今回のお話しはクラスメイトのお話しです。4人が落ちてレムや優花達、カヅキ達はどうなったのか…そんなお話しになります。
今回も長くなりそうなので前編、後編に分けています。
それでは、どうぞ。
響き渡り消えてゆくヘビモスの断末魔の絶叫、騒音を立てながら崩れ落ちてゆく石橋、そして、それと共に奈落へと吸い込まれる、ハジメ、スバル、当麻、士郎。クラスメイトと騎士達はそれを黙って見ることしか出来なかった。辺りが静になった時、聞こえてきたのは二人の叫び声だった。
「いやあああああぁぁぁぁ!! 士郎、しろう、しろううぅぅぅーー!!?」
一人は園部優香。士郎の幼馴染であり家族同然の存在だった士郎を目の前で失い、悲痛の叫び声を上げながらその場に泣き崩れて親友の妙子、奈々に慰められていた。
「離して! 南雲くんの所に行かないと! 約束したのに! 私がぁ、私が守るって! だから、離してぇ!」
もう一人は白崎香織。どんな時でも変わらずハジメに優しく接してきた彼女は、ハジメとの約束を果たすためなのか今にもハジメ達が落ちた所に飛び出そうという勢いに雫と光輝が必死に羽交い締めにしていた。
これを機に一つにまとまっていたクラスメイトの心はバラバラとなり、心に大きな傷を与えた。
ある者は呆然としつつ石橋のあった所を眺め、ある者は恐怖でその場に座り込む者もいた。そして彼は、
「…おい、そこをどけ、イツキ! 邪魔だ!」
「兄さん、落ち着いて…。今はその行動をするべきではない。」
何を思ったのか歯をむき出し、真っ赤な怒りの形相をするカヅキは’’ある所’’に向かおうとしていた。その時、イツキに遮られ止められていたのだ。この様子を見ていた佐助、厚志は下手したらカヅキはイツキも斬りかねないと思い、事情が分からないままイツキに加勢する形で止めに入った。
誰もかれもが心を取り乱している最中、レムはというとただ黙って崖先に立ち尽くしていた。顔を俯かせて奈落の底を覗き込んでおり、あと二三歩出せば落ちるような所に立っていた。
「………………。」
レムは呆然とした表情で奈落の底を見つめていた。その頭の中ではスバル、ハジメ、当麻、士郎がヘビモスの動きを止め、逃げている所に援護で放った誰かの魔法がハジメに当たる所をスバルがかばい、それをきっかけに四人が落ちていく映像を繰り返していた。まるで現実逃避しているレムに分からせるように、何回も何回も頭の中で繰り返し、この出来事が夢じゃないということを、これが真実だということをレム自身に理解させるかのように。
「…あ、あっ、うそ…いや、いや…っ…」
そして、レムは理解してしまった。これが現実だということを、その瞬間一気に後悔の念がレムに襲い掛かった。「何故、彼らを行かせた」「何故、もっと声を張り上げて止めなかった」「他に出来ることはなかったのか?」など次々に出てくる後悔の言葉がレムの心を黒く染め、今見えている視界がぼやけてきた。それと同時に後悔の念はこんな言葉に変わっていった。
「彼らは助けが必要だ。」
「今ならまだ間に合う」
「先ほどの失敗を取り戻すのは今しかない」
悪魔の囁きかのように彼らの助けをそそのかす言葉をいつしか思い浮かべるようになった。まるで呪いのようにレムの心身を洗脳するかのように、その言葉が響き、冷静な判断が、それが正しい行動かどうかも分からないようになっていた。
「………たすけに…いかないと…」
感情がこもっていない言葉で呟き、奈落の底に向かって歩き出した。そして、あと一歩で奈落に落ちるという所である言葉が響いた。
’’待っていてくれないか?’’
「(……スバル君?)」
その言葉に動きを止めた。ぼやいていた視界が少しずつクリアになるような感じがした。「これは確か昨日、スバル君が言っていた言葉…」ふと、そんなことを思っていた時、スバルのある言葉が蘇ってきた
’’俺は……例えレムの前から消えても必ず会いに行く。どんな形、姿になろうとも絶対に会いに行く…だから待って欲しいんだ。もし、消えてしまって…生きているかどうか不安になったら、このペンダントを見て欲しい。’’
「あっ!!」
レムはペンダントのことを思い出し、首にかけていたペンダントを取り出した。ペンダントはひび割れどころか傷一つなく、暗闇の中、小さく輝いていた。
そして、再びスバルの言葉が蘇った。
’’よくアニメとかであるだろ? ’’大切な人からもらった物が壊れたら、その大切な人に何か不幸が訪れていた’’ってこと、でも、逆に言えばそれが壊れない限りその人に何も起きてないてことになる。つまり、’’俺が消えてもそのペンダントが壊れないかぎり、俺は生きている’’って証拠になる。’’
’’俺は自分の発言に責任を持つ…’’
’’それに俺たち親友だろ? 親友はお互い信じ合う事から始まる……だからレムも信じてくれ、親友の俺たちを!’’
スバルと昨日見た情景と約束、そして今日言われた言葉を一言ずつ思い出す度にレムの黒く染まっていた心が再び白く染め直されていき、全て思い出した時には視界がハッキリ見え、いつもの冷静な判断が出来るレムがいるのだった。
「(スバル君、ありがとうございます。……スバル君のおかげで惑わされずに再び前に進む事が出来そうです。私はスバル君……いえ、皆さんを信じています。だから………皆さんも、どうか無事で………)」
レムは貰ったペンダントを両手で強く握りしめた。「どうか、この言葉が四人に届きますように…」と願いを込めて、祈りを捧げるのだった。
祈りが終わるとレムは動き出した。これ以上犠牲を出さないよう、四人の努力を無駄にしないためにも、まずは周りを見て今起こっている現状を把握しようとした。
クラスメイトの誰もかれもが四人が落ちたことにショックを受け戦意喪失しており、特に優花と香織の嘆き声で動揺が広がっていた。
「(まずは、二人を落ち着かせないと…)」
そう思い、まずは今にも飛び降りそうなの勢いでいる香織に向かおうとした時、
「レム、僕が行くよ。君はあの子を頼めるかな?」
いつの間にか横に立って話しかけるイツキ。レムはいきなりのことで驚く暇もなく、イツキが向いている方を見ると
「しろ…うぅ……しろうぅぅぅぅううー!!」
大きく泣き叫ぶ優花の姿があった。
優花の近くでは奈々と妙子が慰めるように背中をさっすたりするも落ち着く様子がなく、二人もどうしたら良いのか分からないでいた。
その姿に少し心を痛め悲痛な表情を浮かべていたレムだが、決意を固めたようにコクッと頷くとすぐに表情を柔らかくして優花の元に向かった。
「任せたよ、レム。」
優花の元に向かうレムを見届けるとイツキは香織の方に歩き出した。
「妙子さん、奈々さん、私に任せてもらってもいいですか?」
必死に優花を落ち着かせようとしている妙子、奈々。すると見知った声が聞こえてきたのでそちらに振り向くとレムが立っていた。
「レム? ……うん、分かった。」
「レムっち、お願い!」
その姿を見た妙子、奈々はレムなら任せられると思ったのか、優花から少し離れて様子を見守った。レムはしゃがみ込み優花を抱き寄せて背中を撫でつつ耳元で囁いた。
「優花さん、落ち着いてください。士郎さんが死んだと決めつけるのは、まだ早いですよ。」
「でも、レム! しろうは…士郎は…あんな底の見えない所に落ちたんだよ!」
優しく語りかけるレムに優花は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも答えた。
「ええ、確かに落ちました。誰もが見たらそう思うでしょう…ですが、誰も
「どうして!! どうして、そんなことが言えるのよ!!」
自信を持って平然と言うレムに苛立ちを覚え、泣きじゃくりながら聞き返した。怒鳴り声に近い優花の声に動じることなくレムは答えた。
「それはですね……スバル君とある約束をしたからです。」
そう言ってレムは昨日の出来事の一部を教え、スバルから貰ったペンダントを優花に見せるのだった。
「きっと士郎さんのことです。ハジメさん、当麻さん、そして、スバル君と行動しているはず………このペンダントが壊れていない以上、スバル君だけでなく一緒に行動している当麻さん、ハジメさん、そして、士郎さんの身に何も起こってないという証明になる………そう、私は思うのです。」
優しく小さな声で自信に満ちた話しをするレム、それに対して優花は、
「レム…むちゃくちゃだよ………そんな…そんな、おとぎ話しみたいな…奇跡みたいな話し……信じ…られない…よ…。」
そう言って険しい表情をするも、段々と弱々しくなっていき最後は意識を無くしてレムにもたれかかった。それを見た奈々、妙子は「優花っち!」「優花!」と狼狽する中、レムは優花に決意するように耳元で言った。
「……それでも信じたいのです。そのおとぎ話しみたいな奇跡を…。」
レムは優花のバイタルサインを確認し、問題ないと分かると優花を背中で背負った。
「レムっち! 優花っちは大丈夫なの!?」
「えぇ、大丈夫です。気を失っているだけです。」
「そう…よかった。」
レムの言葉に奈々と妙子は安堵するも、苦痛の顔をにじませていた。何だって親友の大切な人が落ちていったのだ。さらに言うと優花だけでなく目の前のレムだって大切な人が落ちていったというのに全く悲痛な顔をしておらず、しかも安心させるかのように穏やかにどこか自信に満ちた表情を浮かべているのだ。これには二人もどういう顔をしたら良いのか分からないでいた。そんなことを知ってか知らずかレムは二人に言った。
「奈々さん、妙子さん。お二人はまだ動けますか? まずは一刻も早くここを出ましょう。危険が及ぶ前に…。」
「レムっち………うん、そうだね。」
「そうね、ここを出ましょう。」
レムの言葉に二人は頷き、撤退の準備を始めた。
一方、イツキの方はというと。
「……失礼。」
「あっ……………。」
イツキは暴れる香織の肩に触れた瞬間、バチィという音と共に気を失い、雫にもたれかかった。
これを見た光輝は激怒した。
「お前ぇ!! 香織に何をしたんだ!!」
そう言ってイツキの胸ぐらを掴んで怒りを露わにした。この行動にイツキは涼しい顔で受け流しながら、内心では状況を理解していない光輝に呆れていた。
「やめなさい光輝!」
ここで雫は光輝に一喝し、光輝はイツキの胸ぐら掴みを緩めた。そして、雫は光輝に諭すように言った。
「私達が止められないから月山君が止めてくれたのよ。わかるでしょ? 今は時間がないの。香織の叫びが皆の心にもダメージを与えてしまう前に、何より香織が壊れる前に止める必要があったのよ……。」
雫の言葉に光輝はゆっくりイツキの胸ぐらの手を話した。続けてイツキも諭すように言った。
「君はクラスのリーダーなんだから、もっとしっかりしなきゃダメだろ? 君がしっかりしなきゃ…誰がクラスメイトを引っ張るんだい?」
その言葉にどこか苛立ちを覚えたのか、光輝は「それぐらい分かっている。」と吐き捨てるように言うと、他のクラスメイトに撤退の呼びかけに向かった。雫は小さなため息を吐いてイツキに謝罪した。
「ごめんなさい…光輝には後で言っておくは。」
「アハハ…僕は気にしてないから、そんなに気を落とさなくていいよ。」
「そう言ってもらうと助かるわ。………それとありがとう、香織を止めてくれて。」
自分で止めることが出来なかったことを気にしているのか、表情を暗くする雫。イツキは雫の暗い表情を見ないように背を向けて話した。
「礼には及ばないよ。これ以上、彼らの意思を無駄にさせる訳にはいかないからね……それと、彼女の行動はもっともだ。大切な人が目の前で消えて心穏やかにいられる人なんていないと思う…。」
「………そうね。」
イツキの言葉に雫は静かに共感した。それと同時に二人は、もしこれが大切な親友、香織だったら、大切な家族の兄だったら、ここで気絶している香織と同じような行動していたかかもしれないと思うのだった。
「さて…僕は行くよ。彼女のこと任せたよ。」
「ええ、任されたわ。」
背を向けたままイツキはそう言うと、雫は力強く頷いて答えた。雫の声に不安な様子はないと判断したイツキはゆっくりと二人の前から離れていくのだった。
雫はその背中を見えなくなるまでずっと見つめていた。’’頼りになる人’’だと思いながら…………。
新コーナー ありふれ噂話
佐助「どうも、学校では新聞部に勤めている猿山佐助だぜ。このコーナーは情報通の俺が独自の調査で集めてきたうわさ話(小説設定など)を紹介するコーナーだ。では早速、発表に入るぜ、発表者は当然、当麻君だ。」
当麻「何で…僕が発表するの? というか当然ってどういう意味!?」
佐助「まぁまぁ、そう言わずに…ささっ、早いとこ発表してくれ。発表内容は事前に伝えた通りだから。」
当麻「……わかったよ。 ありふれこs……オホン…ありふれ噂話。」
当麻「実は僕を含めて、ハジメ君、士郎君、それと優花さん、妙子さん、奈々さんは幼馴染なんですよ。」
佐助「改めて思ったけど、お前ら優花のグループと仲が良かったんだな。」
当麻「ええ、幼稚園の頃からずっと一緒でして。士郎君が優花さんと仲が良かったので、その親友の妙子さんと奈々さんとも遊ぶようになって自然に仲良くなりましたね。ちなみにスバル君とは小学5年生の時にハジメ君がきっかけで仲良くなりました。優花さん達ともすぐに打ち解け合いましたよ」
佐助「なるほどね…(そうなると、今回の4人の落下はレムや優花達にとって余程ショックな出来事だろな。)」
佐助「まぁ、こんな感じで不定期に色々とありふれた話しを紹介していくぜ。」
当麻「ところで佐助君。どうして僕が発表者なの?」
佐助「…………………それでは今日はこの辺で。では、またな~」
当麻「ちょっと、質問を無視しないでください。ちゃんと、答えてください!」
好評だったら続けて見ます。感想などもお待ちしております。