ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
ロロノア・ゾロは超がつくほど迷子になりやすい。それを心配したチョッパーが、壁を切り裂いて走っていく彼を追いかけていた。
「ゾロ、何処行くんだ~!?」
ゾロは方向を見失うというより、頭の中でマッピングをほぼ行わず、勘で行動している。
頭の中の地図はモザイクだらけで、現在地も向かうべき地点もあやふやなのだから、迷って当たり前なのだ。
しかし本人曰く、これでもちゃんと道を覚えているらしいのだから筋金入りと言えるだろう。
「ん?なんだ、ついて来たのか」
「ついてくるも何も、ルフィ行っちまったぞ!?」
では
チョッパーは彼を追いかけながらそんなことを考えていた。
「なぁに、強そうな奴の場所に行ってるだけだ」
「え、もしかして見聞色の覇気か!?」
「いや、騒がしい声が聴こえてんだろ?」
「声?」
耳をすませると、海兵たちの声や雷の音に混じって、確かに場違いな罵り合いが聴こえる。
「ギャーハッハッハ、お前その姿面白れぇなぁ!」
「うるさいわい!儂は気に入っとる!」
何をしているのか知らないが、その部屋にゾロは単身乗り込む気なのだ。
ますます一人にしておけなくなったと思ったチョッパーは、ゾロと一緒にその部屋へと乗り込んだ。
そこには、狼男と、何故か四角いキリンがいた。
「ギャーハッハハっなぁんでそんなに四角が反映されてんだよ!?」
「えぇい!いつまでも笑うでないわ!……ん?」
狼男の方は知らないが、片方は屋敷で聴いた声だとゾロは気づく。
「よぉ、猿がキリンになったのか?」
「ふんっうるさいわい!」
「ギャハハハ、可愛い子狸だなぁ!」
「オレは狸じゃねぇ!!」
言い合いながら、キリンの男、カクが人の姿に戻った。
「何だ、変身はもういいのか?」
「悪魔の実を食べたは良いが、流石に直ぐには使い方が分からんからのぉ……お主こそ、もう刀を抜いておるのか?」
「血を吸いてぇと唸るもんで」
二本の刀を手に、カクがゾロの前へ。
後は言葉を交わすことも無く、両者の『飛ぶ斬撃』がぶつかり合った。
苛烈な戦闘が始まったのを眺める狼男の前には、チョッパーが立っていた。
「じゃ、邪魔はさせねぇぞこのやろー!」
「ハハハ、邪魔なんてするわけねぇだろ。決闘に割り込むなんて趣味じゃねぇ」
「お、おぉ、なんだそっか」
割り込むつもりはない、そう言って座る男、ジャブラの言葉を信じたチョッパーは思わずホッとして――その瞬間、爪がチョッパーを襲った。
反射的に身をかがめたのと、元々チョッパーが小さい形態だったが為に爪は掠るだけで空ぶった。
「うわぁ!?あ、あぶねぇ!」
「惜しい惜しい。気を許すなよ、おれぁ『狼』!油断させて、食い殺す…!」
「うっ、ま、負けねぇぞっ」
剣士と狼とトナカイ、それぞれの戦いが始まった。
●
剣士と獣たちが争いを始めたその頃、司法の塔を上っている影が一つ。
傷だらけで重たい身体を引きずるようにして、彼、トウマはある場所へと向かっていた。
皮肉にも自分たちの戦闘で大多数の兵士は避難しており、大半が海へ逃げている。
そしてその逃げた兵士たちの乗る船には、どう見ても意識があるとしか思えない
(あれも、麦わらの一味か……すげぇやつばっかだなぁ)
大将と一対一でやり合い、列車で突っ込んで、おまけのように天災を起こす。
超強引で褒められたやり方ではないが、これ以上ない程に海賊として最適解だ。
「……海兵が、なに海賊、称賛してんだか」
「本当にね」
人情に甘いとトウマが自嘲を溢すと、女性の声が返ってきた。
「司法の塔に態々やってくるなんて……目的は、
女性――CP9カリファは鍵束をトウマに見せつけた。
そう、彼はニコ・ロビンの錠を外すための鍵を探しに来たのだ。
「ハァ、ハァ……やっぱ、ついてねぇなぁ」
中央は災害、塔では海賊が暴れて手一杯な状況下で、CP9に見つかる。
疲弊し覇気もほぼ尽きかけている。
とはいえ、誰にも発見されずに此処までこれただけでも上々。
「最後通告よ。今なら殺さないであげるわ」
「ハッ冗談よせよ……オレは、何言われようと、止まる気はないっ」
「そう……残念」
『剃』によってカリファの姿が掻き消える。彼女を追えるが、ボロボロになった身体が思ったように動かせない。
覇気で防ぐ余裕もないため、無理矢理身体を捻り、コケるようにして『嵐脚』を避けた。
「ハァ、くそっ」
「無様ね」
「ガッ!?ゴホッ、ゲホッ」
一発避けただけで攻撃が止まるわけも無く、トウマはついでの様に腹を蹴り上げられた。
うずくまる彼を見下ろしながら、本当に残念そうにカリファは語る。
「貴方の武勇は表裏関わらず飛び込んでくるわ。覇気が使えない時にロギアを倒したとか、休日にも関わらず億越えの賞金首を打倒して事件を解決したとか。
あぁ……たった一人の女の子の証拠もない救けの声に応じて、横暴していた上官をぶっ飛ばしたって話もあったかしら」
「ハァ、ハァ……」
「不幸にも事件の渦中に巻き込まれ、その不幸を覆す。そんな貴方は老若男女問わずファンが居るのよ」
「ハハ、初耳だなっ」
起き上がってカリファへ駆け出す。大将相手にやり合い、怪我を負って疲弊してもまだ動けるのは流石といえるだろう。
繰り出される拳は鋭く、覇気を使わずともカリファの意識を狩り取ることはできる……
「ニコ・ロビンは犯罪者……同情はするけど、そこは揺るがない。彼女を自由にすることは、世界の危機に直結するのよ?」
「あのまま明け渡しても、その危機に陥る力を政府が手にするだけだろっ」
「海賊の手に渡るよりいいと思うけど?」
「普通ならなっ」
麦わらの一味は暴れまわるだけの危険な存在ではない。
少なくとも、トウマが少し関わった鼻の長い男、麦わらの船長、そして最後に気を失う直前に来てくれた栗色の髪の少女には、真っ直ぐな想いを感じた。
あの熱い想いはきっと、世界を破滅させることはしないと、トウマは信じている。
「アイツらからは善性すら感じた……この判断が間違っていたとしたら、その時はオレが止める」
「そんなボロボロの状態で、何を言って、もっ!?」
カリファはトウマの攻撃を避け続けた。
その結果、もう一歩踏み込めば壁に手が届くところまで来ていた。
壁に追い詰めたところで、CP9、六式使いなら大した意味はない――普通なら。
カリファが避けた拳が黒く染まり、その覇気が壁を
「なっ?!」
「お、おぉ!!」
床を粉砕しても月歩がある。だが、天井が崩れればそれへの対応が必要となる。
カリファは他の者と違って耐久力が高くない、よって崩れた天井を『鉄塊』で防ぐか『紙絵』で避ける必要がある。
鉄塊を使えば身動きが取れなくなり、紙絵を使えば目の前のトウマへの対処が甘くなる。
「こんなっ」
覇気は纏うものだと知らされていたカリファにとって、『伝わる覇気』は予想外。
しかも、覇気だけで物体を破壊するなど想像すらしていなかった。
思考が乱れ『紙絵』を使う余裕がなくなり、結果として『鉄塊』で瓦礫を防ぐ。そんな彼女の目の前にはトウマの拳が―――。
「ハァ……ハァ……」
トウマは海兵として欠陥だと自覚している。
将校になれたのは六式と武装色の覇気が認められたことであり、『彼の正義』が理解されたことではない。
確かにロビンを自由にするのは危険だ。しかし、だからといって、彼が自分の正義を曲げる必要などない。
「かぎ、もらうぞ」
鉄塊も紙絵も使わず、殴ることを選んだトウマは只々瓦礫を受けた。
もはや目の前すらよく見えていない彼は、フラフラのまま鍵を手に取る。
「うわっ、なんだこりゃ!?」
そんな彼の背後から、声が聴こえた。
金髪で黒服、海兵ではないということは麦わらの一味だろう。
「こ、れ」
「あん?」
「ニコ、ロビンの錠の、かぎ」
「アンタ、一体……」
鍵束を投げ渡す。ボロボロの海兵の言葉なんてどこまで信じるかわからないが、言うことは言っておこうと思った。
「がんばれ、よ」
「……よくわからんが、ありがたく貰っておく」
男は鍵をしまうと、そのまま他の仲間の元へと駆け出していった。
その姿を見送ると、気絶したカリファの隣に座り込んだ。もう、立つ体力も気力も残っていない。
「オレは、甘いんだろうなぁ……」
海賊を助けてしまうなんて、海兵にはきっと向いていないのだろう。
だが、だからこそ海兵になったのだとその甘さに胸を張っている。
その言葉を最後に、彼は今度こそ意識を落とした。
――正義の門――
┃
――司法の塔――
スパンダムSAN値ピンチ! フランキー拘束中 ルッチ護送
ジャブラ、カク VS ゾロ、チョッパー 戦闘開始
クマドリ&フクロウ戦闘不能
ルフィ&アイスバーグ移動中
サンジ下階処理完了、トウマから鍵を受け取る。
トウマ、カリファ 両者ともに戦闘不能
┃
――裁判所――
青雉VSミサカ戦闘激化 ロビン戦闘不可 ブルーノ海兵たちによって避難
――本島前門――
エネル ウソップ ナミ フランキー一家 パウリー ルル タイルストン
周辺海兵たちと戦闘
┃
――正門――
海兵しかおらずあっさり突破