SERVANT×SERVICE×HATHIMAN   作:比企谷SERVICE幡

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001 初めて出勤します‼

 今日は俺の初出勤と言うかだな、配属先が決まって初めて職場に行くんだよ。ワグナリアでバイトを始めて公務員か看護師を目指していた俺なんだが、大学進学よりも短い距離で目標を達成する方法を思いついたんだ。

 

 看護師には『准看護師』という制度がある。この資格は中学卒業後、2年間で取得できる看護師の資格だ。その昔、中卒で働く人が多かった時代の名残だな。今は、高校を卒業するなりした後に正看護師になるために3年間の専門教育を受けるか、看護科のある大学で4年間学ぶ必要がある。医療短大なんてのもあったが、今は大学になっているところが多いな。

 

 千葉県内には准看護師の資格が取得できるところが4カ所ある。そのうち、八幡宿にある「市原看護専門学校」に進学することにした。勿論、看護師になるなら正看護師の方が待遇が良いし、できることも多い。だが、俺の狙いは別なところにあるんだ。

 

 千葉市の公務員試験を受けることにしたんだ。え、馬鹿じゃねえのかって。看護師は保険みたいなもんだし、必要ならもう2年年季奉公して正看護師になるだけだからな。でも、受験資格は初級【高卒程度】にしか引っかからない。年齢の下限が上級職は22歳以上だからだな。

 

 初級職の事務は8人しか枠がないんだ。上級職は50人くらいとってるけどな。給料もあんまり上がらないだろうし、自分一人だけ喰えればいいかなって思っているから、そんな感じで考えたんだよ。22歳過ぎたらもう一度上級職を受けようかとも思う。その時は、公務員志望の雪ノ下に世話になるかもしれん。テスト対策はあいつの得意分野だしな。

 

 とはいうものの、とりあえず働きながら情報収集をするつもりだ。

 

 

 

 

 あの後、折本とは高校3年から大学1年の冬くらいまで付き合っていたな。勿論、男女の仲でだよ。でも、お互い忙しくなって、将来のこともあやふやなので、普通の友達に戻ることにした。ディスティニーでの前の状態だな。

 今でもちょくちょくメールしたり、たまに実家に遊びに来ることもあるけどな。仲のいい友達って感じで収まっている。

 

 ワグナリアは准看学校卒業までは同じペースで働いた。実習とかあるので余りは入れなかったが、学費は2年分は親が出してくれたので、それ以外の費用を稼いだ感じだな。俺が辞める時、まだ城廻先輩も折本もバイトをしていたぞ。すっかり、店の顔になってるから、時給も上がっていたし今更ほかでバイトする気もなかっだんだと思う。

 

 小町は指定校推薦で都内のMARCHクラスの文系に潜り込むことができた。俺には何か負い目を感じているようだが、あのままダラダラ大学生をしていたら碌なことにならなかったと思うので今はこれでよかったと思う。

 

 雪ノ下と由比ヶ浜は3人で月1くらいは遊んでいる。というか、雪ノ下は試験対策でかなり世話になった。由比ヶ浜は千葉大の看護学部に進学したんだよ。え、まあほら、雪ノ下とセンター試験対策したからじゃねえの。俺が大学行かないのは不満みたいだったけど、同じ看護師(正と准看の違いはあるけどな)目指していたんでわりと、親しくさせてもらっているな。由比ヶ浜の看護師とか……コスプレにしか見えねえけどな。

 

 雪ノ下は千葉大ではなく、T大に進学した。国家公務員の総合職目指すみたいだな。総務省に入って地方自治の系統の仕事をしたいようだ。

 

 雪ノ下さんが建設会社を、雪ノ下は……市長か知事を目指すんだろうな。千葉市の市長の仕事は政令指定都市なのでかなりの権限がある。県の仕事は千葉市以外の千葉県内の地方自治が仕事だからな。つまり、将来的には……超上司になるかもしれねえんだよ。

 

 まあ、そんな感じだが、とりあえず俺は新しい職場に胸をときめかせているんだ。有給早く付与されねえかな。

 

 因みに、千葉市の職員の平均給与は43歳で700万前後なのだが……新卒は13万/月程度しかもらえないのだよ。30手前で400万くらいなようです。若いときは安く、年功序列の昭和な給与体系みたいだな。

 

――― ワグナリアでバイトしてえ。

 

 

 

 

 さて、俺の配属されるのはとある区役所の福祉課なんだ。実は千葉市は人口が増加しているのだよ。多くの人が『千葉』に住みたがっている証左と言えようか。その昔、横浜市も人口増加で港北区が緑区と港北区に分かれ、さらに、緑区が青葉区都筑区緑区へと別れたんだな。千葉市も同様で、少し前に若葉区が東西に別れることになったんだ。東側は若葉区のまま、西側が「みつば区」という区に別れることになった。

 

 みつば区の区役所は新設されたのだが、古いコミュニティーセンターを改装したものを「みつば区役所」として使用している。美浜のコミュニティーセンターの方が全然立派なのだ。見た目は総武高校の校舎みたいなんだ。 なので、食堂や図書室は充実しているのでそこは良いのかなと思うのだ。

 

 因みに、すぐそばにある新しいコミュニティーセンターはすごくきれいだ。替えてくれ。

 

 

 

 

 誰がどの人なのか初日なので全く分からない。なので、同じようにキョドっている人に声をかける。

 

「あの、俺新しく配属されたんですけど」

 

 その人は小町より小柄だが、小町と同じような「あほ毛」を装備して、さらにけしからんことに胸は由比ヶ浜並みという女性だった。

 

「あ、私もなんです。山神です、よろしくお願いします」

 

 久しぶりに丁寧に元気よく挨拶された。すごく真面目そうな人だという印象だ。

 

「比企谷八幡です。よろしくお願いします」

 

 と、ワグナリアンな挨拶をする俺。そう、准看の実習でもとても効果的だった。暗いではなく誠実そうと言われるまでステップアップしてんだよ。

 

「あの、朝礼の時に配属の挨拶するみたいなんで、それまでは待機です」

 

 教えてくれてありがとうございます。とても親切で気が利く人のようだな。俺の過去にはこの手の人はいない。イメージでは雪ノ下と城廻先輩を足して割ったような性格だと考えることにする。

 

「新人は前に出てきてください」

 

 20代と思しき男性が声をかける。山神さんに続いて俺も前に出る。他に、男性女性がそれぞれ1名の計4名の新人である。新しい区役所何で新人が多く配属されたのかもしれないな。

 

「今日から配属されました、福祉事務係 山神……です」

「福祉事務係 比企谷八幡です。よろしくお願いいたします」

 

 と、最敬礼する俺。頭下げすぎか。

 

「福祉第一係 長谷部豊で~す」

 

 多分大卒なんだろうな、少し年上の戸部と本牧を足して、葉山をまぶしたようなペライ兄ちゃんが手をフリフリしながら挨拶する。こいつとは仲良くなれない気がする。でも、多分要領良いタイプだな。

 

「三好紗耶です……福祉第2係です……」

 

 雪ノ下さんくらいの長身で、髪の長さは雪ノ下くらいの栗毛色の髪の女性がたどたどしくお辞儀をする。うん、多分働いた経験があんまりない人だな。ワグナリアの新人バイトがこんな感じだもんな。

 

 胸は……雪ノ下サイドだな。ばっか、胸なんて飾りなんだよ、エロい人にはそれが判らねえんだよ。

 

 そして、教育係の人は一宮大志さん……シスコンじゃねえだろうな。あと、小町はやらんぞと思ってしまう名前である。誠実そうな先輩だ。どうやら、ずっと後輩がいない新人を8年も続けていたようで、いきなり4人も新人が入ってテンパり気味のようである。

 

「俺はどうすればいいんだろう?」

 

 とか口に出ているんですが、横で山神さんが「新人じゃないじゃん‼」と小声でツッコんでいる。この人、面白そうだな。咳払いをして一宮さんが話を立て直す。

 

「君たちも今日から晴れて地方公務員だ。市民の犬として身を粉にして働くように」

 

 ええぇぇ、やっと奉仕部の備品から脱出したってのに、今度は市民の犬かよ。岡っ引きじゃねえんだぞ。なんて思ったりする。8年新人ってこの人ももしかして初級採用なのかもしれないな。という事は26歳か。まあ、そんな外見だな。

 

 こんな人、雪ノ下さんとかと関わったらいいように弄られてたヘンな事になりそうだな。まあ、あの人も今ではすっかり雪ノ下建設の社員として社畜精神に則って働いて欲しいもんだ。関わり合いたくないしな。これが県職員だと、県議の雪ノ下の親父さんとかが絡んでくるかもだけど、市役所の支店には関係してこないよね。

 

 なんて考えていた俺を、殴ってやりたいと思うこともこの後起こる……かどうかは雪ノ下次第だな。

 

 

 

 


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