来ヶ谷唯湖によるパソコンと睨めっこしながらの情報収集は継続していた。hとはいっても先ほどから続けているが特に進展はない。レキ様の名に懸けて、絶対に星伽誘拐犯を逮捕するんだという感想を述べづらい声なら絶え間なく響いてきているが。
(……こうなったら校内に仕掛けた隠しカメラすべてを起動させて調べるか?)
来ヶ谷唯湖はアドシアード中にかわいい女の子の写真を隠し撮るために二年Fクラスの協力のもとカメラをいたるところに設置している。してはいるのだが、
(……その場合は、後ろにいる護衛が黙っていないだろうなぁ)
リスクのわりに効果が期待できない。だからやめておくことにする。
来ヶ谷としては、自分が必ず見つけ出さなければならないという使命感はないのだ。 それは万が一が起きた時の保険の存在を知っているからではあるが、さてどうするか、と考えだしたときに、携帯が鳴った。パコパコーン!!というバカっぽい着信音だ。音だけで誰からのものかすぐに察しが付いた。
「二木女史。コーヒーを用意してくれるか?」
「缶コーヒーでも買いに行けというのならお断りします。私はあなたの護衛なので」
「まさか。君にそんなパシリみたいなマネなんてさせられないさ。コーヒーならすぐそこにあるんだ」
来ヶ谷は部屋の中にある棚を指差した。
ヒマだったからか新聞の詰将棋をやっていた佳奈多にお願いすることは、
「そこにイギリスから取り寄せたコーヒー豆がある。お湯を沸かして入れてくれないか。もちろん私と君の二人分な」
「あら。私もいただけるのですか?」
「勿論。私がイギリスから金もらっていろんな店だしてるのは知ってるだろ」
「……この間は『秋葉原に店を出したZE!!』とか言ってたじゃないですか。忘れませんよ。そして私は絶対にメイド服なんて着ませんから」
イギリスコーヒーが楽しみなのか佳奈多がお湯を沸かし始めたと同時、来ヶ谷は実況通信を見た。
・姉 御『どうした?』
・ビー玉『白雪姫が失踪したとお聞きしやして。姉御もなんかやってるなら、姉御の忠実なる部下である私はどうすればいいのかなと』
・姉 御『私は、君を、部下だと思ったことはない』
・ビー玉『はるちん一人芝居!?』
・姉 御『ともかく、君は待機だ葉留佳くん』
・ビー玉『どうしてです?』
・姉 御『問題はお姫様誘拐事件だけじゃないんだよ。私は別件も抱えている』
寮会からの依頼。バルダとかいう魔の魔術師。
その存在は単なる虚構に過ぎないとばかり思っていたのに、実際に遭遇したことによって来ヶ谷は寮会から強制的に護衛をつけられることになった。その護衛が佳奈多である以上、本人の感覚では仕事仲間とゆったりとすごしているだけなのだが、その実自由がある程度制限されるものまた事実であった。
・ビー玉『バルダってやつの話でしたっけ? でも、それはいないって姉御は言ってませんでしたか?』
・姉 御『私もそう思ってたんだが、実際に魔術師にこの間遭遇したんだ』
・ビー玉『それがバルダです?姉御の読みが外れるなんてレアですね』
・姉 御『確率論からいくとそうだと思うが……違うかもしれないとも考えはじめた』
・ビー玉『へ?』
・姉 御『いざとなったら、君に魔術師と戦えという指示を出すかもしれない。そうでなくとも、接触だけはしてもらうかもしれない。葉留佳君の超能力なら、すぐに現場へと急行できる。不確定要素が多いからなんともいえないが、とにかく君は待機してろ』
・ビー玉『ラジャ!!』
●
「ZZZZZZZ」
「あのー、岩沢…………さーん」
SSSと描かれた紋章を制服に持つ少女ユイは己の尊敬する大好きな人が平然と眠りだした状況にどうしたものかと困惑していた。
飲み物は買ってきてもらったばかりだし、緊急に必要なものは特にない。ぶっちゃけ、ヒマ!!
むろんユイにはアドシアードを観戦するという選択肢もあるにはあるのだが、イマイチ面白みを感じることができなかった。
(……アドシアードを見ていたら分かるけど、うちの組織って
自分の所属する組織の連中の方が、各国のアドシアード代表選手と比較しても遜色はないように思える。
そう。
(……うちの身内は、頭がホント残念な連中しかいないしなぁ)
いわば、アホしかいないため、トータルで考えたら代表選手たちには及びもしないだろう。
余りにストレートに表現すると自分の身が悲しみに覆われてしまうため傷つかないように言葉を選んで言うと、アホとキチガイと中二病しかいない。
岩沢さんから聞いたことだが、身内の麻婆豆腐先輩が作った魔術の最初の名前は『
「あれー、ユイちゃんじゃん」
「……へ?」
名前を呼ばれて振り返る。
そこには先日知り合った友人がいた。
「あかりちゃんに……志乃ちゃん?」
間宮あかり。それに佐々木志乃。二人とも知合ったこの前に知り合った友達だ。
「えーと、そちらは?」
「うん、紹介するね。私たちの友達のライカと麒麟ちゃんだよ」
女子にしては比較的背が高い女の子と、その子にべったりな小さな子だった。二人は順に
「ユイちゃんの
「後でって私と同じ制服着てる人が隣に…………ってあれ!?いない!?」
後ろを確認するといなかった。
どこかにいったのだろうか?いや、それはない。寝ていた人がいきなりどこかにいくわけもない。考えられるとしたら、
(……依頼でも入ったのかな?)
だとしたら、
「置いていかれた!?――――――また!!」
彼女の悲しげな声が響いた。
●
お前を斬る。
謙吾は
けれど、
どこかの扉が閉まる音がして、しばらく静寂が空間を支配した。
「逃げたわね」
事実確認をアリアは述べるが、謙吾はすぐに方針を立てる。逃がしはしない、と。
謙吾はすでに駆け出した。
「
謙吾は、
すぐに追いかけて、罠を張ったりする時間を与えたりはしない!!
「俺は
「分かった。『仲間を信じ、仲間を助けよ』。すぐに行くわ、リズの友達!」
宮沢だ、と言い残して謙吾は駆け出した。
●
アリアとキンジの二人は、倉庫の壁際にて立ったまま鎖で縛られている白雪をすぐに発見できた。
口を布で封じられ、んーんー!とノドを鳴らしている。
布を外したときに真っ先に出てきたのは、
「キンちゃん大丈夫!?怪我しなかった!?」
大事な人を心配する声だった。
白雪に巻き付けられた鎖は一つ一つがハンバーガーみたいに巨大で分厚い壁ぎわを使う鋼鉄パイプへ と繋がれている。錠前な『ドラム錠』と呼ばれる代物で、三箇所もロックされている難儀なもの。キンジとアリアは白雪の鎖の解除を試みるが、よほど複雑に出来ているのか一つも開かない。
「……謙吾くんは?」
「あいつはすぐに
キンジの返事に、白雪はただで暗い顔色をより青ざめていく。
「いけない!キンちゃん!!アリアを連れて謙吾くんを引き戻して、ここから逃げて!」
「ああ。お前を助けてからな」
「私のことはここに置いといていいからっ!!」
「……白雪?」
白雪は焦っているようだった。
アリアはそんな白雪の様子を気にかけたのか、捕われの巫女に尋ねる。
「白雪、取引材料はなんだったの?」
「学園島の爆破と、キンちゃんを殺すって」
「ブラフだ。今はアドシアード期間中だ。俺の殺害はともかく、学園島を爆破なんてしたら日本だけでなく、代表選手たちまで死ぬ。世界中を敵に回すことになる。そんなバカなことをするわけがない」
「人死にが出ないと思っているな大間違いだよ!実際、『四葉事件』で実際に多くの人が殺されたし、星伽神社だけでなくいろんな場所に影響が出た!!ブラフなんかじゃない!!私はキンちゃんを死なせたくないっ!!だから私をおいて謙吾くんも連れ戻して逃げてっ!」
白雪は怖いのだろう。
自分の命一つで大勢の人間の命が救われるという選択肢が与えられた人間は、一体どういう選択をするのだろう?
一般論など言えはしないが、白雪は自分の命を捧げるという選択を選んだのだ。
今からでも間に合うかもしれない。だから逃げろと宣言する巫女に対し、独唱曲と呼ばれたアリアは言った。堂々とした声だった。
「『四葉事件』は確かに影響は大きい事件よ。私はイ・ウーと今までも戦い続けてきて、ママの冤罪のうちほぼすべての真犯人が分かった。だけどね、」
だけど、
「『四葉事件』の計画犯だけは分からなかった。日本政府が情報を隠したせいでロクな情報もないし、残っていた情報もすべて消された」
「アリア。ひょっとして……」
「えぇ。私のママにつけられた冤罪のうち、116年はあの事件の計画犯としての罪。真犯人はおそらくイ・ウーの中でもかなりの上層部。イ・ウーの上位メンバーを捕まえて吐かせるしかないのよ」
キンジは『四葉事件』なんて聞いたことがない。武偵をやっていたら有名な事件なら聞いたことがないはずがない。となると、それだけ機密度が高い事件なのだろう。普段のキンジでは関わることすら場違いなものなのだろう。
でも、何も知らないからこそ言えることがある。
白雪とは違い、何も知らないからこそ怯えることもない。
「アリアが戦うというのなら、俺も戦う。そう決めたんだよ、白雪」
真っ赤になったアリアと、ポカンとした白雪。キンジは二人に言った。
「どっちみちだ。白雪。気にすることじゃない。将来的には俺がぶちあたる壁なんだ」
キンジはこれから、アリアと一緒に困難な道を辿ることになるだろう。
「宮沢はその事件のこと知ってるんだな?」
「……うん。気にしてないみたいだけど」
謙吾も気にしてないように見えて、気にしているのかもしれない。だから謙吾は一人でこの地下倉庫にやってきた可能性だってある。謙吾が何を考えたかなんてキンジには分からないから、ここは自分の意見を言う。
「白雪。俺はお前が何にいつから怯えていたかなんて全く気づきもしなかった」
「……」
「さっきだって俺は何もできないという無力を突き付けられたばかりだ。そして今、お前の口から真実を聞いた。俺の考えなんて甘かった。すまなかったよ」
「……キンちゃん」
「だけどすべてを知った上で、俺――――俺達は言う」
キンジはアリアと目を合わせる。
「「白雪、助けにきた」」
大好きな人のために命をささげようとした巫女は、涙を流した。
ありがとう、と。
●
ただし、部分的に身体を覆う、西洋の甲冑を着ている。戦闘のやる気が窺える。
彼女の姿は、ともかく美しいという表現が似つかわしい。
刃のような切れ長のサファイアの瞳。
二本の三つ編みをつぶじの辺りに上げて結んだ氷のような銀髪。
彼女はひたすら、準備を整えて待っていた。
それは決闘を前にした一人の騎士の姿を彷彿させる。
そして、決闘相手がやって来る。
「ずいぶんと嘗めたマネをしてくれるな。超能力を使って自分の場所を俺にわざわざ伝えるなんて」
宮沢謙吾。
その声が聞こえてくる。
「嘗めているのではない。邪魔が入らないようにするためにそうしただけだ」
「俺に増援が必要だとでも?」
「逆に聞こう。お前が私に勝てるとでも?」
魔剣には魔剣の、謙吾には勝てる根拠がある。
「お前は魔術を使う超偵に分類される。しかし、お前はどちらかと言えば
「…………」
「私としては現実が優位な方に勝手に転がり込んでくれてうれしいのだよ、宮沢謙吾。元々白雪を拉致した後、それを餌にお前だけを呼び出すつもりだったのだからな」
「……わざわざご苦労なことだな。俺になんの用があった? 恭介たちを引きはがし、星伽を誘拐する手順を経てまで俺を手に入れたかった理由はなんだ?」
フフフ、と魔剣は笑う。
魔剣は先程白雪に対し、星伽神社を滅ぼすだけならできると宣言している。なら、個人的な理由のはずだ。
「我が一族は、策の一族、聖女を装うも、その正体は魔女。私たちはその正体を闇に隠しながら、誇りと、名と、知略を子々孫々に伝えてきたのだ。我が名は第30代目ジャンヌ・ダルク。それが理由だ」
●
ジャンヌ・ダルク。
知らない名前ではない。世界史の教科書には載ってる名前だ。
「……子孫がいたなんてな」
通説によると確か、
「火炙りにあって彼女は十代の若さで亡くなったはずだが」
「それは影武者だ」
「しかし、我が始祖が火に処せられるところだったのもまた事実。それでこの力を代々研究してきたのだ」
ああ、なるほど、と謙吾はようやく
「お前、火が怖いんだな」
超能力者はどうやって生まれるか知っているだろうか?突然変異で超能力を持って生まれてくることがあるという事実も確認されてはいるものの、それは少数派に過ぎない。一般的に、
それゆえに超能力業界で重要視されるのは歴史だ。
いつ生まれたか、どれだけの年月が流れたか。それだけで一種のブランドになる。
「星伽の術は典型例であるが、魔術には体質依存系統のものが多数存在する。
だから、魔術師と
ただ、積み重ねた年月が違うだけなのに。
そして、火に対する徹底的なメタができる魔術こそ、謙吾の持つ魔術だ。
ジャンヌが個人的に白雪より謙吾に用事があった理由が理解できた。
「ジャンヌ。お前に扱えるとでも?」
「我が一族は600年の歴史を持つ。系統も似ているしできないはずがないさ。宮沢、降伏するなら今のうちだぞ」
疑問符を浮かべた謙吾に、策士は交渉カードを提示した。白雪を黙らせたカードを出した。
「抵抗するなら、『四葉事件』を襲った戦力がお前の仲間達を襲う。白雪にはこの
だから白雪は黙らざるを得なかった。
ハッタリと言い切り捨てられなかった。
けれど謙吾は提示されたカードを対し、嘲笑う。
「ハハ。ハッハハハハ。お前、面白いこと言うな」
謙吾は全く気にも止めなかったのだ。
「それはない、ジャンヌ・ダルク」
ああ、そうだ。そんなことはない。
宮沢謙吾は確信を持ちながら、答え合わせをしようとした。
「何故そう言える?」
だから、ジャンヌな声がなぜだか動揺しているように聞こえた。
感覚とは怖いものだ。見方一つで見えるものが違ってくる。
「俺は星伽のような優等生ではないから平然と口にするぞ。三年前に起きた『四葉事件』。またの名は『四葉公安委員会壊滅事件』や『三枝一族皆殺し事件』だったか。その犯人はお前の言うようにイ・ウーなんだろうが、イ・ウーもお前の意思一つでそこまで動く組織ではない」
「何を根拠にそう言える」
「『四葉事件』は、とある強力な
一般人に見せていい事件ではないため、政府による揉み消しがあったのかもしれないが、それでも少しでも接点があるのなら推測できる事実もある。
けど、俺は知っている。
「……事件発生の夜、その一族は分家も含めて親族会議をするために
「そして、我がイ・ウーが滅ぼしてやったのだ」
「ああ。でも全員じゃなかったはずだ。親族会議に参加したやつは皆殺しにされたが、会議に出なかったやつがいる。そいつはまだ生きている」
「……お前はイ・ウーについて何も知らないのか?イ・ウーに関わったやつは、実在したことすら消されるのだ。学校は勿論、生まれたという事実さえ無かったことになる」
確かに、そんなことができるだけの組織力があるなら生き残った人がいたとしても直接手を下さずとも『社会的』にこの世から抹消できるはずだ。バカでも分かる理屈。でも、謙吾という名前のバカは理解しなかった。
「具体的な名前を出してやろう」
ジャンヌの話が根本から否定するには、例外を出すしかない。そして、謙吾はその例外に気づいている。
「内容が内容だから本人に直接確かめたことはないが、『三枝葉留佳』というのは、あの『三枝一族皆殺し事件』の生き残りなんだろ?最強の超能力者集団とされた三枝一族は、いざとなったら一人でも多くの人間を殺せるだろう。そんな人間が、自分の一族を滅ぼされて何も思わないはずがない。復讐を考えるだろう。なのに、殺さないのは殺せないからなんだろう?」
三枝一族皆殺し事件には生き残りがいる。
だからお前の言うことはハッタリに過ぎない。謙吾はジャンヌに事実を突き付けた。
「…………」
それに対し、返答はない。
ただ、無言というのは黙秘する動作であると同時、場合によっては肯定を示す動作だ。
元々の疑問は三枝葉留佳という少女ではなく、来ヶ谷唯湖という女に対してだった。来ヶ谷は謙吾の東京武偵高における一年生の時のクラスメイトだった。ただし、姿を見かけたのはテストの時ぐらい。彼女の教室の席はいつも空白だった。
『委員長』の資格を持っているから授業に出席義務はないという話を聞いた一年生の時はそれで納得したものだが、違和感は二年になって現れる。
「おはよう謙吾少年」
二年になってから、来ヶ谷というサボり魔は学校の授業に出始めたのだ。最初は亡霊を見たかとも思ったものだ。今でもよくサボる女だが、二年生になってから最初の一週間で去年一年間で見かけた時間を上回った。変化はそれだけではない。
『あーねごー!!ちょっといいですカー』
三枝葉留佳という少女が、来ヶ谷を訪ねて頻繁に二年Fクラスを訪れるようになっていた。葉留佳も謙吾や白雪と同じSSRに所属しているが、SSRの授業で見かけたことがない人物だった。ボッチ同士二人がつるんでいただけならまだしも、ハイジャックの後事情が変わる。
『では、これからよろしく頼む』
来ヶ谷がリトルバスターズに入ったのだ。恭介に聞けば、イギリスに留学したときの知り合いらしい。なら、スカウトということになる。なら、すぐにでもリトルバスターズに加入するはずだった。恭介が仲間に加えるといえば反論するやつはいないだろう。つまり、来ヶ谷唯湖がリトルバスターズに入るのは彼女が日本に来た時から決められていたのではないか?
自分の委員会を持つ資格がありながら、二木佳奈多のような大々的委員会を構成しないのはリトルバスターズというチームの一員としての活動をメインとしていくためだったのではないか?
推測はすでに結論を出しつつあった。
その場合、ほとんどの疑問が解消されるが、残る疑問もある。
(……来ヶ谷は一年生の時に学校にも来ないで一年間何をしていた?)
リトルバスターズが自分に合う組織か見極めたかった。いや、これは違うだろう。そんなことに一年間はかからないし、俺達との接点はなかった。そこで注目したのが、来ヶ谷を姉御と慕う葉留佳だ。恐らく三枝は来ヶ谷と一年間何かをしていた。
来ヶ谷唯湖と三枝葉留佳にどのような接点があったのかなど知らないが、二人が『友達』だったとしたら?
三枝葉留佳が一族皆殺し事件の生き残りで、イ・ウーに狙われていたところを、『友達』の来ヶ谷が守ろうとしたとしたら?
ひょっとしたらの思いは、そうだという事実へと変貌する。強力な後ろ盾がある人物に容易に手が出せるものではないように、来ヶ谷は三枝を自分の委員会に率いれ、『イギリス清教のリズベス』の名前でおそらく彼女を保護していたのだろう。
そして、もう必要ないという段階まできたから引きこもりを止めた。リトルバスターズへと加入した。
「……来ヶ谷唯湖というのは、そんなに恐ろしい奴なのか?それともイギリス清教か?」
「イギリス清教など所詮は新参者の組織。歴史が深いわけでもない」
「となると来ヶ谷か。あいつ、モテるんだな」
「だが、リズベスも棗恭介もここにはいない。お前を守るものは何もない」
謙吾は鞘から剣を抜く。
謙吾の答えだ。
「名刀、『雨』か。いい刀ではあるが、私のデュランダルには遠く及ばない。刀の質も違う、魔術も体質的に勝てなどしない。それでも私と戦うと?」
「……試してみろ」
そして、二人の剣士は激突した。
さて、一族皆殺し事件に対してどのような印象を抱きますか?
白雪のようにおびえるのが一般的ですが、皆さんはどう感じましたか?
では!