Scarlet Busters!   作:Sepia

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新章スタートッ!


4章 『暗部の一族』
Mission80 真紅眼の苦珈琲


神崎・H・アリアにとって、今回の地下迷宮への突入作戦は部外者としての意味合いが強い。

 友人である来ヶ谷唯湖から突然連絡が入ってきて、イ・ウーとの関連のある魔術師がいるアジトに突撃をかけるけど君も参加するか?とか言われたのだ。母親の裁判を少しでも有利に進めるためにとれる手段はチャンスは一つたりとも逃すわけにはいかないアリアの返答はYesしかなかったわけだが、この作戦に至るための充分な経緯というものは知らされなかった。そのことについて、らしくないとアリアは思ったものである。来ヶ谷唯湖という人間はアリアにとって片手で数えきれる程度しかいない対等の友達の一人ゆえ、どういった人物であるかは分かっているつもりだ。アリアのよく知っていた天才エリザベスと今の来ヶ谷唯湖には性格には大きな隔たりがあることは事実。それでも再会した友達は才能といった素質だけなら全く変わっていないか、むしろ磨かれているとすら感じさせる人物になっていた。

 

 以前、彼女がイギリス王室の仕事を辞めるとか言い出した時は正気を疑ったものであった。

 血統的には日本人でありながらもイギリス一の天才児と称され、持ち前の頭脳で外交を専門とするイギリス王室直属近衛の一人。名前だけなら誰もが知っている秘密結社である『リバティー・メイソン』から幹部としての参加要請が来ていたらしい。絵にかいたようなエリートコースを歩んでいたにも関わらず、すべて蹴ってイギリス清教での仕事を始めた。

 

 意味のあることなのかと当時は疑問に思ったものだが、時間をおいて会うと違いがよくわかる。

 何というか、今の方が敵に回した時がめんどくさいことになる。

 個人的な感想と言わせてもらえば、彼女には昔よりも余裕ができた。何が何でも何かを成し遂げなければならないという使命感を持たなくなり、他人がつけ入る隙がなくなっていた。悪く言えばどこまでも自分勝手になったが、誰よりも自由を手に入れていた。

 

 ゆえに、来ヶ谷唯湖という人間は必要なことなら何でもする人間だと思っている。

 だからこそだった。どうして彼女はイ・ウーとも関連がある魔術師のアジトに侵入するするのに、計画について何も教えてくれなかったのだろう。彼女が教えてくれたのは、二人一組(ツーマンセル)での参加となることと、今回の作戦の仲間との集合地点と時間だけだった。イギリス清教の一員として、たとえ友達であっても機密は守らないといけないという立場にあることは理解している。

 

 だけど、自分の知らないところで何もかもが終わってしまったと分かった時は、虚無感だけが残ったものだった。ヘルメスは行方不明となり、直枝理樹と朱鷺戸沙耶の二人は意識不明のまま病院へと運ばれた。二人はいまだ目を覚まそうとすらしていない。

 

「理樹は大丈夫なのか!?」

「直枝君も朱鷺戸さんも命に別状はありませんよ。朱鷺戸さんの方は出血多量による貧血具合がひどいようですが、それでも安静にしていれば大丈夫だと思います。とはいえ、二人とも強力な麻酔でも使われたのでしょうか、目を覚ますまではまだ時間がかかるでしょう」

 

 直枝やキンジのルームメイトの一人である筋肉な人間が医師に容態を問い詰めていたが、どうやら二人とも容態は安定しているようでアリアは一安心した。アリアが駆け付けた時にはすでに意識がない状態で二人とも倒れていて、佳奈多とジャンヌの二人にケガの手当を受けている最中のことだった。

 

 今回の一件ではアリアは知らないことが多すぎる。

 アドシアードの時にバルダとかいう魔術師が言っていたことだとは頭のなかでは理解できたものの、だからと言って全く納得はしていない。問い詰めようにも来ヶ谷はまだアメリカから帰ってきていないし彼女は言いたくないことは何が何でも言わないとアリアは知っている。よって、聞き出す対象は別の人物となる。アリアは目的の人物と会うために、理樹と沙耶が運ばれた病院から出て、東京武偵高校へと向かった。件の人物が寮会の一員としても仕事の仲介をしていることを聞いていたからだ。寮長室へと言ってみたが当人はいなかったが、代わりに先輩の女子寮長が答えてくれた。

 

「かなちゃん?かなちゃんなら第五応接室にいると思うわ」

「応接室?まだ随分立派な場所を使っているのね」

「あーら?あなたがそれを言うのかしら。神崎さんだって、強襲科(アサルト)のVIPルームが与えられているじゃない。来ヶ谷さんといい、牧瀬くんといい、自分の委員会を持っていてゲスト扱いとして在籍している人たちは授業時間に仕事部屋として使っていることが多いみたいよ」

「そういえばあいつ風紀委員だったわね。でもありがとう。行ってみるわ」

 

 東京武偵高校にある応接室は主に教育委員会への接待として使われている。お偉いさん方のご機嫌を取って、この東京武偵高校での教育は決して暴力や差別を助長するものではなく、健全に力の使い方を教えているのだと主張しているのだ。そのために使われているのが第一応接室から第三応接室。接待用の場所ゆえに、これは教務科(マスターズ)に存在している。対し、第四以降の番号の応接室はゲストとして生徒を招き入れるためのもの。ノーベル賞を取った人間が在籍していた、ということだけでも学校としては一種のブランドとして作用するように、優秀な人材は学校としては是が非でも迎え入れたいものなのだ。そこには在籍していたという事実だけが重要視され、そこで何を学んだのかは大した意味を持たない。『魔の正三角形(トライアングル)』とか呼ばれている人材だってそう。授業にもロクに出ずに好き勝手やっているにもかかわらず黙認されているのはそのためだ。

 

(委員長やってる奴ってあたしリズしか知らないわけだけど、そういえばあいつってどんな奴なんだろう)

 

 昔公安委員をやっていたことは聞いた。けど、言ってしまえばアリアはその程度のことしか知らない。

 風紀委員というのはどちらかといえば知識職の一つだ。公安委員が戦闘特化の連中であるのに対し、風紀委員は経験と知識で対抗する弁護士の武偵版みたいなもの。例えば暴力団を相手にしたとする。どんなに優秀な弁護士であったにしろ、相手の暴力というカードが怖くて正しいことを口にできないというケースがないとは言いきれない。そんなとき、相手の暴力をいうカードを平然と無視して話ができる人間は必ず重宝する。それこそが風紀委員。武力を有する法律の専門家。

 

(あたしと同じ学年でありながら自分の委員会を持てるだけの実力があるってことは間違いなくあたしよりも口がうまいはず。リズやメヌみたいな連中ほど厄介ではないとは思うけど、うまく口車に乗せられないように気を付けないと)

 

 ここでアリアが思い出したのはイギリスにおける二人の天才、友人エリザベスと実妹メヌエット。

 頭が異常なまでにいい変わり者二人。この二人に会話だけでトラウマをたたきこまれた人間は数多い。

 特に妹のメヌエットなんかは、気に入らない相手には自分から死にたくなるような言葉を会話に平然と交えてくる。しかも急にではなく数日という期間を置いてときた。もっともメヌエットの場合は話術にかかりやすい人間とかかりにくい人間がいるみたいであり、アリアには全くと言っていいほど効果がないようだった。けど、ある日ホームズ家のパーティーが主催されたとき、あろうことか来客を無視してアリアとメヌエットとリズべスの三人でトランプをやっていた時、傍から様子を見ていた人たちが真っ青になっていたのは覚えている。さて、どうなるか。いざとなったら武力行使に出る必要性すらも考慮に入れながら第五応接室の扉を開けた。そこでは、

 

「これはなかなかうまいものだな。我がフランスの好敵手イギリスの珈琲とはいえこれは認めざるを得ないだろう」

 

 銀氷の魔女ジャンヌ・ダルクがティーカップ片手にティータイムを満喫しているところであった。ジャンヌ自身が美女であるせいなのか、カップ一つ持つ姿すらすごく様になっている。茶色のソファーに座りくつろいでいる様子はとても犯罪者への待遇には見えなかった。ジャンヌはアリアに気が付くと、カップをテーブルに置いた。

 

「ん?アリアか。いったい何しに来たんだ?」

「それはこっちのセリフよ。アンタこそここで何してんの?」

「アドシアードでは敵としてお前たちの前に立ちはだかった以上、病院へと運ばれた直枝理樹や諜報科(レザド)の女のもとに見まいに行くわけにもいくまい。直枝の仲間の宮沢謙吾とか間違いなく私を警戒するだろうからな。そんな奴がいても空気を悪くしてしまうのもしのびないしな。私は大人しくしていることにした」

「そういうことを聞きたかったわけじゃないの。あたしが知りたかったのは、」

「そもそもどうしてジャンヌが拘置所から出てくることができたのか、かしら?」

 

 アリアの言葉を遮り、彼女が言いたかったことを言いたてた人物は応接室の奥から姿を見せた。手にお菓子とコーヒーカップを乗せた茶瓶を持っている。どうやらティータイムの準備の真っ最中だったようだ。

 

「佳奈多、だったかしら?」

「ええ。私達はこれからお茶にするけど、せっかくだしあなたもどう?」

 

 牧瀬紅葉が一人で勝手に実験するための場所であると化している第四理科室とは違い、この応接室は元々接待のための場所。佳奈多の場合は自分の委員会への依頼人との話し合いのために来客用のテーブルやソファーを完備している。ジャンヌと佳奈多の二人とアリアが向かい合うようにして席に着いた。

 

「どうぞ」

「それじゃ」

 

 アリアは出されたコーヒーを一口含んだ瞬間、あまりの苦さに咳き込んでしまった。

 普段からももまんとかいう小豆の塊を大の好物としているアリアだ。根っからの甘党であるにはこの珈琲は苦過ぎたようだ。苦さ一つでのたうち回るというかつての宿敵のなさけない姿に見かねたジャンヌが砂糖の瓶をを差し出した。アリアは瓶を受け取るとスプーンで五杯くらいの砂糖を入れた。

 

「……それ、珈琲と飲んでいるというよりは砂糖を食べているといった方が正しいんじゃない?糖尿病には気を付けることね」

「うっさいわね。大体!客人にこんな苦いの出す方がどうかしてるわ!!」

「安心なさい。私は別にあなたのことを客人だとは思っていないわ。今出したものは私が元々飲もうとしていたものをそのまま出しただけだし、客人相手にはちゃんとしたものを前もって用意しておくから」

「よくこんなの飲めるわね」

青眼の珈琲(ブルーアイズ・マウンテン)よりはいいってだけよ。苦いから眠気覚ましにもなるしね」

「じゃこれリズの?」

「ええ。真紅眼の苦珈琲(レッドアイズ・ブラックカフェ)っていうらしいわ。この間来ヶ谷さんから委員会で経営している店で出す新作のお試しってことでおすそ分けをもらったの。生憎とソムリエでないので専門的な感想は言えないのだけど、割とおいしく堪能させてもらっているわ」

「別に無理しなくていいんだぞ。おまえの味覚が子供っぽいことぐらい知ってるんだからな」

「無理はしてないわ。別に苦いのが苦手なわけじゃないし、これなら一気飲みなんかできないから少しずつ味わって飲めるでしょう?」

「この効率厨め」

「ほっといて」

 

 軽口を叩きあう二人を見て、アリアはふと思う。

 

 

「地下迷宮の時も思ったんだけど―――――あなたたち仲いいわよね」

「そう?」

「だって現に、ジャンヌをパートナーとして連れてきたじゃない。アンタたち、昔に面識あったんでしょ?」

 

 まるで友達みたいだ。そう思った。

 どう見ても司法取引を行う役人と犯罪者の関係には見えなかった。

 

「私もジャンヌも思ったことは割と口にするタイプだしね。互いに一切の遠慮がないことが気心を知れているかのように見えているだけだと思うわ。事実、私が地下迷宮にジャンヌを連れていったのはこいつなら囮にしても全く心が痛まないからだし」

「冗談だよな?」

「理由の一つってだけですべてではないから安心なさい」

「冗談だって言ってくれ!!」

「冗談よ」

「ハハ、ハハハ。なぜだ。そんな真顔で言われたら冗談だって気がしない」

 

 ジャンヌの表情に影が差した。

 それを見ても、佳奈多の表情に変化はない。

 愛想もないし、そっけない態度を和らげることもない。

 

「ジャンヌ。私にとってあなたが気を使う必要がない相手なのは確かよ。筋金入りの箱入り娘の星伽さんとかよりもよほどやりやすいとは思っているしね」

「佳奈多ッ!」

「そう喜ばないでうっとおしいわよ」

 

 アリアには理解できなかったことが一つあった。

 

「なんでここで白雪の名前が出てくるの?いや、そもそもあの時のメンバーはどういう基準で集めたの?」 

 

 おそらく地下迷宮へと乗り込むためのメンバーを決めたのはこいつだろう。

 そのためにわざわざジャンヌ・ダルクに司法取引させてまで拘置所から出した。

 

 

「分かりやすく言うと、政治的な問題を考慮した結果と言えばいいかしら」

「政治的な問題?」

教務科(マスターズ)の先生たちの授業態度のように、公になれば問題視されることはこの学校には山ほどあるわ。でも、ある程度のことは学校内部だけで処理される。政府との司法取引を筆頭に、当事者たちだけで問題が片づけられることが多々あるわ。イ・ウーのスパイがこの東京武偵高校に潜り込んでいることすら不祥事として勝手にもみ消されて公にはならなかったようにね」

「スパイ?そういえばいるって言ってたわね。誰?」

「守秘義務があるから言えないわ。それはそうと、どのみちアドシアードの時にあなたたちが接触した『バルダ』とかいう魔術師のおかげであの地下迷宮の存在自体はほぼ確定してしまったの。あのレベルとなると、個人や学校で勝手に解決しようとしてしまうと何かあった時にどうして声をかけてくれなかったのかと叩かれてしまう。元々魔術関連は治外法権が適用されやすいしね。日本における魔術関連の国家レベルのトラブルは大抵は星伽神社かイギリス清教が対応することになっているからイギリス清教である来ヶ谷さんに頼んだの。名目上は彼女とは同じ学年で委員会持ってる人同士付き合いがあるからお願いした、ということになっているのわ。直枝の奴なんて来ヶ谷さんのチームメイトだし、朱鷺戸さんだって似たようなものだったでしょ」

 

 

 朱鷺戸沙耶とか名乗った諜報科(レザド)の少女は、イギリス清教からの依頼でこの場にいるとアリアに説明した。生憎とそれは表向きの理由であって沙耶はあくまで『機関』の人間であるのだが、そのことを知らないアリアは今の説明ですんなりと納得してしまった。自分とキンジのペアがリズから呼ばれた経緯として、疑問点はなにも見当たらない。

 

「…………」

「どうかした?」

「いや、こんなに素直に話してくれるとは思っていなくて」

 

 

 ここはで聞いて、アリアが疑問としていたことの大半は聞くことができた。でも、どこか拍子抜けした部分もある。リズべスやメヌエットのような何を考えているのか分からないような相手と交渉しなければならないと思ってこの場に来ただけあって、佳奈多のことは随分と素直な人間のように思えて仕方ない。だからこそ。疑問が生まれた。

 

 ―――――どうしてこいつが、こんなに素直な人間が教務科(マスターズ)から『魔の正三角形(トライアングル)』だなんて呼ばれているのだろう。

 

 元々は公安委員をやっていた現風紀委員長。

 肩書だけを聞いて、変わった奴もいるもんだというのがアリアの率直な感想である。

 同じく犯罪者と戦うという目的を持っていたとしても、強襲科(アサルト)諜報科(レザド)の人間は本質的には噛み合わないことが多い。直接的な武力をもって犯罪者を捕まえる公安委員と、じっくりと時間をかけて絡め手を使う風紀委員とではまず基本方針だって違うのだ。

 

 

――――――どうしてこんな真っ当な神経をしている奴が、この歳で委員長になんてなることができたんだろう?

 

 相手の話をしっかりと聞いて、答えられる範囲で誠実に答えてくれる。

 自分の気に食わないことがあったらすぐに手を出すことが多い武偵の中では珍しい人間だと思う。

 それと同時にこうも思う。

 

―――――どうして。どうして。どうしてあたしはこいつを、このまま受け入れることに抵抗を感じているのだろう。

 

 風紀委員であり、イ・ウー関連の司法取引を担当しているのなら今後イ・ウーと戦う時に彼女は大きな味方になってくれるような気がする。なのに、アリアは佳奈多を利用しようという気はどういうわけか沸いてこない。下手に舐めて係わったら大火傷しそうな気がするのだ。こいつは単に、大人しいだけの人間じゃない。アリアが自分でもどうしてこんなことを考えるのかと不思議に思っていると、携帯電話のマナーモード特有の振動音が鳴り響いた。

 

「ごめんなさい。少し失礼するわね」

 

 佳奈多は携帯電話を取り出したかと思うと、この応接室の奥の方へと行ってしまった。

 この間にジャンヌに聞いておくことにする。

 

「ねえジャンヌ。そういえば大丈夫だったの?」

「何がだ?」

「ほら、あの地下迷宮で私達はあなたたち二人を置いて先に行ったでしょ?50体近くの砂人形を敵にしたらさすがのアンタでも苦労したんじゃない?」

「アリア。最初に行っておくぞ。平和なお前たちは私のことをあの時仲間だと言ったが、私としてはお前たちの仲間になった覚えはない。別にお前たちのためにあの場に残ったわけではないんだ。佳奈多だって私一人で充分だって言ってたしな」

「じゃあなんで残ったの?あいつと友達だったから?」

「私の身の安全のためだ。お前たちについて行ってヘルメスとかいう錬金術師と戦うより、佳奈多といた方が確実に安全だったからだ」

 

 あの地下迷宮に突入前、ジャンヌが裏切ることはないと佳奈多は断言していた。

 その理由は司法取引によってジャンヌが裏切ることができる立場にあるからではなく、

 

「え、あいつそんなに強いの?」

 

 どうやら単純な力関係のようである。そういえば、アリアたちがミノタウロスを倒して戻ってきたときにはすでに、ジャンヌと佳奈多の二人は元の大広間にはいなかった。その時のことについて詳しく聞こうとしたが、ちょうど佳奈多が戻ってきて話は終わりとなってしまう。

 

「ジャンヌ。お茶の時間はお終いよ。これから用事ができたから一緒にきて頂戴。ごめんなさいね神崎さん。ロクなお迎えもできないで」

「聞きたいことは聞けたし、それはもういいわ。何の用?」

「ジャンヌの司法取引関連のことで、少し。それじゃ鍵をかけるから出ていってくれる?」

 

 三人で応接室を出たら、佳奈多はすぐに部屋のカギをかけた。

 

「じゃあまたね」

「いいかアリア。私はいずれリベンジマッチをしてやるから勝ったと思うなよ」

「来るなら来なさい。返り討ちにしてやるわ」

 

 二人の姿が見えなくなった後、アリアの携帯に電話がかかってきた。

 戦妹(アミカ)のあかり辺りかな、と思って電話に出ると、聞こえてきたのは思いもしなかった声だった。

 

『久しいな、オルメス(・・・・)

 

 電話越しだとはいえ、誰からかかってきたのかはすぐに分かった。

 自分のことをオルメスと呼ぶ人間はたった一人だけだ。

 

「――――――理子ッ!!アンタいまどこにいんの!」

 

 アリアの呼び掛けには理子は答えなかった。理子が言ったのはただ一言だけ。

 今日の午後十時。情報科(インフォルマ)の教育等の屋上にて待つ。

 それだけ聞くと、アリアはツー、ツー、ツーという電話が切れた音しか聞こえなくなった。

 

 




帰ってくるのは理子だけではないですよ!!
アメリカ編メンバーズが帰ってきます。

さて、どうなることやら……。

あと、レッドアイズ新規おめでとうッ!!

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