話しが長くなりそうなので二話に分けました。
それでは、どうぞ。
「ハジメ、そろそろ寝ようぜ。さすがに明日は居眠りなんかできないぜ。」
「はは、そうだね。そろそろ寝よっか。」
明日に備えて寝る時間ギリギリまで調合で薬を作っていた士郎は、道具を片付けながら迷宮低層の魔物図鑑を読んでいたハジメにそう言った。
クラスメイト達はメルド団長率いる騎士団員複数名と共に、‘’オルクス大迷宮‘’へ挑戦する冒険者達のための宿場町‘’ホルアド‘’に来ていた。その街の新兵訓練がよく利用する王国直営の宿屋があり、今そこにクラスメイト達が泊まっているのだった。
全員が最低でも一人か二人部屋なのに、団長の計らいでハジメの部屋は四人部屋になっていた。メンバーはもちろん、ハジメ、スバル、当麻、士郎のいつもの四人組だ。
ちなみにメルド団長から「明日の大迷宮もこの四人でパーティーを組むように」と言われてたりしており四人にとってはありがたい話だった。
「士郎…寝れない…」
「お前、真っ先に布団に入ったんじゃあないのか?」
スバルは夕食の後「明日のためにもう寝る」と言って四人の中で真っ先にベッドに入ったのだが、どうやら起きていたようだ。
「実は言うと、僕も…」
「当麻もか? おいおい、明日は遠足じゃあないぞ。」
そう言ってベッドから起き上がる当麻、スバルの二番目にベッドに入ったのだが、どうやら彼も起きていた。士郎が「やれやれ」といった感じに肩をすくめ、何事もなかったようにハジメが大きなあくびをしながら布団に入ろうとした時、
ドンドン
扉をノックする音が響いた。「こんな夜遅くに誰だ?」と皆が扉に注目していると、
「南雲くん、起きてる? 白崎です。ちょっといいかな?」
声の主はクラスのマドンナ、香織だった。
いきなりの訪問に四人は顔を見合わせて一時硬直するも、すぐに駆け寄り顔を寄せ合って外に聞こえないようにひそひそ話しを始めた。
(何で白崎がこの部屋に来たんだ?)
(士郎、これはいわゆる夜這いってヤツだ。俺たちは今から白崎を交えて朝まで5P…)
(そんなワケあるかスバル、冗談もたいがいにしろ!)
(でもさっきの感じだと白崎さん、僕たちじゃあなくてハジメ君だけに用があるみたいだったよね?)
(当麻の言う通りだ、俺もそう思う…とりあえず出てみたらどうだハジメ?)
(そうだね士郎、出てみるよ。)
四人はひそひそ話しを終えると、再びノックが聞こえ「南雲くん起きてる?」と声が聞こえてきたのでハジメが慌てて、
「ごめん、白崎さん。今あけるよ。」
そう言って鍵を外して扉を開けた。そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。
ハジメは何故か「なんでやねん。」と関西弁でツッコミ、当麻はその姿を見てドギマギし、少し顔を赤くして目を逸らした。スバルは「ほほ~う」とまじまじと見ているので、士郎が無理矢理スバルの首をねじって横を向くようにするのだった。(当然士郎は直視しないようにしていた。)
香織は後ろの三人を見て「あっ」と言って少しだけがっかりした。ハジメしか声が聞こえていなかったのでてっきり他の三人は寝ていると思っていたようだ。
「えっと、ところで白崎さんは僕に何の用かな? 何か連絡事項でも?」
「ううん。その、少し南雲くんと二人で話しがしたくて……やっぱり迷惑だったかな?」
「えっ………い、いやそんなことないよ。こんな僕で良ければ………。」
「ありがとう南雲くん、じゃあここだと皆の迷惑になるから外で…「あ~白崎さん、ちょっといいかな?」」
香織のことばを士郎が遮った。いきなりのことに香織はキョトンとした顔で士郎を見た。
「話をするならこの部屋を使ったらどうだろう? 俺たちは適当に部屋の外で時間を潰しておくからさ。」
「えっ! でも……」
「外はそれなりに冷えると思いますよ、それにここだと誰かに気にすることなく話しが出来てちょうど良いと思います。」
「そういうわけだから、俺たちに気にせず二人で話しをしなよ。」
笑顔でそう言う当麻と士郎。
「ごめんね望月くん、入江くん、気を遣わしちゃって。」
「二人とも、ありがとう。」
それに対して香織は気を遣わしてしまった二人に謝り、ハジメは感謝の言葉を述べた。
「いいってことよ、それじゃあ早速行くか。スバルお前もこい「ぐがぁーーーー。」………」
士郎は当麻、スバルも連れて外に出ようとした矢先、いきなり室内にいびきが響いた。いびきが聞こえる方を見るとベッドで寝ているスバルの姿があった。
士郎は小さくため息をついてスバルのベッドに近づいた、そしてスバルの耳を掴むと引っ張り上げた。
「いっ、いてててててててて! なにすんだよ、士郎!」
少し涙目で抗議するスバル。
「お前な、さっき寝れないって言ってたよな? なのに白崎が来てから寝れるなんて不自然だろ。大方狸寝入りして二人の会話を盗み聞きしようとする魂胆だろ?」
「……………………ソンナコトナイヨ。」
「スバル君、随分と間が空いていたよ。」
スバルが応えるのに数十秒間の間があったことを指摘する当麻、推察が当たっていることを確認した士郎はスバルを羽交い締めにしてドアに向かった。
「じゃあこのバカは俺が責任を持って押さえておくから、二人はごゆっくりと…。」
「また後で、二人とも。」
士郎と当麻がそう言って部屋を出ようとした。スバルは士郎のい引き付けられながら部屋を出ようとした最後に、
「ハジメ、二人きりだからって白崎を襲うなよ。」
「誰が襲うか!? バカ/////」
「はうっ////」
スバルの言葉に二人は顔を真っ赤にするのだった。内心「かわいいな~」と思っていると士郎は羽交い締めの力を強くし、スバルを部屋の外に出した。最後に白崎が小声で「でも、南雲君に襲われるのも悪くないかも…。」と言っていたのは気のせいだと思いたいスバルだった。
「何であんな提案したんだ、士郎?」
「いやいやスバル、よく考えてみろ。あそこで部屋を提供しなかったら八重樫が後で何言ってくるか分からないだろ?」
「あははは、八重樫さんは白崎さん想いだからね、何故か容易に想像できるよ。」
三人は並んでうだうだ話しながら廊下を歩いていた。本来、真夜中なので廊下の灯りは最低限しかついていないはずなのだが、今夜は満月が出ているということもあり廊下に灯りはなく、月明かりだけでも充分に廊下を照らしているのだった。
そんな廊下を歩いていると、
「あれ? バルス達じゃん。」
「ん? この声、谷口か?」
ふと後ろから声が聞こえてきたのでふり向くと、二人の少女がいた。一人は身長百四十二センチのちみっ子で髪をおさげにしているクラス一の元気っこ谷口鈴であり、もう一人は谷口から一歩引いた所に立ち、ナチュラルボブの黒髪で性格がとても温厚で大人しい中村恵里だった。
谷口は三人に対して「よっ」と言って挨拶し、中村はペコリと軽く頭を下げるのだった。
「こんな所で何してんの?」
「えっ、いや、散歩だよ。何か寝れなくてさ、こうやって歩いていたら眠気がくるかな~と思って。」
鈴の質問に適当に答えるスバル。それを聞いた中村は「じゃあ望月くんと入江くんも?」と問いかけると二人は、
「俺らはスバルに無理矢理つきあわされた。」
「本当せっかく寝てたのに………なかなか起きなかったハジメ君が羨ましいです。」
そう言ってスバルの嘘に合わせるように士郎と当麻は答えた。ついでにここにいないハジメの理由も添えて……一瞬スバルの眉がピクッと動いたが噓を突き通すためここは耐えた。
鈴と恵里は噓と気づかず「ふ~ん」というような感じで聞いていた。
「ところでお二人はどうしてここに?」
当麻の問いに鈴は答えた。
「えっ、いや~実は言うと鈴も寝れなくててさ~」
そう言う鈴。三人は「なるほど明日のことで緊張でもしているのか?」と思っていたが……
「それに………ちょっとムラムラして。」
’’イヤンイヤン’’と感じに身体をくねらせながら言う鈴の言葉に三人は「えっ?」という顔をするのだった。
「それでこのムラムラをカオリンに慰めてもらおうと部屋に向かうとカオリンはいなくて、次にレムリンに慰めてもらおうと部屋に向かったけどレムリンもいなかったんだよね~ 三大女神が二人もいないんなんて………これは事件ですよ! 今頃、鈴の知らない所で二人はキャッキャウフフと百合百合しいことをしているにに違いない! おのれ、私をおいてそんなことをするなんて、何てうらやまし…じゃあなくて何てけしからん!」
そう言ってどこか危なっかしい発言をする鈴、この谷口鈴という少女、黙っていたら可愛らしいのだが、美女や美少女好きで香織や雫、レムらによくセクハラを働いており皆から心の中に小さなおっさんを飼っていると言われているのだった。
「ムッ…作者。この上の地の文、ちょっと失礼じゃあないかな?」
「鈴、一体誰のこと言っているのか分からないよ……ちなみに私は鈴に無理矢理付き合わされちゃって………ふぁああ~。」
そう言う鈴とどこか眠たそうな様子であくびをする恵里。この二人のやり取りを見て三人は「いつもの二人だ」と思った。
「あ~谷口さん。他人の趣味にどうこう言うのもあれなんだが…ほどほどにな。それと明日のこともあるんだから早めに寝ろよ、中村さんも困っていることだし。」
八重樫につぐ、世話焼きの士郎はそう言った。それに対して鈴は「う~ん」と少し考えて、
「それもそうだね、仕方がないシズシズに慰めてから寝るとしよう。じゃあそういうことで…行こ恵里。」
「えっ………ちょっと、私も行くの!?」
そう言って鈴は恵里の手を掴んで小走りで三人の横を横切った。恵里も戸惑いながら引っ張られるように小走りになるのだった。
この時スバルは何を思ったのか恵里が横切る瞬間をチラッと見た。
「………………………チッ。」
その時の恵里の顔はいつもの温厚そうな顔ではなかった。どこかめんどくさそうで不愉快な顔をしており、普段の様子から考えられない顔をしていたのだった。
「……………。」
スバルは無言で去って行く恵里の背中を見つめていた。さっきから恵里の顔が忘れられず、あの不愉快そうな顔がどうも気になってしまい「実は危ない子じゃあないのか?」と考えてしまうほどだった。
スバルが異様に二人の背中を見ているように見えた当麻は「どうしたのですか?」と声をかけられ、ここで我に返ったスバルは「何でもない」と言って歩き出した。
それでも、スバルの恵里に対するモヤモヤ感は消えることはなかった。
いかがだったでしょうか?
もう一話は夜に投稿出来たらと考えております。
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それでは、また。