乗る者達に繋がる場所。敵は、多く強大である。

 

「……俺は付いていきますからね」

「あぁ、好きにしろ」

 

 騒がしい面々を眺めながら、パウリーとアイスバーグは準備を進めた。

数分後、暴走列車が発進し、エニエス・ロビーへと向かう。

 

 

 麦わらの一味+α一行が暴走海列車で荒波をかき分け進んみ始めた頃。

半壊し一両のみになった海列車の中にロビンが座り、フランキーは鎖で縛られ放られていた。

 

「あー、ちょっとすいませんねー」

「……?」

 

 そんな二人を大将とCP9が囲む中、トウマがロビンの前に座った。

元々トウマはルフィの頼みで彼女を探していた。

奇しくも捕まった後であり、協力できる状況ではなくなっていたが……それでも、あの船長が気に掛ける者がどんな人なのか、知っておきたかったのだ。

 

「俺、カミジョウ・トウマ。色々急でな、状況を呑めずにここに居るんだ。良かったら話を聞かせてくれないか?」

「………私に?」

「賞金首、悪魔の子……そう言った肩書なしでさ、お前の話(・・・・)を聞かせてくれよ」

「………」

 

 チラッとロビンが他の面々の様子をうかがった。

他の者は理由を知っている者ばかり。寧ろ知らないのか、という視線をトウマに向けていた。

 

「概要は知ってるけどさ、当事者から聞きたいんだよ。……そこにいる()()()()()()出来ない大人は、面倒くさがって話したことねぇしさ」

 

 ジトッと椅子に座り込んで寝ている大将青雉ことクザンを、よりによってダメ人間だと豪語するトウマ。

この大将は確かにロビンを気にかけていて、突如として消えては本部にふらっと帰ってきたりする。勿論、その間迷惑を被るのは他の軍属者であり、ここ最近はトウマの役割だった。

 一応補足しておくが、それでも大将である。道すがら(ついでに)億越えに至るであろうルーキーや実力者を倒しては牢屋にぶち込んでおり、ちゃんと活躍しているし尊敬もされている。ただ、副官に好かれないだけである。

 

「………いいわ、聞かせてあげる」

 

 直属の上司である上に大将青雉をここまで言っても咎められないトウマを見て、話してもいいと判断したロビンは口を開いた。

『オハラ』という島に住んでいたこと。そこにはたくさんの学者が居て、色々な世界の本があって……ポーネグリフがあったこと。

 

 ――そのポーネグリフから古代の歴史(・・)を探っていた彼らは、島ごと葬られたこと。

 

 別に世界の秘密を公言するつもりも、過去の古代兵器を復活させる気もなかった彼らは、学者でもない島の者共々消されたのだ。

 

「親切で優しい先生のおかげで、幼いながらに考古学者となった私は……その島で唯一の友達に(たす)けられた」

「………」

「あとは知っての通りよ。人に取り入って、騙して、逃げて。その繰り返し」

「でも、今回は逃げなかったよな」

「それはっ」

 

 麦わらの一味は彼女の大事なモノになっていた。

これまで色々な辛く苦しい目に遭っては傷を負い、何かを捨てる選択を選びながらも生き抜いた彼女が初めて選んだ、自分以外の命。

 

「んー………なぁ、歴史を知ってどうするんだ?」

「知るだけよ。知って、後の世に残す。暴いて晒したいんじゃない。ましてや、脅威を作りたいわけじゃない。

 ――過去の声を受け止めて護りたい。それだけが、それが私の……オハラの、遺志よ」

「……そっか、わかった」

「?」

 

 ロビンの話はトウマの想像以上に時間がかかった。

気付けば身軽になった海列車は、目的地であるエニエス・ロビーへと辿り着いた。

これから彼女は正門、本島、裁判所、司法の塔を歩かされる。

最後は巨大な正義の門を超え、彼女は()()()()()へと連れていかれ、その知識を吸いつくされるまで拷問を受けるだろう。

 

「立て、ニコ・ロビン」

「……」

 

 大人しく立ち上がり、ついていくニコ・ロビン。フランキーは暴れているため、担がれている。

正門を通り、本島前門を抜け裁判所へ向けて歩く中………―――トウマは決心した。

 

「――武装硬化」

 

 時間はかかったが、お陰で彼女の想いがよく伝わった。

()()()トウマは右手を握りしめ、彼女の近くで護衛していたブルーノを殴り飛ばした。

 

「ゴパッ!?」

「なっ」

「貴様、どういうつもりだ」

 

 驚くのはロビンだけではない。他のCP9の面々がトウマ達を囲む。

軍人とは思えない行動をとったトウマに驚きながらも即座の反応は流石というべきだろう。

だが知ったことかと、トウマは左腕でロビンを担ぎ上げる。

 

「ちょっと、なにしているの!?」

「あーらら……本当何してんだ、オイ?」

「クザンさんならわかってるんじゃないか?」

「?」

 

 大将に限らず、将校クラスになると色んな人が色んな正義を掲げている。

トウマも例に漏れず、時折自分の正義を問われることがあった。

 

「弱い奴を護るとか強い悪党を捕まえるとか、そりゃ当たり前のことだ……俺は俺の正義(ココロ)に従う」

「お前さんの正義、ねぇ……」

 

 多分、これは海軍じゃ中々掲げるのに無理があるかもしれないと、トウマは苦笑を浮かべた。

 そして、トウマの過去を知っている青雉も分かりきったことだと理解しており、思わず嗤う。

何よりこう(・・)なったこの少年は、後悔せずに自身の正義をつらぬことをよく知っていた。

 

「世界には死ぬほどつらい目にあってんのに、泣くことをこらえてる奴がいる……俺に正義ってのがあるんだとしたら、きっとそれ(・・)だよ。そんな奴の側に立ってやること、一緒にあがいてどうにかする手段を模索することこそ、俺がやりたいことだ」

 

 そんな立場にいる人を()()()()()()助けて居たら、きっとそのうちこんなこと(悪党の味方)になっていただろう。

将来そうなるのなら、今なったって同じことだと彼は清々しくも堂々としていた。

 

「今のコイツから世界をどうこうするっていう悪性は感じられない。そんな奴を拷問したり、ましてや殺すなんて、俺には()()()()()()!」

「この、大馬鹿野郎がッ!お前一人でどうかなると思って――――――」

「勿論、思ってねぇよッ!」

 

 黒手を思い切り床へ叩き付け、極大の粉塵を巻き上げる。

逃げる気だと察したCP9だが、こうも人が多い場所ではどんな技を放っても味方に中るだろう。

 

 ――勿論、青雉にそんな小細工が通じるわけがない。

 

「……なるほど、此処で反旗を翻したのは考えなしというわけでもない様だな」

「ッ!」

「CP9、お前たちはフランキーを連れていけ!……やんちゃな坊主は、俺が仕置きしとく」

 

 大将となれば(ソル)程度容易に扱える。トウマの(逃げ足)に追いつくのは勿論、可能。

 

暴雉嘴(フェザントベック)!!」

「う、お、ぉおお!!」

 

 迫る大将の能力から逃れる術を、トウマは持っていない。

だから、彼は単純な動作しかしなかった。左側からの攻撃に対し、右拳を振りぬいて消し飛ばし走る。

 

「ハハッ、相変わらず無茶苦茶な覇気だ。前に鍛錬だっつってやりあったときなら、今のでその右手諸共凍らせられたはずだがな……」

 

 大きな雉の形をしているが、本来は冷気の塊。

幾ら弾こうとも、生半可な武装色ではその上から大将の覇気によって凍らされるのがオチだが、トウマはその冷気を()()()()()のだ。

 

「別に可笑しなことじゃねぇよ。撃ちだされる矢や弾丸にだって覇気は込められる。なら、空気(・・)に伝達しても不思議じゃない。事実、アンタだって(気体)に覇気を込めてんだろ?」

 

 これはトウマが利き腕である右、それも『手』に覇気を異常な程込められる上に、操作できるからこそ出来た芸当だった。他の部位に覇気を込めることは出来なくはない。だが、彼は右手だけなら英雄ガープを超える逸材だと、青雉たちに評価されている。

それ程までにトウマの武装色使いとしての素質は上等だった。

 だが現状は、右手だけその異常性が発揮されている。今の彼には右手でしか、この芸当は出来ないのだ。

 

「んーまぁ、オレ自身が冷気だから出来る芸当でもあるはずなんだが……お前さんはホント、逸材だよ。……右手だけ(・・・・)な」

「くっ」

 

 今度は四方八方から迫る氷の矛。

これは右手だけでは防ぎきれない。――だから、トウマは矛を右手で掴んで(・・・)大将青雉の覇気を圧し流し、自分の覇気を纏わせて他の矛を蹴散らした。

武器を手に入れたトウマだが、青雉から逃れられたわけではない。

 

(くそ、速く来てくれッ)

 

 絶対に諦めず追いかけてくるだろうと信じているトウマの脳裏には、麦わらの彼らが浮かんでいた。

 

「今ならまだ仕置きで済むぞ?」

「冗談ッ」

 

 捕まれば悲惨な目に合うことが見え見えの鬼ごっこが始まった。

 




 間が開きましたね……導入をどうしようか、原作通りロビンたちを大人しく司法の塔へ?
でもなぁ~ドタバタ欲しいなぁー、と考えて居たらトウマさんが動いてくれました。
ミサカ達は勿論原作の暴走列車に乗っています。
そして、現状はというと……。

 ――正義の門――
     ┃
 ――司法の塔―― スパンダム ジャブラ クマドリ フクロウ 待機
     ┃
 ――裁判所――
  ルッチ カク カリファ ブルーノ フランキー 連行中

  青雉 トウマ&ロビン (リアル)鬼ごっこ中
 ――本島前門――
    ┃
 ――正門――

海列車
 麦わらの一味 アイスバーグ パウリー ルル タイルストン フランキー一家

 この現状確認は半ば私自身の確認のために残しています、許してください!

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