ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
心底信じられない、ロビンのそんな感情が呆然とした表情に現れていた。
「なんで――どうして、来たの!?私がいつ、そうしてと頼んだの!?」
「
「それは……」
ミサカの見聞色を思い出し、苦々しい表情を浮かべるロビン。
そう、この少女にはどんな拒絶の言葉も通じない。
今もこちらの奥底を見つめてくる。決意を固めた、真っ直ぐな瞳と無垢とも言える純粋な心を持ってして、ロビンを
「確かに私は無敵じゃないし、最強でもないけど……仲間を見捨てる程、弱くもないよ」
「………」
「ねぇロビン。一人で死のうとしないで……ううん、一人で死なせない。だから、一緒に居よ?」
「―ッ、っッ!!!」
否定の言葉を出そうとしても何も出ない。ロビンはただ悲痛な表情で数度口を開くが、もう何を言ってもダメだと悟っていた。
この少女は止まらない。自分が何を言っても聞きはしないのだ。
「……もういいか?」
「うん、ありがと――始めよっか」
ロビンの前に氷の壁が、トウマの前に砂鉄を熱で固めた鉄の壁が現れ、戦えない二人をそれぞれの能力で守護した。
近くに海兵は居ない。青雉とトウマの戦いで大勢が巻き込まれながらも避難したのだろう。
つまり――
「
「
―――遠慮も加減もいらない。
さて困ったことになったとエネルは少し考えを巡らせる。
このまま暴走海列車から普通に降りたとして、海兵に阻まれるだろう。
彼一人なら全部無視して雷速で向かうことも可能だが、その場合彼らをおいていくことになる。
フランキーを
神になるのだから、戯れとはいえ約束事は守るべきだ。
「仕方ない……おい、貴様ら」
「ん?なんだ?」
「私とフランキー一家は此処から別行動をとる。まぁ真っすぐ進む」
「いや、何言ってんすかエネルの旦那。これから俺らで門を開けて、そっから列車で突入するんじゃ」
「あの中をか?」
正門では門番と思える海兵が居るのは分かっている。それは望遠鏡でも使えば見れることだ。
そこを超えた先、本島前門に巨人がいるのも見聞色で把握していた。
問題はその奥――地面から氷と雷が立ち昇り、荒れ狂っている地点だ。
「心網で確認したがアレは、たった二人が起こしている戦闘の
「あれが……兵士たちも大変そうだな」
「まぁ巨人だろうが何だろうが、アレに巻き込まれれば只ではすまんだろう」
「じゃぁどうすんだ?ロビンやフランキー助けんだろ?」
ルフィの中ではフランキーも救助メンバーにしっかり入っていた。
フランキー一家が一緒についてきた時点で、彼もエネル同様助けるつもりでいるのだ。
そんなルフィにエネルは一つ朗報を告げる。
「なに、ニコ・ロビンに関しては心配いらん。あの戦いの中に気配があるからな」
「なるほど、ミサカに任せりゃいいんだな」
「問題はフランキーと……移動しているCP9だな。余波に巻き込まれるようなことはせんだろうが、巻き込まれないようにミサカの邪魔をする可能性がある」
「ミサカちゃんの邪魔ぁ!?」
そんなことはさせないとサンジのやる気に火が付いた。
CP9の邪魔が入るのは拙い。青雉との戦闘はミサカも流石に綱渡り、危険だ。
「つまり俺たちは予定通りこのまま海軍たちとぶつかりゃいいんだな?」
「いや、貴様らはCP9とだけ戦闘しろ。雑魚は私と鍛冶連中、それにフランキー一家で十分だ」
「まぁエネルなら何かあってもひとっ飛びだし、置いてって先に進むのはありか」
「そういうわけだ。ほれ雑魚ども、移動しろ」
「「「「「誰が雑魚だ!?」」」」」
「ヤハハ、悔しかったら大物の一人でも討って見せるんだな」
ナミが納得したところで、エネルはキングブルを切り離し……おもむろに列車の一番後方へ移動した。
列車に片手を付け、ミサカの
電撃を操り、磁場を形成し――
「ちょっと飛ぶが、死ぬなよ?」
「「「「「は?」」」」」
列車に残った一味と、車掌であるアイスバーグの声が被った。
彼らが自覚する前に、エネルは列車を
「「「「「ぎ、ぎゃぁああああぁぁぁぁ!?!?!?」」」」」
その疑問符が悲鳴に代わり遠ざかっていく。
暴走列車は宙を飛びそのまま……司法の塔へ突き刺さった。
「ヤハハハ、加減が難しいな」
もう少し穏便に
やはり見様見真似ではうまくいかない。もしエネルがコインで再現しようとしても、数メートルも飛ばずに溶けて消えるだろう。
猿真似は出来るが、そのコントロール力はミサカの方が数段上だとエネルは理解した。
「ま、大丈夫だろう」
「んなテキトーな……!っていうかアイスバーグさんや長鼻の兄ちゃんに航海士だって言ってた姉ちゃんは大丈夫なのか?!」
「アイスバーグは知らんが、残りの二人はほれ、
「「「「「え?――あれ、ホントだ?!」」」」」
青ざめながらも乗ってなくてよかったぁと心底安心している二人が、確かに後方にいた。
「行き成りエネルにキングブルに投げ飛ばされたから、何事かと思ったら……」
「あぁ、ありゃ俺らじゃ死んでたぞ……」
「いや、普通死ぬだろ。っていうか、なんでアイスバーグさんも一緒に下がらせなかったんだよ」
「ヤハハ、まぁ理由としてはフランキーだな。麦わらたちなら意気投合しそうだが、色々説明するなら知人の方がいいだろう。それより貴様ら、やることは多いんだ。しっかり動け」
まず暴走列車はもう使えない。帰るためには通常の海列車か海軍の船でも奪うしかないだろう。
第一目標は正門と前門を開け、激戦区の中央を回避して遠回りしつつ海列車とフランキーの奪取。
正直戦力的に不安だが、まぁ何とかするしかない。
「ヤハハ、ゲームスタートだ」
この状況下でも目隠しを外さない舐めプな攻略が始まった。
一方、司法の塔では長官スパンダムが騒然としていた。
ロビンとフランキーの到着を待ち、そのまま連行すれば輝かしい未来が待っているはずだった。
なのに、唐突に始まった青雉と連れの准将の戦闘。その被害は中央を丸々避難させなければいけなくなる程広範囲に及んだ。
理由としては青雉の戦闘力の高さに対し、准将は逃げの一手を選んだことだろう。准将は逃げ続けるだけで海兵たちは巻き込まれないように右往左往するのだ。
そしてそれが終わったと思ったら……今度は目の前の光景だ。
地面から氷が生えたかと思うと、稲妻がソレを迎撃。砕かれた巨大な氷や拡散した稲妻は全方位へ向かって余波が広がって建物は瓦礫となっていく。
「な、んなんだこりゃぁあ!?」
スパンダムも長官として成り上がるまでに、それなりに能力者を見てきた。
正直CP9という超人と能力者という最高の組み合わせを従えたことで、最強無敵になったと思っていたのだが……この現実は彼の自信を粉微塵に砕いた。
「し、CP9がかすんで見えやがる」
このままではエニエス・ロビーが崩壊するのでは、と疑心してしまうほど激しい戦いに危機感が高まっていった。
「お、おい!カクとカリファはとっとと悪魔の実を喰いやがれ!それ喰ったらフランキーを連行するぞ!」
ロビンが未だだが、あの中を突き進んでいけと言える度胸はなかった。
こうなったら古代兵器の設計図を所有しているであろうフランキーだけでも連れていこう。
そう考え、行動を指示したその時……おかしな音が聞こえた。
「「「「「―――ぁぁぁぁ」」」」」
「あ?」
「「「「「ぁあああああああああ!!!!???」」」」」
「ハァアアアアアア!??!?」
電熱と空気摩擦によって真っ赤になったロケットヘッドの暴走列車が、宙を飛びスパンダムの眼前に迫る。
あまりに唐突な危機に驚きすぎて勝手に涙が流れ、腰が抜けへたり込んでしまう。
しかし、列車は勢いを失い、そのまま下の階に落ち……轟音が響き、振動がスパンダムの意識をギリギリ繋ぎ止める。
「ちょ、長官!突っ込んできた列車から麦わらの一味と思われる一団が!?」
「長官、正門突破されました!」
「長官、麦わらの一味が上がってきます!」
「長官、前門の巨人二名が裏切った模様で――」
そして少し経つと報告の雨あられ。
中央は激戦、下からは海賊が上がってくる、しかもおまけに巨人が裏切ったぁ?
「は、はは……こ、殺せぇ!!!裁判所の連中も集めろ!!あそこの守りはもういらん!
おい、CP9!遊び心はいらねぇ、全力を以てして殺せ!!!」
迷わず切り札を切った。この思い切りの良さと自衛の為に手段を選ばない狡猾さが彼をここまでの地位に押し上げてきた。
それを信じ……というか、信じないと終わる状況に、彼は命乞いのような気持ちで必死に命令を飛ばしていた。
――正義の門――
┃
――司法の塔――
スパンダムSAN値ピンチ! ジャブラ クマドリ フクロウ ルッチ カク カリファ 戦闘態勢
フランキー拘束中
ルフィ ゾロ サンジ チョッパー アイスバーグ 飛来
┃
――裁判所――
青雉VSミサカ トウマ&ロビン戦闘不可 ブルーノ海兵たちによって避難
――本島前門――
エネル ウソップ ナミ フランキー一家 パウリー ルル タイルストン
┃
――正門――
海兵しかおらずあっさり突破