今年最後の投稿になります。
今回のお話しは月山兄弟がどのように少年時代を過ごしてきたのか、ここまで道のりをダイジェストで送りたいと思います。
それでは、どうぞ。
月山兄弟は祖父の月山千十郎との三人で暮らしていた。二人にものごころがついた時には両親の姿はなく、育ての親は千十郎ただ一人だった。千十郎に聞いても「もう、いない。」「死んだ」しか答えずそれ以上のことは話さなかった。
二人が幼稚園に入ると武術に必要な礼儀作法を学び、体力向上のため身体を傷めない程度に運動を行った。本格的に剣術に入ったのは小学生の時である。学校が終わると真っ先に家に帰り、課題を終わらせると夕食までひたすら剣の稽古を行った。技や型を何回もやり、出来なかったらできるまで、身体が覚えるまで何回もやらされた。技や型が一通りできるようになると千十郎との仕合をするようになった。千十郎との仕合は容赦なしの手加減なし、千十郎に傷をつけるどころか二人が一方的にボコボコにされるのがほとんどだった。これが学校のない日を含めてほぼ毎日続き、イツキはよく泣いて剣に対して怯えることが多くなった。
カヅキはこの頃から反抗的な態度を取るようになって剣の稽古をさぼろうとすることが多くなり、家に帰らず別の所に向かうも決まって千十郎に先回りされ、無理やり連れて帰られるのがいつものオチだった。
このように二人は幼少の頃から子供らしいことをせずに剣術に打ち込んで育ってきたので何一つ良い思い出は無かった。剣術を学ぶ理由を聞いても千十郎は「将来のため」「もしものため」「自分を守るため」しか答えずそれ以上のことを話さなかった。故に月山流剣術は二人にとって自分を縛るものでしか考えがなかった。
この稽古は高校入学まで続き高校生になるまでに二人はは大きな悲しみや挫折を経験することになるが、ここでは割愛させて頂き高校生になる頃には月山流剣術に対してある程度考えを柔軟化させ、好き嫌いを置いて二人は「自分にとって必要なこと」と見て稽古に打ち込み、さらなる高みへと目指した。また、千十郎には相変わらず勝てないが互角に張り合える技術と強さを持てるようになった。
そして、月山千十郎との別れは突然やってきた。
それは高校の入学式を終えたその日の夜のことだった。千十郎は「話しがある。」と二人を畳のある和室に呼んだ。
「俺はもう、長くはない…。」
「おう、クソじじい。とうとうボケたか?」
「黙ってきけェ!!」
「「!!?」」
カヅキの言葉に怒鳴り声を上げる千十郎、この行動にカヅキとイツキは驚いた。怒ることはあっても今まで怒鳴ったことがないからだ。
「…………まず初めに二人に渡したい物がある。」
一息入れた後、千十郎は後ろにあった戸棚から二つのきれいな布に包まれた物を一つずつ二人の前に置いた。千十郎の「解いてみな」という言葉で布を取り除くとそこには’’竹刀’’があった。
「これはお前達の親父がお前達のために作ったものだ。これから先、肌身離さず持っていろ。今は竹刀だが…もし別世界に飛ばされた時、この竹刀に力を込めれば真の姿を「おい、待て待てクソじじい! ’’もし’’ってなんだよ! ’’別世界’’ってどういう意味だよ!!」」
「兄さん、落ち着いて。」
「……………今から話す。」
千十郎の話しを遮って言うカヅキにイツキは落ち着くように兄に言い聞かせた。千十郎は少し黙り込んだ後、ゆっくりと語りだした。
千十郎曰く、この世界とは別世界があり、ここよりも争いが絶えず命が軽い世界があること。もしかしたら、二人は何らかの形でその世界に飛ばされるかもしれないこと。今まで剣術を教えていたのはその世界に飛ばされても、自分の身を守るためだということを話した。
さらに千十郎は続けてその世界に飛ばされた時のことを三つ話した。
・まずは帝都に向かう。そこに必ず真実と生きるためのすべがあること
・孤独になるな。己の目で見て、信頼できる仲間や友を見つけること
・聖王教会及び神に関わる者全て信用するな。善悪は自分の感性で判断すること。
この三つを告げた。
これを聞いてカヅキは真っ先に立ち上がり怒りを露にした。
「おい、クソじじい! 結局俺たち兄弟はクソじじいの妄言のために剣術を覚えさせられたのか? 別世界がある? その世界に行ったら帝国に向かえだぁ? ふざけるなァ!! そんなアニメみたいな、二次元みたいな話し信じられるかぁ!! そんなもののために俺たちは…………俺たちは……………ッ。」
そう言って最後の方で言葉を震わせるカヅキ。今まで剣術を覚えさせられたのが’’あるかもしれない’’、’’もしかしたら’’というだけの明確な事実が無いなかで周りと違う人生を歩まされたことに腹を立てたのだ。本当はバッサリと自分の人生を切り捨てたかった。「全て無駄」と叫びたかった…
でも出来なかった。
ここまでの人生、普通の子供が送る楽しい人生ではなかった、辛いことばかりだったがそれでもかけがえのない
「………バカバカしい」
ある程度の沈黙の後、吐き捨てるように言うと背を向けて歩き出した。「兄さん!」というイツキの呼び止め聞かずに部屋から出ようとした時。
「カヅキ………すまなかった。」
千十郎の謝罪の声が聞こえたカヅキは軽く後ろを振り向くと頭を地面につけて土下座している千十郎の姿があった。これは、
その後、千十郎とイツキが何を話していたか知らないがイツキが話さない以上、自分には関係ない話だと思われる。
そして、次の日の朝、縁側で座って息を引き取っている千十郎の姿をイツキが発見した。庭にあるたった1本の桜を夜桜している最中に息を引き取ったと思われる。(現に千十郎の近くにいつも使うとっくりとおちょこが落ちていた)二人は今でも千十郎の最後を覚えている。
二人に剣の全てを教え切ってどこか満足気のような、又は、肩の荷が下りてどこか安心しきったような穏やかな表情をしていた。
「皮肉なもんだよな……………結局全てじじいの言う通りになっちまった。異世界に飛ばされ、教わった剣術に大いに助けられている……全く大笑いだ…。」
そう言って自虐気味に笑うカヅキ、どこか後悔しているような懺悔しているように見えた。イツキも昔のことを振り返っているのかどこか儚げな表情をしていた。
「…………………………。」
そして、ここまで話しを黙って聞いていた雫。予想以上の二人の剣の道のりにどう言葉を返したら良いのか分からなかった。ただ、相手は滅多に人に話すことがない本音を話してくれた。なら誠意として自分も本音を話すべきと思い「私もね…」と前置きしてからゆっくり心の奥底の本音を語りだした。
「実は言うと……八重樫流が好きかどうか聞かれるとね……凄く複雑な気持ちになるのよ。たしかに、嬉しいこともあった、でもね…………その反面嫌なこともいっぱい経験したわ。私はそんなつもりじゃなかったのに……周りの女子が嫉妬してね……心無いことも言われた。今でもはっきりと覚えているわ…」
そう言って昔言われたある言葉が頭を過り思わず顔を俯かせて黙り込んだ。前髪が垂れて二人から見れば雫の表情は見えないでいた。そして、再び「だからね……。」と前置きして
「あなた達の剣に対する複雑な気持ち……分からなくもないわ…。」
そう言って顔を上げどこか悲しげな微笑みを浮かべる雫、そこにはいつも凛とした姿は無く、どこか弱々しい一人の女性、もしくは’’孤高’’を漂わせる姿があった。その姿を見た二人は、
「…………そうか。」
「……………………。」
カヅキは雫の心の奥底の本音を聞いて、どこか神妙な面を持って、ただ一言そう告げた。イツキは冷静な顔つきで聞いていたが、微かに手に持っている日本刀が震えていることに雫は気づいていなかった。
「…………………随分と長居してしまったわね、そろそろ戻るわ。香織のことも心配になってきたし…色々ありがとう、あなた達と話しが出来て少し…楽になった気がするわ。」
ふと月を見上げると西に傾いており大分ここにいたことに気づくとカヅキとイツキに礼を言って立ち去ることにした。未だ眠っている親友の香織が心配になり、急ぎ足でここを立ち去ろうとした時、
「八重樫 雫!」
「えっ………なに?」
いきなりカヅキに呼び止められ思わず足を止めて振り向くとどこか真剣な表情をしたカヅキが口を開いた。
「お前は何でもかんでも一人で抱え込もうとする、悪い癖だ……まぁ、お前の周りに頼れる人がいないから無理もないか…坂上は脳筋、谷口と中村は頼られる側、白崎は頼れるというより心の支え…いや、論外な天之河と同様に厄介ごとを持ち込むトラブルメーカー…と言うべきか?」
「…………………随分と私の親友を汚すのね。それで何が言いたいわけ? わざわざそれを言うために私を止めたのかしら?」
親友に対する暴言に静かな怒りを見せる雫、それを気にしてないのかカヅキは話しを続けた。
「そうではない……’’もっと視野を広げて頼れる人を見つけろ’’と言っているのだ。これからしんどくなる……南雲達が落ちて、死を恐れたクラス連中は戦い放棄するだろう。そして連中は元から頼れるお前をより一層頼りにするだはずだ…お前も世話焼きだ、それに答えようとするはず……………いいか、一人で抱え込むな。あれこれ自分で考えても良い答えなんか出ない、お互い協力していこう。困った時は頼れ…」
「月山君…」
「兄さん…」
カヅキの言葉に雫とイツキが思わず心打たれて頼もしいと思った瞬間。
「………そう、
「へっ?」
「えっ、僕?」
カヅキの言葉に思わずズッコケそうになる二人。
「そこは、「この俺を頼れ!」と言うべき所じゃないのかしら?」
「はぁ~? 何でだよ、めんどくさいし。それに相談ごとならイツキが適任だって、すぐ解決するぞ。手先が器用だし、何でもこなせる。一家に一台…いや、一家に一人は欲しい存在だ。」
ドヤ顔で自分の弟を自慢げに紹介するカヅキ。
「……さっきの頼もしいと思った瞬間、返してちょうだい。」
「やれやれ……」
カヅキの言葉に雫とイツキは呆れて溜息をつくしかなかった。
「というわけで八重樫。さっそく頼れ、イツキを。今から戻るんだろ? イツキに送ってもらいな。」
「えっ……い、いいわよそんなの。そっからそこだし、一人で帰れ「バカヤロォ!!」 ひゃい!?」
カヅキの提案を断ろうとした矢先、いきなり怒鳴られて変な声を出す雫。イツキが「可愛い声だな…。」と思っているとカヅキは真剣な表情で雫に告げた。
「いいか、俺たちはどっかの
その言葉に共感出来る所があり、また一理あると思い雫は静かに頷いた
「……そうね、貴方の言うとおりね、気をつけるわ。」
「分かればよろしい……さて、イツキ。八重樫を部屋まで送ってやりな。」
「わかった、兄さんはこれからどうするの?」
「俺か? ……俺はもう少しここにいる。」
「そう…あまり遅くならないでね。じゃあ行こうか、八重樫さん。」
「ええ、お願いするわ。それじゃあ、月山君……おやすみなさい。」
「おう、お休み。」
そう言って雫はカヅキに挨拶をした後、イツキと横に並んで宿の方に向かって歩き出した。数十歩歩いた所で雫がチラッと後ろを振り向くとカヅキがこちらを見ていた。
そこにはいつもの荒々しい姿は無く、どこか二人の仲を見守るように優しい笑みを浮かべていた。
すぐに正面を向いて、普段見ることがないカヅキの表情に戸惑いを感じつつ、何となくだが、あれが本来の’’月山一希’’の姿じゃないかなと思い込む雫だった。
ありふれ噂話
イツキ「やあ、月山カヅキの弟、月山イツキだよ。」
当麻「どうも、当麻です……ってどうしてイツキ君がここに?」
イツキ「今日は佐助君の代理で来ているんだ、何でも前回の時に首を痛めたみたいで。」
当麻「そういえばそんなことがあったね……」
イツキ「…というわけで今回は僕が佐助君の代わりを務めるよ。ついでにネタ提供も読み上げも僕がするからよろしくね。」
当麻「うん、わかった。(イツキ君、何だか楽しそう…)」
イツキ「それじゃあさっそく、ありふれ噂話……」
イツキ「実は月山家の家事全般は僕がしているんだよ。」
イツキ「掃除、洗濯、炊事、あと家事に関することは諸々僕がやっているね。」
当麻「へぇーだからあの時お兄さんは「一家に一人!」って言っていたんだね。家事をするきっかけは?」
イツキ「実はお爺さんの料理がきっかけなんだ。小さい頃は全部、お爺さんが家事をしていたんだけど、ご飯がいつも丼ものだったんだよ。作るの簡単だからかな? とにかく料理番組の料理が羨ましく、食べてみたいと思ったから炊事をするようになって、そこから剣の稽古の息抜きも兼ねて掃除とかするようになったかな。」
当麻「なるほど…(まるで士郎君みたい、オカンならぬオトン二号だね…)ちなみにお兄さんは家事はするの?」
イツキ「やる気はあるんだけど…、掃除をすると何故か余計に散らかるし「ゔっ」料理はしょっぱくて食べれたもんじゃないし「くっ」洗濯物は渇いてないのに取り込んだりするし「ぬっ」まぁ、全体的に僕がするよりも遅いからやらせてないんだけどねw「ぐはぁ!」」
当麻「そうなんだ…(何だろう、変な声が聞こえてきたような。)」
イツキ「まぁ、兄さんも僕の監修の下で数をこなせればきっと上手になると思うよ。一緒に頑張ろう!」
当麻「…ということで兄のフォローも欠かせない、頼もしい弟の月山イツキ君でした。それじゃあお時間もやってきましたので、この辺で…」
イツキ「またね。」
いかがだったでしょうか?
ダイジェストで軽く月山兄弟の過去を書きましたが、これはほんの一部です。二人の剣に対する大きなきっかけとなる過去話をまたどこかで書きたいと考えています。
さて、読者の皆さん。先に書いた通りこれが今年最後の投稿になります。こんな自己満足で長ったらしい小説を読んで、コメントやしおりを挟んでくれる読者の方には只々感謝しかありません。これからも地道に進めていきますので今後ともよろしくお願いいたします。
それでは、早いですが読者の方々は良いお年をお迎えください。