Scarlet Busters!   作:Sepia

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シンクロ次元にタクシー(赤き竜)いたのね……
タイラントを出すときのジャックのダブルチューニングの口上は、スカノヴァの口上を思い出して感動しました。

王者と悪魔、今ここに交わる! 荒ぶる魂よ、天地創造の叫びを上げよ!
シンクロ召喚ッ! 出でよ、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!


Mission106 命の価値

 

 

 愛そうとさえしなくてごめんなさい。

 何十本という小太刀を突き刺しておきながらもそんなことを口にする佳奈多が一体どんな気持ちでいるのかなんて葉留佳には分からなかった。葉留佳は常日頃から死んだ親族たちのことは正直どうでもいいというスタンスを取っているし、親族たちを殺した佳奈多に対して復讐してやろうなんてことも思ったことは一度としてない。これをいうと血のつながった人間に対してあまりにも薄情だと遠山キンジからの反感をくらったものだが、葉留佳にとってはそれが事実なのだから他にどうすることもできないし思いもしない。それでも実際にその手にかけた佳奈多にとっては何か思うところがあるとは思っていた。

 

(そんな……そんなことを思っていたの?)

 

 でもそれはせいぜい殺してしまったことに対しての罪悪感だと思っていて、そもそも彼らを愛そうとさえしなかったことを後悔しているとは思いもしなかった。葉留佳自身そんなことを後悔したことはなかったし、自分が反省すべき点であるなんてこれっぽっちも思いもしていなかった。もしも過去を遡りやり直すことができたとしても、あの連中を家族だと思おうなんて微塵も考えなかったはずだ。何を言ったらいいか分からなくなってしまった葉留佳とは違い、その発言を聞いた葉平は激昂する。

 

「……愛そうとさえしないて、ごめんなさいだと?」

「なんだ。まだ生きていたの。随分としぶといのね叔父様」

 

 小太刀を何十本も受けている状態では、小太刀の一本二本引き抜いたところで意味はない。それでもなお、葉平はもう立ち上がることができるのは佳奈多に対する恨みがそれだけ大きいということなのだろうか。葉平の身体は動かなくても、言葉だけは止まることなく彼から出てくる。

 

「なぜだ。なぜだ佳奈多ッ!なぜそいつを取った!!」

「…………」

「妹だから無条件に大切だとでも言うつもりか。昔のお前はそんな人間ではなかったはずだ!昔のお前は誰かを思いやるような人間ではなかった。俺たち親族の手で育てられたお前は昔はもっと冷酷で、もっと狡猾な奴だった!まさしく暗部の一族に生まれ落ちた人間としてふさわしいような、すべてを恨んでいるような奴だった!」

「……否定はしないわ。事実、私はあなたたちを見限って見捨てた。どんな御託を並べようが、私は人を殺せる人間だった」

「俺たちはお前が欲しがったものはすべて与えてきたはずだ。幼い子供が好きそうなお菓子でも玩具でも、女の子が好きそうな服でもなんでもお前が望めば与えてきた。けどお前はいつしか、決して首を縦には振らなくなった。そうだ!すべてはお前がそこの疫病神と関わりだしてからおかしくなった!」

「……私は救われたのよ。別に変になったわけじゃない」

「へ?」

 

 私と佳奈多は双子の姉妹。けれど育ちはまるで違う。三枝の家と二木の家で住む場所も違い、超能力という現実的な差がはっきりする前だってロクに顔を合わせたこともなかった……と聞いている。正直よく覚えていないのだ。分かっていることといえば、物心ついたときから佳奈多がたった一人の味方だったということだけだ。ツカサ君のいる四葉の家についてなんて、存在を知ったことすら随分と後のこと。だから、昔の佳奈多がどんな人間だったかなんて記憶にない。最初の出会いなんてそもそも何歳のころだったのかすらピンと来ない。

 

「好きなものを買ってやろう。好きな男をあてがってやろう。どんな条件をつきつけようが、お前は決して俺たちの言うことなんてきかなくなった。葉留佳と一緒がいい。葉留佳と一緒に暮らしたい。そんなどうでもいいようなことばかり言うようになった。なぜだ。なぜだ佳奈多ッ!!なぜそいつなんだッ!親も知らず、愛情なんて分からないはずのお前が、どうしてそいつを選んだんだッ!どうしてそいつだけが特別だったッ!ただお前の後ろに隠れて震えているだけでなにもしなかったそいつがどうしてそんなに大切なんだッ!!」

 

 葉平は身体に突き刺さった小太刀を一本、また一本と抜きながらも必死に立ち上がる。その足はガタガタと震えていて、すぐにまた倒れ伏しそうでもあった。それでもなお立ち上がったのは、それが葉平の中にある心からの疑問であったからなのだろう。

 

「……叔父様だっていつも言っていたじゃない。私たち三枝一族のような超能力者(ステルス)の命は超能力を持たざる者たちのものよりもずっと優れている。それはつまり、命の価値は平等じゃないって言いたいのでしょう。命の価値が平等じゃないとは私も思うわ。もちろん法律上はすべての人間はすべからく平等に扱われるべきだとは思っているけど、個人の視点で見たときにすべての人間の命の価値が同じだと心の底から思っているのなら、そいつはただの愛した人間が一人もいないような悲しい人か、あの男(・・・)のような正義の味方の成れの果てでしかない。親族たち全員の命の価値よりも私にはずっと重たく感じられた。それだけよ」

「そうじゃない。聞きたいのはそう言うことじゃない!なぜ……なぜお前はそこまで入れ込んだ!?どうせお前は人殺し!どのみち未来はない!自分の命も、将来も人生も何もかもをなぜあんな疫病神のために捧げられるんだッ!!」

 

 葉平の知る昔の佳奈多は、思いやりにあふれた人間とは程遠いような人間だったという。

 しかもそれを変えたのが葉留佳という。  

 けれど、当時の葉留佳に何ができたというのだろう?葉留佳自身は何も覚えてはいない。

 生活力のないただの子供にすぎないのだし、何かを与えてやることなんてできないはずなのだ。

 それは佳奈多にとってはわざわざ言葉にするようなことでもないようであり、むしろ理解できないことに対して哀れみすら感じるものであった。

 

「―――――――――あなたたちには、絶対理解できるもんですか。私の気持ちを理解できるような人間が他にも何人もいてくれたら、私だってあなたたちを殺さずにはすんだのよ。幹久(みきひさ)叔父様だって、本当は計画に反対だったのよ」

 

 その言葉を聞き、また何かを言おうとした葉平であったが、彼の口から何か言葉が出てくることはなかった。彼の全身から血が噴き出て、獣のように膨れ上がった身体が元の人間のものへと戻っていく。そして、体中にいくつもの切り傷が刻まれた状態のまま地面に倒れ伏した。

 

 雨に打たれ、ボロ雑巾のように転がる葉平に侮蔑の言葉をかける人間がいた。

 ただそれは佳奈多でも葉留佳でもなく、この場に先ほどまでいなかった第三者の声であった。

 

『――――――やはりこうなったか。全く、どいつもこいつも佳奈多を殺せる気でいて困ったものだ。ヘルメスといいブラドどいい、佳奈多のことをなめきっている。だから無様に殺される。いくら超能力が弱体化しているといっても佳奈多はかつて最強の魔女の称号を欲しいままにした女。佳奈多をどうこうできるのは、この(わらわ)以外の人間では何者たりともできはしないというのにのう』

 

 倒れこんだ葉平の周辺を描くようにして屋上の床がコンクリートから小さな粒ほどの大きさに砕かれたものとなっていき、それが次第に集まって立体的に人の形を描き始めた。やがてそれが人間の皮膚となり、服となり目となり顔をなったとき、さきほどまでコンクリートだったものは特定の人間を作り出した。

 

「……叔父様の身体が急に元の人間のものに戻ったからおかしいとは思っていたのよね。やはりあなたの仕業だったか。一体何をしに来たの。二度と私の前に顔を見せるなと、そして次はないと前に言ったことを忘れたわけではなのでしょうね」

 

 その人物は、葉留佳にも見覚えがある人物であった。

 一瞬すれ違った程度の邂逅であったが、それでもよく覚えている。

 自分が作戦に前日ビビッていたこともあってよく印象に残っている。

 今日知った事実もあり、葉留佳は心の底から湧き上がってくる怒りとともにその名を叫んだ。

 

「砂礫の魔女、パトラッ!!!」

 

 

            ●

 

 

 ブラドの前に現れたのは、東京武偵高校の制服を着ている一人の少年であった。

 彼は正真正銘の化け物の外見をしたブラドを前にしても脅えることもなく両足でしっかりと立っていた。

 

「棗恭介……」

 

 ブラドとしては知らなくても、小夜鳴としては知っている人間だ。

 探偵科(インケスタ)のSランク武偵にして、現三年生での問題児の一人。

 たしか資料によると、彼が高校一年生の時にイギリスへの留学経験もあったか。

 

「人間が一人増えたところで一体なんだというんだ」

 

 ブラドにとって、もはや人数がいくら増えたところで大した意味はない。

 身体を硬質化できる以上、いくら自分を狙う銃弾が増えたところで何も変わらないはずなのだ。

 なのに、先ほどまだ理子の手を優しく握りしめていたメイド服の女装は、恭介が来ただけで硬質化の能力を見せる前よりも希望に満ち溢れたような表情をしている。

 

「これはまた、正真正銘の怪物にお目にかかれるとは思わなかったな。こんなことなら真人と謙吾も一緒に連れてきてやるべきだったか。失敗したな」

「ふん。俺に恐れをなしたか。仕方のないことだ。所詮下等種の人間風情が、吸血鬼に刃むかうことなんて無理だからな」

「いや?俺が後悔しているのは、こんな楽しそうなことを俺たちだけでやったと聞いたらあいつらが悔しがると思ったからさ」

 

 自分たちの勝利を確信しているのは女装だけではないようだ。恭介もまた吸血鬼を前にして命の危機とは程遠いようなことを言う。けど、意味が分からない自信程度で揺らぐブラドでもなく、ブラドはその性格の悪さから今度の方針を決めた。

 

(……そうだ。こいつがあの女装の、そしてあのできそこないの四世の心を支えている源だというのなら、こいつから先に始末してやる)

 

 真っ先に標的にされたとも知らず、恭介は不安そうにしていたキンジに笑いかけた。

 

「棗先輩……」

「心配ないさ。三枝なら来ヶ谷が傘持って迎えに行った。どこにいるのか探すのに手間だったかもしれないが、そもそも三枝はそうそうくたばらないってあいつ言い切ったからそんなに気にしなくていいさ。ひとまずあっちの方はあいつに任せておけ」

「そうじゃない。今のブラドは銃弾も刃も、何もかもが通用しない!変な冒険心なんて捨てた方がいい!」

 

 吸血鬼を倒せたら確かに爽快な気分だろう。だが、ブラドは気合を入れれば倒せるような甘い相手じゃないのだ。恭介が楽しいことが大好きなことで知られてもいる。だからブラドを甘くみていないかキンジは心配になったのだ。

 

 けど、キンジの相棒であるアリアはまた違うことを思っていた。

 

 関わり合いを持った人間には良くも悪くも面倒見がいいものの、基本的には積極的に他人と関わり合いを持ちたがるような人間ではないアリアは他人の人間関係を調べようなんてことなどしない。だから恭介のことなんてほとんど知らない。アリアが知っていることは、それこそ知り合いが絡むことぐらい。

 

(この人が、棗恭介。あのリズの仲間にして、リズがリーダーとして認めている人間)

 

 妹のメヌエットから来ヶ谷がイギリス王室の仕事を辞めたということを聞いたとき、正直驚いたがどこか納得した自分がいることを覚えている。あれだけ才能に愛された人間をアリアは他に知らない。誰もが羨むエリートコースを自分から蹴ることとなろうとも、自分の能力でどこまでできるのかを確かめたくなったと思うのは当然のことだし仕方のないことだと思う。

 

 けど、王室の仕事を辞めた直後にイギリス清教に行くとは思っても見なかった。あんな頭のおかし連中と付き合い始めるなんて気が動転しているとも思った。それに彼女は誰かの下につくような器の人間ではないと思っている。来ヶ谷唯湖はおそらく自力でも世間的に大成功と胸を張れる結果を叩き出せる人間だとアリアは太鼓判を迷わず押すほどの人間だ。それほどの人間がなぜか東京武偵高校に通うこととなった経緯も正直言って疑問である。おそらくイギリス清教から何らかの密命でももらっているのではないかとアリアは予測しているが、それだけでわざわざイギリスから東京まで来るとは思わない。来ヶ谷は嫌だといったらたとえ正しいことでもホントに何もやらないことは身に染みている。

 

(さて、一体どんなものを見せてくれるのかしらね)

 

 だから恭介の登場を前に、アリアは少し楽しみができていた。

 来ヶ谷がこの場を無視して葉留佳を迎えに行ったのなら、この場に自分の出番はないと判断したということ。

 それだけの評価を受けるのがどんな人間なのか見せてもらおう。

 

「理樹。待たせたな」

「恭介。お願いがある」

「何をしてほしい」

「魔臓をあと三つ潰せばあいつは倒れる。魔臓を全部つぶす以外に手段はないけど、その魔臓は僕の右手で完全に破壊できる」

「魔臓ってあの浮かんでる白い紋章のようなやつか?」

「うん。だから恭介は――――――――――『遊び場』を作ってほしい」

 

 そうか、と恭介は答える同時に銃を取り出しブラドに向ける。

 恭介の銃を見たとき、アリアはなんだあれは、と疑問に思うことが出てきた。

 パッと見た感じどこかのメーカーのカタログに載っているタイプのものではなく、間違いなく特注品のように感じる。理樹の持つコンバット・マグナムと同じようなシリンダーを持っているため回転式拳銃(リボルバー)であることは間違いないのだが、銃口がコンバット・マグナムのように小さな筒形ではなく、自動式拳銃(オートマチック)のような長方形の形をしている。あれでは銃の設計上、どうしても重くなってしまい、早打ちをやろうとした際に軽さという武器を捨てていることになる。一応打撃武器としても使えそうな形を目指したのかもしれないが、それなら別に銃でやる必要はないのだ。

 

「霊装、か?」

 

 全身が空色で特徴的な形をしている装飾銃。恭介のもつ回転式拳銃(リボルバー)はその外見からブラドに霊装ではないのかと疑われた。実際、恭介がイギリスに留学したことや仲間にイギリス清教の人間や星伽神社の関係者の一族の者がいることから警戒したのだろう。だが、恭介はあっさりの否定すして情報という名のアドバンテージをあっさりと捨てた。

 

「いや、こいつはそんな大層なものじゃない。ちょっと形と材料が特殊なだけで、魔術的な一品でもなんでもないさ。……試してみるか?」

「上等だ。どのみちそれが霊装だったとして、何の意味もないがな」

 

 ブラドが恭介をその巨大な拳を持って身体ごと粉砕しようとする。

 人間である以上、恭介はブラドの拳に触れただけで骨から砕け散ってしまうだろう。

 それが分かっていてもなお、恭介は不敵に笑うだけだ。

 命の危機を前にしても、決して脅えず真っ向からブラドを見据え続ける。

 ブラドに銃弾なんて効果がないことは、キンジたちの様子から見て取れる。

 だが、生物である以上は決して痛みがないわけではない。

 いずれ傷も何もかも回復するとしても、銃撃を浴びた瞬間は動きが鈍るはずだ。

 それなら、最もブラドに効果的な場所を狙うだけ。

 

(狙うとしたら……やっぱりあそこだろうな)

 

 恭介が狙いを定めた場所は足元。

 動きの基本となる足に障害を生じれば動きは必然的に鈍くなってしまうが、恭介の狙いはもっとピンポイントの箇所でもあった。

 

三連続早撃ち(トリプルクイックドロウ)ッ!!)

 

 恭介が狙った場所はブラドの足の爪。

 人間がドアにつま先をぶつけると激しい痛みが襲うように、指先は他の部位よりも神経が繊細に通っている。

 そこを撃ち抜かれたらさすがのブラドといえども無視しきることはできず、あまりの痛みに足を引きずり正面から倒れこんでしまった。すぐに足の爪も治っていくとはいえ、瞬間的な痛みとしては今までのどの銃撃よりも大きなものであった。

 

「やってくれたな……人間風情がッ!!」

 

 それから、ブラドは自身の身体に硬質化させる力を自身の足の爪にも使ったのだろう。今までは魔臓にだけ硬質化の力があれば回復能力を持って敗北することがなかったが、ブラドは能力の範囲を増やすことにした。しかし、人間に限らず動物というのは柔らかいからこそ柔軟な動きができるというもの。固い金属でできたロボットでは人間の動きを再現できないことと同じだ。今のブラドは身体の硬度をためることで、柔軟な機動力を少しとはいえ失いつつあった。

 

(……けど、それだけじゃダメ。あの能力がある限り、ブラドには致命打どころか傷一つとして与えられない。やっぱりどうにかして理樹くんの右手を当てるしかない)

 

 パッと見では恭介はブラドの動きを軽々と回避しているように見えるものの、恭介の装飾銃の弾丸がブラドに通用しない以上、恭介には勝ち目などないはずだ。ブラドにとって一番恐れるべきは理樹の右手の能力。他に脅威と思うものがないのなら、何をやったってブラドの注意を惹くことはできないだろう。

 

(あいつの性格のことだ。きっと理樹くんの心を折るために一番効果的だと思っているから、直接理樹くんを狙わないんだ)

 

 理子から見ても、理樹の自信にも見た強さの源となっているのは棗恭介の存在だ。

 だからその恭介を目の前で始末することで、最大の障害である理樹の心を希望もろとも打ち砕き、勝負を決める気でいるのだろう。

 

 ――――――――なんとかしないと。なにか、なにか手は……

 

 葉留佳が戻ってきてくれたのならまだ手はあるだろうが、はっきり言って葉留佳には期待できる状態じゃない。やっぱり逃げた方がいいんじゃないのかと考え始めた理子であったが、肝心の理樹はというと全く持って不安の一つとして感じていないようである。それどころか、何かワクワクしているようにすら思っているともとれる発言をする。

 

「そうだ。理子さんだって遊びは好きだったよね。だったらよく見ておいたらいいよ。これから面白いものが見れるから」

「え?」

 

 恭介とブラドの様子は、今までと劇的に変わっている様子はない。

 恭介がブラドの攻撃を軽くかわし、ところどころで銃弾で反撃する。

 そして傷を与えて、すぐに修復される。ひたすらその繰り返しだ。

 せいぜい変化があるとしたら、恭介の装飾銃の銃弾が徐々になくなっていっていることぐらいか。

 このまま続けていたら、恭介の持つ銃弾は尽きてしまうだろう。

 もしそうなってしまったらブラドは自分の硬質化の能力をとき、まだ動きが軽くなった状態で恭介に襲い掛かっていくだろう。

 

(……そろそろしかけるか)

 

 ゆえに。

 

 恭介が次の一手を仕掛けるとしたらブラドの動きが硬質化の反動で鈍くなっている状態かつ、自分の持つ銃弾が尽きたとブラドに判断される前の今この時しかない。恭介の持つ装飾銃の装弾数は六発。そのすべてを打ちはたした瞬間、次のリロードではなく別の一手に切り替えた。

 

「魔術、『子供たちの遊び場(インフェルニティ)』」

 

 

 

 


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