ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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6話 神だった男

 決戦前夜というと、何だかみんな深刻になったり色々覚悟を決めたり、ともかく静かなイメージがミサカにはあった。

物語ではシリアスに描かれ、皆が真剣に心持ちをしかと決める……のだが、この一味はどうやら違うらしい。

 

「アッハッハッハ!!」

「おウォウォウォウォ~~!」

「ウオウオ~!」

 

 酒を呑んで上機嫌なナミが笑って、ルフィや空島特有の狼たちが一緒に声を上げながらキャンプファイヤーを囲む。

皆で歌って踊って、明日がサバイバルなんてきっと誰も信じないだろう。

 

「フフッ。不思議な人たちでしょ?」

「うん、凄く」

 

 ロビンが隣にやってきて、一緒に乾杯する。

クールなイメージがあった彼女だけど、微笑むその姿は普通の女性にしか見えなかった。

ミサカも見習って笑おうと思ったけれど、やはり彼女の表情筋は思ったように動いてくれない。

 

(昔は、ルフィたちみたいに笑えたのに……)

 

 少し、以前の自分を思い出した。

 

――(アタシ)ね、ママみたいに奇麗で何でもできて、パパみたいに格好よくなりたい!

 

 美人で努力家な母が大好きで、豪快でパワフルな父とはよく悪ふざけをしては怒られていた。

母に叱られながら、父とこっそり笑って今度は怒られないようにしよう、って……平和で、毎日が幸せだった。

 過去を懐かしんでも仕方ないのははっきりわかっているが、それでもつい思い出してしまう時がある。

悪いことじゃない、ミサカという少女の原点だ。寧ろ、今の自分が歪なんだと自覚している。

 人攫い達に泣き叫ぶ姿を見せたくなくて、自分という存在を知られたくなくて、必死に押し殺していた。それが常となってしまったのだ。これを歪みと言わず、何と言えばいいのだろう。

 

「ミサカ、おいミサカ!」

「…―ルフィ?」

 

 肩を揺らされ、自分の思考に没頭していたことに気づいた。

前を向くと、輝かしい笑顔を浮かべたルフィがそこにいた。

 

「折角の宴なのになにぼさっとしてんだ!ほら、ミサカも踊るぞ~!」

「……うん」

 

 ルフィの手を取り、一緒にキャンプファイヤーを囲む。

今は麦わらの一味に身を置いているのだ、楽しむべき時は楽しまなくては。

 そうして決戦前夜こと、黄金前夜は賑やかなまま過ぎていった。

 

―――

 

 次の日、不思議なことがあった。

乱暴に祭壇へ置かれたGM号が、誰かに修繕されていたのだ。

ウソップ曰く、少年らしき存在が霧の中直してくれたらしい。

空島特有の翼が背になかったことから、少なくとも青海人のはずなのだが……。

 

「ホラホラ、不思議だけど今はそんな場合じゃないわよ!脱出組は後片付け、探索組は冒険準備して!」

 

 ナミの一声で皆が動き出す。

祭壇に置かれた船をみんなで慎重に運びながら、今日の予定を頭の中で巡らせる。

南へまっすぐいき、地図にある遺跡へと向かう。そこに黄金があるはずだから、それを脱出組が待つ移動した船まで持ってこなければいけない。

まぁこれは他にも人が居るからいいとして……問題は、エネルの打倒。

 

(雷、か)

 

 ミサカも雷撃を放てるし、きっとエネルと同じことをやろうと思えばできる。

ただ一つできないことと言えば、自身の雷化だろう。

ミサカが超人系であるが故、こればかりはどうしようもない。スピードは完全に相手が上だ。

仮に船に乗って移動しようものならば、相手は苦も無く追いついてくるだろう。

流石に船は雷速で動けない。

 

(……レイ)

 

 思い出す、彼との修行を。

外にはもっと想定外の存在がいると教えてくれた。

シャボンディ諸島で戦ったマグマ男もかなり強かったが、今回は強さの質が違う。

見聞色を使う、自分の上位互換の能力者が――。

 

(……上位互換?)

 

 ふと、疑問が生まれた。

彼が雷そのものならば、電撃を放つ自分はいったい何なのだろうか?

超人系のビリビリの実とは、一体どんな悪魔が宿っているのだろうか。

そもそも、悪魔の実ごとに棲んでいる存在が違うのであれば……上位互換など、もとよりいないのではないか?

 

(私の能力って、何なんだろう)

 

 今まで電気をうまく扱うことばかり考えていたミサカは、初めて自分の力に関して考えた瞬間だった。

 

 

―――

 

 

 アッパーヤード、その中心に(そび)え立つ巨大豆蔓(ジャイアントジャック)を上った先にある、神の社。

そこにエネルはいた。

 

「……さぁて、まずは準備運動だな」

 

 彼は久しぶりに高揚していた。

ゴロゴロの実、自然系の能力者である彼を傷つけられる存在など、この空には一人としていなかった。

無敵だと、自分は神なのだと、そう思っていた(・・)

 

「ミサカ、それにレイ(・・)とか言ったか」

 

 彼女の中心に在る存在、その男をエネルはミサカを通して見た。

ミサカは純粋だ。一度壊れたからこそ、今の彼女の内は幼子程無垢と言っても過言ではない。

そんな純粋無垢な彼女が初めて(・・・)出会った男。それがどれだけ彼女の芯となっているのかなど、きっとミサカ自身気づいてはいないだろう。

 

「か、神?一体どうなされたので?」

「んー?」

 

 今日まで船を造らせていた神隊の一人が、立ち上がったエネルを見て疑問を浮かべる。

これから始まるのはサバイバル、神兵と神官たち、そしてシャンドラの戦士と海賊達の潰し合い。

神と呼ばれてきた男が、態々出向くほどのことでもない、そういいたいのだろうが。

 

「あぁすまんな、正直どうでもいいのだ」

「ハ?」

「ヤハハ!気にするな、それよりマクシムは完成したのだろう?お前()とっとと去るがいい」

「は、はぁ……?」

 

 身支度をした彼は、他の者同様空島の自分の家へ帰るだろう。

以前ならばお片付けとして処理していただろうが、自分を認め崇めるだけの者共など、今のエネルに興味はない。

それどころか、空島がなんだ、大地(ヴァース)がなんだというのだ。

 

「神、そう自負していた私だが……ヤハハ」

 

 ミサカ越しに見た男は、それはもう偉大だった。

初めてかもしれない、勝てないと思った存在がいたと実感したのは。

初めての経験だった、きっと自分と戦える存在がいるという事実は。

 

 ――それ等を超えずして(・・・・・・・・・)、何が神か!!!

 

 つまらないと思っていた空島が、どうでもいいと思っていた青海が、今は違って見えていた。

どこかに自分を倒しうる存在がいるかもしれないのだ。

 

「許せるものか、我は神になる男(・・・・・)だぞ。私より上かもしれない(・・・・・・)存在など、認めはせん」

 

 神を語る道化になど、興味はない。

神であるからこそ、大地を目指していたエネルは、たった一人の少女とその憧景に出会い、変貌した。

 自分と戦えるであろう少女と、心網で盗み聞いた自身の天敵だというルフィという麦わら帽子の男。

この二人との決着は後回し、まずは神として君臨した今までに決着をつけよう。

 

「さぁ、我に挑む愚か者どもよ――掛かってこい」

 

 大胆不敵に笑うエネル()は、それはもう楽し気であった。

 

―――

 

 準備を終えた麦わらの一味が動き出した。

脱出組は笛で空の騎士を呼び、事情を話し協力してもらうことに。

探索組のルフィ、ゾロ、チョッパー、ロビン、ミサカは始めは纏まって南に向かっていた。

しかし、道中で空の主と呼ばれる超巨大蛇に遭遇し、バラバラにはぐれてしまった。

 

「あ、ロビン」

「一人合流ね……他の皆は?」

「バラバラ」

「あら」

 

 元のルートにミサカが戻ると、そこにいたのはロビン一人。

見聞色で気配を探るも、全員別方向に散ったらしく、追いかけるだけ時間の無駄となるだろう。

 

「私たちだけで行きましょうか」

「うん」

 

 二人並んで歩いていると、ふとロビンが尋ねた。

 

「そういえば、神様と戦うのよね」

「うん」

「その神様は、どこに居るのかしら。参加を強制させたってことは、その彼も参加しているんでしょう?」

「んー……」

 

 見聞色で探る。

争い合うシャンドラの戦士と神官、兵隊。

そして……超高速で動くエネル。彼が進んだ場所には、他と比べると少し覇気が強い人が居て、軒並み気絶させられている。

というか、神官はともかく兵隊の方はエネルに巻き込まれてすらいた。数がどんどん減っている。

 

「動き回ってる……多分、私は最後なんじゃないかな」

「そうなの。じゃぁ貴女と一緒に居ればとりあえずは安心ね」

「そう?」

 

 一緒に居ると狙われると思うのだが、ロビンは違うらしい。

 

「えぇ。貴女を神が最後に選んでいるのなら、それまでゆっくり遺跡を見て回れるでしょ?」

「他の人に狙われるかもしれないのに?」

「そこはほら――」

「メ~~!!」

 

 言葉を遮るようにして、ロビンとミサカを狙って奇声を上げた兵隊が襲い掛かってくる。

しかし、見聞色を師匠から太鼓判されているミサカと、幼い頃から荒事に慣れているロビンに対し、声を上げて襲い掛かるなど愚の骨頂。

 

「〝クラッチ〟」

「……邪魔」

 

 上空から襲い掛かってきた彼らは、急に体に生えてきた手によって関節を決められ動けなくなった所を、ミサカの磁力による砂鉄のハンマーによって気絶した。

その数5人。最小限の力で最大限の戦果である。

 

「私たち、相性がいいと思わない?」

「そうみたい」

 

 ロビンが能力で生やした彼女に気を付ければ、なんてことはない。

ロビンが抑え、ミサカが止め。

遺跡をロビンが調べている最中に神兵長を名乗る巨漢も現れたが……遺跡を壊してもいいという考えの彼は、見事ロビンを怒らせた。

 

「あっちに誘導しましょう………遺跡を壊させたくないの」

「うん、分かった」

 

 乱暴な神兵長の動きを邪魔しながらなので少し面倒だったが、遺跡を破壊しないように移動しきる。

周りに遺跡が無いことを確認すると、直ぐにロビンが巨漢の動きを封じた。

幾ら力が強くとも、指一本に対し腕一本使われて抑えられては動けようがない彼に対し、ロビンはミサカにキツイ一撃を頼んだ。

 ミサカとしては、関節を決めているロビンを痺れさせるわけにはいかない。

かといって、ハンマー程度では怒りが収まらないらしい……よって。

 

「えっと、ごめんね」

「や、やめ」

磁力圧殺(マグネティプレス)

 

 砂鉄を操り、巨漢を包み込む。

そして、そのまま押し潰した。流石に殺すのは躊躇ったミサカは、手足がバキバキになって内臓破損程度に抑え、ロビンにもういい?と首を傾げて聞いてみた。

 

「えぇ、ありがとう」

(……ロビンは怒らせないようにしよう)

 

 清々しい笑顔を浮かべるロビンを見て、ミサカは一つ学んだ。

宴で優し気に微笑んでいた彼女こそ、怒らせると一番怖いのだと。

 

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