ビリビリ少女の冒険記 作:とある海賊の超電磁砲
ロビンとミサカが二人で遺跡周辺を見回っていると、ロビンが一つ気付いた。
「……ここが黄金郷にしては、狭い気がするわ」
「狭い?」
「えぇ。それに黄金が無いし、保管する場所が見当たらないのもおかしい。もしかして……」
ロビンが考えを纏めながら、ナイフで遺跡の雲を削り出した。
どうやら下に行きたいらしい。
「ロビン、任せて」
「?」
ロビンを下がらせ、砂鉄を集める。
雲は足場になる程度に固さはあるが、何なら素手であっさり取り除ける程度の強度しかない。
集めた砂鉄を腕の形にし、爪先部分を超振動させることであっさり雲を削り掘っていく。
階段状に掘ると、確かに底にまだ先があった。
「これが、黄金郷のあった遺跡」
巨大な遺跡、風化した街。
神の島と呼ばれるあそこは、この黄金郷の上層部でしかなかったようだ。
「………」
感動して言葉が出ないのか、それとも思考に没頭しているのか定かではないが、ロビンは黙ったまま遺跡を探索しだした。
ミサカはついていきながら、見聞色で気配を探る。
もう生き残りは数えられるほどしかいないようだった。ゾロ、空島に来た時に襲い掛かってきた戦士、神官と思われる強めの覇気の持ち主が一人、その近くに動物一匹、それと大蛇。
(………あれ?)
なぜか脱出班のナミと、子供らしい小さな気の持ち主、それと空の騎士と微妙なペガサスもセットでいる。
船の方を探ると、そちらはウソップとサンジ……なぜかコニスとその父パガヤまで一緒だ。
「……どうなってるんだろ」
全員直上……正確には二本の絡まった巨大な蔓が伸びる先にある、もう一つ上の雲で戦っている。
行けないことはないが、ロビンを一人置いていくわけにはいかない。
「あ……」
ルフィが大蛇に呑まれたことは察知していた。
というか、奇麗にルフィの覇気が大蛇の気と重なったままなのだ。
大蛇自身の気が大きいため、よく探知しないと気づけないから、もしかして上で争っている人たちは気づいてないかもしれない。
まぁそれはともかくとして……今この瞬間、ナミと子供、空の騎士とペガサス擬きも大蛇の気と重なった。
つまり、食べられたらしい。
「んー……」
むむむっと集中し、よく覇気を探る。
子供は小さくて分からないが、ナミと空の騎士は生きているようだ。丸呑みで済んだらしい。
「………助けに、いった方がいいのかな」
ゾロは忙しそうだし、チョッパーの覇気も大分小さくなってて、少なくとも気絶しているのは確かだろう。
悩んでいるミサカに、背後から話しかけてくる者がいた。
「ヤハハ、悩むのなら、呼べばよいではないか」
「ッ!」
止める間もなく、雷鳴が轟いた。
背後に現れたエネルが上空に稲妻を発し、雲も地面も破壊し穴をあけたのだ。
結果として……上空で争っていた全員が落ちてきた。
「今の轟音、もしかして来たのかしら?」
「うん、ご登場。……ロビン、少し下がってて」
遺跡の中を探索していたロビンが、雷鳴を聞きつけ出てこようとしたのを止める。
大蛇からナミ、空の騎士が吐き出てきた。ルフィとペガサス擬き、それと子供は中らしい。
「ヤハハ、そうかなるほど。麦わらの男が見当たらぬと思ったら、大蛇に呑まれているのか」
「そうみたい」
「そうかそうか。天敵とやら、楽しみにしていたのだがな」
「昨日の会話、聞いてたの?」
「まぁな……さて、生き残ったのは」
ドゴォンと大きな音が聞こえた。
「くそっ死ぬとこだ!!」
「……ゾロ、普通死ぬと思う」
どうやら上から落ちてきたゾロは、遺跡の瓦礫に潰されていたらしい。
気絶したチョッパーを護りながら潰されたのにもかかわらず、元気に瓦礫を自分でどかすあたり彼は常軌を逸している。
覇気も使わず同じことをミサカがされた場合、彼女は普通に死ぬ自信しかない。
「ここ、どこ!?あ、ルフィとアイサ置いてきちゃった」
「ピエールを信じよ、やるときはやる」
少し離れた場所にはナミと空の騎士。
それと、呆然と遺跡を見つめるゲリラの男。
後は上機嫌な大蛇。
「生き残りは、私含め7人と1匹……一応そいつの中身をいれるなら、9人になるか」
「エネルっ!」
ゲリラの男が炎の砲撃を放つが、難なくエネルは避けて見せた。
あの砲撃では遅すぎる。
「ヤハハ、この場に招待したのに、随分な挨拶だな」
「黙れ。俺たちの故郷は返してもらうぞ」
殺気立っているゲリラの男に、エネルは――。
「あぁ、別にいいぞ」
「……なに?」
あっけらかんと答えた。
思わず呆けてしまうゲリラ。他メンバーも全員エネルの反応に困惑している。
「正直、今私にとってこの地に興味はない。用もない」
「エネルよ、私は先ほど貴様の居た神の社を見てきた。もぬけの殻だったが、
「あぁ帰した。用事は済んだからな」
「用事だと?……貴様の目的は、一体何なのだ!」
「……最初は還幸のつもりだった。私の育った空島では、神はあそこに住むといわれいてる」
エネルは、空を指した。
雲に隠れ今は見えない場所を、差した。
そこは――月。
「
「だった?」
「あぁそうだ、ミサカよ。貴様に出会い、私の全てが
ゾロもゲリラも空の騎士も、強者としては十分な実力を持っている彼ら全てを無視して、エネルは一人の少女を見つめた。
「この能力を持ち、心網の実力も他者に追随を許さなかった私と戦える者がいた。そして、そんな貴様の心には、貴様ですら勝ったことの無い者がいることを知った」
「……」
それが許せないのだ、とエネルは語る。
神ならば、偉大な神より上の者など居てはいけない。
「我は神になる男!!故に、私は頂点に居なければならないのだ!!!」
ドンッと言い放つ男からは……強い覇気を感じた。
肌が泡立つような錯覚をミサカは感じ、他の者は怖気を感じた。
これは――覇王色の覇気だ。
「我を崇める者に興味などない。邪魔をするものは排除する!挑む者は悉く、打倒して見せよう!!」
自分より強い者がいる、自分と同等かそれ以上の者がいる、自分より下の者がいる。
そう理解した上で、彼は神になると決意した。頂点に立つという決意が、覚悟が、彼の覇王の素質を覚醒させている。
「――さぁ、敵は誰だ?」
「ぬっぐぅッ」
「ジュ、ジュラァ」
「ぅ、ぁ……」
空の騎士は過去の敗北もあるのだろう、完全に気圧されている。
大蛇は完全にへたれこみ、頭を垂れた。動物的本能から、エネルに勝てないと負けを認めたのだ。
ロビンは立っているが、足が震えていた。
ナミに至ってはは気絶していないが立てないらしく、座り込んでしまった。
「神になる、ねぇ」
「フン」
「……」
エネルの覇気を受けながら、それでも刃を向けるのはゾロ。
その隣では砲門を同じようにエネルに向ける、ゲリラの男。
そして、小さな紫電を身体から発し戦闘準備万端のミサカ。
「やはり、貴様らか」
「俺は世界一の大剣豪になる男だ。誰が相手だろうが、引くつもりはねぇよ」
まさに剣鬼と呼ぶにふさわしい威圧感を出すゾロ。
神でも王でもないが、彼は彼の覚悟と決意があった。それがエネルの放つ覇気を捻じ伏せ、威圧を返す。
「400年の戦いに終止符を打つ。その為に、お前は消えろ」
先祖の想いを背負って立つゲリラの男、ワイパー。
元より神に挑むために命を捨てるつもりでここに居る彼に、引く道理などありはしない。
「お呼びは私、そうでしょ?」
そんな二人よりも一歩前へ出るのは、この中で一番最年少のミサカ。
覇気の存在を知ったばかりのゾロや、よく知らぬゲリラの男に譲った結果どちらかが死んでも後味が悪い。
そんな三人に加え、大きな音と声が響いた。
「おぉぉおぉおおおおおお!!!!!」
打撃音がしたと思えば、頭を垂れ力が抜けていた大蛇から勢いよく出てきた者達。
そう、我らが船長ルフィだ。一緒に子供とペガサス擬きであるピエールが出てきた。
「出られたぁぁあああーー!!」
「ルフィ、お帰り」
「おう!ん?なんだ、どういう状況だこれ?」
「ヤハハ、私の天敵と聞いていたが、随分能天気だな」
「何だぁお前?」
「私か?私は神になる男、エネルだ」
「そうか。俺はルフィ、海賊王になる男だ!」
エネルの覇気に気付いているのかいないのか、全く動じないルフィは堂々と自己紹介をした。
「さて、役者は揃ったな。勝者には栄光と黄金を、敗者には屈辱と死を!サバイバルゲーム最終戦の始まりだ!!」
「ん?黄金?もしかして場所知ってんのか?」
「ヤハハ、あぁ。この地にあった黄金は私が全て所有している。欲しければ、奪い取るといい」
「ニシシ、なるほど。ようはお前をぶっ飛ばせばいいんだな!」
ヤハハニシシと笑い合う二人。
全く持って殺伐とした状況のはずなのに、この二人は今の状況を愉しんでいた。
戦意喪失者は大蛇、ナミ、ロビン、空の騎士。
生き残りとして、ルフィ、ゾロ、ミサカ、ワイパー、エネル。
「行くぞォ!ゴムゴムのぉ――」
「百八――」
「
「
「ヤハハ、2000万
各々が得意技を放とうと、一瞬の間が出来た。
この一瞬だけが、きっと最後の休憩だろう。
「
「
「
「
「
因縁と黄金を掛けた最後の戦いが、始まった。