ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
というわけで、色々諦めました。これからはオリジナル展開注意です(今更)
空島へ辿り着いたルフィたちは、揃って船から跳びだしていった。
砂浜の地面はフカフカ雲で、海岸は雲が押しては引いていく。
しかし、その先には木々があり、地面がある。住居もあるが、雲の上に合わせた白色が中心で、とても幻想的な風景だった。
「ここが、空島」
ミサカも船から降りて歩いていると、何やら音色が響いてきた。
覇気を使うまでもない、敵意など全くない少女が少し雲が重なった場所に立ってハープを鳴らしていた。
此方に気づいた彼女は微笑むと、一言。
「へそ!」
……挨拶だろうか、へそとは。
彼女は狐のような生き物を抱き抱えると、親切にルフィが持っていたコナッシュという実の飲み方を教えてくれた。
「んんんめへへえ~~~!!」
相当美味しいらしく、ルフィが叫んでいる。
取り合えず自分たちが来たばかりの青海人だというと、親切に説明してくれた。
「私はコニス。何かお困りでしたら、力にならせてください」
超親切な娘だった。
雲の上に来てから意味不明な生物に襲われ、ゲリラに襲われ、空の騎士が笛を置いていっただけという中、彼女は非常に親切だった。
「あ、父上」
「はい、止まりますよ――あ」
雲の上を謎の乗り物に乗って滑ってきた一人の男性は、止まるといいながら止まり損ねて樹にぶつかっていた。
乗り物は『ウェイバー』といい、一人用の風が無くても走る船らしい。
この船の動力は『ダイアル』という空島特有の貝らしく、風を溜め込んで放つという性質を持っているらしい。
他にも音だったり、火や映像だったり、色々な貝……ダイアルが存在するのだと、彼らは親切に教えてくれた。
「ナミ、凄い」
ウェイバーは少しの波でも簡単にバランスが崩れてしまい、正直乗れたものではなかった。
だが、そこは航海士と言ったところだろうか、あっさり乗りこなすナミを皆で感心する。
コニスの父が取ってきた海の幸ならぬ、『空の幸』から料理を振舞われることになった一行は、彼女たちの家へと向かった。
サンジも協力し振舞われた料理は、海とは違った旨味がありとても新鮮な気持ちで味わえた。
「……おい、ナミさんはどこ行ったんだ!?」
「ん?」
少し見聞色を使う。しかし、探知できる範囲にはいない。
仕方ないので少し
「……――居た、少し離れてるけど大丈夫。私なら追いつけるよ」
「居たって、どこに?」
「さすがに初めてきた場所だから、どんなところかは分からないけど……あっち」
ミサカが指さした方向をみて、一味が感心し、空島の住人である二人が驚いた。
「貴女は、
「まんとら?」
「はい。人の気配や感情、思考を読み取る不思議な力です」
「あぁ」
どうやら空島では見聞色の覇気のことを、
納得していると、コニスの父、パガヤが神妙な顔つきで訪ねてきた。
「失礼ですが、どれほど離れているかわかりますか?もしかしたら、アッパーヤードに近づいているのかもしれません」
「アッパーヤード?」
「はい。絶対に足を踏み入れてはいけない場所です。この土地は隣接しているので、ウェイバーだと直ぐ辿り着いてしまいます」
「それって、どんな場所なんです?」
「聖域です……神の住む土地」
土地……雲で出来ているわけではない、地面が空に存在するらしい。
ここは神の国であり、
絶対に入ってはいけない場所と聞いて、ルフィの表情が明るくなった。大冒険の予感がしているのだろう。
「心配だから、私行ってくるね」
「ん?俺も行くぞ!」
「ルフィを抱えながら跳ぶのは、ちょっと……ごめんね」
「とぶ?」
そういえば見せたことなかった、そう思いながら
「こういうやつ」
「すっげぇ!どうやってんだ!?」
「えっと……見たまま」
水はある一定の衝撃を受けるとコンクリートの様にカチコチになる。
それと似たようなことだと、レイは説明してくれた。
「そっかぁ。俺も出来るかな?」
「ルフィなら大丈夫。練習すれば、きっとできる」
「そっか、わかった!」
ニシシと笑うルフィ。
ミサカは初めてこれを習得した時は必死だったため、練習して本当にできるかは何とも言えないが……ルフィなら大丈夫だろうと、何となく思った。
「じゃあ、行ってくるね」
「おう!」
「ミサカちゃん、気を付けてな」
「無茶すんなよ!」
皆から心配の声を掛けられながら、空を駆けていく。
暫くそうして向かっていると、ナミがこちらに帰ってきていた。
「ナミ!」
「ミサカ!?え、何それ能力!?」
「ううん。それよりナミ、そっちには入っちゃいけない場所があるって」
「遅いわよ……そうだ、それより皆に知らせないといけないことがあるのよ!」
「?」
血相変えているナミの心配事が何なのかさっぱりだったが、ともかくみんなの元へと向かった。
ルフィ以外は船に乗り込んでおり、ルフィは海で拾った壊れたウェイバーが直るかどうかコニスとパガヤが見ているようだったが、変な一団に話しかけられていた。
犯罪がどうとか言っているあたり、もしかしたら海軍の空バージョンのような一団なのかもしれない。
「ルフィ!その人達に逆らっちゃダメよ!!」
「だってよ、こいつら俺が拾ったウェイバーが何とかの犯罪だって言うし、一人700万ベリー払えって言ってんだぞ!」
「そう、罰金で済むのね……700万ベリーって」
「? え、ナミ」
ふと、ナミの怒りが湧き起こるのを感じた。
止める間もなくアクセルを全開にしたナミがかっ跳んで行き、海岸のリーダーらしき男を轢いた。
「「オイ」」
「ナミ、手が……脚が速い」
ミサカは行動力半端ないナミを見て、評価を改める。
常識人だと少し舐めていたかもしれない。彼女も立派な海賊なのだ。
「ハッしまった、あまりの多額請求につい……今のは事故よ」
「無理だと思う」
ツッコミを入れてもナミは止まらない。
さぁ逃げるぞとルフィを引っ張っていこうとすると、轢いた男に止められた。
轢かれて鼻血ですむとは、頑丈である。
「逃げ場など、ありはしない!我々に対する暴言、それに今のは完全な公務執行妨害。第5級犯罪に値している……!
雲流し……島流し的な感じだろうか?
この雲ばかりの場所で行く当てもなく流す、と。
「つまり、死刑?」
「その通り!さぁ、ひっ捕らえろ!!」
「「「ハッ!
彼らが放った矢の軌跡に沿うように、雲が形成された。
彼らは雲の上を移動できる、スケートのようなものを履いており、そのまま滑ってこちらへ武器を抜いて向かってきた。
「ナミ、下がって」
「ハハハ、おもしれぇな!ゴムゴムの――」
腕を伸ばし、木を使って上空へ跳んだルフィに合わせて、ミサカも紫電を準備する。
そういえば皆技名を言うのだし、自分も何かつけた方がいいのだろうか?
「――花火!!」
「
勢いよく回転したまま放たれたルフィの伸びる拳と蹴りが、周りの連中を文字通りノックダウンし、離れた場所にいた敵にはミサカが放った稲妻が降り注いだ。
ゴムであるルフィのことは気にしないで放てるので、何気にこの二人の相性は抜群である。
「ば、バカ……な」
「?」
まただ。また、稲妻を見て変な驚き方をされる。
そう、これは――畏怖?
「はぁ……これで完全にお尋ね者だわ」
「にしし、いつものことじゃねぇか」
「ルフィ、アンタね!相手は神だか何だか知らないけど、神懸かったわけわかんない力だけは本物なの!」
「でもナミ、どうするの?」
「どうって、そりゃ逃げるわよ。とっととこの国出るのよ」
「出るだと!?アホいえ!!お前は冒険と命どっちが大事だァ!」
「命よ!その次はお金」
ここで航海士と船長の意見が割れてしまった。
コニスに聞くと、海へ帰る手段はあるが、そこに向かうには一度〝白海〟へと降り、東へ向かわないといけないらしい。
逃げるにせよ何にせよ、遠出になるのは間違いなかった。
取り合えずルフィとサンジは空の幸を弁当にするために一度彼らの家へと向かった。
ウソップは船の修理のための備品を貰いについていってしまう。
「アイツ、完全に行く気だわ!ホント怖いのよ!!」
「って言われても」
「知るかよ」
ゾロとそろって「ねー」と頷き合う。
ナミ以外神とやらの力を見たことが無いのだ。
取り合えず三人は置いて残った全員で船へ乗り込み、準備をしていると……急に船が動き出した。
「な、なに!?」
「ウワァアアア!?」
「……下に何かいるわね。あの時の、エビかしら」
少し形は違うが、確かに特急エビだ。
更に海に飛び込んで逃げられないように空魚たちが追ってきていた。
「追手を出すんじゃなくて」
「俺たちを呼び寄せようってわけか。横着なヤローだ」
「じゃあまたあの島へ!?」
こうなっては仕方ない。ミサカ一人空に逃げるわけにはいかない。
ルフィとサンジは強いし、ウソップも男だ何とかするだろう。
「まぁ、なるようになるだろ」
「ゾロは豪気だね」
「ハッ、そういうミサカも動じてねぇじゃねぇか」
「まぁ……人が居る分マシかなぁと」
無人島暮らしのおかげで荒事には慣れているし、何より心強い仲間もいる。
彼らはどうやら覇気を知らないらしいが、それでも十分強い。
特にルフィ、ゾロ、サンジの三人は特別強い。覇気も教えたら使えるかもしれない。
―――
連れてこられた場所は、アッパーヤード、神の島の内陸の湖らしき場所。
その中心にある、祭壇だろうか。そこに船は降ろされた。
周りには空サメがウよついており、簡単に岸へ渡れないようになっている。
ミサカ一人で全員岸に連れていってもいいが、出来れば遠慮したいというのが本音だ。
特にゾロは重くて運べそうにない。
「あのつる、使えそうだな」
「あら、ホントね。いい考え」
ゾロは良さげな蔓を見つけ、それをロープ代わりに陸へと渡ろうとしていた。
ロビンも祭壇の様子から、相当昔の遺物だと分かり探索する気であり、ナミは金目のものが無いか探すためについていってしまった。
「……ミサカはいかなくてよかったのか?」
「チョッパーこそ」
「お、オレはその……少し怖くて」
「そっか」
「ミサカは、怖くねぇのか?」
船番というのは危険度が高いし、何より今の状況で落ち着いているミサカを見て、チョッパーが訪ねた。
「……私、怖いって気持ちはね、ずっと味わってないの」
「え?」
「最後に味わったのは人攫いにあったとき、家族と引き離されそうになった時だったかな。でもね、引き離されるとき、私の両親が庇って死んじゃう時にね、吹き飛んじゃった」
「……」
「実際酷い目にあったし、辛かったし、痛かったけど……それよりずっと熱くて重くて、どうしてもどうにもならなかった感情が私を
「ミサカ……」
二人きりだからだろうか、チョッパーに少し昔語りをしてしまった。
「今はもう大丈夫。レイと会って、皆にあって……燃え尽きたつもりだったけど、今は楽しいって、想えてるよ」
「……そっか!」
頑張って微笑もうとしても無理だし、楽しそうに笑うことも出来ないけど、でも優しく撫でることで思いを伝えたミサカ。
チョッパーは優しいミサカを感じて安心するも、少し少女を見る目が変わった。
(ミサカは、多分一回壊れちまってんだな……)
昔、師匠であるクレハに言われたことがある。
人の精神は強かでしなやかで同じくらいとても脆い。
一度崩壊してしまえば立て直すことは壊すこと以上に難しい。
レイという存在が彼女の柱となり、今は自分達麦わらの一味が繋がりとなっているおかげで、少し少女の壊れた何かが、新しい形になろうとしているのだと、医者であるチョッパーは感じた。