「おはよう、ハジメ。」
「ん? ああ…スバル。おはよ『よぉキモオタ! また徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?』」
「うわっキモ~エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん!」
スバルの挨拶にハジメは睡魔と戦いながらスバルの挨拶を返そうとするも、そこに水を差し、罵る者たちがいた。檜山とその取り巻きの三人、斉藤、近藤、中野だった。
檜山の言う通り、ハジメはオタクだがキモオタと言われるほど身だしなみや言動が見苦しい訳でもない。単純に漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけだ。それなのに、この四人は毎日飽きもせず付きまとうようにちょっかいをかけているのだった。
「おい、檜山。俺の大事な親友をキモオタ呼ばわりしてるんじゃあねぇ。」
「あぁ? キモオタはキモオタだろ、何言ってんだ?」
「んだっと、ハジメのどこがキモオタって言うんだよ!」
檜山の言葉に反論するスバル、入江の事でまだ怒りの熱が残っていたのか、ハジメをキモオタ呼ばわりされて再び再燃焼し始めた。スバルは檜山に迫ろうとするも、士郎、当麻になだめられて、その怒りの矛を収めた。それを見たハジメはいつものことなので気にせず自分の席についた。
怒りを収めたスバルは、改めてハジメ話しかけようとした時に一人の女子生徒がニコニコ微笑みながらハジメに話しかけていた。
「南雲君、おはよう! 今日もギリギリだね、もっと早く来ようよ。」
彼女の名前は白崎香織。学校で三大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇るとてつもない美少女であり、レムに次ぐ、ハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない女子生徒だったりする。
「あ、ああ。おはよう、白崎さん。」
クラスの周りから鋭い眼光に晒されながら、頬を引きつらせて挨拶を返すハジメ。ハジメの挨拶を聞いた瞬間、香織は更に嬉しそうな表情をして、ハジメは更に突き刺さる視線に冷や汗を流した。
ハジメは問題を起こすことなく学校の成績は平均を取っているも、徹夜のせいで居眠りが多く、不真面目な生徒と周りから思われている。容姿もこれといって平凡、イケメンでもないのに学校の三大女神、白崎香織はよくハジメに構うのだ。それが周りのクラスにとって我慢ならない事であり、ハジメの親友を除いた男子生徒は「何故、あいつだけ!」と妬み、女子生徒もハジメの授業態度を改善せず、なお香織に面倒をかけていることに不快さを感じているのだった。
「(ハジメも、もう少し変わったらいいんだけどな…。)」
そう思うスバルも、ハジメの親友としてハジメがどんな風にクラスの連中から見られているのか知っている。当然親友なら、ここは一つ、生活態度を改めるなどの助言をするのが当たり前なのかもしれない。
しかし、ハジメは’’趣味を人生の中心に置く’’というスタンスを持っており、それを変えるつもりは毛頭ない。なにせハジメはの父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家であり、将来に備えて父親の会社や母親の作業現場でバイトをしているくらいで、その技量は即戦力扱い趣味中心の将来設計はバッチリ、毎日の徹夜もそのバイトに関係するものだったりする。
当然、スバルとその周辺の友達は知っており(というのも、スバルが勝手に話した。)さすがに将来に関わる事を他人がとやかく言うのは筋違いだと思い、ハジメが自分の意志で変わるのを待つしか方法はなかった。
「(流石にハジメの母親の作業現場にレムと遊びに行った時、ハジメの技術力には驚いたな。レムもレムで大好き作者に会えて嬉しそうだったし。)」
ちなみにレムはハジメの母親が書く漫画のファンであり、大好きな作者に出会えてあまりの嬉しさに泣き出してしまうほどだった。
そんなことを思い出していると新たに三人の生徒がハジメと香織に近づいてきた。
「南雲君、おはよう。毎日大変ね。」
最初にハジメに挨拶をしたのは、このクラスの女子生徒の一人、八重樫雫であり、香織の親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークで、身長百七十二センチメートル、高い身長と引き締まった身体で全体的に凛としており、その姿は女性侍を沸騰させるだろう。現に彼女の実家は’’八重樫流’’という剣術道場を営んでおり、雫もまたかなり使い手だったりする。
「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな。」
次に臭いセリフで香織に声をかけるのは天之河光輝であり、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人で、サラサラした茶髪に優しげな瞳、身長は百八十センチメートルあり、身体も八重樫の門下生のためか引き締まっており、剣の腕も全国クラス、誰にでも優しく正義感が強い、クラス一、いや、学校一のモテ男だ。
「全くだぜ、そんなやる気ない奴にゃあ何を言っても無駄だと思うけどな。」
最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎といい、光輝の親友だ。百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄の体格で細かい事を気にしない脳筋で、努力とか根性が好きな熱血漢である。現にハジメのようにやる気のなさそうな人間は嫌いなのか、ハジメを一瞥した後、フンッと鼻で笑い興味ないとばかり無視している。
そんな三人に挨拶を返すハジメ、ここで光輝が
「南雲も、いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ、香織だって君に構ってばかりはいられないんだから。」
そう言ってハジメに忠告をするのだった。光輝の目にはハジメは香織の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。ハジメは「あははは…」といい苦笑でやり過ごそうとするも、これを聞いた香織はというと、
「? 光輝くん何言ってるの? 私は南雲くんと話したいから話しているんだよ?」
天然なのかはたまた何か意図があっての発言か分からないが少なくともこの発言で教室がざわつき、男子生徒は更にハジメを睨み付けることになり、檜山達に至っては何か良からぬことを企んでいるのか睨みながら連れとヒソヒソと話し始めた。
これには光輝も、
「え? …ああ、本当に香織は優しいよな。」
少し驚いた光輝は直ぐに香織の発言はハジメに気を使ったと解釈されるのだった。この天之川光輝という男、完璧超人だが、どうも自分の正しさを疑わなさ過ぎることがあり、また、自分の都合よい方向に解釈する癖があったりする。当の本人もその自覚がなく、スバルにとってはそこが厄介と思う所であり、苦手(むしろ嫌っている)とする人物だったりする。
「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」
そして、雫はというと、この中で最も人間関係や各人の心情を把握しているため、こっそりハジメに謝罪をするのだった。ハジメも「仕方がない」と肩をすくめて納得するのだった。
「(いやはや毎日毎日、白崎の発言に振り回され天之河の自己解釈に頭を痛めるハジメが不憫でならないぜ…………そんでもって二人に代わって謝罪する八重樫はほんと士郎並みに苦労人だな。)」
と思ってスバルは見ていると後ろから「誰のせいだよ」と声が聞こえてきたので「口に出して言ってないよな。」と思いつつ聞かなかったことにするのだった。
そして、始業式のチャイムが鳴り、それぞれ生徒が席につくと教師が教室に入りホームルームが始まった。スバルがチラッとハジメの席を見るといつものように夢の世界に旅立っていた友達の姿があり、「やれやれ」とあきれ笑いを浮かべていると、ホームルームが終わり一時間目が始まるのだった。
次回はトータスに飛ばされる様子を前編、後編に分けて投稿予定です。