東方冴月録   作:弓山涼

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こんにちは。まだあまり慣れないですが、これから少しずつ慣れて行こうと思います。


新生活と半人半霊の庭師

妖精達との乱闘から一週間程が過ぎた。俺は相変わらず初めて見るものばかりのこの世界のことについて調べ回っている最中だった。その中で、いくつかわかったことがある。

 

まずこの世界のことだが、ここはどうやら幻想郷という場所らしい。幻想郷には人間の他にも、妖精、妖怪、神など、様々な種族が存在するらしく、基本的には平和な世界らしい。ただ、たまに俺が巻き込まれたような、あまり平和的ではない状況になることもあり、そういう事件なんかのことを、「異変」というらしい。ちなみにこの世界のことは、「人里」というところで寝床をかして

もらっている家の主人から聞いた。

 

次に、俺の能力についてだ。これもその主人から聞いたことだが、この世界に住んでいる様々な種族の中で俺が持っているような、特殊な能力を持っている奴らがいるらしい。そして、その主人に俺の能力のことを話したところ、俺の能力はおそらく【想像が現実になる程度の能力】だということがわかった。これに関しては、妖精達との乱闘の時になんとなくわかってはいた。

 

というわけで、とりあえず今分かっているのはこんなところだ。それにしても…

 

「居心地悪いなぁ〜…」

 

主人に頼まれ、食料の買い出しに来ていた店の近くで、俺は小声でつぶやいた。

 

今俺は主人の家で、一応平和に生活をしているが、人里の人間達の俺への態度がよそよそしい。どうやら妖精達との乱闘の際、俺が百匹以上いた妖精達を数分で片付けるその様子を、数人の人間に見られていたらしく、今俺は人里で、『化物のような力を持つ、謎の男』という風に噂されているらしい。

 

「早めに新しい寝床を見つけないとな…」

 

そう言いながら、買い物を済ませて帰ろうとした時、後ろから突然声をかけられた。

 

「すみません。ちょっといいですか?」

 

俺が声のした方を振り返ると、そこには、短めの銀髪で、学校の制服のような緑色の服を来た少女が立っていた。なぜか腰には刀が二本携えており、少女の横には、綿飴のような白いものがふわふわと浮かんでいた。

 

「えっと…あの…どちら様ですか?」

 

「私は魂魄妖夢といいます。突然ですみませんが、最近人里で噂になっている「謎の男」とはあなたのことですか?」

 

妖夢というその少女は、俺があまり聞かれたくない事を、遠慮する素振りもなくズバッと聞いてきた。

 

「ええ、まあ…それがなにか?」

 

「やはりそうでしたか。私はあなたの噂を聞いて、白玉楼というところから来ました。それで、あなたは今どこに住んでいるんですか?」

 

なんだか少し不思議な少女だった。人の個人情報をここまでズバズバ尋ねてくるような少女を、少なくとも俺は見たことがない。

 

「この先のとある家の主人に寝床をかしてもらっています。お金もないので、宿屋などにも泊まれなくて。」

 

「なるほど。ならあなたにとってはとてもいい提案があります。」

 

「提案?」

 

次の言葉を発する直前、少女はニコッと笑顔を見せ、そして言った。

 

「これから白玉楼に来て、一緒に生活しませんか?」

 

 

 

 

〜翌日〜

結論から言えば、俺は妖夢という少女の提案に乗ることにした。もとの家の主人には、事の経緯を話し、今までのお礼をして、俺はこの白玉楼に来た住処を移した。ここに来るまでの道中、妖夢さんから聞いた話では、白玉楼には妖夢さんの主である、「西行寺幽々子」という女性がいるらしく、妖夢さんは白玉楼の「庭師」をしているらしい。ちなみに「幽々子」さんは、いわゆる「亡霊」らしく、人間ではないらしい。さらに妖夢さんも完全な人間ではないらしく、妖夢さんは「半人半霊」という、要するに幽霊と人間のハーフらしい。

さて、そんな話をしているうちに、俺達は白玉楼に到着した。

 

「ここが今日から灯魔さんの寝床になる、白玉楼です。」

 

妖夢さんは、目の前にある屋敷を指してそう言った。

 

「ここが…というか広っ!」

 

俺がそう叫ぶと、妖夢さんは少し笑って、説明を始めた。

 

「では、あなたのこれからの生活ですけど、あなたには二つやってもらいたいことがあります。」

 

「二つ?」

 

「はい。まず一つは、私の仕事を手伝ってもらいたいと思います。あなたには、定期的にこの屋敷を掃除してもらいたいんです。」

 

「はあ、なるほど。」

 

掃除くらいでここに住ませてくれるのかとも思ったが、屋敷の広さを再確認し、なかなかの難易度だと理解した。それでも、ありがたい話だ。

 

「わかりました。じゃあ二つ目は…」

 

「はい。それについては少しここで待っていてください。」

 

そう言うと妖夢さんは、小走りでどこかへ行き、少しして戻ってきた。手にはなにか長いものを持っている。

 

「はい、どうぞ。」

 

妖夢さんは、手に持っていたものを、俺に渡してきた。

 

「これは…刀?」

 

「はい、あなたにはこれから毎日、刀の稽古をしてもらいます。」

 

「稽古…というかなんで刀?」

 

その疑問に、妖夢さんはすぐに答えてくれた。

 

「あなたの能力のことは、道中で聞いてだいたいわかりました。しかし、あなた自身も自覚はあると思いますが、あなたの能力は無敵です。もしあなたが悪の道を進もうと思えば、あなたのことを止められる者は、おそらくこの幻想郷には存在しないでしょう。」

 

「…」

 

わかってはいたが、他人の口からはっきり言われると、自分でも怖くなってくる。

 

「そこであなたには、その能力を制御する訓練をしていて欲しいんです。私があなたの能力ことを信用できるようになるまで。」

 

「なるほど…わかりました、頑張ります。でも、それとこの刀になんの関係が…?」

 

「そういえばまだでした、あなたにやってもらいたいもう一つの仕事のことです。」

 

(そうだった。俺は二つのことをしてほしいと言われていたのだった。つまりこの刀は、その二つ目に関係しているのか。)

 

「あなたには、この白玉楼の警備もお願いしたいんです。」

 

「警備ですか?」

 

「はい。警備なので、場合によっては侵入者と戦闘をしなくてはならない時もあります。ですが、制御できる様になるまでは、能力での戦闘は控えて欲しいんです。なので、代わりの戦闘手段として、刀の稽古をして欲しいんです。」

 

「なるほど…。理由はわかりましたがなんで刀なんですか?。拳とかじゃ駄目なんですか?」

 

すると妖夢さんは少し恥ずかしそうに笑って言った。

 

「私は刀しか教えてあげられないので」

 

 

 

 

その後、この屋敷の主である、「幽々子」さんと対面した。桃色の髪の和服姿の女性で、少し大人びた雰囲気だったが、亡くなった時の年齢は、俺や妖夢さんとそんなに変わらないらしい。ともかく、幽々子さんにも挨拶を済ませ、妖夢さんから案内をされた自分の部屋の中で、俺はこれからの事を考えた。

 

(さて、とりあえず安定した生活はしていけそうだが…。これからの目標を決めないとな…。)

 

三十分程考えて、これからの目標を二つ決めた。

 

一つ

幻想郷について、もっと多くの情報を手に入れる。

二つ

自分がどうしてこんなところに迷い込んでしまったのか、その原因を探す。

 

当分は、この二つのことを目標にして、この幻想郷で生活をしていこう。そう決断し、俺はゆっくりと眠りについた。




投稿は、少し間が空いてしまうことが多いですが、一応最後まで話の見通しは立てているので、マイペースにぼちぼち投稿して行こうと思っています。

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