今回は皆が覚悟を決めます。
どんな、想いで覚悟をするのでしょうか…
それでは、どうぞ。
「……は?」
「ハジメ君、それは……。」
「正気かハジメ!?」
スバル、当麻は提案を聞いた時、目を開いて言葉を失った。士郎は思わず声を荒げるのだった。
「ハジメさん、ダメです!! それはあまりにも危険すぎます!」
レムもこれを聞いてすぐさま止めに入った。いくら何でも危険過ぎる内容に居ても立っても居られなくなったからだ。
「アンタって見かけによらず度胸あるね~」
「本当、君にも驚かせるばかりだよ…ハジメくん。」
佐助とイツキはその度胸に関心しつつも、吹っ飛んだ内容に些か呆気に取られていた。
「ハジメさん、無理しちゃダメですよ…他にも何か良い案があるはずです。」
「……………。」
厚志はハジメの提案にどこか無理をしてないかと心配しになり、カヅキはただ黙って目をつむっていた。
「皆、色々思うことはあるかもしれない…でも今、この方法が確実に皆が助かる方法だと僕は思っている。」
ハジメは眉根を寄せて真剣な顔でここにいる全員に告げた。ハジメが言った提案、それは錬成を使いヘビモスの足を止め、その間に皆がトラウムソルジャーの方位を突破するというものだった。
全員が助かるかもしれない唯一の方法、しかし、ハジメの錬成を使ってヘビモスを止めるという行為は前代未聞の例がない事であり、成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を負う方法だ。
ハジメの提案を聞いた時、誰もが「無茶だ」と思った。しかし、だからといってこれに勝る方法はないし、思いもつかなかった。
皆、ハジメのこの提案に賛同するのか迷っていると、カヅキが目を開いてハジメに問いかけた。
「南雲ハジメ…撤回するなら今だぞ…」
「撤回する気はない、僕は真剣だ!」
「成功は極めて低い、失敗するとかもしれないぞ…」
「そんなのやってみなきゃ分からないよ!」
「もしかしてお前…死ぬ気か?」
「僕は死ぬつもりはない、生きて帰って見せる!」
カヅキの問いかけ一つ一つに強気な姿勢で答えるハジメ、その目をカヅキが覗くと自信に満ち溢れているように見えた。「彼は強い…」そう思えたカヅキは、
「南雲ハジメ、1つ頼めるか?」
そう言ってカヅキは頭を下げた。この行動にハジメはもちろん、ここにいる全員が目を丸くしているとイツキもカヅキの横に立った。
「僕からもお願いするよハジメ君。兄さんの頼みは僕の頼みでもあるからね…。」
そう言ってイツキもカヅキと同じように頭を下げた。これにはハジメも「二人共、頭を上げてよ」と言ってはにかんだ。二人が頭を上げるのを見て、ハジメはこれからの行動について皆に話した。
「とりあえず僕はこれから、あの大型魔物を止めに入る。その隙にみんなはガイコツの包囲を突破して、「ちょっと待ったハジメ…俺も行く。」えっ!?」
「スバルくん…。」
いきなりハジメの言葉を遮り宣言したのはスバルだ。ハジメは目を丸くしてスバルを見つめ、レムに至っては震えた声でスバルの名前を呟いた。皆が「何故?」尋ねられる前にスバルは落ち着いた声で話した。
「ハジメ、帰りはどうするんだ? 一人で群れの中を突破するとなると骨が折れるぜ、
そう言って洒落た事を言うスバル、ハジメはそれを聞いてため息交じりに、
「面白くないよ…それ。」
「分かっているよ、それぐらい………ハジメの帰る道は俺が切り開く、だから連れてってくれ!」
「うん、分かった……頼んだよスバル。」
そう言ってお互いの顔を見るハジメとスバル。どちらも目をしっかり開けて頷きあい、お互い覚悟ができていると瞬時に理解した。
そして、これを見てまた新たに覚悟を決めた者がいた。
「スバル君が行くなら、僕も行きます。僕の’’気’’は他人に流せば魔力に変換することが出来ます。これを使えば長く錬成も可能のはずです…」
そう言ってきたのは当麻だった。いつもの弱々しそうな表情ではなく、顔をしかめて、どこか落ち着いた表情でハジメの提案に参加表明を示した。
「スバル、当麻が行くとなったら俺も行くぜ、ハジメ。俺ら四人のパーティーの中で唯一の戦闘系の天職だ、俺が動かないとダメだろ?」
低い調子の声で士郎もハジメについて行くことを告げた。その姿はどこか気だるげで「やれやれ…」といった感じだが内心誰よりも「俺がしっかりしないと!」というやる気を見せるオトンの姿があった。
「二人共…ありがとう。」
当麻、士郎の名乗りでに感謝するハジメ。実は言うと「自分の魔力の少なさで上手く魔物を足止めできるのか?」とか「帰りの骸骨の群れをスバルだけで突破できるのか?」と少し不安に思うことがあったのだが、親友達のおかげで何とかなりそうだ。「やはり持つものは友だな」と改めて痛感するハジメのだった。
さて、四人がヘビモスの所に向かう事に覚悟を決めた時、クラスの中でこの四人と親しい間柄を持つ少女レムもまた、覚悟を決めてハジメの作戦に加わろうと、
「ハジメさん、私も…行きます。」
そう名乗りを上げるも、
「レム…気持ちは嬉しいけど、それは出来ない。」
「えっ? どうして…」
その返事に思わず肩を落とした。ハジメは続けて理由を述べた。
「僕も男だからね……女の子を危険な目に合わせるのは、やっぱり気が引いてしまうんだ。ごめん…」
そう言うハジメ、他の三人も同じ考えを持っていたのか「レムを連れて行こう」という者はいなかった。レムは一人だけ置いてけぼりにされたような、除け者にされたような気がして思わず唇を噛んだ。もちろん、ハジメが言っていることは理解できる、でも、元の世界でも一緒に行動することが多かった自分だけ脱出ルートに向かうのはどうしても気が引けるのだ。
そんなことをレムが思っているとすかさずスバルが、
「レム、頼みがあるんだが…先に脱出ルートに向かい魔法を撃てる準備をしてくれないか? 俺たちの撤退中にあの魔物の足止めをして欲しい…出来るか?」
「レム、お願いしても良いかな?」
「レムさん、お願いします。」
「レム、ここは引き受けてくれないか?」
スバルの提案を聞いて、ハジメ、当麻、士郎がすかさずレムにお願いを頼み込んだ。これを聞いたレムは、
「…分かりました。」
静かに承諾するのだった。だが、その表情はどこか暗く影があった。
「お互い方針は決まったようだな。よし、佐助! 厚志!」
ハジメ達やレムがこれからどう動くか分かった所でカヅキは佐助、厚志の名を呼んだ。二人は「ハイハイ大将。」「おうっ!」と返事をするとカヅキから指示を出された。
「おめぇら二人は手分けして他のクラスの連中に連携を呼びかけろ、行けっ!!」
「了解っと」
「おう、分かった!」
佐助と厚志はそう返事をするとトラウムソルジャー相手に戦っている生徒達の方に向かって走り出した。それを見届けると次にイツキの方を見てあることを告げた。
「イツキ、出し惜しみ無しだ。
「
カヅキのアレという言葉に理解を示したイツキは、自分が背負っている物を一瞬目を向けた。ハジメ達も今気づいたがカヅキとイツキは背中に竹刀袋を背負っていた。二人が言う
「それじゃあおめぇら…頼んだぞ。」
「気をつけてね。」
カヅキとイツキがそう告げると、二人は背を向けて走り出した。しかし、10歩くらい走った所であることに気づき立ち止まった。
一緒に脱出ルートに向かうレムがいないのだ。
後ろを振り向くと、レムだけがポツンと立っていた。カヅキは大きな声で呼ぼうとしたが何故かイツキに止められるのだった。
ハジメ達はカヅキとイツキ、そして一緒に行くことになったレムを見送ってからヘビモスの所に向かうつもりだったが、肝心のレムが動くことなく立ち止まって顔を俯かせているのだった。
「どうした?」と思いながらハジメ達がレムを見ると、
「皆さん………私は……わた…し…は……」
今にも泣きだしそうな震えた声でレムは呟いた。今、彼女の心の中で支配しているものは、このまま四人が行けば自分が夢で見たように消えてしまうのではないか? これが四人を見た最後の光景になってしまうのではないか? 大切な人を失う恐怖が彼女の心を支配し、足を震えさせて四人に背を向けて走り出すことができないでいた。
これを見ていたハジメ達はレムの気持ちが大いに伝わってきた。なにせレムだけ先に比較的に安全所に向かってもらうのだ。友達想いで元いた世界でも四人と一緒にいることが多かったレムにとってこれほど辛いことはないだろう。ハジメ、当麻、士郎はどう声をかけてレムに行ってもらうか必死になって考えていると、ここでもスバルが動きだし、スバルの両手がレムの両手を優しく包み込んだ。
「レム、昨日の約束覚えているか? 俺は自分の発言に責任を持つ。だから………信じてくれレム」
「スバル君……。」
優しく言うスバルの声にハッとして昨日の出来事を思い出すレム。月下で交わした二人だけの約束、それを思い出すと心を支配していた恐怖がゆっくり消え去るような気がした。
「それに俺たち親友だろ? 親友はお互い信じ合う事から始まる……だからレムも信じてくれ、親友の俺たちを!」
スバルの言葉にレムは耳を傾けていた時、あることに気づいた。
スバル君が初めて私の事を
思い返せば、スバルがレムにハジメや当麻、士郎を紹介する時に「俺の親友の…」と言って紹介していた。そこから親友と呼ばれることなく交流して来たため、時より「自分は一歩手前の友達止まり」「スバル達の輪に入れない存在」と思い込むことがあったが……そうじゃなかった。
自分はもう既にスバル達の大切な存在であり、信じてくれる親友だったんだ。それに引き換え今の自分はどうだろう? ’’親友と思われてない’’と勝手に思い込では夢で見ただけの先の未来に怯え泣き、挙句の果てに親友に任された役割を理解せず、拒もうとしていた。……全くもって恥ずかしいし、情けない話だ。親友達が自分を信じてくれている、なら、自分も親友達の言葉を信じ与えられた役割を果たすべきではないか?
そう思っていると不思議なことにさっきまでの足の震えはなく、心の恐怖もなくなっていた。レムは目元に浮かべていた涙を拭くと、いつもの表情に戻っていた。しかしその表情は勇ましく、迷いない覚悟を決めた表情だった。
「皆さんごめんなさい、私はもう大丈夫です! だから……行って下さい! 私は皆さんを信じています!」
いつもの声より張りのある声でスバル達に告げると。
「おうっ!」
「うん!」
「はい!」
「ああ!」
スバル、ハジメ、当麻、士郎はそう返事をして走り出した、ヘビモスの方へ。レムはその背を見て「ご武運を…。」と告げて待たせているカヅキ、イツキの所に向かった。
「カヅキさん、イツキさん、ごめんなさい、遅くなりました。」
「おう、もういいのか……あいつらと離れて?」
どこかぶっきらぼうに尋ねるカヅキにレムは、
「はい、大丈夫です! 私はもう迷いはしません。皆を……スバル君を信じるまでです。」
真っ直ぐカヅキを見つめながら話すレム、カヅキはレムの顔を見てその表情に、声に、迷いがないことを理解した。
「ヘッ………いい
そう言って軽く笑うカヅキ。
「お前じゃありません、レムです。今度はそう呼んで下さい。」
レムはそう言って抗議した。口は悪いが、嫌な気分になることはなかった。「この二人なら信頼することができる。」レムは瞬時に思った。
「そりゃあ悪かったレム。」
「ふふっ…よろしくねレム。」
二人はそう言いえると、カヅキとイツキは顔を見合わせてコクッと頷き合い、背負っていた竹刀袋からある物を取り出し、今まで使っていた西洋剣をしまった。
二人が竹刀袋か取り出した物、それは言わずと知れた剣道とかで見かける竹刀だった。「アレを使う」とカヅキは言っていたので二人には何か秘密兵器があるのだと思っていたが、実際に出てきたのは何の変哲もない竹刀。
レムは、「えっ……え!?」と言いながら困惑していた、てっきりもっと凄いものが入っていると思っていたからだ。
「これ、竹刀ですよね? あの……まさか、これであの群れを突破するって言うんじゃあ……」
「バーカ、そんなことあるか。ガキでもそんな発想しねぇよ。」
そう言うカヅキにレムは「ムッ」と眉をひそめ顔をしかめた。
「ごめんね、レム。後で兄さんにはきつく言っておくから…。」
そう言って小さく謝るイツキ、レムはこの時「イツキは八重樫さんと同じ苦労する人だ。」そんなことを思っているとカヅキはレムに宣言するかのように言った。
「レム、お前の仲間は命をかけて時間を稼ごうとしている。その行動に敬意を表して、俺は無事にレムを送り届ける事を誓おう……イツキやるぞ!」
「ああ、兄さん!」
二人はそう言うとカヅキは右手でイツキ左手で竹刀の中心を持ち、水平になるようにした。すると不思議なことに二人の周りに風が巻き起こり、その風は二人の竹刀に集まってきた。風は竹刀の周りを高速に周り始めてレムから見れば小さなハリケーンが起こっているかのように見えた。その証拠に所々小さな雷が走っていた。
そして次の瞬間ビューンと二つの竹刀から突風が起こり、思わず目を閉じてしまうレム。突風が収まったので目を開けるとある変化に気づいた。
「えっ、どうしてそれが? 一体何が…?」
またもや困惑するレム、何せこのトータスにはなかった物がカヅキ、イツキの手に握られていたからだ。
彼らが握っていた物、それは黒い鞘に納まり中心辺りから反った形をとっていた、俗に言う日本刀と呼ばれるものだった。
その日本刀をカヅキは左腰に添え、イツキは右腰に添えて構えを取った、お互い抜刀の構えだった。
「レム、これが終わったら今話せる事を話してやるよ。」
「危なくなったら、僕たちの背中に隠れてね…レム。」
そう言うカヅキとイツキ、現にレムの頭の中には気になることがいくつかあったが、
今はそんなことどうでもいい。
その想いが勝り、疑問はすぐに頭の隅に追いやることができた。カヅキは再度イツキとレムの顔を見て正面を向き、
「いくぞ! イツキ、レム!」
「ああ!(はい!)」
カヅキの掛け声と共に三人は駆け出した。
いかがだったでしょうか?
皆の覚悟が読者様に伝われば幸いです。
この覚悟があって、皆逞しく前に進むことが出来ます。特にレムは…
カヅキとイツキの存在に謎が深まるばかり、一つ言えることは彼らは皆にはできない’’ある’’ことが出来ます。察しが良い方は分かると思いますよ。
次回はヘビモス撤退戦になります。