いよいよオルクス大迷宮へと入って行きます。
一体何が起こるのか…。
それでは、どうぞ。
現在スバル達、もといクラスメイト達はオルクス大迷宮の中を進んでいた。メルド団長を先頭に隊列を組みながら進んでおり、ところどころに魔物が現れたりもするが、全員チート持ちで大ベテランのメルド団長の指示もあって何の問題なく進むことができた。
ちなみに魔物との戦闘は事前に決められていたパーティーを組んでの交代制で、スバル達のパーティーは戦闘職の士郎と運動神経が割と良いスバルを前衛にして、ハジメと当麻は後衛で待機ということになっており、前衛で魔物を倒してしまうこともあれば、時にはスバル、士郎の計らいである程度魔物を弱らしてから後衛にとどめを任せるということもあった。この時ハジメは地面を錬成し、動けないようにしてから確実に仕留めていった。
この行動にメルド団長、他の騎士団員、また、ある一部のパーティーメンバーが関心していたことにハジメは知るよしもなかった。
一行は順調に迷宮を進んでおりトラブルもなくさくさく進んで行ったのでクラスの一部から気の緩みが見られた。当然、メルド団長が常に「気を張るように」と言っているが人間ことが順調に進むと気が緩むものだ。ましてや、成人もしていない学生なら尚更かもしれない。もちろんクラスの中にも常に気を張って周囲を警戒するパーティーもあった。その一つがスバル達のパーティーだ。
「(親父が言っていたな…『気の緩みに失敗あり、事が上手く進めばなお警戒しろ』だ。)」
スバルは父から教わった事を心の中で復唱しながら周囲を警戒した。他の三人もスバル同様に辺りを見渡していた。何故彼らがこうも辺りを警戒していたのか理由があった。
それはクラス一行が迷宮に入る前に遡る。
スバルは迷宮に入る前にハジメ、士郎、当麻にレムが見た夢について話した。するとどうだろう、ハジメが非常にに驚くことになった。それは何故かというと実はハジメも香織からレムと全く同じ夢を見たという事を聞いていたからだ。
この夢を見たことで香織は怖くなり、ハジメの所に訪れたというわけだった。いったいどのようにレムと香織を納得させたのかお互い話さなかったが、ここで四人はある疑問を感じた。
その日のうちに、同じ夢を見る人物が二人もいることは…果たして偶然と言えるだろうか?
ここまで来ると確実に何かある。もしかしたら自分達四人はの命に関わることかもしれない。それを回避するために不参加と行きたい所だが一般からすれば夢は夢、周りから見れば戯言と思われるだろう。
ただでさえ、スバル、ハジメ、当麻は無能の烙印を押されており、一部を除いて周りから好い目で見られていない。ここで引いたら確実にクラスから見放され、孤立することは分かっていた。故に四人は前に進むしか方法はなかった。最大限、注意をはらいながら…
「(頼むから、何も起こらないでくれよ…。)」
スバルがそう願い、残り三人もスバルと同じような事をそう思ったのだが……その想いは叶うことはなかった。
事の発端は一行が二十階層についた時に起こった。とある魔物が現れた時、たまたま光輝達のパーティーが対応したのだが、その魔物の行動で香織達女性陣が引いてしまい、それを見た光輝が’’死の恐怖を感じさせた’’と勘違いしてムキになり、大技をくらわすのだった。
魔物は当然光輝の大技で一刀両断、当の本人は満足して「もう、大丈夫だ」と香織達に声をかけようとしたら、メルド団長の拳骨をくらうことになった。
「気持ちは分かるが、こんな狭い所で使う技じゃないだろう! 崩壊でもしたらどうするんだ。」
全くもってその通りである、スバルもこれを見て「ガキかよ…」と誰も聞こえない声で愚痴っていると…。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
香織の指差す方へ全員が注目した、光輝が大技を出して崩壊した壁に何か光るものがあった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
メルド団長がそう言った。グランツ鉱石とは、簡単に言うと宝石の原石みたいなものであり、加工して指輪、イヤリング、ペンダントなどに使われるようだ。
「素敵……」
香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めていると、
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出し、グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていくのは檜山だった。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
メルド団長はそう言って止めるも、檜山は止まらなかった。
………………ゾクッ!
「………!?」
この時スバルはいきなり全身に悪寒が走った。それほど寒くないのに檜山の行動を見ていきなり起こった。
「スバル………。」
いきなり声をかけてきたのはハジメだった。だがその表情はどこか辛そうであり、もしかしたら自分と同じ悪寒が走ったのかかもしれない。
そう考えると「今すぐ止めなければ!」そう思ったスバルは、
「おい、檜山! 何が起こるか分からないんだ、早く降りてこい!」
そう言って檜山を呼び止めるが止まる気配がなかった。声は十分に聞こえているはずだ、つまりスバルの声を無視しているのだった。
「おいっ! いい加減に『団長、トラップです!!』はぁ!?」
スバルがさらに声を張り上げようとした時、一人の騎士団員がそう叫ぶ声が聞こえスバルは驚きの表情を露わにした。団長は檜山を止めようと壁を登っていたが間に合わず、檜山が既に宝石に触れていた。
次の瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がり部屋全体を包み込んだ、メルド団長の「撤退しろ、この部屋から出るんだ!」という言葉は間に合うことはなく、一行は異世界に飛ばされたようにどこかに飛ばされるのだった。
「いてて………ここは?」
尻の痛みに呻き声を上げながら、スバルは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはスバルと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。
どうやら別の所に飛ばされたみたいで、クラスメイト達がいる場所は巨大な石造りの橋の上だった。縦は長く続いており、横は車を5~6台並べるくらい余裕があった。
端に手すりとかなく足を滑らせれば掴むものがないので、そのまま奈落の底に落ちることになるだろう。そして、クラスメイト達は巨大な橋の中間に立っており、橋の両サイドは奥へと続く通路と上階への階段が見えた。
メルド団長は「あの階段の場まで行け!」と号令し、わたわたと動き出す生徒達、しかし、階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現した。
骨格だけの体に剣を携えた魔物’’トラウムソルジャー’’だ。その数は百体近くに上っており、尚、増え続けていた。そして、反対の通路側には体長十メートルの四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物’’ヘビモス’’がいた。例えるならトリケラトプスといったところだが、違うのは鋭い爪と牙を持ち、頭部の兜から生えた角から炎を放っているということだろう。
グルァァァァァァァアアアアアアアア!!
ベヒモスが咆哮を上げながらクラスメイト達に向かって突進してきた。とっさにメルド団長を含む三人が魔法による障壁を出し、ヘビモスの突進を防ぐ。
突進は止めることができたが、その衝撃までを止めることができず橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れて撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次いだ。
クラスメイト達はパニック状態に陥っていた、前には増え続けるトラウムソルジャー、後ろから巨大なヘビモス、いくらクラスメイトがチート集団と言われても、その心までチートとは言えなかった。隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進み、トラウムソルジャーが立ちはだかれば誰もかれもが滅茶苦茶に武器や魔法をふりまわしており、死者が出るのも時間の問題だった。
その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。
「あ…」
そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。
死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、
「優花ぁぁぁあああああーー!」
掛け声と共に一人の男子生徒が優花の前に割り込み、トラウムソルジャーの剣を受け止めた。その生徒はトラウムソルジャーの剣を押し返した後に左肩から右脇腹に剣を振り下ろした。
キシャアアアアアアアアアーー
トラウムソルジャーは不気味な悲鳴と共に地面に倒れて消滅、男子生徒はそれを確認すると’’優花’’と呼ばれる女子生徒の下に駆け寄った。
「優花、大丈夫か!?」
「うん、ありがとう…士郎くん。」
優花を助けたのは望月士郎だった。士郎は優花の手を取って立ち上がらせた。優花も呆然としていたがすぐに気を取り戻して元気に返事をするのだった。
この女子生徒、園部優花は望月士郎の幼馴染で家族ぐるみの付き合いもあって幼少の頃からお互いを知っており、また士郎の両親は仕事の関係上、家をあけることが多かったため士郎を優花の自宅で居候させることが多く、優花にとっても士郎にとってもお互い家族当然の存在だったりする。ちなみに最近優花の方は士郎のことを家族以上、もとい異性として意識してたりするのだが………
それはともかくして………
士郎が優花を助けた後、すぐに別のトラウムソルジャー五体が二人に迫った。士郎が優花を守るように剣を構えると、いきなり五体のトラウムソルジャーの足元が蜂起し橋の端へと向かって波打つように移動していき橋から落とすのだった。
二人は「一体何が……」と思っていると一人の人物が目に入った、座り込みながら荒い息を吐くハジメだった。
「ハジメ!」
そう言って士郎はハジメの所に駆け寄り、優花も士郎について行くように駆け寄った。二人は「助かった、ハジメ」「ありがとう、南雲君。」とそれぞれお礼を言うと、
「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」
そう自信満々に答えるハジメに二人は失笑した。その後、優花は「私、奈々達と合流してくる。二人も気をつけてね。」と言って駆け出すのだった。
二人はそれを見届けるとハジメは魔力回復薬を取り出し口に運ぼうとした時、一人の生徒に手をつかまれて飲むのを止められた。
「それは、もしものためにとっておいた方が良いよ。」
「当麻? それはどういう…」
ハジメの手を掴んだのは当麻だった。ハジメは当麻が言っている意味が分からなかったがそれはすぐに理解することになった。
いきなり、当麻につかまれている手から何か温かいものが流れてきて、ハジメの全身に染み渡った。荒かった呼吸が正常になり疲労も無くなった。そして…
「魔力が戻ってきている!?」
「本当か? ハジメ。」
「いつの間にか自分の気力を他人に注入すると、魔力が回復するようになったんだ。」
一体どういう原理かは不明だが、どうやら当麻の気力は他人に触れて注ぎこむことでその気力は魔力に変換されたようだ。もっともこの事例は生物対象であって、これに気づいた当麻は’’魔法陣に気力を流したら魔力に変換されて魔法が使えるかも’’と試してみたが結果は変化はなく、落胆したのはいうまでもなかった。
「ありがとう当麻、だいぶ回復したよ。」
「どういたしまして、ハジメ君。」
ハジメが礼を述べると、どこか嬉しそうに答える当麻。ここで士郎は、
「ところでスバルは?」
その一言にハッとする二人は辺りを見渡すと、
「あっ、あそこに!」
そう言って当麻がある方に指をさした。
いかがだったでしょうか?
士郎のカップリング相手は園部優花です。
原作では魔王の’’愛人’’とか呼ばれているみたいですが、
作者としてどうも不便と言いいますか、もったいないという気持ちから、士郎とくっつけることになりました。二人が幸せになるように書きたいですね。
当麻の気力は本当に作者のご都合主義ですね、当麻本人も今後変わって行きます。
次回、クラスメイト側より新キャラ登場です。