Generation Tale   作:「書庫」

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本作での『Chara』は作者独自の考察による人格、女性として扱います。(性別は作者による考察と願望の為つーか後者が八割)苦手という方は逃げるのです。最悪な目に合うことになります。




『×ACT』→『BETRAY』

 誰も忘れていない遠い昔の話。

 地上にはモンスターと人間が暮らしていた。

 二つの種族は互いに支え合っていた。

 しかしある時の事。

 人間とモンスターの間で戦争が起こった。

 長い長い戦いの末、勝ったのは人間だった。

 モンスター達は地下へと追いやられ…

 『バリア』によって閉じ込められてしまった。

 

 時は流れて、数年後。

 200X年、イビト山。

 

 その山には一つの言い伝えがある。

 一度その山に立ち入った者は二度と戻って来ない。

 そうして、その山に登った子供が1人。

 子どもは穴へと落ち…辿り着いた。

 

 其処はモンスターの国、地下世界。

 落ちたる子は出会う。優しき獣の王子に。

 そして彼女は王家に迎えられた。

 彼等は今も《本当の家族》の様に暮らしている。

 

 

 ……幸せなのは確かだった。

 人間にとっても、モンスターにとっても。

 

 

 

 ■

 

 

 一面に咲き誇る多種多様の花々。 頭上を覆う乱雑ながらも硬い岩の天蓋。微かに砕けた石の空からは確かに陽の光が降り注ぐ。

 

 微かな陽光は金と銀の、二つの輝きを作った。 六等星の様に稚拙な銀色が尖り出し、一等星の様に確かな山吹色は暖かい。

 微かな陽光は人間と、モンスターの影を写し出す。二つとも、年端のいかない『子ども』な事が辛うじて分かる。

 

 怯え混じりの戸惑いを仔山羊の様なモンスターが浮かべていて、それをただ目を逸らす事も無く見ているのが人間だった。

 モンスターはその蒼玉色の瞳を震わせ、葛藤の中にいる。人間は紅玉色の瞳で見定めるかの様にじっと見つめている。

 

 くるり、とナイフが宙で回れば人間の手の中に収まる。磨かれた鋭利な金属片はそのまま無様にくるくると踊らされた。

 

「ねぇ…。 chara…僕…

 やっぱりやりたくないよ…」

 

 じわり、と。目尻から一筋透明な液体が雪の様に白い体毛に染み込む。

 その様を見て、呆れた様に人間が笑う。

 

「泣かないでよAsriel 、今いくつ?」

「な、泣くもんか!‪ …もう子供じゃないんだ」

 

 そう口では言いつつも、Asrielと呼ばれたモンスターの子どもは服の袖で自らの目尻を拭った。

 反対に人間の顔には憂いの表情があり、其処には触れればあっさり倒れてしまいそうな危うさと、今にも消えてしまいそうな儚さを孕んでいる。

 

 人間は手慰みに踊らせていたナイフをケースに収め、ポッケに入れた。涙を流す仔山羊を覗き込むかの様に静かに顔を近付け、微笑む。

 儚さが助長される。見る者の胸を締め付ける笑みが其処にある。だがそれで、その瞳の中には折る事の出来ない『何か』がある。

 薄く口が開き、言葉が漏れ出す。

 

「……私を疑ってる?」

 

 ただ絞り出す様な、ただ縋り付く様な声。それだけは嫌だと、言外にこの子どもは語っている。

 疑わないでくれ。信じてくれ。同意してくれ。もう間違えないから。お願いだから。頼むから。

 あまりにも多くを語る、感情塗れの赤い瞳が揺れる。まるで潰れて溢れる柘榴の果肉のよう。

 

「ッ…! まさか!

 君を疑うわけないじゃないか!」

 

 弾かれた様にモンスターが否定する。その声は悲痛にも必死に過ぎていて、あまりにも痛ましい。

 そして人間はその様を見て〝それでいいんだ!〟と先とは変わり、打って変わり、尊大な自信を内包して『笑って』頷いた。

 

 

 発端は単純な父への思いやりだった。

 『バター カップ:1』間際らしい記述。

 毒花と油を間違え、一枚のパイを焼いた。

 結果として、父に毒を提供してしまった。

 

 

 人間の子どもの小さな手が、白い肩に置かれる。掴む力は強く、今度浮かべた笑みは、至極嬉しそうな笑み。まさに歓喜だ。それも二面性を孕んだ。

 ぐっ、とその笑顔を近付ける。吐息が混ざり、呼吸の音が聞こえる程に近い。

 

 カツン、と。互いの胸元にあるハートのロケットがぶつかる。金の影と金の輝きが重なる。

 まるでその音を起点としたかの様に人間の目がドロリと濁る。裏返った、そんな感じだ。だが表が偽りという事では無い。かといって、裏が偽りという事では無い。どちらも真実であり、嘘は無い。

 黒い情熱とでも言うのか、ともかくそれが人間の中にはあった。

 

「これでお前の、皆の願いが叶うんだ。お前は大空の下で世界を見れるし、皆は日の光をもう一度見る事が出来る。でもその為には、必要なものがある」

 

 〝わかってるよね?〟と覚悟を問う。呼吸が一度止まる。少しの躊躇いを白山羊は見せるが、その口を重たくも確かに開く。

 例えるならば泥の底にいる感じだ。呼吸すら苦しく、死ぬまいと体をもがかせる事も億劫に感じるほど全身が丁寧に満遍なく重くなる。

 

 

 父は命こそ失わなかったが毒に苦しんだ。

 間違えた己を子供達は呪っただろう。

 これは、二人に重く深い傷を残した。

 人間が笑って、山羊が泣いた。

 

 

 重苦しい沈黙が開けるのは本当に早かった。絞り出す様にAsrielが『必要なもの』を言葉にする。一人の人間と、彼等モンスター達が住まうこの地底を地上と分断させている『結界』を壊すもの。

 その必要数は七つ。そしてその一つ目はAsrielの手に渡る。それがCharaという人間の子どもが描いた計画の最重要項目。

 

「…人間の、タマシイ(Soul)

「そうだ、ちゃんと覚えてるじゃん」

 

 笑っている。心の底からの微笑みだ。だけどドロドロとした目の濁りは変わらずにある。しかしそれは燃え盛り、情熱的なものとなる。

 異なる思想が混ざりあっているとでも言おうか。

 

「だから、アズ。お前が私のタマシイ(Soul)で強くなって、皆を自由にするんだ。全てが揃えばそれが出来る。私達なら、それが出来るから」

 

 …モンスターのタマシイは人間と比べて、とてつもない程脆く弱い。それ故にモンスターは、人間と違ってタマシイの吸収を行える。

 そして人間のタマシイと融合したモンスターは、想像をはるかに超える力を手にする事が出来る…量があれば、それこそ世界を滅ぼす程の力だって。

 

 だから人間は彼等をただ恐れ、閉じ込めた。

 

「…僕が、強くなって……」

「そう、お前が『ヒーロー』になるんだよ」

 

 肩から手を離して身も離れ、もふりと柔らかに子山羊の頭を撫でる。そんな側から見れば微笑ましい時でも、人間は強い心を込めた瞳でしっかりと親友を見つめている。

 その瞳に当てられ、モンスターは一度たじろぐ。それでも人間の親友からは目を背けない。そして、彼の心を『嫌な予感』が支配する。

 

「ねぇ…」

 

‪ 口の中が異常に乾く。頭の中からバクバクと音が鳴ってうるさい。顔が熱い、目が潤う。息が微かに荒い。勤めて落ち着く。

 不安が喉に引っかかる。言葉に出そうとすると詰まる。だが聞かなければならないと、鼓動の音が、警鐘が延々と鳴り響く。

 

「六人分…六人分だけなんだよね……?」

 

 出かけた言葉を飲み込んで、代わりを問うた。

 反射的にAsrielは目を強く瞑った。

 

「………………ああ、そうだけど?」

 

 とてもとても平坦な声。コピー機から吐き出された文字の様だ。ゾッとした。背筋に冷や水を突如として浴びせられた感覚がする。手が思わず震えだす。今度こそ、今度こそ彼は親友から目を背けた。

 

 『地上』で彼女は、Charaという人間は、どう暮らしてきたのか? 彼女は頑なに話そうとしなかったが……()()()()()。分かっていながら、察していながらも踏み込まない。それは父も母も守った暗黙のルールだった。だから彼はそれ以上何も聞かなかったし、言わなかった。

 

 …聞くべきではないかと、仔山羊の胸中に針が刺さる。だがカラカラに乾いた口で疑問など正常に吐かれるわけもなく、時の経過とともにその勇気は薄れ風化し、結局は「臆病」の中に消えた。

 何に怯えたか? 「今」が壊れる事を。或いは唯一の理解者を、心からの親友を失う事を恐れたのだ。

 

「分かっ、た…じゃあ、僕は、花を…取ってくる」

 

 震えた口でそう言って、逃げる様にその場を離れていく。背中の方から、人間の小さな声で〝あ…〟と聞こえた様な気もしたけど、立ち止まる勇気すら、今の彼にはなかった。

 

 一目散に駆ける。逃げる様に、では無い。正しく逃げたのだ。あの場から、親友から、そしてあの人間から。

 

 Asrielの中で、いくつもの感情がせめぎ合う。

 

 これでいいのか? これでいい筈だ。本当にそれでいいのか? 納得できないのは確かだ。じゃあ僕に何ができる? 何もできやしない。ならこのまま『親友』のやろうとしている事を止めないというのか───?

 

 駄目だろ、それは。それだけは駄目な筈だ!

 

 その足でたどり着いたのはバターカップの群生地。辺り一面に嫌というほどに咲き誇っている毒の群れ。

 震えだす足がその場でへたり込み、震えたままの小さく白く、柔らかな手はそれでも一輪の花に手をかける。

 

 そして、金の毒(バターカップ)の茎を持ちながら固まった。

 

 これを抜こうが、抜くまいが、どちらにせよ今日を起点に地下世界は変わるという事を、Asrielは心のどこかで理解していた。

 人間との運命も、そして人間自身の運命もまた同様。今日を境に何もかもが変わり尽くしてしまう。昨日までの普通がなくなると。

 

 親友は自分のタマシイを、己に託すと言った。それで六人の人間からタマシイを奪い、皆を自由にしろと己に懇願した。

 しかし其処に疑いがないと言えば嘘になる。恐らく、いや、絶対に彼女は自分に語っていない事がある。一番の親友だからこそ分かっている。

 

 だが彼女の提示した手段以外に現状への打開策があるのかと問われれば否だ。これしか手段はない。しかし、これでは駄目なのだ。

 だから決めた、『親友を裏切る』と。

 

「……嫌われちゃうだろなぁ…」

 

 ああ、でも、それでもいいや。

 一人が死んで、みんな助かる。

 きっと、結果だけ見るならそうだろう。

 でも命や心は、足し算引き算じゃ無い。

 世界がそんな残酷なものである訳ない。

「…よっこいしょっと……」

 

 一本だけ金の毒花を抜きポケットに入れる。これは親友には断固として渡さない。自分の意思を示す為に使う。

 そしてここを立ち去る前に、最後に、もしもの事を考えて、Asriel は最大級の『悪い事』をやっておく。自然と、恐怖は無かった。

 

「……ごめんね、僕はわがままだから。

 友達に『さよなら』なんて、言えないからさ」

 

 白く小さな火の玉がバターカップの花を静かに灰に還す。気分は大変よろしくないし、いけない事をした自覚はもちろんある。

 

 だから責任を背負う。

 

 怖くなんか無い、大丈夫。

 仕方ないなんて言わない。前に進む。

 だから絶対に、何と言われても死なせない。

 

 ───これは、僕の選んだ『決意(みらい)』だ。

 






『Asriel』
友人絶対生かすマン。クソ強決心状態。
多分このままだと菩薩メンタルまで行く。
『いい人』じゃなくとも『一番の親友』は彼女だけ。

『Chara』
人間絶対殺すガール。次回から本性発揮。
肝心な事を話さない辺り『いい人』では無い。
『ハートのロケット』はどのルートでも絶対に捨てない。


次回は未定っす。テスト期間入っちゃうので。
完結は絶対させる(決意)ま、のんびりやりますよ。
そいじゃ、今回はこの辺で。アデュー!
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