と思われるかもしれませんが、東方の小説です。あまり長い話ではありませんので、気長に読んでいただけると、幸いです。
電車に揺られている。
がたんがたんと騒々しい音が耳にこだまする。ふと車窓を見ると、在るのは山、山、山、が、夕焼けのそらに染められている光景だった。
ここはどこだろう。心当たりがない。私は困って、うんうんと思案する。
すると思い出した。そういえば、あの日もこんな夕焼けが見えたっけ。
☆★☆
そーれ。
軽快な掛け声とともに降って来たのは水だった。今は十一月。冷たくて、息が止まりそうになる。神山万姫(かみやまばんき)は、やめてよ。と、必死に声を出す。が、トイレの個室の外側から聞こえてくるのは、彼女をののしる声ばかりである。
「学校に来るなよ、障害。」「バカ、あほ」「顔も見たくない。」
私は、あんたの顔すら見たこと無い。と彼女は喉まで出かかるが堪える。
そんなことを言った時には、また次の水が降ってくるに違いない。彼女はそう思った。
場に一時の沈黙が流れる。
それを切り裂くように、彼女の声がこだまする。
「まず、私は障害者じゃない!なんでそんなこと言うの!?」
途端、個室のドアが勢いよく開いて、彼女は引っ張り出される。
そして思いっきり頭をぶたれる。
「だったらその車椅子はなんだよ。お前、ちょっとおかしいんだよ。」
「車椅子なんてどこにもないでしょ。」彼女は泣きそうな声で言う。
「とにかく」と大柄な女が呟く。「とにかく、お前には最高なプレゼントを用意したからよ、受け取ってくれよ、ばんきちゃん。」
「プレゼント?」彼女は聞き返す。
「そう、プレゼントだ。下を、見ろよ。」
言われたとおりに舌を見ると、そこには、ぐちゃぐちゃになった食べ物が転がっていた。
それは、今日の朝、彼女の母親が作った弁当の中身に違いなかった。
彼女の顔がみるみる青褪めていった。女たちが下品に笑う。
☆★☆
神山万姫が車にはねられたのは一年前の事だ。
あっという間だった。信号無視の車が、猪突猛進。横から突っ込んできた。
彼女は、もう二度と足を動かせないだろう。との診断を下され、彼女の親は、自らの傷心も顧みず今後の娘の生活のため、車椅子のメーカー調べなどにあくせくした。
しかし、手術後、意識が目覚めた彼女が発したのは驚きの台詞だった。
「あんな事故があったのに足が動くなんて、私、幸運。」
精神科医は、彼女に妄想障害との診断を下した。
彼女の親は慌てた。しかし、こころに関しては物理的に触ることも何もできない。
文字通り何もできず。月日が過ぎて言った。
彼女は、自分を健常だと思い込んでいるので、車椅子で、文句ひとつ言わず、毎日学校に行った。しかしそこでは、「あたまのおかしい」彼女に対するいじめが、日を追うごとにその苛烈さを増していく一方だった。
☆★☆
土の味がする飯を食べながら、「死のっかな。」と、そう思った。
自分が虐められている理由がさっぱりわからない。だからどこを直せばいい。とか、なにも見えてこないし、実のところ、人が人を虐めるのに理由なんていらない。という事を知ってもいたからだ。
こんな日々が続くのなら、死んで、幕を、閉じた方がましじゃないか。
そう思った。本気でそう思った。
耳に、愉快な笑い声が響く。
この人達も道連れじゃだめかな、神様。と、そう思うが。
私にそんな度胸はない。
そんな最低の決心をした日だった。
人生に光が差す出来事が起こる。下校道でのことだった。
次回もよろしくお願いします