前回のお話しの続きとなります。それと佐助と厚志の二人の天職についても触れたいと思います。
原作にはないオリジナルの天職です。
それでは、どうぞ。
あれからクラスメイト達は騎士達と共に上層部へ行くための道をノロノロと歩いていた。イツキは、疲れて歩けなくなった生徒がその場に座り込むのを見つけたら、その生徒に近づいては歩くように声をかけ兄のカヅキを探していた。「どこに行ったのだろう…」と少し心配しながら辺りを見渡していると
「旦那ァ!」
「アニキ!」
前から佐助と厚志が走ってやってきた。
「佐助くん、厚志くん…兄さんは? 君たちに任せたつもりだけど。」
イツキがそう尋ねると、呼吸を整えている厚志よりも余裕な表情が見られる佐助が答えた
「それが大将の奴、『俺はいいから、他の奴を見てこい』って言われてさ。」
「……大アニキは、進路確保のため魔物を斬りながら……どんどん一人で先に行ってしまわれて…」
途中で厚志が呼吸を落ち着かせながらもイツキに現状を報告した。
「はぁ~兄さん。また、無茶を………まぁ、この辺の魔物に引けを取らないから大丈夫だと思うけど…」
兄の行動に大きなため息を吐くイツキ。するとここで厚志が、
「それにしても大アニキ、物凄く怒っていた……俺、あんな姿初めて見たよ…」
「たしかに、俺も初めてだな。身体の奥底から寒気がした、斬られるかと思ったぜハハハハハ………………で? 何かあったの大将は?」
二人はカヅキを止めに入った時、カヅキの怒りに恐怖を感じたのだ。カヅキを止めるのはこれが初めてではなく、元の世界で日常的によく怒っては止めに入っており慣れているつもりだったが今回は違っていた。近づいた瞬間、二人に悪寒が走り身体が震えたのだ。まるで本能が「近づくな、危険だ」とサインを出すかのように、その震えはカヅキが落ち着くまで止まらなかった。
「兄さんはたぶん………自分の無力さを痛感してイライラしているのだと思う。ヘビモスも結局どうすることもできずに彼ら4人に頼るしかなかったからさ……」
どこか寂しそうに言うイツキ。その姿を見た厚志と佐助は
「なるほど、そうだったですか。」
「……大将らしいぜ。こんな結末、認めてないんだろうな…」
そう言ってカヅキの怒りの理由に納得しつつ、二人は四人が落ちて行ったことを再び思い出し何とも言えない表情を浮かべるのだった。
「(最もこれは建前だけどね。理由はもっと別にあるけど……今は伏せておくのが一番かな?)」
イツキは表情を崩さずにそんなことを思っていた。すると後方から声が聞こえてきた。
「レム大丈夫? 少し休憩でもする?」
「いえ、大丈夫ですよ妙子さん。皆さんと距離が離れてしまいますからね…このまま行きましょう!」
「でも、レムっち…凄く辛そうだよ。」
三人が振り向くと優花を背負っているレムとそれを見守る妙子と奈々の姿があった。
「おや、君たちこんな所にいたのかい? 他の人達はもう先に進んだよ」
「仕方ないでしょ、優香背負っているレムに合わせているのだから。」
イツキの言葉に妙子はどこか不満げに答え、「それもそうだね。」と苦笑いをした後に三人に尋ねた。
「ちなみに君たちの後ろにまだ誰か残っていたりするのかな?」
「たぶん奈々達が最後だと思うけど…」
イツキの言葉に反応した奈々は来た道を振り返りながら答えた。
「ふむ…一応確認し越したことはないかな。佐助くん、頼めるかな?」
「ほいほい、任されたよ旦那。」
イツキの意図を読めた佐助は元気よく答えると詠唱を読み始め、最後に「影分身」と唱えた。すると佐助の身体から黒い煙が一瞬にして現れ、佐助と同じ体型の人型となった。そして、その人型は今まで歩いて来た道のりに向かって走り出した。
妙子と奈々は驚いて佐助の影分身を目で追っていた。そして、レムが二人の疑問に思ったことを口にした。
「佐助さん、あれは一体…?」
「見たまんまの分身だよ。魔力で作り上げ、分身が見たもの聞いたものを俺と共有することが出来る………俺の天職、’’影術士’’は影に関わる術を使うことが出来る職業さ。もっとも今のところ影分身しか使えないし、さっきの一体しか出せないけどな。」
佐助が持つ天職はレア中のレアであり、一応天職がまとめられた書籍には名前が載ってあるのだが、具体的な記述はないため王国や騎士達が注目している職業だったりする。佐助の職業にレム達三人が関心を寄せているとイツキが一つの提案をした。
「レム、優香さんを別の方法で運ぼう。このままじゃ君の体力はもたないし、それよりも皆と距離を空けては何かあった時、危険だと思うんだ。」
「確かにそうですが……何か方法があるのですか?」
「僕に良い考えがあるんだ。」
不安げな様子のレムを安心させるかのように笑みを浮かべたイツキは、厚志に振り向いて言った。
「厚志くん、君が持っていた二つの円盾を
「ええアニキ、できますよ。」
そう答える厚志に三人は?を浮かべた。’’盾を浮かす’’どういうことだろうと思っていると厚志は両手に持っていた直径100㎝の盾を手に放すと宙に浮いているのだった。
「え? ええっ!?」
「うそ、何で?」
妙子、奈々がまたもや驚くなか、厚志は照れながら答えた。
「実は天職の恩恵でして…俺の天職、’’盾の守護者’’は盾を動かして自在に操ることができるんです。今の所、二つしか浮かすことがはできないですけどね……」
厚志の天職もまたレア中のレアであり一説によるとこの天職を持ったパーティーは全滅しないと言われている。余談だがこの天職は盾にかきらず’’盾として身を防げる物’’と認識したら何でも浮かすことが出来たりするのだ。
レムは浮いている盾を見て「優花さんみたい…」とナイフを浮かべて戦う投擲師の姿を思い浮かべて、今背負っている優花に目を向けていた。
「レム、とりあえず背負っている彼女をその盾の上に座らせてくれるかい?」
そう言ってイツキは持ち手が上を向いている円盾を指差した。レムは言われた通り背負っている優花を盾に座るように下した。
「よし、じゃあ厚志君、もう一つ盾で優花さんの背中を支えてくれるかい?」
「了解。」
厚志はもう一つの盾で優花の背中にくっつけて後ろに倒れないように支えた。
「あとは、この状態を維持して出口まで目指そう。厚志君、やれるかな?」
「任せてください!」
「厚志君、優花さんをお願いします。」
「おうっ。」
イツキの言葉に自信満々に答え、レムのお願いには笑顔で答える厚志君。
ここで分身操作に集中していた佐助が口を開いた。
「イツキの旦那、置いてけぼりの奴はいませんでしたぜ。それと4人が落ちた所を覗いてみたんですけど…登ってくる様子は……見られなかった。」
「……そうか。」
「………………。」
楽観的に喋る様子から一変、少し黙り込んでからゆっくりと4人があの場所にいなかったことを告げた。イツキはそれを聞いて静に頷き、レムは暗い表情を作ってただ黙って俯いた。重たい空気が包み込む中、それを壊すようにいつもの明るい口調で佐助が言った。
「レムちゃん、気休めかもしれないけどあの4人なら大丈夫じゃないかな? 案外ケロリとして生きてるかもよ…」
楽観的な佐助の言葉に残りの者達は目を開くように驚くが、佐助に触発されたのか瞬時に厚志が勇気を持って口を開いた。
「俺も信じています! あの4人が生きていること! それに確認するまでまだ分からないです、’’シュレーディンガーの猫’’ですよ!」
握りこぶしを作り、「ぞい」のポーズで力強く言う厚志。佐助はこれを見て内心、「シュレーディンガーの猫の意味分かって言っているのか?」とツッコミを入れていた。
「猿山さん…牛山さん。」
二人の言葉に顔を上げるレム。続けて妙子、奈々も、
「レム、嘘偽りなく話すけど…私もあの4人が死んだって思わないの。案外ひょっこり帰ってきそうな感じなのよね…。」
「レムっち、私もあの4人が生きていること信じているから! というか生きてもらわないと困る、特に士郎君! 優花っちと士郎君がイチャイチャしている所を茶化せなくなるしね!」
落ち着いた様子で想いを語る妙子、奈々はレムに前のめりで迫る勢いで想いを告げた。
「妙子さん…奈々さん。」
4人の言葉にレムの表情に明るさが戻りつつあった。これを見て何も言わないのはおかしいと思い、イツキも口を開いた。
「レム、あの4人を信じよう。僕も、ここにいない兄さんも、まだ認めてないからね。」
真剣な眼差しで言うイツキにレムは少しの間、彼を見つめ、そして、周りを見渡した後にレムはゆっくり口を開いた。
「そうですね……信じないと…だめですよね。私が誰よりも信じないと………………」
独り言のように呟いた後、レムはニッコリと笑顔を向けた。4人が生きていることを未だ信じてくれる仲間に感謝するために。
「皆さん、ありがとうございます。」
妙子と奈々はいつものレムが見れて安心し、厚志もこの様子を見て安堵した。イツキと佐助も笑顔でいたが二人は見逃さなかった。
レムが背中に隠すように右手をおいており、その手が微かに震えていたことを。
その後、6人と1つの浮遊体は遅れを取り戻すように進み、先に進んでいたクラスメイト達と合流を果たした後、迷宮区を脱出することが出来た。ハジメ、スバル、当麻、士郎の4人の犠牲を除いてクラスメイト達とメルド団長率いる騎士達は無事生還を果たしたのだった。
ありふれてない天職紹介
影術士
猿山佐助が持っている天職。滅多にお目にかからないレア中のレアの天職であり、天職がまとめられた書籍にも名前だけは載っているが具体的な記述は記されてなかったりする。技能面は’’暗殺者’’の職と被っている所があったりするのだが、最大の特徴は影術士しか使えない影にまつわる技能が使えることであり、今の所、見たもの聞いたものを共有する魔力で出来た影分身を一体作ることができる。
盾の守護者
牛山厚志が持っている天職。盾、結界及び防御系にまつわる技能が使え、佐助と同様にレア中のレアの天職。一説によると「この天職を持ったパーティーは全滅しない」と言われている。最大の特徴は盾を宙に浮かせて自在に操ることができ、その気になれば盾以外の物(鍋のふた、扉やドアなど…)も盾として身を防げる物と認識したら浮かすことが出来る。(今のところ二つしか浮かすことができない)
いかがだったでしょうか?
オリキャラの天職がわかる回でした。二人の天職には元ネタというよりイメージしたものがあり、’’影術士’’は戦国BASARAの猿飛佐助が使う忍術、’’盾の守護者’’は盾の勇者をイメージしました。どこかで活躍はさせたいですね。イツキ、カヅキも剣士に変わりないですがちょっと変った天職を考えております。
次回もクラスメイトsaideを予定、迷宮を脱出したその日の夜、それぞれの出来事を送りたいと思います。
感想などお待ちしております。それでは、また…。