ビリビリ少女の冒険記   作:とある海賊の超電磁砲

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8話 決着

 四人の技はエネルへと、エネルは全体へ放電した。

しかし、百八煩悩鳳と灼熱砲はエネルの雷の身体に傷一つつけることなかった。

雷を斬ることも燃やすことも、普通は出来やしない。

 エネルが注視したのはミサカの雷撃の槍と、ルフィの拳だ。

雷撃の槍は放電によって逸らしたが、ルフィは電撃を畏れることなく拳を突き進め、雷を浴びながらエネルへ攻撃して見せた。

 

「なるほど、本当に効かないのだな」

 

 なら、これならどうだと金の棒を持ってルフィへ殴りかかる。

雷化した腕で振るわれるそれは、雷速の一撃。心網の効果もあり、ルフィは避けることも出来ず殴られる。

 

「打撃は、効かねぇ!ゴムだから!!」

「ヤハハ、らしいな。ゴム、か。貴様は空島にはない存在だ」

「このっ」

「くっ」

 

 ゾロが斬りかかり、ワイパーが砲撃するもエネルはそれを無視。

強者ではあるが、神に挑むには実力不足だと言外に告げていた。

 

「なら、これならどうだ?」

「うお!?()っ!」

「! ルフィ、下がって」

 

 金の棒を電熱で変形させ、先を三叉の槍へと変えた。

ゴムのルフィに斬撃は有効、ミサカが砂鉄の剣を作り出し庇うように前へ出た。

 

「ヤハハ、なるほど斬撃は効くんだな?」

「させない」

 

 雷速で動くエネルに対し、ミサカは砂鉄の剣を多数作り出すことで応戦する。

見聞色で相手の動きを察知し、まるで心を読むかのように砂鉄の剣を振るった。

地面から生えた黒い剣が蠢き、瞬く稲妻の様に動き回るエネルを、悉く弾いて見せる。

 ここまで来ると、ゾロにワイパー、そしてルフィも反応が出来ない。

反応が出来たとしても、雷の速さに対応が出来ない。何かする前に、斬り刻まれるだろう。

 

(ッ落ち着け、呼吸を意識しろ)

 

 ゾロは深呼吸をする。

皮肉にもミサカがエネルの攻撃を防いでくれるおかげで、彼らは集中する時間が出来た。

ゾロは昨晩ミサカが話した覇気というモノを思い出す。

 見聞色は気配を、武装色は気合を持って行われる、人ならば誰でも持っている力だと。

そしてゾロは自分なりにそれを解釈した。鉄を斬るために万物の呼吸を意識することを覚えた彼は、その呼吸を気配だと無理やり置き換えた。

 

(いつも通りだ、刀に意思を伝える)

 

 呼吸に合わせ、刀を振るえば自分が斬りたいものだけを斬り裂くことが出来る。

いつも通り、しかし初めてやること故にいつも以上に集中する。

そして、最後にミサカが師匠から教わった一番大事であり、基礎的なことを思い出した。

 

(疑わないこと(・・・・・・)、それが強さ!)

 

 ルフィ、ゾロ、サンジにはそれが出来る実力があるとミサカは言った。

後は覇気の力を引き出せるか否か。

ゾロはイチかバチかにも等しい行為を、碌な練習もなしに実戦で行おうとしていた。

 

 雷と言えども相手も一人の人間。意識すれば、呼吸が分かる。

 雷速で動き続けているため、目で追うのは愚の骨頂。

瞳を閉じ、自分の感覚にすべてを任せ―――ゾロは刀を振るった。

 

「一刀流居合――獅子歌歌」

「ッ!?」

 

 今まで大してゾロを気にしていなかったエネルが、ミサカ以外に初めて危機感を覚え、棒を盾にした。

ゾロの剣は金の棒を斬り裂き…――エネルの肩を浅くではあるが斬り裂いてみせた。

覇気はまだまだ拙く、奇跡にも等しい偶然の一撃だったが、それでも確かにエネルに傷をつけて見せた。

 

「見事、褒美だ受け取れ」

 

 エネルが自身の背中にある太鼓を斬られた棒で叩いた。

エネルにくっついている四つのうちの二つ、叩かれた太鼓が雷となり形を変える。

 

雷鳥(ヒノ)雷獣(キテン)!!」

「っ盾!」

 

 ゾロへ放たれた大きな雷の鳥と狼。

狼はギリギリ砂鉄の盾が間に合ったが、鳥は間に合わなかった。

雷はゾロを貫き、そもそもここまでのダメージもあった三刀流の剣士はその一撃で倒れた。

 

「ガッハ」

「くそ、ゾロォ!!」

「一人脱落だな」

「どこを見ているエネルゥ!!」

「む」

 

 雲で足場を作り、雲を滑るように移動し攻撃を仕掛けるゲリラ。

燃焼砲を放つも、それをエネルは避けた(・・・)

ゾロの様な底力が発揮されうる状況だと判断したエネルは、例え今の今まで自分を傷つけられなかった武器の一撃ですら警戒する。

 

「――ワイパー、貴様何を狙っている(・・・・・・・)?」

「ッッ!!!」

 

 燃焼砲をしつこく撃ってくるワイパーの行動に違和感を覚えたエネルは、心網をワイパーに対し強めに向けた。

問われたワイパーの意識が一瞬、彼の履いているスケートの様なソレに向けられた。

恐らく能力者であるエネルに対し有効な何かが、そこに仕込まれているのだとエネルは把握した。

電熱で斬られた槍を一本に戻すとワイパーの履物、スケート型ウェイバーを狙った。

 

「く、そがぁああああ!!!」

 

 雷速に反応できたとして、身体の動きが間に合うはずもない。

必死に脚を振るい、エネルを蹴ろうとするが雷になった彼に掠ることもなく彼のウェイバーは破壊された。

エネルは履物を破壊した上で脚を掴むと、そのまま電流を流した。

 

「2000万V、放電(ヴァーリー)

 

 容赦も何もない一撃、しかしその一撃を受けてもワイパーは気絶しなかった。

電撃を浴びながら壊された破片を掴み、自分の足を掴んでいるエネルを掴んだ。

 

「ぬっ」

「ハァ、ハァッくらえ」

「ルフィ、今!」

「おう、ゴムゴムのぉー!」

 

 破片に触れた瞬間、エネルから力が抜けた。

無茶な体制のまま、ワイパーは片腕をエネルの胸へ押し付けた。

ワイパーは一撃の準備をし、ルフィも追撃を行う。

 

排撃(リジェクト)ォ!!」

「斧ー!!」

「ゴボァッ!?!?」

 

 破片――海楼石によって雷化を封じ込まれたエネルに、身体が吹き飛ぶほどの衝撃が叩き込まれた。

エネルが文字通り吹き飛んだところに、ルフィがゴムの能力を活用した強烈な踵落としを食らわせ、地面へめり込ませた。

 

「――っ」

 

 反動もすさまじい死力の一撃を放ったワイパーは、膝をつき、倒れた。

意識は失っていないが、もう動くことも出来ないだろう。

 普通ならこれで終わっている。――だが、覇気を振りまきながら稲妻の音が聞こえた。

 

「まだ、だァ!」

 

 雷速で起き上がったエネルから鳴り響く稲妻の音も規模も大きくなっていく。

エネルを中心に鳴り響く雷鳴は、音と共にエネルギーも増大していく。

 

「MAX2億V!!〝雷帝(グロウズ)〟!!」

 

 現れたのは巨大な雷の巨人。

元々技名は雷神だったが、エネルの内心の変化により名前も姿も少し変化していた。

所謂福の神の様なふくよかな巨人だったそれは、戦闘用にシャープに、しかし内包する雷はもっと高威力にと密度を高められている。

気絶しない為に歯を食いしばり、大声を上げながらの大技の発動。そんな状態になりながらも、ルフィへの対策は忘れない。持っていた金の棒が溶け、黄金の棘グローブへと変化した。

 

「くたばれぇえええ!!!」

「やべっ」

 

 雷速で放たれようとするトゲトゲの超高熱の塊。ルフィが受け止められるはずはなく、踵落としの直後で体制が整っていない彼に避けられるはずもない。

文字通り絶体絶命のピンチ。しかし、そこに冷静な少女の声が割り込んだ。

 

「――こうなるって、分かってた(・・・・・)

 

 雷帝が出来上がるよりも少し前、起き上がったエネルに対し、軽い金属音が響いていた。

雷鳴によって掻き消えていた音に、そしてミサカが何を(・・)見ていたか、激昂していたエネルは気づかなかった。

 

超電磁砲(レールガン)、八連」

 

 宙に磁力の砲身を複数作り出し、コインを散らし――手で払うようにして全弾撃ち出した。

覇気を含んだ、青白い閃光となった八つの弾丸(コイン)は、エネルのグローブを砕き、巨大化したエネルへ命中、吹き飛ばした。

エネルは何度もバウンドしながら、最後は壁に激突し……気絶した。

 

「…………ハァ~~」

 

 気絶したことを確認すると、ミサカは頭を押さえて座り込んだ。

本気の全力で見聞色を使用した代償である。自身で得た情報量に対し、処理能力が追い付かないとこうなるのだ。

 

「ニシシ、死ぬかと思った。サンキューなミサカ」

「ん、ちょっと休も?」

「おう。あ、黄金どこにあんだろ?アイツ起こして聞かないとなー」

 

 暫く呑気な会話が続いたのは、ルフィの気質のおかげだろう。

 

(……よかった、間に合って)

 

 笑顔のルフィを見て、少し安心する。

ミサカが見た(・・)最悪の結果として、ルフィの無残な姿も浮かんだのだ。

彼が笑っているだけでも十分、ミサカとしては上等な戦果だった。

 




 グロウズ…ロシア語で恐ろしいという意味を持つ、グロズヌイという単語をちょっと拝借しました。

 ※今は書けていますが、基本更新は不定期です。書くのも基本夜ですし、投稿できるのは0時ごろ、(多分世間的には深夜?)です。朝昼夕、時折晩は仕事なので。12月からは忙しくなりますので、更新速度はあまり期待しないでください。
尚、深夜テンションで書くのは()しいですので、忙しくても書かないとは言いません。

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