Generation Tale   作:「書庫」

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お ま た せ
最新話一個しかないんけど、いいかな?

あ、そうだ。DELTARUNEをつい最近chapter1クリアしたんですよ。いや最後で無事死亡。しかもあのソウル動かせるし…アレ多分プレイヤーがクリスくんさんに拒絶されてますやんか。でも続きやりたいし…やらなあかんしぃ(決意感)

とどのつまり続きが待ち遠しいです。



『×ACT』→『WHY』

 

 人間の少女は、地上では全く幸福では無かった。嘲りと罵倒が彼女にとっての音楽であり、投石と暴行が常であり、まともな親すら存在しない。

 だからこそ地下に落ちて与えられた温もりを、何より有り難く思ったし、モンスター達を尊んだ。

 

 本でしか見たことの無い優しい父と母は現実になり、今まで持ったことも、持とうともしなかった最高の親友も出来た。

 皮肉と言えば皮肉だろう。人間が地上で与えられなかった『大切なもの』は、過去に他ならぬ人類が排斥したモンスターによって与えられたのだ。

 

 Charaという少女は、本当に幸せだった。

 

 だがされど、悲しいかな。過去はどうしても消えない。脳にこびりつき、心の深く、なお深くに刻まれた幾多もの傷は忘れる事を決して許さなかった。

 どれだけ幸福に浸ろうと───悪夢(かこ)は這い出る。

 

 それでも『親友』は、Asrielは、どんな時でも優しかった。八つ当たりをした時も、怒りのまま殴ってしまった時も、誤って傷つけてしまった時も。

 多くの罵倒も暴力もあった。それでも彼は、痛かったろうに、辛かっただろうに、それでも彼は、ただ一度もやり返さなかったのだ。

 

 少女にとって、彼は『星』と言っていい。暗闇の中にあろうとも、確かに光を放つ者。憧れであり、何よりも遠い存在。

 

 だからこそ───ただ一度の予想外に、その幻想は砕け散ることとなる。

 

「……どういうこと、アズ?」

「僕は、この計画に反対する」

 

 はらり、と燃え尽きたバターカップの花びらが落ちる。それは、少女と少年の抱いていた共通の願いが、乖離を始めた瞬間といってもいい。

 

 地上で日は沈みつつあるのだろう。地下世界に開いていた小さな穴からは夕陽が差す。

 黄昏時の橙色は何処か冷たく花畑と、そこに居た2人の子どもの合間を縫う様に照らした。

 

 震えながら伸びる、少女の手。それは縋る様にAsrielの服を、細かく言うなら胸ぐら辺りを掴む。それに少年はこの上なく驚いた。

 胸ぐらを掴まれた事ではない。掴む力の弱さと、己を見る少女の瞳の揺らぎにだ。

 

「…一度は頷いてくれたじゃないか……」

 

 呪詛とも、慟哭とも取れる呟き。それに少年は胸の内側を締め付けられる錯覚を確かに覚えた。それでも、彼の決意は何処までも固い。だからこそ『計画』の賛同には絶対に二度と頷かない。

 Asrielは、一度己の歯を固く食い縛り腹を括り直す。己が想像しうる最悪の未来を思い浮かべ、それだけは嫌だと意思を固定する。

 

「…そうだね、だから僕はあの花を摘みに行った。

 でも、結局僕は逃げたんだ」

 

 一人を切り捨てれば、長年の大願が成就する。そんなものは子供にだって分かりきっている。だが それを割り切れるかどうかは別だ。

 少なくともAsrielには無理な話だ。彼が計画に賛同し、実行したとしても…その動機は単なる諦めか何かでしか無いだろう。

 

「Chara、僕はこんな方法に頼らない。誰かを、ましてや親友の君を犠牲にしちゃいけなかった。…人からタマシイを奪うことも含めてね、…ごめんね、最初から、僕はこれに気付くべきだったんだ」

 

 胸ぐらを掴む手に、白く柔らかな毛に覆われた獣の手が重なる。その力は優しく、拒絶の意思はかけらも無い。ただ諭すような暖かさがあっただけだ。

 

 ほう、とAsrielの口から息を整える為の溜息が上がる。少年は少年で、精一杯だった

 早鐘の如く鳴る胸に落ち着きを乱されそうになりながらも、少年は勤めて落ち着く。

 急がない。失敗だけは避ける。だからゆっくりでもいい。そう己に言い聞かせ続ける。

 

「…ね、Chara。一緒に別の方法を探そう? きっとあるはずだよ、見つかるはず。誰も死ぬ必要がない、優しい方法が」

「……」

 

  少年は微笑んで告げる。されど少女は物言わず、ただ静かに脱力し切ったように俯いているだけだ。

 緊迫した沈黙が完成する。言うまでもなく、緊張感が少年の心を埋め尽くした。

 この問題に模範回答はない。だからこそ彼は自分の考えうる最善を尽くしたつもりだ。それが裏目となるかどうかは答えを合わせるまで分からない。

 

 依然として続く重苦しい沈黙。

 それを破ったのは───。

 

「何それ?」

 

 ()()()()()()()()()()()

 

「犠牲を出さない? 誰も死なずに済む方法? 見つかるはず? 馬鹿馬鹿しい。笑えない。その場しのぎで誤魔化すくだらないジョークと同じだ」

 

 少女の目が濁る。子供らしいとは言い難いが、確かに澄んでいた瞳が、いとも簡単に、蟻を手で潰す様にあっさりと光が無くなる。

 覚悟をしていたとはいえ、この結果はAsrielの心へ強烈なダメージを与えるには充分だろう。むしろ不足が一切ない程だ。

 

 くらり、と目眩を起こす。感覚的には頭を強く打ち付けられた感じ。信じたくは無いが、突き放すつもりはない。だからしっかりと二の足を地につける。

 

「その場しのぎの綺麗事で何になるんだ? 大体、最初から不思議だったんだよ。

 モンスター達は、()()()()()()()()()()()のにどうしてやらないんだろうって!」

「ッ…!」

 

 くすくす、くすくすと。まるで童話に出てくる道化のように嗤う。彼女が嘲笑うのは一体何なのだろう。モンスターか、それとも親友の心か、はたまたこの地下世界そのものか。或いは───自分を含めた、この流れか。

 

()()()()()()()()!!」

 

 だけど、山の王子は叫んだ。どうしても許せない言葉を聞き逃さなかった。

 目眩はした、ダメージだってもろに受けた。だけど、どうしても聞き逃してはならない、聞いただけで終わりにしてはいけない一言があったから。

 

「出来るわけない…! 考えたくもない!」

「…へぇ」

 

 少女がその赤い目を見開く。漏れる吐息は、物珍しそうに。まるで〝以前とは違うものを見た〟とでも言うかの様な反応とも言える。

 そんな微かな変化に気付く余裕は、今の少年には無い。だからそのまま追及は続く。

 

「…Chara、僕はずっと思ってた。いや、僕だけじゃ無い。父さんも母さんもずっと思ってる事があった。…君は一体…地上でな───「やめろ

 

 だが言い切る前に押し倒される。冷たい瞳が、奈落の底の様な瞳が少年を見下ろした。

 でもそれが、Asrielには今にも泣き出しそうな瞳に見えた気がした。

 

「分かった…ごめん、やめるよ」

 

 だから、やめた。

 

 軽いなぁ、と少年は思う。目の前にいるのは、今自分の上にいるのは、自分と年端の変わらぬ少女。なのに、どうしてこんなにも軽いのだろう───弱い自分でも、持ててしまうのではなかろうか。

 

 少年は押し倒されたままぼんやりと赤い瞳を眺めていて。

 少女は少女で、すっかり俯いたまま動かなくなってしまった。

 

「じゃあ、これだけ聞かせて。『計画』の事で君は、僕に何かを隠している事があるよね?」

「お前は変な時だけ鋭いし、しつこい」

 

 心底忌々しいと言わんばかりの舌打ち。肯定と捉えるには十分過ぎた材料だ。

 

「……『復讐』と『掃除』だよ、お前を利用するつもりだった。全部台無しにされたけど」

 

 以外にも、答えは早々に出た。なぜなら少女は諦め始めていたから。しかし納得はしていないのか、突き放す様な声色だった。

 言動の内容はともかく、その様は正しく拗ねた子供と同じだ。

 

「……そっ、かー…」

 

 ぐっさりと、Asrielの心に傷が付く。父が困っ時にいつも出す乾いた笑い声も、少しだけ漏れた。

 Charaは、人間の少女は先の告白が最後の一線だったのか、口から次々と矢継ぎ早に言葉が吐かれる

 

「…此処にいる奴ら皆んなも、お前も、パパもママも忘れてるし分かってない。私とお前が希望? モンスターと人間の架け橋? なんで和解なんてしようとするんだ…怒って良いだろう。憎んだって良い筈なのに…」

 

 進行形で俯いている少女がぽつりぽつりと零す。依然としてAsriel は少女を見上げる形のまま、遮らないままずっと少女の言葉を聞いていた。

 聞くべきだと、思ったのだ。聞いて、受け止めなければならないと、自分は間違えてしまうと朧げながらに思ったから。

 

「…そもそも私達(にんげん)が先に武器を取ったじゃないか。和解なんて無理だ。私達(にんげん)はきっと皆を殺そうとする。自分の事しか頭にないから、根拠もない未来を恐れて、保身に走って昔みたいに、また踏み躙る」

 

 

「だから、さきに、みんな、ころさ───」

「Chara、やめよう」

 

 

 ……少なくとも、後悔はしていない。傷付いた事もあったけど、衝撃だって受けたし、手遅れになる前でよかったとも思っている。

 けどこれ以上は、きっと自分の心が耐えられないから。

 

 ゆっくりと、ようやくAsrielは身を起こす。Charaは降りざるを得なくなり、緩慢な動作でぺたりと花畑に腰を落ち着けた。

 ちゃり、と互いの首にぶら下げられたハートのロケットが振り子の様に揺れる。

 

「父さんも、母さんも、みんなも…話し合えばわかるだなんて思ってない筈だよ。過去が過去だからね。…でもさ、だからってそこで終わりにしちゃ駄目なんだ。大切なのは、『MERCY(ゆるす)』事だと僕は思ってる」

「…お前もみんなも綺麗事ばかりだ。そんなのでどうにかなった試しなんてないくせに。こんな『優しい世界』を見てきたお前にはわからないと思うけど…この世界は『殺すか、殺されるか』なんだよ」

 

 ぐしゃ、と少女が髪をかき乱す。人は理解出来ないものに怒りを持つからこそ、Charaという少女は静かな怒りの中にいる。

 なぜ理解しないというのか。過去に一度思い知らされただろうに。そう簡単に忘れることなど、出来るはずもないのに。

 

 そっと、乱れた髪を少年が撫でた。花びらに触れる様な、そんな優しい手付き。顔にはただ受け止めたいと、そんな願いが込められた笑顔があった。

 又しても少女は苦しむ事となる。理解不能。しかし無理解ではない。過去に与えられたからこそ知っている。だが、だからこそ分からない。何故そんなにも『優しい』のか。

 

「ううん、『救うか、救われるか』だ」

「…おまえは、…おまえは綺麗事ばかりだ」

 

 甘ったれの意見と一蹴出来たらどんなに良かったか。この底抜けの慈悲に一度救われたからこそ少女は知っている。

 人間なぞより太陽が相応しくて、余りにも綺麗が過ぎるその在り方を、良く知っている。

 だから、『綺麗事』などという使い古された善意を貶める言葉が、何処までも霞むのだ。

 

「…そうかもね、けど───僕は君がいて救われた。きっと父さん達と同じ様に」

 

 ああ、理解が出来ない。お前の、お前達モンスターの目の前にいるのは、人間なのに。この陽の当たらぬ世界に閉じ込めた存在なのに。地上に出る為の鍵だというのに、何故手を差し伸べる?

 

「…理解出来ないね…りかい、できないね…」

 

 気が付けば、少女は逃げていた。その心に耐えられないと言わんばかりに駆けて逃げた。

 花々が揺れる。岩の空の割れ目から降り注ぐ光は、少女の道筋を真っ直ぐに明るく照らしている。

 

「…ごめんね、Chara。僕が自分勝手で」

 

 逃げる背中に、ポツリと零す。ただ生きて欲しい、そんな一つの願いの元、今日少年は親友の意思と対立した。これで終わりかどうかは分からない。

 

 ただ、一度始めたのならば、最後まで終わらせなければならない。それがどんなに前途多難な道筋だとしても、既に決意を抱いてしまったのだから。

 

 

 

 ■

 

 

 少女が逃げた先はバターカップの群生地。

 しかし彼女の前に広がるのは、燃え尽きたバターカップの灰で出来た小さな山のみだ。

 須らく灰になった『手段』が、風に吹かれても静かに花畑全土へと降り注ぐ。

 

「見くびってたよ、Asriel…お前を甘く見てた」

 

 計画はこれで完全に破綻した。少女はナイフを使う事も考えたが、咄嗟に無理だなと悟る。

 自らの思惑は話してしまった。それ以前に普段物を壊すことの無い彼が、ここまでやったのだ。恐らくどんな方法を使っても、彼は少女のタマシイを使う事はきっと無いのだろう。

 

「仕方ない、か」

 

 前回も、前々回も少女は失敗した。原因は様々だが、結局は皆の善意で裏目に出たまま終わった。

 だから探す。地上に到達できる世界を。何度繰り返そうが絶対に。

 ───それが少女の抱いた『決意』。

 

 少女が一際強く決意を抱けば、光が生まれる。

 明暗する光は、少女しか見えず、触れられない。

 

 Charaは星の様に輝くそれに手を伸ばす。そして決意がみなぎる。これくらいで折れてはいけない。これよりも酷い失敗など何度もしてきたのだから。

 

 今回もだめなら、またやり直そう。

 

 そんな風に思っていた。だからこそ目に飛び込んできた現実が、理解できなかった。

 前代未聞にして未曾有の事態。こんな事があり得るのか? 否、あり得るからこそ今この現実があるのだろう。だがそれでも、受け入れ難い現象だ。

 

 

 Chara  Lv2 ■■:■■

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「……は?」

 

 これは合ったかもしれない話。

 山の王子が親友の計画を拒んだ道。

 これは全く新しい道筋にして未知の未来。

 

 後戻りは出来ない。やり直しはさせない。

 これから起こる事は、総て受け入れて貰う。

 

 

 ■

 

 

 waterfallの河川中部、珍しい事に、一隻の船が止まったまま揺蕩っている。

 渡し守ことriver manは静かに前を見据え、乗客の話に黙って耳を貸していたからだ。

 

「今回ノ事例ハ、非常ニ非常ニ、興味深イ」

「実験ハ、延期ニスルトシヨウ」

 

 作り切った声色と口調で乗客は話す。

 乗客の特徴は、ヒビの入った顔。次点に黒一色のローブ。極め付けは穴の空いた手。つまりは、モンスターの中でもまた異質な姿。

 彼は謎多き存在。しかし山の王の友にして協力者。この地下世界において最高峰の頭脳を持つ者。

 

「君はどう思う?」

 

 そのモンスターは作り切った口調と声色を脱ぎ捨て、渡し守に問いかける。すると船はゆっくりとHotlandへ進み出した。

 水上を進み行く途中、渡し守は静かに(うた)う。

 

「トゥララ…新たな未来」

「なるほど、真理だ」

 

 乗客は笑い、穴の空いた手でハートを形作った。

 

「…さて、Delta Runeの伝説はどうなるものか」

 

 天使は、舞い降りたか?





『Asriel』
旧MERCY係。『救うか救われるか』を分かる人今いるんですかね? 感情がフルスロットルすると思考が一周回ってクリアになる派

『Chara』
MERCY選択時のお花ちゃんみたいになった子。地上に出たいし皆を地上に出したいとで願望ごっちゃ混ぜ。「手段? 選ばんわボケェ」を地でやっちゃう。感情がフルスロットルすると思考がサヨナラバイバイする派。

『博士』
数ヶ月前に浮上して爆弾発言して来た。多分即席麺作りながら文字打ってたと思う。

『river man』
何気に謎の多いお方。

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