Scarlet Busters!   作:Sepia

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何?家族とはデュエリストではないのか!?
セレナさんポンコツかわいい。

まさかグレートモスを出す猛者がいるとは思いませんでした。



Mission83 三枝一族の生き残り

 

 前にふとテレビをつけたことがある。当時の私は依頼終わりで疲れていて、何か面白いものバラエティ番組でもやっていないものかと宿泊先のホテルにあったテレビのリモコンをオンにした。そこで映っていたのはとある弁護士のドラマであった。弁護士をやっている大人の女性の主人公が、公園でとある小さな子供と出会う。その子供は家で虐待を受けている子供であった。ただ黙って虐待を受けているという事実を知った主人公は、その小学生にもならない年齢の幼い子供にある行動を教える。

 

 小さな拳を握りしめて、相手にぶつけるの。

 

 せめてもの抵抗の意思を見せ、自分自身に対する明白な敵と判断したものに対する行動である。

 虐待を行っている親に対してせめてもの抵抗策を教えたつもりだった。

 小さな子供に対する虐待は、意識が変わらない限りどうにもならない。

 外部から何を言おうが誰もロクに相手にしないことであるし、所詮は子供の言うことだと外部の人間は誰も聞く耳を持たないだろう。警察なんて全くあてにならない。今はまだ、どうすることもできないのだ。

 

 でもいつか。

 いつかその子が成長した時、誰かに助けを求めることができるだけの強さを持つことを祈って、主人公の女性は拳を握りしめることを教えた。

 

 けれど、結果は悲しい結末を迎えることになる。

 主人公が虐待の現場を実際に目撃し、アンタにはこの子は育てる親としての資格なんてないと母親と引き離そうとしたとき、子どもは握りしめた拳を主人公に向けて殴ってきた。虐待を行っている母親を守ろうとして、その子を思って引きはがそうとして女性を敵とみなして殴ってきた。

 

 所詮は小さな幼い子供の拳。

 痛みなんて感じないはずなのに、主人公の女性はとてもつらそうな表情を浮かべていた。

 どれだけ嫌われていても、必要ないものだと思われていても大好きだという気持ちは変わらない。

 一方通行の愛情がそこにはあった。

 第三者から見たらそれはとても悲しくて、どこにも救いなんかないのだろう。

 

「ただいま―――――――葉留佳君?どうかしたのか?」

「エ?な、何がですカ?特になにもおきてないですヨ!」

「だって葉留佳君、泣いてるじゃないか。何か感動するドラマでも入っていたのか?」

 

 私はそのドラマを見ていた時、いつの間にか涙を流していたことに姉御がホテルに帰ってきて指摘されてようやく気が付いたものであった。大好きなのに、大好きだのにその思いは届かない。私がこのドラマを見てどうしようもなく悲しい気持ちになってしまったのは、私の思いもこうなってしまうのではないのかという不安からだったのだろうか。それとも、私の気持ちも一方的なものになってしまったと思ってしまったからならなのだろうか。

 

     

     ●

 

 

 そいつは突然現れた。

 葉留佳はヌンチャクによる一撃を理子の頭部に叩きつけようとした瞬間に理子が消えたと思ったら、別の方向に理子と一緒に立っていた。一瞬で消え、そして一瞬で別の場所に姿を現したのだ。

 

(……やっぱり似ている。揃ってみてみればはっきりと分かる)

 

 かなたおねえちゃん。葉留佳の言葉を受けて、アリアは二人の姿を見比べた。葉留佳の姿を一度見た時から面影があるとは思っていた。同じような容姿に髪留め。瞳の色はどうやら違うようであるが、それでも似ている。お姉ちゃんと呼ぶ葉留佳の言葉が二人の関係を物語っていた。葉留佳が手に握るヌンチャクにはもう力がないっておらず、彼女はただどうしての疑問の言葉を口にしていた。

 

「どうしてそいつを守るの?」

「どうして?これまた面白いことを聞くものね。私でなくとも誰だって、この状況なら峰さんを守ろうとしたと思うわよ。峰さんだから特別守ろうとしたわけじゃない。現に、そこの神崎さんだってあなたを止めようとしてたじゃない」

 

 この場において佳奈多に聞きたいことがあったのは葉留佳だけではない。アリアにだって疑問はあった。葉留佳がアリアたちの目の前で見せた超能力は間違いなくテレポート。その超能力を使う一族は、イ・ウーの手によって滅ぼされたと白雪から聞いていた。それなら今葉留佳という少女が理子を目の敵にするのは分かる。アリアの戦妹(アミカ)の間宮あかりですらそうであった。あの人懐っこくて優しい後輩が、一族を滅ぼした敵を前にして急変していた。それなのに、佳奈多は理子を敵とみなすどころか自然体で守ろうとした。

 

「葉留佳。そもそも今あなたがやっていることになんの意味があるというの?今のあなたは自分の鬱憤を他人で晴らそうとしているだけよ。時間は無限ではないのだから、もっと有意義に使いなさい」

「佳奈多が昔みたいに微笑んでくれたら、こんなこといますぐにだってやめてあげるよッ!!でもそうじゃない!!イ・ウーなんてものがあるから、佳奈多はおかしくなっちゃった!!こいつらがいる限り、佳奈多は二度と私に笑いかけてくれないんだッ!!」

「だからイ・ウーをつぶすと?」

「だってかなた泣いてたじゃんッ!!そうさせたのはイ・ウーだッ!!」

「それはどうかしらね」

 

 なんだこれは、とアリアは思う。妹の方はイ・ウーに対しての恨みつらみを口にしている。なにせ自分の親族を殺されたのだ。誰だってこうなると思う。復讐なんてくだらない。誰もそんなことを望んでいない。そんなきれいごとを口にできるのは偽善者でもなんでもなく、心情を理解できない愚か者でしかない。この状況において異常なのは葉留佳ではなく佳奈多の方だとアリアは思った。

 

 ―――――一族をイ・ウーの手で滅ぼされたのに、どうしてこいつはそんな落ち着いていられるの?

 

 佳奈多はまるで、そのことには何とも思っていないような反応を見せている。

 そうでなければあの地下迷宮に潜り込むとき、『銀氷の魔女』ジャンヌ・ダルクを自身のパートナーとして引っ張ってはこないだろうし、今こうして妹の手から理子を超能力を使って移動させてまで守ろうともしていないだろう。いや、するしない以前にできるわけもないと思う。恨みが理由で理子を見殺しにしたとしてもおかしくはない。それに他にも疑問はある。どうしてこいつは、妹と争ってまで理子を守らなければいけない立場に対して一切の苦悶や葛藤が表情に見られないのだろう。どこまでも自然体でいる佳奈多にアリアは何かうすら寒いものを感じてしまった。

 

「アンタ、どうしてそんなに落ち着いたいられるの? イ・ウーによってアンタの一族はみんな殺されたんでしょ?」

「あら神崎さん。私が三枝一族の出身という所まで気づいているのにまだ分からないの?察しが悪いわね。かの名探偵シャーロック・ホームズ卿の名前が泣いてしまうわよ。葉留佳、せっかくだから教えてあげたらどうかしら。あの公安0に続くとまで言われた四葉(よつのは)公安委員会を滅ぼしたイ・ウーの魔女というのが誰であるかということを。私は別に構わないわよ」

 

 葉留佳の方へと視線を向けるが、彼女は何も答えなかった。

 ただ、悲しそうに姉の姿を見つめるだけである。

 

「まさか、お前……」

 

 キンジの銃は、すでに佳奈多の方へと向いていた。キンジにとっては、その魔女というのが誰を指しているのかすでについていた。キンジはまさか、という驚愕を隠せないまま叫んだ。

 

「お前もイ・ウーのメンバーだったのか!?」

 

 二木佳奈多がイ・ウーのメンバーであることを考えれば、地下迷宮に行く際にジャンヌを連れてきたことについては何の疑問もなくなった。むしろ、あれを取引材料にしてジャンヌというイ・ウーの仲間を救出したともとれる。親しげに会話していたことについては以前からの面識があるからと言っていたが、それはイ・ウーの仲間としての面識だったのだ。

 

「俺たちを騙していたのか!?」

「騙す?人聞きが悪いわね。単に言わなかっただけじゃない。それに言う必要も感じなかった。そもそも私がいつ仲間として一緒に戦おうなんてう友情にあふれたことを口にした?先の地下迷宮での時なんて、あなたたちが勝手に私やジャンヌを仲間だと勝手に信じて、そして勝手に失望しているだけじゃない。バカみたいに素直な直枝の奴はどうだか知らないけど、朱鷺戸さんの方は私の正体のことを疑ってかかっていたわよ。彼女、マヌケなあなたたちとじゃ違ってどこまでかは分からないけど気づいていたことがあるようだったしね」

「待って。アンタ、理子の仲間だというのならひょっとしてあのバスジャックの時のことも全て知っていたの?」

 

 そうなると、アリアの敵はずっと昔から身近に潜んでいたことになる。

 佳奈多は委員会の仕事ということで、事情聴取のためにアリアが入院している病院に何食わぬ顔でやってきていた。その時の彼女はいったいどういう気持ちだったのだろう。本当は誰よりも事情を知っているはずなのに、素知らぬ顔で当事者たちから話を聞いていたのだ。

 

「ええ、もちろん。あの時から峰さんがバスジャック事件の犯人だということも、知っていたわよ」

「じゃあアドシアードの時のこともッ!?」

「『魔剣(デュランダル)』が実在していてその正体がジャンヌであるということかしら?そのことなら最初から知っていたけど、それが何か?」

「何か、だって……!?自分が何を言っているのか分かっているのか!?」

「分からないわね。教えてもらえる?」

「お前は武偵高校の仲間の信頼と努力を踏みにじっているということだよッ!!」

 

 これほど人を馬鹿にしているものはない。こいつは知っているはずなのだ。強襲科(アサルト)の仲間たちがバスジャック犯の手がかりを何もつかめないという現状に対して無力をかみしめている姿をこいつも見ていた。アドシアードの時だって、白雪がどれだけ怯えていたのかだって知っていたのだろう。その上で何もしなかった。こいつは本来全部わかっていて、その気になれば全部自分自身で解決できたはずなのだ。キンジは白雪が正体の分からない『魔剣(デュランダル)』にどれだけ脅えていたか、そして人生を投げ打ってでもキンジを守ろうとしたことを知っていた以上、佳奈多に対する怒りがこみあげてきた。

 

「二木。次期女子の寮長として選ばれるほどの人間だかなんだか知らないが、人のことを馬鹿にするもんじゃない」

 

 キンジは佳奈多に対して銃を向ける。

 こいつには一度痛い目を合わせてやらないと気が済まない。

 

「武偵をやめるんだとか言って、武偵として生きる努力をやめた人間に私を倒せるとでも?」

「お前は武偵なんかじゃない。9条を破った奴が武偵というものを語るな」

 

 今のキンジはヒステリアモードでもなんでもない、ただの遠山キンジだ。

 それでもこのまま引き下がってたまるものかと気持ちがこみ上げてくる。

 けど、キンジのパートナーであるアリアまだ何も言わない。どちらかというと短気であるアリアの性格を考えたら、すぐさま佳奈多につかみかかってもおかしくないはずなのにだ。アリアは未だに何も言わないでいた。

 

「……アンタが」

 

 ようやくアリアが口を開く。

 彼女の言葉は動揺で震えているままである。

 

「アンタがイ・ウーのメンバーで、三枝一族を滅ぼした魔女?」

 

 アリアはいまだ、佳奈多に対しての理解が追いついていないようであった。

 キンジが今佳奈多を敵だとすぐに認識してできたのは、幼なじみである白雪の影響が大きいだろう。

 ただアリアは、訪ねていった時に珈琲を出してくれたこともあってかすぐには納得ができないでいた。

 白雪から話を聞いていたこともあって、三枝一族を滅ぼした魔女がイ・ウーにいることは知っていた。

 

 けれどそいつはもっと冷酷で、人の命なんてなんとも思っていない正真正銘の悪魔のような奴を想像していたのだ。アリアから見た佳奈多の認識は、何考えているかはよく分からないけど温厚で親切な人間だった。頭では分かっているはずなのに、どうしても佳奈多が冷酷な魔女というイメージを持つことができず、何かの間違いではないものかと考えてしまう。でも、妹だという瓜二つの少女の俯いた顔がすべてを物語っていた。

 

「どうして……どうしてアンタみたいな穏やかな人間にそんなことができたのよ!?アンタ、私を殺そうと思えばいつでもできたでしょ!?」

 

 例えばあの地下迷宮の時。

 ヘルメスとかいう錬金術師に殺されたと言いきることで、佳奈多とジャンヌは残りのメンバーを置き去りにすることでアリアたちを殺すことができただろう。

 それにあの応接室にでも訪ねていったとき。あの珈琲に睡眠薬でも混ぜこむ機会が佳奈多にはあった。

 強襲科(アサルト)出身のアリアからしたらそんなことは卑怯者のすることであるが、諜報科(レザド)出身である佳奈多からしたら卑怯なことでもなんでもない。

 

 佳奈多はイ・ウーのメンバーとしてアリアを排除しようと思えばできたはずなのだ。

 

 それなのに、いずれ自分の身を脅かすかもしれない相手を前にして何もせず待つような真似をする。

 そのくせあっさりと自分がイ・ウーだとバラし、友情に付け込もうとすることもない。

 ともにイ・ウーと戦う仲間として行動して、信頼を勝ち取ったところで裏切られたらアリアには為すすべはなかっただろう。

 

強襲科(アサルト)武偵のように喧嘩っ早いわけでもなく、落ち着いて物事を考えるような人間がどうして!?どうして自分の家族を手にかけることができたの!?」

 

 気に食わないから殺してしまえ。世界のルールは自分が決める。

 そんな風に考える自分勝手な魔女みたいに、何もかもが自分の意のままに行かなければ癇癪を起すような人間ではないはずなのだ。

 

「簡単な話よ。ねえ神崎さん。あなたはイ・ウーなんて強大な組織を相手に戦うことができるのはどうしてかしら。あなたは確か、ホームズ家ではできそこないの落ちこぼれとしてまるでいないもののように扱われてきたのでしょう?ホームズ家のために戦う義理も名誉もあなたにははないでしょうに」

「ママを助け出す為よ。そのためならなんでもできる」

「どうして?」

「家族だからに決まっているでしょ!!!」

 

 アリアの言葉を受けて、佳奈多はアリアに微笑んだ。

 なんだ、分かっているんじゃない。当たり前の常識を口にするようにして、佳奈多は回答を口にする。

 

「あいつらのことを家族だと思っていなかった。それが理由よ。だから私には、あなたが言うような家族を手にかけたという認識はないのよ。所詮は赤の他人なんだから、どうなっても構わないでしょう?どこか遠くで誰かが殺された。そんなニュースで聞きながす程度のものでしかないわ」

「血のつながった人間だろうがッ!!お前はなんでそんなことを平然と口にする!?それに、人の命を何だと思っている!?」

「人の命?笑わせないでちょうだい。命の価値だなんて人それぞれでしょう。時に人は、命に代えてもだんて言葉で名誉だとか形のないもののために命を懸けようとする。ならば、人の命よりも尊いものはあるって言うことよ。人間の命の価値は平等と思っているのならそれでも結構。でも、その思想を人に押し付けないで」

「自分の命は特別だとでも言いたいのか」

「どうとでも思ってくれて結構よ。あなたたちに理解してもらうつもりもないし、分かった気になってもらいたくもない」

 

 キンジには佳奈多が今まで仲間に嘘をついて平然と武偵高校で過ごすことができていた理由が少しだけわかった気がした。こいつは結局のところ、他人のことなんてどうでもいいのだ。だから誰かが不安になっていても、不幸になったとしてもなにも思っていない。所詮は自分には関係のない他人のことがから、どうなっても知ったこっちゃない。

 

「二木佳奈多ッ!!お前は今ここで!!俺たちが親族殺しの容疑で逮捕するッ!!」

 

 こんな血のつながった肉親を家族とも思わず、手にかけるような人間を野放しにしておくわけにはいかない。一度とっちめてやる必要があると思い、キンジは銃を握る手に強く力を加えていた。家族の温かさを知る人間として、キンジにはどうしても許すことができないのだ。でも、佳奈多を守るように立ちふさがった人がいた。

 

「やめてッ!!」

 

 その人は両目に涙をためながらも、キンジの銃から身を守る盾になるように両手を広げて立ちふさがった。

 

「やめて……やめてよ。私のかなたにひどいことしないでッ!!」

「どけ三枝ッ!?そいつは魔女だッ!!ここで俺たちでとっちめておかないと、いずれまた何か大きな事件を起こす奴だッ!!」

「そんなことない!かなたはそんなことしないッ!!あんなことになったのは……きっと何かがおかしくなってしまったからなんだッ!!」

「お前はいい加減目を覚ませッ!!そいつのことを家族だと思うのなら、家族として止めてやるのが義務ってもんだろ!?」

 

 決して引こうとしない妹の姿を見た姉は、相も変らぬ穏やかな口調で口を開く。

 

「ええ、それが正解よ葉留佳。さすが来ヶ谷さんのもとでいろいろと学んできただけはあるわね。私をここで逮捕なんてしたら、不当逮捕で逆に自分の身を絞めかねない。母親の裁判を控えている神崎さんのことを考えたら、ここで引かせるのが彼女のためだものね」

「……違うよ。違うよかなた。私がとめるのはそんな理由じゃない。そんな理由じゃないよ」

 

 きっと葉留佳が姉に銃を向けてほしくないと思っているのはきっと、まだ姉のことを家族だと思っているから。

 葉留佳は佳奈多に涙目のまま向き合った。何か言いたげであるが、葉留佳はそれでも言葉が出てこない。そんな妹を無視して姉は控えていた二人に声をかける。

 

「さて、葉留佳にはもう峰さんをどうこうするつもりはないようだし、私の目的は果たしたと言ってもいいわね。遠山、そして神崎さん。私にこれ以上関わらないでくれませんか。私はあなたたちをどうこうするつもりなんてないわ」

「……佳奈多。言うべきことはそんなことじゃないでしょう?アンタは今の状況を見て、妹の泣いてる姿を見てなんとも思わないの!?」

「アリア。もうよせ。こいつに何があったのかは知らないが、こいつはもう手遅れだ。この腐った根性を叩き直してやる必要があるッ!」

「待てキンジ。佳奈多のこともいいが、あたしを無視してもらっても困る」

 

 臨戦態勢に入ったキンジに相対するように、理子もまた佳奈多の隣から一歩前へと出る。

 

「峰さん、やめなさい」

 

 けど、佳奈多は理子を呼び止めた。

 

「リターンマッチの決着をつけたいのなら勝手にすればいいとは思うけど、今のあなたは葉留佳の攻撃をくらってフラフラのはずよ。そんな状態で強襲科(アサルト)のSランク武偵たちなんかと戦えばたたでは済まないわ。それに時間がかかって他の武偵がやってきたりすると面倒なことになるわ。巻き込まれる奴が現れたら人の命がもったいない」

「けど、」

「目的は見失わないようにね。それにやるなら万全の状態でやりたいものじゃない。けど、せっかくの機会なんだし試しておくのも面白そうなのもまた事実なのよね。私なら峰さんと違って、そう時間がかからないだろうし」

 

 佳奈多の気配が消え失せる。アリアたちの目の前に立っているはずなのに、視界にはちゃんと映っているのにどういうわけか気配というものが全く感じられない。そこにいるという認識を持てなくなる。まるでまるで背景でも見ているかのような印象をアリアは受けた。戸惑うアリアに対して佳奈多は気負うこともなく、まるで友達を遊びにでも誘うような気楽さで口を開いた。

 

「さて、せっかくだしちょっと遊んでいきましょうか」

 

 

 


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