遅くなりましたが、ようやく投稿する事が出来ました。話しのストックが切れそうでしたのでせっせと下書きをしていました。と言っても2~3話分しかかけていませんけど…
さて、今回のお話しはスバルに転機が訪れます。そして、天職についても解明されます。
それでは、どうぞ。
「フ―――スッとしたぜ。まさか、某超人人間みたいな方法で頭を冷静させる羽目になるとは……。」
あれからどれくらい泣いていたか分からない、だが泣いていたおかげで身も心もスッキリする事が出来た。そして、頭を撫でていた鬼はというと、
「………………。」
何をすることなくあぐらをかいてスバルを見ており、スバルはなるべく顔を合わせないようにしつつも、チラッ、チラッと顔を見ては様子を伺うのだった。とりあえずこの鬼について考えてみた。
「(敵…じゃあないんだよな? 俺はてっきり食料か何かで食われるもんだと思っていたんだが………)」
<……おい。>
「(さっきから何もしてこない………もしかして、これは某RPGみたいに「仲間になりたそうにこちらを見ている!」って奴か?)」
<おい。>
「(いやいやいや考えすぎだ。この世界、そんな簡単にご都合主義があるわけがない! 多分、油断させておいて、気が抜けた所をガブッと…!)」
<おい!!>
「うるせぇーな! 誰だよさっきから話しかけてくる奴は!!」
<俺に決まっているだろ! 馬鹿が!!>
さっきから聞こえてくる声にキレて辺りを見渡すスバル、しかし、当然というべきか周りに人はいなかった。
<こっちだこっち、俺以外に誰がいるんだよ。>
また、声が聞こえてきた。思えばこの声、少し違和感を感じており耳から聞こえてくるというより頭に響いてくるような感覚があった。そんなことを思いながら辺りを見渡すもやはり人影は見当たらず、ここで「もしや……」と思い、
「まさか…………お前なのか? さっきから話しかけているのは?」
<ああ、そうだ。しゃべる事はできないが特定の相手に念話で話すことは出来る。>
恐る恐る目の前の鬼に向かって話すスバル、するとまたもや頭に響くように声が聞こえてきた。どうやらさっきから話しかけているのはこの鬼で間違いないようだ。
「そうなのか……それよりもアンタ、何でさっき俺の頭を撫でたんだ? 俺はてっきり食べられるかと思ったんだが…?」
ここで頭を撫でた理由について鬼に尋ねてみた。
<頭を撫でたのは………何となくだ、意味なんかねぇよ。それと同時に俺は魔物は喰うが、人は喰わねぇよ………………人だからな。>
その言葉にスバルは目を開いて驚いた。
「えっ!? アンタ、人間なのか?」
<ああ、正確には元人間といった方が良いかな? 色々あってこんな姿になるはめになったが……。>
どこか物静かに話す鬼にスバルはさらに疑問を投げつけた。
「いろいろって、一体アンタに何があったんだ?」
<おいおい、お互い名前も明かしていないのに一方的に俺の話をさせるのはマナー違反だぜ、先ずは自己紹介だろ。親に教わらなかったか?>
鬼の最もな意見にハッと気がつくスバル。しかし、鬼の話し方にどこか癇にさわったのか不貞腐れたようにスバルは答えた。
「親に教わったさ……もう死んじまったけど……。」
<そうか…………………すまぬ、人の気も知らず心無いことを言った。>
「いいって、気にするなよ。アンタは知らなかっただけだし……」
変な空気になりお互い黙り込む二人、どれぐらいそうしていたか分からないがこの空気を破ったのはスバルだった。
「よし、くよくよしても仕方がない、切り替えて行くか! と言う訳で俺の名はスバル、影山スバル。アンタは?」
さっき変わり落ち込んでいた様子から一転して元気に自己紹介するスバル。鬼はあっけに取られて黙り込むがすぐに念話で返すのだった。
<レオン………レオン・ガロードだ。親しかった奴は皆、’’レオン’’と呼んでいた…>
「レオン・ガロード……おめぇカッコイイ名前だな。」
<それはどうも…………。>
スバルの言葉に照れているのかちょっとそっぽを向くレオン。スバルはそれを見てニッと笑ったあと「よし。」と言って意気込んだ。
「レオン………色々話したかったけど、俺行くよ。親友達が待っている。」
<………………。>
背を向けて言うスバル、レオンはそれを黙って聞いていた。
「じゃあな、多分ここにはもう戻って来れないと思うけど達者でな。それと、ありがとう……レオンのおかげで少しだけ懐かしい気持ちに浸れたから……。」
そう言って離れた親友達を探すため駆け出そうとした瞬間、
<………何、格好つけているんだよ。>
レオンはスバルの後ろの袖を掴んで宙ぶらりんにした。
「お、おい!? 何するんだよ、レオン! 俺は急がないといけねぇんだよ!! こうしている間にハジメ達に何かあったら<まぁ待て、話を聞け!>」
じたばたするスバルにレオンは落ち着くように言うとレオンはスバルを地面に立たせた。
<いいか、俺が何の意味もなくお前の前に現れたのではない。お前から、
「
<簡単に言うと特殊な気配だ。スバル……お前の右手の平に魔法陣が描かれているだろ? そこから
レオンの言葉にスバルはハッとして包帯に巻かれている自分の手の平を見た。「この右手の平に書かれていた魔法陣について知っているかもしれない…」そう思ったスバルはレオンに尋ねた。
「レオン、俺の右手の平にある魔法陣について何か知っているのか?」
スバルの言葉にレオンはゆっくり念話で返した。
<ああ、知っている。それは’’融合紋’’魔物と融合をするための唯一の紋章だ。>
「魔物と融合……」
スバルは言葉を震わせながら呟いた。ようやく自分の天職について糸口が見えてきたからだ。
<そしてだ、スバル。元をたどれば…俺はお前と同じく融合者で、その融合紋は……俺が使っていた奴だ。>
「えっ? それはどういうことだよ!?」
驚きの事実に困惑するスバル、レオンは<まぁ、話すから座りな。>と念話で伝えてスバルを座らせ、ゆっくりと語り始めた。
レオンは元々ある部族の一人であり、その部族は融合紋で魔物を取り入れ、その取り入れた魔物の力を使って戦う部族だった。部族の中には強力な魔物を取り入れる者もおり、当然、他種族や他部族からも恐れられていた。
’’魔物を取り入れる’’ということが周りから異常に見えたため、その部族は他部族、他種族に迫害され徐々に数を減らしていき、結果、レオンがその部族の最後の一人となった。
レオンは周りから自分はその部族の出身であることを隠しながら、ある王国に仕えた。そこで出会った本心を語り合える唯一無二の親友と一緒に小さな王女を支えながら幸せの日々を過ごしていたが、ある日その親友がクーデターを起こし王国を乗っ取った。
王女は殺され、レオンもあっけなくつかまりここに連れて来られた。そして、親友に融合能力の存在を恐れられたのか、融合紋を親友に無理矢理奪われ、その代償として暴走を起こして取り入れた魔物に姿を変え、人に戻る事も、この姿で外に出る事も出来ずに約300年間、ここをさまよっていたことを告げたのだった。
<………俺の話しは、まぁ、こんな感じ………って、スバル、お前……泣いているのかよ!?>
「………うぅ…だって……だってよ………。」
レオンは夢中になって自分語りをして気づいていなかったが、いつの間にかスバルはむせび泣いていた。「泣くとこなんかあったか?」と思いながら訳を聞いてみると、
「だって……だって、信じていた親友に裏切られ、融合紋は奪われてそんな姿になり、ずっとずっとここにいたんだろ? こんなの生き地獄だよ………。」
そう言ってむせび泣くスバル、その姿にレオンは「やれやれ」と苦笑いを浮かべながら頭を撫でた。
<スバル、お前が人の不幸を悲しめる優しい人間だということは分かった。それに俺はそのことについて割り切っているつもりだ………だからもう…泣くなスバル。>
そう言ってレオンはスバルが落ち着くまで頭を撫で続けるのだった。
どれぐらい経ったのか分からないがスバルが落ち着いたので、レオンはスバルについて尋ねてみた。
<さて………次はスバル、お前の番だ。洗いざらい話してくれよな…>
「ああ、分かった。実は俺は………………」
そう言ってスバルは話し始めた。自分がこの世界とは違う別世界から召喚されてやってきたこと、魔人族と戦うために半ば強制的に戦闘訓練をさせられてられていること、訓練の一環としてこの迷宮にやってきたこと、そこでトラブルにあい、悪意のあるクラスメイトの一人に邪魔されて四人諸共落とされ、離れ離れになったことを話した。レオンはただ黙ってスバルの話しを聞いていたが時折、’’何か’’を放ち、スバルは原因不明の寒気に襲われ言葉を詰まらせる事もあったが、それでも最後までレオンは親身になって聞いてくれたのだった。
<なかなか大変だったな………それとその檜山って言うのか? 腹立たしい男だな…>
「ああ、思い出しただけでも殺意を覚えるぜ。アイツの思惑通りにならないようにどうしても、俺を含めて四人、生きてここを出なきゃならないんだ。」
そう言って両こぶしを力強く握りしめるスバル。意外にもレオンが檜山に対して共感を持ってくれたことに少しだけ嬉しかったりするのだった。
<で? これから探しに行くのか、その親友を?>
「ああ、今すぐにでも動いて探しに行きたい。でも、この迷宮区の魔物相手じゃあ、俺は太刀打ちできない。やられるのは目に見えている……」
思えば二尾狼に追いかけられる前、一目見た時に数で負けるよりも本能的に「敵わない」「勝てない」という思いが強かった、だから戦わずすぐに逃げ出した、ということが今なら分かる。
「だから」とスバルは前置き、いきなりレオンの前で頭を地面につけて土下座した。
「レオン、頼む。親友を見つけてここを出るまでの間、力を貸して欲しい! さっきの狼はアンタを見て戦わず去っていた、つまり、この迷宮区で上位に入る存在だろ? アンタがいれば無駄な戦闘を避けることができる、親友を捜すのに専念できるんだ、頼む!!」
そう言って頭を上げることなく地面につけたまま誠意を見せるスバル、それを見ていたレオンはただ黙って見つめていた。そして、何か思いついたかのように呟いた。
<なぁスバル、意地悪のような質問するが……一人で逃げようとは思わなかったのか? 親友のことを黙って俺を使って一人で迷宮区を脱出しようと考えなかったのか?>
親友を大事にするスバルからすればあまりにも残酷で身勝手な質問。その言葉に思わず歯を嚙み締める、「何でそんなこと言うんだ!」と反論したい気持ちがあったが、ここは耐えた。何となくだがレオンは’’スバルという男を信頼できるかどうか見極めるために試している’’そう思えたからだ。
スバルは土下座のままで深呼吸をしてゆっくりとと顔を上げレオンを見た。
「思いもしなかったし、考えたこともなかった…例え思いついたとしても決してそれはしないと心に決めている。」
<ほう………何故そう言い切れる?>
レオンの言葉に、勢いをつけて答えた。
「誓ったからだ! このトータスに飛ばされた日の夜、俺たち四人は親友の契りを交わし、共に助け合い、お互いを尊重し、信じ合うことを誓い合った! その誓いを絶やさぬ為にも、あの日見た光景を汚さないためにも俺は親友を助けに行く!!」
今でも思い出す、月下での誓い。他の三人はどういう風に受け止めたのか分からないが、少なくとも自分はあの日の誓いは遊びではなく、真剣に受け止めている。決して自分勝手な行動であの日の誓いを破るものではないと考えていた。
「それに、もし助けに行かなかったら…帰ってきた時、亡き親父、母さんに顔向け出来ない。教えを破ることになる………俺にとって親父の教えは大事な、大事な、両親の唯一の繋がりだからな…。」
そう言ってスバルはジッとレオンの顔を見続けた。その目は決意に満ちており、覚悟が宿っていた。その目を数十秒間見た後、レオンは「フッ…」と笑みを浮かべて、
<いいぜ、スバル。お前の話しに乗ってやる。>
「本当か!? ありがとう!」
そう言って頭を下げるスバル。「これで親友を捜しに行ける!」と思っていたが、
<ただし、二つ条件がある。>
「えっ………条件?」
その言葉に再び顔を上げるスバル。
<ひとつ、親友を見つけてここを出てもオレを連れて行くこと。>
「お…おう。それならいいぜ。」
あっさりした条件に拍子抜けるスバル。てっきり凄いことを要求してくるものだと思っていたが、何とかなりそうだ。周りの説得は苦労するだろうなと思いながら…。
「それと、もう一つは?」
<ああ…もう一つは魔物が出てきても俺は戦わない。戦うのは………スバル、お前だ。>
「えっ……? 俺が!?」
そう言ってレオンはスバルに指差して伝えるのだった。
いかがだったでしょうか?
スバルが自分の天職について知る大切な回でした。そして、レオンについては設定は考えていますが過去については大雑把な所もあり、今後、物語の中で矛盾が生じるかもしれませんがご了承ください。なるべく、そうならないように努力はします。
次回、二人が一人になります。
それではこの辺で、ではまた。