仕事の関係でだいぶ遅くなってしまいました。
今回のお話しはクラスメイト達がヘビモスから逃げるお話しになっております。
ハジメはもちろん、色々なキャラが活躍します。
それでは、どうぞ。
「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」
雫は先程から光輝を撤退させるようと説得を試みるも一向に退こうとしなかった。さらに…
「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」
「龍太郎……ありがとな」
龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。
「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」
「雫ちゃん……」
苛立つ雫に心配そうな香織。
その時、二人の男子が光輝の前に飛び込んできた。
「天之河くん!」
「天之河ァ!」
「なっ、南雲!? それに影山まで!」
「南雲くん!?」
驚く一同にハジメとスバルは必死の形相でまくし立てる。
「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」
「天之河ァ!! 吞気にデカブツと相手してないで早く退くぞ!」
「いきなりなんだ? それより、なんで君達がこんな所にいるんだ! ここは君達がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて撤退するんだ!」
二人は撤退の催促をするも光輝は聞く耳を持たないのか動こうとはせず、逆に二人を撤退させようと催促するのだった。あまりにも他人の話しを聞かない光輝にスバルはキレるのだが、
「テメェいい加減に「そんなこと言っている場合かっ!!」おお? ハジメ!?」
ハジメはスバルの言葉を遮って今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。これには思わず硬直する光輝、そして親友の普段見せることない怒鳴り声に驚くスバル。
「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」
光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。
「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」
呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。
「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」
「みんな、伏せろ!!」
「下がれぇーー!」
〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、士郎の叫び声と団長の悲鳴と同時に、遂に障壁が砕け散った。暴風のように荒れ狂う衝撃波がハジメ達を襲も咄嗟に、ハジメが前に出て錬成により石壁を作り出した。すぐに砕け散ったがある程度は威力を殺すことができた。
グルァァァァァアアアアア!!
再びヘビモスが咆哮を上げ、舞い上がる埃を吹き払われた。
そこには倒れ伏し声を上げる団長と騎士の三人、その近くに当麻を庇うように伏せている士郎と当麻がいた。団長と騎士達は衝撃波の影響で身動きが取れないようで、士郎と当麻はすぐに伏せたことで何とか衝撃波を切り抜け、すぐに起き上がることができた。
光輝達もハジメの石壁が功を奏したのかすぐに起き上がることができた。ちなみに何故、士郎と当麻が団長の近くにいたかというとハジメの計画を伝えるためだったりする。
「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」
「団長たちが倒れているなか、ここにいる自分達でなんとかするしかない…」そう考えた光輝は親友の二人に問いかけた。
その問いに答えるように苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る雫と龍太郎。
「やるしかねぇだろ!」
「……なんとかしてみるわ!」
二人がベヒモスに突貫しようとした矢先、
ビュッ!!
一本の矢が放たれて、その矢はヘビモスの右目を貫いた。
グガァァァァァァアアアアア!!?
ヘビモスに激痛が走ったのか叫び声ながらその場で暴れまわり、矢を取ろうと両手で自分の顔をひっかく動作をしていた。雫と龍太郎は矢を放ったであろう人物に振り向いた。
「このまま暴れて横に落ちてくれたら良いんだけどな……」
ぼやきながら次の矢を放てるように構える士郎、ヘビモスがもがいている内にスバルと当麻が倒れている団長と騎士の下に駆け寄った。
「団長達を後方に下げるぞ、二人共手伝ってくれ!」
スバルがそう言うと自分達のことを言っているとことに気づいた龍太郎と雫は、
「おう!」
「わかったわ。」
そう言って返事をして、急いで騎士の元に向かい、騎士に肩を貸すようにして下がり始めた。
「白崎さん、メルドさん達に治癒を!」
「うん!」
ハジメの言葉に頷き、メルド団長の元に向かう香織。同時にハジメも動き出し、スバル達によって一ヶ所に集められたメルド団長達の所に向かって、戦いの余波が届かないように石壁を作り出していた。
光輝はすでに今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を終えており「’’神威’’」という掛け声と共に光属性の砲撃、今自分が出せる最大限の攻撃をヘビモスに放った。神威は轟音と共にヘビモスに直撃、光が辺りを満たし白く塗りつぶして激震する橋に大きく亀裂が入っていった。
「これで……どうだ。」
「流石にやったよな?」
「だといいけど……」
龍太郎と雫がそんなことを呟きながら肩で息をしている光輝の傍に戻ってきたが、ここで龍太郎と雫の言葉を聞いてスバルは焦ったように喋り出した。
「おい、バカ。ここでそんなありきたりなフラグを立てるな! そんなこというと……」
スバルの脳裏にはアニメでよく見たテンプレが思い描かれていた。「大技を出して’’やったか’’と言った瞬間、実は効いてなかった。」というテンプレを。
スバルの言葉を聞いて光輝、龍太郎、雫は「え? …えっ??」と困惑するなか徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われた。その先には……
無傷のヘビモスがいた。
「ほら、見ろ~。」
凄く嫌そうな顔をしながら言うスバル、ヘビモスは低い唸り声を上げて頭を掲げた。頭の角を赤熱化していき頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎっていくのだった。
「ボケッとするな! 逃げろ!」
「クソッ、
メルド団長はそう叫び、士郎は無傷のヘビモスを見て舌打ちをした。光輝達は傷一つ与えてないヘビモスを見たショックから立ち直り身構えた瞬間、ベヒモスが突進を始め、光輝達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下する、と思いきや………
ボコオオォォォォォーーーーン!!!
こちらに向かって落下する直前に何かが当たった。そのおかげで勢いが無くなりヘビモスは光輝達の所に落ちてくるどころか、その真下の地面に豪快に顔から突っ込んだ。ヘビモスは深くめり込んだ頭を抜き出そうと踏ん張っていた。
「一体何が起きたんだ!?」とこの場にいる全員がそう思うなか、スバルだけがさっきの出来事に心当たりがあった。
「(さっきヘビモスがぶつかったのは、俺が囮になった時に使っていた魔法と一緒だった………)もしかして、レム?」
そう言って後方を見ると、
「はぁ…はぁ…私の親友に………手出しはさせない!!」
肩で息をするレムの姿があった。実はレムは役割は与えられたとはいえ、少しでも彼らの力になりたいと考えており’’離れた位置からどうにか彼らの援護は出来ないか?’’と考えていたところ、「大砲のように山なりに打ってみてはどうか?」と思いつき魔法を詠唱して魔力を込めていたが、跳躍したヘビモスが目に入りとっさになって放ったのだ。
レムが放った暴風球はスバルの時に使ったものより、さらに大きくそのおかげでヘビモスの勢いを殺し光輝達を救うことになった。
「ありがとな…レム。」
レムに向けてそう呟くスバル、聞こえる訳がないのだが伝わったのかレムはこちらを見て微笑んでいた。俄然スバルのやる気が上がった。
「おい、あのデカブツ! 様子が変だぞ?」
いきなり龍太郎が何かに気づき声を上げ、すぐさまヘビモスを見るとスバルにも様子がおかしいことに気づいた。ヘビモスはめり込んだ頭を抜き出そうと踏ん張っているのだが、さっきから力が入らないのか前足に力を入れてはすぐに脱力を繰り返していた。「これはどういうことだ?」と皆が思っていると、
「ようやく効いたか。王都で手に入れた魔物に効く最高級の麻痺毒………矢じりに仕込んでいて正解だったようだ。」
そう言ったのは士郎だった。それを聞いた時、誰もが「あっ」と言って納得した。光輝の神威を放つ前に矢を放ってヘビモスの右目に当てていたことを思い出したのだ。
「やーるう~士郎。」
「流石です、士郎くん。」
ハジメと当麻が褒めるなか、士郎は焦るように答えた。
「感心している場合じゃあないぞ! 本来はこの麻痺毒は中型の魔物を想定して作られたものなのだ…そう長くはもたないはずだ。」
それを聞いた皆は表情をこわばらせた。そして、もう毒が切れたのかヘビモスは途中で脱力させることなく前足に力を入れ始め、「もう、切れたのか!」と士郎が吐き捨てるように言った。
ヘビモスの前足にひびが入った時ハジメと当麻が駆け出した。
「錬成!」
頭部をめり込ませるヘビモスにハジメと当麻が飛びつき、ハジメは詠唱と共に錬成を始めた。前足のひびを錬成しては直して固め、めり込んだヘビモスの頭も錬成して抜け出さないようにした。
「僕の努力は無駄じゃなかったこと…今ここで証明して見せる!」
当麻はハジメの後ろに座り込み背中に両手を当ててハジメの魔力が切れそうになった時、注ぎ出すように気を流し込みハジメの魔力として変換していった。スバル、士郎も遅れてやってきてハジメと当麻の近くにより緊急な対応を取れるように身構えた。
「まさか、お前らに命を預けることになるとはな……必ず助けてやる。だから、頼んだぞ!」
「「「「はい!!」」」」
メルド団長の言葉にスバル達は返事をして返すと「くっ」と笑みを浮かべるメルド団長、そして光輝達に指示を出した。
「よしお前ら撤退するぞ! 光輝はこのままトラウムソルジャーの群れに向かい道を切り開け、お前ならできるはずだ! 雫、龍太郎、俺で他の騎士を担ぎ、香織は移動しながら治癒を頼む。騎士の治癒が終わり次第、俺らもトラウムソルジャーの突破を試みる。」
そう指示を出すメルド団長に香織は猛抗議、しまいには「私も残ります。」と言う始末、他の騎士の治癒を行うため、どうしても香織はメルド団長と共に撤退しなければならないことを伝えるも、なお言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられた。
「坊主達の思いを無駄にする気か! あいつらは今、自分達が出来る最大限のことをやろうとしている。香織、お前が出来る最大限のことは何だ?」
「ッ――。」
その言葉にはっと気づき、香織は一人の騎士に治癒魔法をかけた。雫は香織の気持ちを察して辛そうな顔をしつつ香織の肩をグッと掴み頷く。香織も頷き、もう一度、必死の形相で錬成を続けるハジメとそれを支えるスバル達に振り返った。そして、他の騎士を担いだメルド団長、雫、龍太郎、それに一足先にトラウムソルジャーの群れに向かった光輝と共に撤退を始めた。
「今、メルド団長達が撤退を始めた。」
「ハジメ、当麻、まだいけるか?」
状況を伝える士郎に、スバルはハジメ、当麻がまだ続けられるかどうか確認を取った。
「大丈夫、まだいける……」
「僕の気は沢山あります、ゆっくり行きましょう。」
余裕な顔で答えるハジメと当麻、実際に当麻という魔力を回復させてくれる存在がいるおかげで自分の魔力量を気にせずにどんどん錬成をしていき、ヘビモスの足止めを行っていくのだった。
一方その頃、トラウムソルジャーの群れの突破を試みるレム達はというと………
「手を動かせ、連携を取りやがれ、この自惚れどもが!! 最終的に戦う意志を決めたのは他でもないおめぇらだろうが!!」
「兄さん、口が悪いよ。少し抑えて…」
「うるせぇー! つべこべ言う暇があったら目の前の敵を斬りやがれ!!」
「…はぁ~。」
カヅキとイツキは日本刀を手にトラウムソルジャーを斬り捨てていった。一応クラスメイト達を鼓舞するためカヅキは声を張っているのだが、なんせ口が悪い。戦いに熱が入っているのかイツキが指摘しても聞く耳を持たなかった。イツキは目の前の敵を斬りながら深いため息をはくのだった。
「妙子、左から来るわよ気をつけて! 奈々、そっちの敵はお願い! 正面は私が引き受けるわ。」
一方こちら士郎に助けられた優花も長年の付き合いのある親友、菅原妙子、宮崎奈々と共に連携を取りトラウムソルジャーに立ち向かっていった。そこに、
「皆さん大丈夫ですか? 私が援護します!」
下級魔法を連発して優花達の周りのトラウムソルジャーを一掃していった、三人は魔法を放ったであろう人物の方に振り向くとそこにレムが立っていた。
「レム、助かったわ!!」
優花が喜びの声を上げてレムに近づき、それに釣られるように妙子、奈々もレムに駆け寄った。
「皆さん、お怪我はありませんか? それと、ごめんなさい……勝手にパーティーを離れてしまって。本来なら最初に合流するべきだったのに………」
そう言って申し訳なさそうにするレム。実は言うとこの四人は迷宮に入るために事前に決められたパーティーメンバーであり、また、レムにとって優花、妙子、奈々は高校に入った時に出来たスバル達以外の大切な女子友達だ。
ヘビモスが現れてクラスメイト達がパニックになったあの時、レムのパーティーメンバーはバラバラになった。本来なら優花達と合流すべきだったのに自分の勝手で真っ先にスバルの方に駆け寄ったことに負い目を感じており、そのことで改めて三人に謝罪をするのだった。
「いいっていいってそんなこと、レムも心配してスバル達の所に行ったんでしょ? 別に悪いことじゃないし、気にしてないって私たち!」
「そうそう、こうして無事に四人合流できたからいいじゃない。」
「そうだよレムっち、深く考えすぎだよ。それに私たちだけでも強いのだからね!」
そう笑顔で答える優花。その言葉に同調するかのように妙子、奈々も答えた。
「みなさん……。」
三人の言葉に思わず心の中が熱くなるように感じた。「スバル君達だけではなく彼女達もまた私にとって大切な存在、大事にしなければ…」改めてそう思ったレムは申し訳なさそうにしていた顔を切り替えて、真剣な表情で言った。
「私ができるだけ多く殲滅します、みなさんは私の討ち漏らしをお願いします!」
「「「了解」」」
レムの言葉に三人は大きく頷き、四人は連携をとってトラウムソルジャーに立ち向かっていった。
さてカヅキの鼓舞する声でクラスメイト達がパーティで連携を取り、ソルジャー達に奮戦していた時ここで、
「天翔閃!!」
純白の斬撃がトラウムソルジャーを切り裂き吹き飛ばし、橋の両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていった。
「ようやく
「ああ…ったく遅えぞ!! 天之河ァ!!」
そう言って二人は後ろを振り向いた。その先にはこのクラスの勇者、天之河が立っていた。
「皆、あきらめるな! 道は俺が切り開く!!」
そんなセリフとともに再び天翔閃が敵を切り裂いていく。
「お前たち!しかっりしろ! 階段はもう目の前だぞ!!」
皆の頼れる団長が天翔閃に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と討ち倒していった。
「行くわよ、龍太郎!」
「おう!」
雫のかけ声と共に駆け出し、斬りふせ、投げ倒して行く二人。
「―天恵」
後方では香織が詠唱を紡ぎ、クラスメイトのパニックを必死になって抑えていた騎士の治療をしていた。ハジメの所に向かいたい事を我慢し、涙をこらえながら香織は治療を続けていた。
「……………。」
そんな様子をカヅキは刀を振りながら辺りを見渡していた。天之河、メルド団長、八重樫、坂上、この四人が果敢に敵に攻め、周りのクラスの連中はそれに触発されたかのように活気を取り戻し、負けじと反撃を行っていた。レムも守るどころかパーティーメンバーと連携を取りガンガン攻めていた。「ここはもう、任せてもよいな…。」そう思ったカヅキは、
「突破するぞ、イツキ!」
「…!? 分かった、兄さん!」
兄の意図を理解したイツキは相づちを打った。そして、二人は天之河を挟むように横に並び、刀を上段にして俗に言う’’霞の構え’’を取った。それに気づいた光輝は交互に見ながら、
「君たちは一体、何を…」
光輝の疑問に二人は正面を向きながら答えた。
「んなものはどうでもいいから、前方の敵に痛いのぶちかませ!」
「答えは…見ればわかるさ。」
そう言って構えを続けるカヅキとイツキ、そしてこの構えに光輝だけでなく、この二人も気づいた。
「おい、あいつら何やってんだ? それにあいつらが持っているものって…」
「日本刀…どうしてそんなものが? それにあの構えは……!?」
龍太郎と雫は最前線だということを忘れてカヅキとイツキの様子を見ていると、光輝が天翔閃を前方に放ち、トラウムソルジャーの群れを切り裂きぶっ飛ばした。そして、わずかに開いた一瞬の隙間を二人は見逃さなかった。
「「
「なっ!? 」
二人のかけ声と共にトラウムソルジャーの群れに出来たわずかな隙間に向かって電光石火の如く刀の突きを放つように突っ込み、いきなりの出来事で当然驚く光輝。二人の突進する突きはトラウムソルジャーを吹っ飛ばし、骨を粉砕しながら群れの中を突き進み、階段側へと辿り着いた。
「うおっ!! あいつらあんなことが出来たのか!?」
「………きれい。」
龍太郎は率直にカヅキとイツキの技量に驚き、雫は二人の剣技に見とれており特にイツキの’’穿月’’はまるで流星のようだったと思えるほど鮮やかだった。
「上手くいったな…勝利が見えてきたぞイツキ!」
「ああ、もうひと踏ん張りだね…兄さん。」
二人はお互いに頷くとソルジャーに斬りかかっていた。前からは強力な魔法と武技の波状攻撃、後ろからは一騎当千如きの剣技でトラウムソルジャーはどんどん行き場を失い、ついに魔法陣による魔法の召喚速度を超えて階段への道が開けた。
「皆、階段側を確保するぞ!」
光輝のかけ声と同時に走り出し、それに続くようにクラスメイト、団長、騎士達も続いた。全員が包囲網を突破し背後が再びトラウムソルジャーで閉じられようとするも、そうはさせ時と光輝が魔法を放ち蹴散らす。クラスメイトの何人かは訝しそうな表情をするなか、それを無視して我先に階段を上がろうとする者もいたが、
「おいゴラァ! 何勝手に行こうとしてるんだ? まだ、終わってねぇ!!」
階段前で仁王立ちしているカヅキに止められた。
「皆、待って! 南雲くんを助けなきゃ! 南雲くんがたった一人であの怪物を抑えてるの!」
「ハジメさんだけじゃありません! 当麻さんや士郎さん、それにスバル君もあそこでとどまってハジメさんのサポートに回ってもらっています!! ですから、彼らが脱出するまで援護を……」
香織とレムの言葉に困惑するクラスメイト達、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメ達の姿があった。それを見てさらに困惑し、疑問の声をもらす生徒達に指示を出した。
「そうだ! 坊主達があの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」
ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいた、それに対してカヅキは、
「ここを通ろうとするものは命まで取らんが、切り捨てる! その覚悟はあるんだろうな?」
殺気を放ちドスの効いた声で刀の柄に手を当て、生徒達を睨みつけた。これには生徒達も「ひっ」と声を上げ、恐れをなして団長の言われた通りに配置に着いた。
「当麻、ハジメ、今、全員が撤退を終えて詠唱をの準備に入っている。そっちはどうだ?」
「すみません、士郎くん、ハジメくん。これ以上気を流したら走れなくなるかな…。」
「となると僕も後一回は錬成できるってところかな? それ以上は、きついな。」
士郎の言葉に当麻、ハジメはそう答えた。二人はすでに疲労がピークに達しているのか少し肩で息をしており、額に汗が流れていた。
「よし、当麻はそろそろ離れて走れる準備を、ハジメが最後の錬成を終えて走り出したら俺らも走るぞ。スバル、俺らの役目は分かっているよな?」
「おう、ハジメと当麻に迫る骸骨を斬り払う、だろ? 分かっているって。」
そう自信満々に答えるスバルに士郎は「よし。」と頷いた。そして、何度目かの亀裂が走ると同時に「みんな、いくよ。」とハジメのかけ声と共に錬成でヘビモスを拘束した後、一気に駆け出してスバル、当麻、士郎もそれに続いた。ちなみにスバルと士郎はハジメ、当麻の一歩前に出るように走ってトラウムソルジャーに備えた。
四人が駆け出した10秒後に咆哮と共にヘビモスが起き上がり片目で周囲を見渡し、己を地面に埋めた怨敵を探してハジメ達を捉えた。再度、怒りの咆哮を上げてハジメを追いかけようとした時、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据え、ダメージには程遠いが、しっかりと足止めになっていた。
「いける!」誰もがそう確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走るハジメ達。ヘビモスの距離がすでに二十メートル広がった時、スバルに異変が起こった。
……………ゾクッ!
「(………まただ!?)」
あの時と同じように全身に悪寒が走った。「また、嫌な予感が来るのか? 脅威はどこだ?」と思い、辺りを見渡して、ふと正面を見てある一点に止まった。
その一点とは、檜山だった。
一見ヘビモスの足止めのため魔法の詠唱唱えているように見えたが……その顔は歪んでおり、ドス黒く濁った瞳で笑っていた。檜山の笑顔に若干退くも、何故あんな笑顔をするのか分からなかった。これを見たスバルは頭の中に様々な疑問が浮かび上がってきた。
皆が必死の中、なぜ笑っていられる?
しかも、あの歪んだ笑顔は何だ?
檜山とはどういう人物だった?
俺たちとの関係は? 今までどんな風に関わってきた?
そして、
「(まさか、アイツ!?)」
………ゾクゾクッ!!!
檜山の目的が分かった途端、またもや悪寒が走った。しかもさっきとは尋常にならない悪寒が。それと同時に檜山の手の平から魔法が出るのが見えた、それを見た瞬間、スバルは動いた。何も考えずただ檜山の目的を阻止するために動くのだった。
檜山が放った魔法は真っ直ぐヘビモスの所に向かわず、ハジメの前に迫っていた。
ハジメが気づいた時にはすでに目の前に迫っており「(何で!?)」と疑問や困惑、驚愕が一瞬で脳内を駆け巡った時……………視界が横にずれた。
「………えっ?」
一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、
ハジメは何とか地面に倒れる前に踏ん張って体勢を持ち直し瞬時に横を振り向くと、飛んできた魔法をモロに受け、後ろに飛ばされる
「スバルッ!!」
ハジメが声を上げた時には来た道を引き返すように転がっていた。ハジメはすぐにスバルの元に駆け寄った。
「「スバル(君)!?」」
ハジメの声に振り向くとスバルが吹き飛んでおり、当麻と士郎は「何故!?」という疑問も思わずに、飛ばされた親友の元に駆け寄るのだった。
「ゲホッ、ゲホッ、……ク…ソ…」
魔法をモロに喰らい、立ち上がろうとするもなかなか立つことが出来ず四つん這いの状態になった。そして、胸もとが妙に熱く焦げ臭い匂いが漂った。少し見てみると案の定、胸元の辺りが焦げているためさっきの魔法は’’火球’’によるものだと分かった。
「「「「スバル(君)!!!」」」
ハジメ、当麻、士郎が駆け寄って来た。三人はスバルが立てないと分かると、ハジメがスバルの右手を、士郎が左手を持ち、当麻が襟元を掴んで引きずり始めた。とっさにスバルは「自分を置いて逃げろ。」と言おうとしたが三人に怒られることが目に見えたので黙っていることにした。三人がスバルを数十歩引きずった時に、
ドカァァァァァーーーーン!!!
ヘビモスがスバルの所に飛び込んできたのだ、まさに間一髪。もし、あそこで三人がスバルの肩を貸すように逃げようとしていたら、今頃ヘビモスに押しつぶされていただろう。三人の賢明の判断にスバルは感謝していると、
メキメキメキメキ………。
ヘビモスのさっきの飛び込みでヘビモス中心に物凄い勢いで亀裂が入った。
「ウソ……だろ?」
スバルがそう呟いた瞬間、橋は崩壊を始めた。度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。だが、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていく事となった。
ハジメ達も崩壊するまでに渡り切ろうとするも、崩壊速度に追いつかれて、とうとう足元が崩れ重力に従って落ちてしまった。その拍子にスバルから三人の親友の手が離れた。
「お前ら………絶……対に……生き………ろ。レム……おれ…は…」
’’親友達よ…どうか無事で。レム、必ず約束は守る、だから待っていてくれ’’ そう願いながら、弱々しく呟くスバル。落ちていく中、対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、香織が飛び出そうとして雫や光輝に羽交い締めにされていた。優花は大事な家族の士郎が落ちる姿を見ているのか青ざめた顔をして、こちらを見つめており、そして、レムに至っては呆然とした表情で立ち尽くしているのだった。
他のクラスの連中も目や口元を手で覆ったりして、メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情でこちら見つめていた。そして、この状況を作った張本人、檜山はというと、
「…………。(ニヤリ)」
「してやったりぞ、ざまぁ見ろ。」と言いたそうな顔をしてから歪んだ笑顔を向けていた。その顔を見た途端、かつてない程の怒りと殺意が沸いた。
「(こんな所で終わるものか……絶対に生きてやる! 檜山ァ、お前だけは、いつか必ず……殺す!!)」
スバルは檜山が見えなくなるまで睨みつけながら、奈落の底へ落ちていくのだった。
いかがだったでしょうか?
この話しは色々なキャラをしゃべらしたり、動かしたりして書いてて楽しかったです。
ちなみに月山兄弟が使った穿月は私の大好きなゲームのキャラの技だったりします。剣技もそのキャラを参考にしていきたいなと考えております。
次回、スバルが奈落の底で、ある出会いを果たします。