GOBLIN SLAYER (ゴブスレ×忍殺) 作:酢酢酢豆腐
ニンジャ:平安時代をカラテで支配した半神的存在。長期間のカラテ鍛練とハナミ儀式を経てカイデンし、リアルニンジャとなる。
カラテシャウト:イヤーッ!とかインダストリ!とかの攻撃時に発する掛け声。実際カラテシャウトの有無によって物理攻撃の威力が変わってくるらしい。
ゴブリンスレイヤー:ゴブリンを殺す者。狂気的なスリケン投擲鍛練によってヤバイ級のトテキ・ジツを身に付けている。実際ニュービーで完全に半神存在のニンジャになったわけではない。
薄暗く異臭の漂うゴブリンの巣穴を二人の冒険者が進む。
片方はゴブリンの殺戮者ゴブリンスレイヤー。そしてもう一人は先程ゴブリンスレイヤーの手で救出され、臨時でチームアップした女神官である。
「アイエェェェ・・・ここは」
やや広くなった通路はツキジめいた惨状である。ゴブリンの斬殺死体が幾つかとかつて剣士だったもののネギトロが散乱しているのだ。女神官のニューロンに深刻なダメージ!当然の如く嘔吐!
「オゴゴーッ!ゴボーッ!」
「これからも冒険者を続けるのであれば血と臓物の臭いには慣れることだ。・・・凄惨な光景にもな。ニューロンがもたんぞ」
ゴブリンスレイヤーはうっそりと呟くように指南すると剣士の持ち物だった剣を手に取る。
明らかに閉所には向かない刃渡りである。天井に引っ掛かったような痕跡がある。上段からのイアイ斬撃を放とうとして隙を突かれたか。注意は一秒、後遺症が死ぬまで。これは平安時代の哲学剣士ミヤモト・マサシの残したコトワザだ。ゴブリンスレイヤーは遺品の剣をとり、二三度振るって血を弾き飛ばすとニンジャベルトにマウントした。
「もしや突然背後にゴブリン共が出現し、挟み撃ちにされたのでは?」
「アイエッ・・・何故それを・・・」
半ば確信をもって断じられたそれに女神官は驚きを隠せない!何故ゴブリンスレイヤーは白磁級一党が陥った窮地を言い当てることが出来るのだろうか。するとゴブリンスレイヤーが通路の前方を指差す。おお、ナムサン!人骨や獣の頭骨、雑多な戦利品を寄せ集めて作られたと思しき邪悪トーテムが有るではないか!
「ゴブリンシャーマンがいる群れではこのようなトーテムを見掛けることがある。これは実際邪悪な祭祀に使われることも有るが、真の役割は目眩ましだ」
「どういうことです?」
「ここまで来い。そして来た道を振り返ってみるがいい」
女神官が振り返れば今歩いてきた通路と並走するようにもう一本の通路が有るではないか!
「ナンデ!?私達が通った際には横穴なんて無かったはず!」
「松明の限られた明かり、邪悪トーテム、緊張、その複合的なウカツによって見落としたのだろう」
「そんな・・・」
事実として女神官が通過した際にも横穴はあった。しかし血気に逸る剣士に先導されるかたちで白磁級一党はトーテムに注意を逸らされてしまい、結果として横穴を見落としたのだ。ヒヤリ・ハット!彼らはウカツではあったがここまでされる謂れはない!
「横穴のゴブリンを先に掃討する」
ゴブリンスレイヤーは言うやいなや予備の松明を横穴に投擲!横穴の奥でウカツな次の獲物をアンブッシュしようと待ち受けていたゴブリンが5,6匹モスキート・ダイビング・トゥ・ベイルファイアめいて近付いてくる。
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「ゴブアバーッ!」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」六発のスリケンが狙い過たず全弾命中!ゴウランガ!何というトテキ・ジツのマスターアーツであろうか!
「暗い場所でも見えてるんですか?」
「まさか。状況判断、そしてフーリンカザンだ」
全自動ゴブリン殺戮マシーンめいてカイシャクとスリケン回収を繰り返しながらゴブリンスレイヤーが応える。
「ゴブイヤーッ!」ALAS!隠れて震えていたゴブリンのヤバレカバレの一撃だ!アブナイ!「イヤーッ!」「ゴブアババババーッ!?」ゴブリンスレイヤーは危なげなくアンブッシュ回避!ブリッジ姿勢からシームレスにサマーソルトキックに繋いで反撃!アンブッシュゴブリンの頭部に致命的一撃!当然の如く斬首!
サマーソルトキックとは全身のバネを利用し、宙返りをしながら敵を蹴りあげる恐るべきカラテ技である。平安時代のニンジャ戦士マケド・ズンイチが開発し当時のイクサで猛威をふるった。あまりの威力に当時のニンジャ達は、畏怖をこめこの技をマケドズ・デッドリーアーチと呼んだといわれる。
01010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010101010
「よし。ここまでだ」
ゴブリンスレイヤーは足を止め、杭とロープを張った。極めて古典的なベトコン・トラップである。
「俺が飛び出したら聖光を唱えろ。恐らくホブとシャーマンがいる。合図をしたらもう一度聖光だ。いいな」
「アッハイ!」
「イヤーッ!」
弾丸めいてゴブリンスレイヤーが飛び出す!
「いと慈悲深き地母神よ、闇に迷える私どもに、聖なる光をお与えください!イヤーッ!聖光!」
女神官の聖光がゴブリン達の寝所をまばゆく照らし出す!ゴブリンスレイヤーからはゴブリン達が見えているが、ゴブリン達は目が眩んでゴブリンスレイヤーの姿を捉えることが出来ない!何というフーリンカザンであろうか!
「イヤーッ!」「ゴブアバーッ!?」
初手でゴブリンシャーマンに長剣を投擲!ゴブリンシャーマン無残!
「イィィィィヤーッ!」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」
「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」
素早くスリケンを投擲して離脱!ホブゴブリンがゴブリンスレイヤーを追跡!
「ARGHHHHH!」
明らかに怒りのこもったホブゴブリンのうなり声を背にゴブリンスレイヤーが駆ける。もうすぐベトコン・トラップポイントだ。女神官が覚悟を決めた表情でゴブリンスレイヤーの合図を待っている姿が見える。
「ヤレーッ!神官=サン!ヤレーッ!」
ゴブリンスレイヤーの合図に女神官は頷き、決断的に奇跡を行使した。
「いと慈悲深き地母神よ、闇に迷える私どもに、聖なる光をお与えください!イヤーッ!聖光!」
ホブゴブリンは視界を奪われベトコン・トラップで転倒!何が起きているのか把握できていない!そしてゴブリンスレイヤーは一体どこにいったのだろうか。
「イヤーッ!」
おおドラゴン!ベトコン・トラップを変則的トライアングルリープで回避後、余勢をかってドラゴン・ニンジャクランのカラテ奥義ドラゴン・トビゲリを放ったのだ!極めて均整のとれた姿勢で放たれたドラゴン・トビゲリを受けたホブゴブリンの首から上はカラテ衝撃波により血霧と化した。ホブゴブリン無残!インガオホーである。
「よくやった」
「ハイ!」
即席のチームアップにしては見事な連携といえるだろう。ニンジャとしてはニュービーそのものなゴブリンスレイヤーだが、その冒険者指揮力は銀等級相応のものがある。
「残敵を掃討し、人質を救出する」
「ハイ!」
ゴブリンの寝所はゴアそのものな光景だ。ゴブリンスレイヤーの情け容赦無いカラテにより、この巣穴のゴブリンはネギトロと化した。いや、待て。ゴブリンスレイヤーのニンジャ聴覚は確かに人質となった村娘や女武闘家以外の息遣いを聴きとった。
KABOOM!ゴブリンスレイヤーが唐突にヤリめいたケリ・キックを放つ!一体何が!?人骨と獣の骨を組み合わせて作られたゴブリンシャーマンの玉座が粉砕!そのまま玉座の後ろの偽装壁も破壊!凌辱された人質達の救護を行っていた女神官は驚きで目を丸くした。
「ザッケンナコラー!イルノハワカッテンオラーッ!スレイッゾコラー!」
コワイ!ゴブリンスレイヤーのグレーターヤクザ顔負けの冒険者スラング!偽装壁に隠されていたゴブリンの幼体達はしめやかに失禁した。ついでに女神官も再び失禁した。
「こ、子供でも殺すんですか?」
「無論殺す。ゴブリンは殺す。当然子供でも殺す!ゴブリンは皆殺す!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」「ゴブアバーッ!?」
決断的に振るわれるゴブリンスレイヤーの断頭チョップ!ゴブリンの幼体達は痛みを感じる間すらなく絶命!
「ゴボボーッ!」女神官がわずかに嘔吐!気丈!
「ゴブリンを生かして残せば、それはいつか成長して農民や辺境の開拓村の脅威になる。最悪村が滅ぶ。もし今後もゴブリン退治の依頼を受けるなら覚えておけ」
話ながらも村娘達に夜露避け用のブランケットを巻き付け、俵めいて担ぎ上げる。ゴブリンスレイヤーの視線は女神官を真っ直ぐ貫く。彼は明らかに女神官が立ち上がるのを待っていた。
「その娘はお前の仲間だろう。お前が肩を貸してやれ」
「アッハイ!」
女神官は消耗しきって虚ろなマグロ目の女武闘家に肩を貸すようにして助け起こした。こうして彼女の初めての冒険は終わった。
0101010101010101010101010101010101010100100101010101010101010101010101010101001001010101011010110101010101010010101010101
あのあと私達は村人たちの好意に甘え、馬車で街に帰った。ゴブリンに辺境の農民や開拓者がさらわれることはよくあることらしい。そういう人達を助けにいった白磁級の冒険者一党が壊滅することもよくあることだそうだ。女武闘家さんは故郷に帰り、ゴブリンに乱暴された村娘や旅人は地母神様の修道院や各地の修道院が受け入れるらしい。かつて修道院にいたころ、新たに来た人達の前歴を詮索するなと口を酸っぱくして言われた理由が今改めて分かった。現実は私が考えていたよりも遥かに厳しく残酷で、それでいてありふれているようだった。
私はあのゴブリン退治の後、何日間か休んだ。そして帰り道にゴブリンスレイヤーさんが忠告してくれたとおり防具をあつらえた。ゴブリンスレイヤーさんはゴブリン退治の報酬を二等分にし、決して自分が多く取ろうとはしなかった。彼によれば適切な報酬の分配、だそうだ。不思議な人だ。
今私はギルドに来ている。目当ての人物は壁の側で妙な存在感を出していた。
「ゴブリンスレイヤー=サン!」
「ヌッ。お前か」
街中だというのにこの前と変わらず、恐ろしい意匠のフルフェイスメンポをして赤黒の鎧やガントレットを身に付けている。
「はい。あの、私ゴブリンスレイヤーさんに教えていただいたとおり防具を買いました。ほら、鎖帷子の長袖です」
ゴブリンスレイヤーさんは黙って頷いた。
「俺は今日もゴブリンだ。ついてくるか?」
「ハイヨロコンデー!」
修道院の外の世界は厳しくて残酷だったけど、私はもう少し冒険者を続けてみようと思う。